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脳下垂体と甲状腺--TSH産生下垂体腺腫         [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 内分泌 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺 クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

TSH産生下垂体腺腫 MRI画像

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Summary

脳下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)の異常で、甲状腺ホルモンの異常が起こります。TSH不適切分泌症候群(SITSH)の一つTSH産生下垂体腺腫の原因・症状・診断・治療を解説。ダイナミック下垂体MRI・TRH負荷試験で診断。

Keywords

下垂体,甲状腺刺激ホルモン,TSH,甲状腺ホルモン,TSH不適切分泌症群,SITSH,TSH産生下垂体腺腫,甲状腺.ダイナミック下垂体MRI,TRH負荷試験

TSH産生下垂体腺腫

TSH不適切分泌症候群(SITSH)

TSH不適切分泌症候群(SITSH)とは

T3によるTSHのネガティブフィードバックの破綻により、TSHが抑制されることなく過剰に分泌される状態を、TSH不適切分泌症候群(SITSH)と言います。血液検査では、FT4やFT3が高値にもかかわらず、TSHは正常あるいはむしろ軽度上昇になります。

下垂体腫瘍でTSHを分泌するTSH産生下垂体腺腫が該当します。

TSH産生下垂体腺腫とは

TSH産生下垂体腺腫

  1. 下垂体腺腫の約1-3%を占め、88%は1cm以上のマクロアデノーマ(大型の腺腫)です。
  2. 多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の一部の事あります。
  3. 成長ホルモン(GH)産生細胞と同じ細胞系譜で、成長ホルモン(GH)産生下垂体腺腫と合併する事あります。

TSH産生下垂体腺腫の原因

TSH産生下垂体腫瘍の原因

TSHを産生する下垂体細胞が腫瘍化する原因は不明ですが、TSH分泌量を調節するためのTRβ(甲状腺ホルモン受容体β)の遺伝子変異が報告されています。TSH産生下垂体腫瘍では、新規TRβアイソフォーム(構造が異なるTRβ)、TRβ4の発現比率が増加しているのがTSH不適切分泌症候群(SITSH)の原因との説もあります(Endocrinology 153:492-500, 2012)。

TRβ4はT3と結合せず、かつ正常なTRに対して軽い阻害作用を有します。(J Clin Endocrinol Metab. 2011 Jun;96(6):E948-52.)

(表)バーチャル臨床甲状腺カレッジより引用

TSH産生下垂体腺腫の症状

TSH産生下垂体腺腫の症状は、

  1. TSHの無制限の分泌による中枢性甲状腺機能亢進症下垂体性甲状腺機能亢進症)です。眼症状、関節症、前脛部粘液水腫など自己免疫抗体による症状を除いた甲状腺機能亢進症/バセドウ病の症状と同じです。
     
  2. TSHが無制限に甲状腺を刺激するため、甲状腺腫大(甲状腺の腫れ)
     
  3. さらに、下垂体腫瘍・脳腫瘍独特の頭蓋内圧亢進による頭痛、視野・視力障害があります。

マスクされる中枢性甲状腺機能亢進症下垂体性甲状腺機能亢進症

TSH産生下垂体腺腫による中枢性甲状腺機能亢進症に、

  1. 橋本病による甲状腺の破壊
  2. 双極性障害でリチウム剤(リーマス®)服用;(ヨードの甲状腺濾胞細胞内への取り込みが阻害され甲状腺ホルモン合成障害)

があると、TSH刺激に反応して、甲状腺ホルモンを合成できず、中枢性甲状腺機能亢進症がマスクされます。

TSH産生下垂体腺腫の診断

TSH産生下垂体腺腫

  1. TSH は基準値内が多く
  2. FT4、FT3 の増加も軽度で、一過性に基準値を呈する症例もある

ため注意を要します。(第57回 日本甲状腺学会 O5-3 TSH 産生下垂体腺腫13 症例における甲状腺機能の検討)

診断には脳造影MRI(ダイナミック下垂体MRI)、TRH(TSH放出ホルモン)負荷試験が必要です。

TSH産生下垂体腺腫 MRI画像
  1.  ダイナミック下垂体MRI:大阪市立大学病院 代謝内分泌内科(一連の入院検査になります)、あるいは東住吉森本病院に依頼。下垂体の偶発腫瘍(インシデンタローマ)は、かなり多く(下垂体腫瘍の約10%)、TSH産生下垂体腫瘍は稀(下垂体腫瘍の約1%)なので、下垂体腫瘍が見つかってもTSH産生下垂体腫瘍と即断してはいけません。
     
  2.  TRH負荷試験:大阪市立大学病院 代謝内分泌内科に入院して行います。
    ・TRH注射液(プロチレリン or ヒルトニン®)(200~500μg)をゆっくりを静注。
     マクロアデノーマでは下垂体卒中に注意、鞍上部に達するものは避けた方が良い。GnRHとの併用負荷で起こり易い。頭痛が初期症状で2時間以内に起こる。すぐにCTよりもMRIを撮る。
     妊婦は一過性甲状腺中毒症の危険あるので禁忌。
     悪心・嘔吐の副作用ある。
    ・注射前、30分、60分後にTSHとプロラクチンを測定
    注射前と120分後にT3を測定、増加したTSHの生物活性(甲状腺を刺激できる正常な構造のTSHかどうか)を確認します。
    TSH産生下垂体腫瘍の92%がTRHに反応しません(TSHの頂値が基礎値の2倍以下が多い)
    健常人や甲状腺ホルモン不応症非機能性下垂体腺腫では、TSHはTRHに反応して増加(ピークは30分で10μU/ml以上)
     
  3. 保険適応外検査(血中の性ホルモン結合蛋白SHBG, TSHのαサブユニットが増加)
    αサブユニット/ TSHモル比>1.0(ただし、ゴナドトロピンのαサブユニットが混ざるので閉経後・妊娠中の女性は除きます)
     
  4. 組織生検(脳外科に頼んでも、めったに行ってくれないが)、あるいは手術で摘出した下垂体腫瘍組織の免疫組織染色行い、腫瘍細胞内のTSHβ鎖、TSHが染色されるのを確認。

TSH産生下垂体腺腫甲状腺ホルモン不応症の鑑別診断

TSH産生下垂体腺腫は甲状腺ホルモン不応症と比べて、

  1. 家族性がない(甲状腺ホルモン不応症でも25%は家族性が確認できず、散発性とされます)
  2. ダイナミック下垂体MRI下垂体腺腫を認める。(例え下垂体腺腫が見つかっても、非機能性下垂体腺腫、TSH以外のホルモン産生下垂体腺腫の確率の方が高い。)
  3. TRH負荷試験;反応が低ければ診断確定し、これで鑑別終了。(但し、8%は反応する)
  4. 保険適応外検査(血中の性ホルモン結合蛋白SHBG, TSHのαサブユニット高値)
  5. TRβ遺伝子診断陰性;TRH負荷試験で鑑別できない時に行う。(ただし、甲状腺ホルモン不応症でも15%は陰性)
  6. T3抑制試験:T3製剤で抑制されません。甲状腺ホルモン不応症では部分的に抑制されます。(明確な判定基準もなく、リスクを伴うため、実際はTRH負荷試験でTSH産生下垂体腫瘍が確定するか、TRβ遺伝子診断で甲状腺ホルモン不応症が確定すれば行いません。)

TSH産生下垂体腺腫と橋本病などの原発性甲状腺機能低下症による下垂体過形成の鑑別診断

下垂体過形成

橋本病などの原発性甲状腺機能低下症(甲状腺自体に障害があり甲状腺機能低下症になる)では、下垂体のTSH産生細胞が過形成をおこし、TSH産生下垂体腺腫のようになる事があります。

  1. 甲状腺ホルモン(FT4,FT3)低値であり、
  2. 甲状腺機能低下症の症状(徐脈、低血圧、便秘、むくみ等)がある(TSH産生下垂体腺腫では通常甲状腺機能亢進症の症状なので逆!)
  3. 甲状腺超音波(エコー)検査で甲状腺の破壊所見[橋本病(慢性甲状腺炎)]、甲状腺の低形成、甲状腺の萎縮(萎縮性甲状腺炎TSH受容体不活型変異)を認める

ため、TSH産生下垂体腺腫と間違える事は普通あり得ないのですが、実際に間違えてTRH負荷試験をやろうとした医者を見たことがあります(もし止めなければ下垂体卒中起こしてたやろな・・)。

萎縮性甲状腺炎に下垂体過形成を認めた症例報告では、

  1. 血液検査:TSH977.200μIU/ml、freeT3 0.45 pg/ml、freeT4 0.08 ng/dl、TPO-Ab 223.1 IU/ml、Tg-Ab 529.8 IU/ml、TSB-Ab 63.5 %
  2. 下垂体MRI 検査では著明な下垂体腫大、視神経交叉が下方より圧迫されていた

(第56回日本甲状腺学会 P2-047 学校検診で高度肥満・脂質異常症を指摘され発見し得た萎縮性甲状腺炎女児例)

不活性型TSH産生下垂体腺腫

例外的に、生理作用を持たないTSH(不活性型TSH)を産生する不活性型TSH産生下垂体腺腫では、高TSH、甲状腺ホルモン(FT4,FT3)低値になり、区別できない事があります。

  1. 甲状腺超音波(エコー)検査で、甲状腺の破壊の程度と甲状腺ホルモン(FT4,FT3)値が解離していないか[不活性型TSH産生下垂体腺腫なら、甲状腺ホルモン(FT4,FT3)値が低いのに、甲状腺の破壊の程度は軽微。ただし、萎縮性甲状腺炎・TSH受容体不活性型変異でも同じパターン]
  2. TSHのα-サブユニットが異常なら、不活性型TSH産生下垂体腺腫です。

橋本病、炭酸リチウムなどでマスクされるTSH産生下垂体腺腫

橋本病など甲状腺の破壊や、炭酸リチウムなど甲状腺ホルモン合成を妨げる薬剤により、TSH産生下垂体腺腫甲状腺機能亢進症状がマスクされる事があります。要するに、TSH刺激に甲状腺自体が反応できないと起こり得る病態です。

和歌山県立医科大学の報告では、TSH 4.782 μIU/mL, FT4 0.82 ng/dL 他、下垂体前葉ホルモンの上昇も認めず、非機能性下垂体腺腫と診断され、下垂体切除術後の病理標本でTSH 陽性細胞が確認されたそうです。(第57回日本甲状腺学会 P1-099 術前に非機能性下垂体腺腫と診断されていた橋本病合併TSH 産生下垂体腺腫の一例)

TSH産生下垂体腺腫の治療

TSH産生下垂体腺腫の治療は、

  1. 脳外科による腫瘍の摘出術です。[経蝶形骨洞手術(経鼻的下垂体手術)]を行いますが、半数以上で腫瘍を完全に切除できません。
     
  2. 残存腫瘍に、放射線の外照射が試みられますが、有効率は4%程度しかありません。
     
  3. オクトレオチド(サンドスタチン®)投与により、3分の1で腫瘍の縮小が認められます。
    欧米では術前投与としても使われますが、日本では保険適応がないため、対症的にβ遮断薬を使うのみです。
    成長ホルモン(GH)産生下垂体腺腫はオクトレオチド(サンドスタチン®)が保険適応なので、GH/TSH同時産生腺腫には使用できます。
    また、消化管ホルモン産生腫瘍(VIP産生腫瘍、カルチノイド症候群おこすカルチノイド腫瘍、ガストリン産生腫瘍)は、オクトレオチド(サンドスタチン®)が保険適応なので、TSH産生下垂体腺腫と消化管ホルモン産生腫瘍が合併する場合[多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)]にも使えます。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

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