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甲状腺ホルモンが原因の肥満、甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症/バセドウ病による肥満[橋本病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺専門内分泌代謝長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等において学術目的で使用可能なもの(Creative Commons License)、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。肥満自体の診療を行っておりません。長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。

GLP-1受容体作動薬を含め、肥満治療薬の取り扱いはございません。

サノレックス®(一般名マジンドール)は使用いたしません。これは、依存性・禁断症状が生じる危険性のある薬です。

Summary

甲状腺機能低下症肥満・体重増加;脂肪分解の低下と酸性ムコ多糖類の蓄積;粘液水腫。甲状腺機能亢進症/バセドウ病肥満・体重増加①異常食欲亢進(糖脂肪分解を食欲が上回る)②甲状腺機能改善しても食欲中枢のリセットには時間が掛かる③右心不全で生じるむくみ(浮腫)④放射性ヨウ素内用療法後・甲状腺全摘出後の甲状腺機能低下症を放置。肥満で甲状腺腫が分かり難くなったり、脂肪組織を甲状腺腫と勘違いする場合がある(偶然、甲状腺に病気が見つかることも)。肥満者で高値になるレプチンが視床下部のTRH(TSH放出ホルモン)分泌促進。肥満甲状腺癌の危険因子。

Keywords

体重増加,肥満,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,レプチン,甲状腺癌,脂肪組織,甲状腺,食欲

内分泌肥満

肥満を見たら、まず内分泌肥満を疑う

ただの肥満と思っていても、実はホルモンの病気が原因かもしれません(内分泌肥満)。内分泌肥満はいくら食事療法・運動療法しても効果少なく、逆に生命を危険にさらす事もあります。肥満の方はまず内分泌肥満を疑い、ホルモン検査を受けるようお勧めします。

内分泌性肥満症とは

内分泌肥満には、

  1. 甲状腺機能低下症による脂肪分解の低下と酸性ムコ多糖類の蓄積(粘液水腫)(食事の量は増えていないのに、体重が増えていきます)
     
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病
    ①異常食欲亢進(糖・脂肪・蛋白が燃焼される以上に食べてしまうと、逆に肥満)
    ②治療による甲状腺機能改善に伴い、糖・脂肪・蛋白分解が低下しても、食欲中枢のリセットには時間が掛かるため、治療前と同じようにガッツリ食べる。
     
  3. 副腎皮質ホルモン分泌過剰[クッシング症候群(あるいはクッシング病]による脂肪同化作用(ステロイド肥満)。(食事の量は増えていないのに、体重が増えていきます)
     
  4. 成人成長ホルモン分泌不全症 新陳代謝の低下(食欲不振で、食事の量は増えていないのに、体重が増えていきます) 
     
  5. インスリノーマ (インスリン産生腫瘍)(インスリンを過剰分泌する膵臓の腫瘍);インスリンによる脂肪同化作用、および低血糖による異常食欲亢進。
  6. インスリン自己注射している糖尿病の方(インスリンは魔法の薬ではありません。下がった分の血糖は脂肪になって体につきます。)
     
  7. 男子性腺機能低下症
  8. 女性性腺機能低下症(男性エストロゲン欠乏症も含む)
     
  9. 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
     
  10. 内分泌浮腫[むくみ(浮腫)

甲状腺機能低下症による肥満

甲状腺ホルモンのトリヨードサイロニン(FT3)は

  1. 褐色脂肪組織で脂肪分解と熱産生[ミトコンドリアの熱産生蛋白である脱共役タンパク質(UPC)1を活性化)
  2. 骨格筋のエネルギー消費の亢進
  3. 白色脂肪組織におけるβ3アドレナリン受容体の増加

作用があります。よって、甲状腺ホルモン低下は

  1. 脂肪分解の低下
  2. エネルギー代謝の低下
  3. それらによる2次的活動量の低下

から体重増加、肥満の原因になります。甲状腺機能低下症では更に、4. ムコ多糖類の増加とそれに伴う水貯留(粘液水腫)が加わります。

肥満があると甲状腺腫が分かり難くなったり、逆に脂肪組織を甲状腺腫と勘違いする場合があります。

肥満があると甲状腺腫が分かり難い

特に、進行した橋本病の真っ黒な甲状腺は、周囲の脂肪組織や頸筋と区別が付き難い

甲状腺機能亢進症/バセドウ病による肥満

バセドウ病で肥満

甲状腺機能亢進症/バセドウ病による肥満は、

  1. 異常食欲亢進;食べても食べても痩せると思われがちですが、30%の人は糖脂肪分解よりも食欲が上回り、逆に太るのです。胃腸が強く、いくらでも食べられる若い人の甲状腺機能亢進症/バセドウ病では太りやすいですが、胃腸が弱く、食べれない高齢者はやせていきます(高齢者バセドウ病)。
     
  2. 治療が開始され、甲状腺ホルモンが正常に向かって下がりだす時期には、過剰な糖・脂肪・蛋白・骨分解にブレーキが掛かり、体重減少速度が低下します[Eur J Endocrinol. 1997 May;136(5):493-8. ]。
    体重は増加に転じ、バセドウ病発症前に戻るはずですが、甲状腺ホルモンが多い時と同じようにガッツリ食べて、逆に肥満をきたします。甲状腺ホルモンが治療により低下しても、食欲抑制ホルモンのレプチン濃度に有意な変化はなく、脳の食欲中枢がすぐにはリセットされないため、甲状腺ホルモンが高い時と同じに食べてしまいます。[Thyroid. 2016 Oct;26(10):1422-1430.]

    (※中にはこの現象をメルカゾールの副作用と勘違いし、服薬自己中断する人がいます。)
    そもそも人間は、食べれば食べた分だけ体重が増える生き物です。いくら食べても体重が増えない、逆に痩せていく事自体、自然の摂理に反します。バセドウ病が発症する前の体重を超えそうなときは、同じく食事量を発症する前に戻します。ただし、無理なダイエットはしないでください。
    [Clin Obes. 2019 Oct;9(5):e12328.][J Clin Endocrinol Metab. 2011 Oct;96(10):3257-63.]

    甲状腺機能亢進症/バセドウ病治療前後の体脂肪増加量・増加率は3か月後、平均0.78 kg(-0.95~7.2)・104.6%(96.4~120.7)、6か月後は1.6 kg(-1.8~11.1)・111.3%(74.8~148.0)と、全体的に体脂肪増加します。治療後6か月しても元の体脂肪増量に戻らない人もいます。(第61回 日本甲状腺学会 O24-2 BIA(bioelectrical impedance analysis)法によるバセドウ病治 療前後の体組成評価)
     
    特に、バセドウ病治療中の体重増加は小児に多くみられ、肥満児になる子どもが少なくない。①発症時の年齢が若いほど、②甲状腺機能亢進症の程度が高いほど、③体重減少が大きいほど、体重増加が著しい。[Clin Endocrinol (Oxf). 2018 Jan;88(1):66-70.][J Clin Endocrinol Metab. 2011 Oct;96(10):3257-63.]
     
  3. 甲状腺心臓(サイロイドハート)の右心不全で生じるむくみ(浮腫);特に顔面のむくみ(浮腫)は右心不全の可能性が高い。体重増加を来し、太ったと勘違いする場合があります。

    心房細動(Af)などの不整脈、狭心症・心筋梗塞心臓弁膜症心筋症による左心不全を合併し、右心不全と合わせて両室不全をおこすと、浮腫(むくみ)・体重に加えて肺うっ血(肺水腫)を来します。呼吸苦や息切れなど呼吸困難症状が発生。
     
  4. 肥満があると甲状腺腫が分かり難くなったり、逆に脂肪組織を甲状腺腫と勘違いする場合があります。
      
  5. 放射性ヨウ素(I-131)内用療法後甲状腺全摘出後甲状腺機能低下症を放置していると、体重増加・肥満をきたします。[J Endocrinol Invest. 2013 Oct;36(9):764-9.]

脂肪細胞ホルモンのレプチンとTRH分泌との関連

脂肪組織から分泌されるレプチンというホルモンは、食欲を抑える働きがあります。レプチンは視床下部と下垂体をつなげる漏斗に存在する弓状核に作用→視床下部の室傍核→食欲中枢(摂食中枢)の順に刺激が伝達し、食欲を抑制・肥満を防ぐ作用があります。

肥満者では脳の食欲中枢にあるレプチン受容体の働きが悪く、食欲を抑える事ができないと考えられています。そのため血中レプチン濃度が代償的に高くなります。

(図;管理薬剤師.comより改変)

弓状核 室傍核 摂食中枢
レプチンとTRH分泌との関連

肥満者では、しばしば中等度の血中TSH(甲状腺刺激ホルモン)値の上昇を認め、体重減少に伴い正常化します。

肥満者で高値になるレプチンが、視床下部で合成されるTRH(TSH放出ホルモン)分泌を調節するとの論文が複数出ています。(Neuroendocrinology 1998 68 89–97.)(Journal of Clinical Investigation 2000 105 1005–1011.)

抗肥満ホルモンであるレプチンが、TRH→TSH→T4→T3(甲状腺ホルモン)の反応を介し、脂肪細胞の分解を促進しようと働いている可能性が考えられます。

もし、レプチンの刺激伝達経路に何らかの障害があれば、中枢性甲状腺機能低下症が起きる可能性があります。(筆者はIRS4遺伝子異常の原因ではないかと考えています)

図:Circulating leptin and thyroid dysfunction. European Journal of Endocrinology (2003) 149 257–271

甲状腺機能亢進症/バセドウ病はアスパルテームの過剰摂取に要注意

人工甘味料「アスパルテーム」は、パ〇スイート・ダイエットペ〇シ・コ〇コーラゼロ・カルピ〇ダイエット・キ〇リトールガムなど多くのダイエット食品に含まれています。

アスパルテームは体内で加水分解されると「メタノール(メチルアルコール)」を生成。メタノールは、酸化されてホルムアルデヒド→蟻酸へ代謝されます。これらが神経に蓄積し、パーキンソン病やうつ病を発症させたり、喘息などのアレルギーを悪化させる可能性が指摘されています。[Nutrients. 2021 Jun 7;13(6):1957.]

ペットボトル1~2本分のダイエット飲料では、神経毒性の健康被害は無いと考えられていますが、アレルギーは免疫反応なので微量なアレルゲンでも起こります。アレルギーは甲状腺機能亢進症/バセドウ病の増悪因子でもあります(甲状腺とアレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎)。(第113回日本内科学会 P123 人工甘味料摂取は気管支喘息の気道炎症を悪化させる)

また、動物実験のデータであり、そのまま人体に当てはまりませんが、アスパルテームによるげっ歯類の発がんが報告されています[Environ Health. 2021 Apr 12;20(1):42.]。一方で、げっ歯類の発がんをおこさないとの報告もあり、議論されています[Arch Environ Occup Health. 2015;70(3):133-41.]。

喘息などのアレルギーのある人(特に甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人)は、アスパルテームの摂り過ぎに注意

甲状腺機能亢進症/バセドウ病に無理な運動はダメ

甲状腺機能亢進症/バセドウ病による肥満に無理な運動はダメ!ただでさえ甲状腺ホルモンに刺激され続けている心臓へ過剰な負荷を掛けると、致死性不整脈たこつぼ型心筋症などがおこり突然死もあり得ます。(バセドウ病の突然死

運動強度は、甲状腺ホルモンが正常化し、その後安定するまで、通常速度で歩く程度が良いです(全力疾走、最大酸素摂取量の運動は絶対ダメ)。長期間、過剰な甲状腺ホルモンに曝されていた心臓がクールダウンするまでの間は、徐々に運動強度を上げていくのが良いでしょう。甲状腺機能亢進症/バセドウ病の運動制限

肥満→老化→甲状腺、内分泌異常

肥満糖尿病・心血管障害は老化を促進し、老化により甲状腺を含む内分泌異常が起こります。甲状腺機能障害・内分泌障害により、さらに肥満糖尿病・心血管障害が増悪する負のスパイラルに陥ります。

肥満→老化によって、

  1. 甲状腺機能低下症の増加[J Clin Endocrinol Metab. 2002 Feb;87(2):489-99.]
  2. Somatopause;成長ホルモン(GH)分泌量の減少[J Clin Endocrinol Metab. 1994 Mar;78(3):526-35.]
  3. Adrenopause;デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)およびデヒドロ硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEA-S)の低下[Horm Res. 2004;62 Suppl 3:110-4.]
  4. Menopause;女性は更年期障害(低エストロゲン血症)[Ann Intern Med. 1992 Dec 15;117(12):1016-37. ]
  5. Andropause;男性は遊離テストステロンの減少[J Clin Endocrinol Metab. 1991 Nov;73(5):1016-25.]、

[図;Mol Cell Endocrinol. 2009 Feb 5;299(1):129-36.]

肥満→老化→甲状腺、内分泌異常

肥満は甲状腺癌の危険因子(リスクファクター)

肥満甲状腺癌の危険因子(リスクファクター)です[Int J Environ Res Public Health. 2022 Jan 20;19(3):1116.]

肥満患者における

  1. 軽度の慢性炎症
  2. サイトカイン
    IL-6 [インターロイキン(Interleukin)-6][Int J Clin Exp Pathol. 2019 Nov 1;12(11):3992-4001.]
    TNF-α[BMC Cancer. 2020 Aug 20;20(1):788.]
  3. アディポカイン[World J Surg. 2014 Oct;38(10):2621-7.][Histol Histopathol. 2003 Apr;18(2):393-9.]
    レプチンとの説あり[Oncol Lett. 2013 Mar;5(3):797-800.][Endocr Relat Cancer. 2010 Feb 18;17(1):191-202.]
     
  4. インスリン抵抗性[Metab Syndr Relat Disord. 2009 Aug;7(4):375-80.][Int J Surg. 2018 Sep;57:66-75.]
  5. インスリン様成長因子(IGF)[Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2014 Jun;23(6):976-85.][Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2014 Jun;23(6):976-85.]
     
  6. 酸化ストレス;活性酸素[Endocr Relat Cancer. 2012 Jan 9;19(1):C7-11.]
     
  7. 高エストロゲン血症肥満者では脂肪組織のアロマターゼが増加・過活性化し、エストロゲン合成を促進。エストロゲンとアンドロゲンの不均衡が甲状腺発がんの一因となる可能性。[Thyroid. 2014 Feb;24(2):190-9.]

は、すべて甲状腺癌の発生と成長に寄与します。

肥満は甲状腺癌の危険因子(リスクファクター)

[Int J Environ Res Public Health. 2022 Jan 20;19(3):1116.]

甲状腺の病気でなく、ただの肥満

皮下脂肪がたまって首が太くなっているのを、甲状腺の腫れと勘違いして長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方がおられます。大抵、甲状腺以外の場所の皮下脂肪を気にされている場合が多いですが、偶然、甲状腺に病気が見つかることもあります。

首の腫れ 皮下脂肪

写真は18歳の肥満男性 甲状腺機能正常橋本病です。首が太くなっているのは皮下脂肪がたまっているからで、腫れた甲状腺は皮下脂肪(黄色円)の遥か下にあります。

18歳の肥満男性 甲状腺機能正常橋本病
肥満男性の気管に接する甲状腺微小乳頭癌(拡大)

しかも、同患者は2年後、気管に接する甲状腺微小乳頭癌が見つかりました。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,浪速区,生野区,東大阪市,天王寺区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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