橋本病(慢性甲状腺炎)の抗体(自己免疫抗体) [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックにつき、細部まで橋本病(慢性甲状腺炎)の病態評価を行います。
長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君(動脈硬化した血管に甲状腺が! バセドウ病の甲状腺がモデル)
- 橋本病(慢性甲状腺炎)の抗体(本ページ)
- 橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度の評価
Summary
橋本病(慢性甲状腺炎)は自分の甲状腺を破壊する自己免疫抗体、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)いずれか陽性で確定診断(超音波エコー装置が発達する前の原始的な診断基準)。橋本病の1%は両方陰性。サイロイドテスト、マイクロゾームテストは簡易測定法で時代遅れ。抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)は陽性率高いが甲状腺の破壊の程度を反映しない。抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)は陽性率低いが、甲状腺の最終的な破壊の程度を反映、抗体そのものが人体に悪影響との説あり、胎盤早期剥離・出産後甲状腺炎の危険因子。
Keywords
橋本病,慢性甲状腺炎,甲状腺,破壊,抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体,TPO抗体,抗サイログロブリン抗体,Tg抗体,サイロイドテスト,マイクロゾームテスト
自分の甲状腺を破壊する橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体は、
- 抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)
の2種類があり、いずれかが陽性であれば橋本病(慢性甲状腺炎)が確定します。
但し、これは超音波(エコー)装置が発達する前の原始的な診断基準によります。長崎甲状腺クリニック(大阪)の超高解像度超音波(エコー)装置ARIETTA 850 SE (甲状腺特化型)を用いれば、これらの自己免疫抗体が上昇する前の、あるいは自己免疫抗体陰性橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度を評価できます。
自己抗体陰性橋本病
自己抗体陰性橋本病 超音波(エコー)画像;実は、抗サイログロブリン抗体(TgAb)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPOAb)陰性の橋本病が、かなりの割合で存在します。特に、これらの抗体が上昇する前の20-30代の若年女性で多い印象です。
簡易測定法サイロイドテスト、マイクロゾームテスト
サイロイドテストは抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)の、マイクロゾームテストは抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)の簡易測定法です。測定結果も、1600倍、3200倍と言うように倍数表示のために大まかで、わずかに陽性(例えば抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の正常値が16.0 U/mL 未満の所、16.8 U/mL とか)になる橋本病(慢性甲状腺炎)を診断できません。
簡易測定法(凝集法)のサイロイドテスト・マイクロゾームテストは、精密法(イムノアッセイ法)の抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)と陽性率が乖離します[Thyroid. 2001 Mar;11(3):265-9.]。[Eur J Endocrinol. 1994 Jun;130(6):552-8.]。
サイロイドテスト・マイクロゾームテストは、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)を測定できなかった大昔の検査方法で、もはや過去の遺物になりました。
※抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)は昔、甲状腺マイクロゾーム分画に反応する自己抗体として発見されたため、マイクロゾームテストと呼ばれていました。
上條甲状腺クリニックの統計では、橋本病(慢性甲状腺炎)の
- 43%は抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)両方陽性
- 47%は抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)のみ陽性
- 9%は抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)のみ陽性
- 1%は両方陰性:穿刺細胞診(甲状腺に針を刺して細胞を採る検査)にてリンパ球浸潤を証明すれば橋本病(慢性甲状腺炎)と診断。このような場合、数年後にいずれかの抗体陽性になることがあります。
これら橋本病(慢性甲状腺炎)の抗体は、ステロイドホルモンの系列である女性ホルモンにより抑えられているため、年齢が若いと(例え持っていても)陽性になりません。年齢とともに女性ホルモンが低下していくと、陽性になり、同時に甲状腺の破壊の速度が増します。
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)は自分の甲状腺を破壊してしまう自己免疫抗体で、血液検査で検出されると橋本病(慢性甲状腺炎)の診断が確定します。Tg抗体より陽性率が低いものの、甲状腺の最終的な破壊の程度を反映します。(Ann Clin Biochem 2006, 43: 173–183. )
Tg抗体と同時に測定すると橋本病(慢性甲状腺炎)の診断率がアップしますが、保険診療では同時測定が認められておらず、翌月以降になります。
上條甲状腺クリニックの統計では、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の60%でも陽性になり、恩師 稲葉雅章 大阪市大名誉教授の抗体併存説では、矛盾なく説明可能です。すなはち、橋本病とバセドウ病はコインの裏表で、何かのきっかけで入れ替わる可能性があります。
院長の指導論文
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Thyroid heterogeneity, as indicated by the CV of ultrasonographic intensities, correlates with anti-thyroid peroxidase antibodies in euthyroid Hashimoto's thyroiditis (Thyroid Research)甲状腺機能正常の橋本病(慢性甲状腺炎)では、TPO抗体と、超音波で評価した甲状腺内部の不均質係数が相関する。よって、甲状腺ホルモンが低下する前から、最終的な破壊の程度に応じた内部破壊が既に起こっている事を医学界で初めて証明。
胎盤早期剥離;抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)陽性の女性が妊娠すると胎盤早期剥離の確率は3倍になるとされます[Obstet Gynecol. 2010 Aug;116(2 Pt 1):381-386.][Obstet Gynecol. 2011 Feb;117(2 Pt 1):287-292.]。一方、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)単独では影響なく、わずかな甲状腺機能低下症が胎盤早期剥離を起こしやすくするとの報告もあります。[Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Feb 17;13:759064.][Aust N Z J Obstet Gynaecol. 2013 Dec;53(6):553-60.]
出産後甲状腺炎;抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性の女性が出産すると60-70%の確率で出産後甲状腺炎を発症します(Thyroid. 1999 Jul;9(7):705-13.)。出産後甲状腺機能異常の89%が抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性とされます。バセドウ病へ移行する(4%)、無痛性甲状腺炎からバセドウ病へ移行(7%)、無痛性甲状腺炎(68%)、一過性甲状腺機能低下(20%)、永続性甲状腺機能低下(0.3%)と多様な病態を呈するのが特徴です。
甲状腺ホルモンとは無関係に抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)そのものが、人体に悪影響を及ぼす可能性があります。ただし、その機序は全く分かっておらず、全ての甲状腺専門医が認めている訳でもなく、筆者も「ほんとかな?」と言う感じです。
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)>121.0 IU/mL (強陽性)の甲状腺機能正常橋本病(甲状腺ホルモンが正常の橋本病)では、
- 慢性疲労
- 毛髪の乾燥
- 慢性的なイライラ感、精神的緊張感
- 乳癌および早期流産
- 生活の質(QOL)の低下
が起こり易いとする報告があります。(Thyroid. 2011 Feb;21(2):161-7.)
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb)の免疫グロブリンG(IgG)分画は、あくまで研究分野の話で、保険適応もなく、普及していないため、長崎甲状腺クリニック(大阪)では測定できません。
橋本病でのTPOAb IgG2の比率は甲状腺機能低下症(51.5%)で、潜在性甲状腺機能低下症(33.3%)、甲状腺機能正常橋本病(11.9%)に比べ有意に高くなります(P<0.05)。甲状腺機能が低下する程、IgG2の比率が高くなります。
(Clin Exp Immunol. 2008 Nov;154(2):172-6.)
抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)は自分の甲状腺を破壊してしまう自己免疫抗体で、血液検査で検出されると橋本病(慢性甲状腺炎)の診断が確定します。TPO抗体より陽性率が高い反面、甲状腺の破壊の程度を反映しないとされます。TPO抗体と同時に測定すると橋本病(慢性甲状腺炎)の診断率がアップしますが、保険診療では同時測定が認められていないため、翌月以降になります。
上條甲状腺クリニックの統計では、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の67%でも抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性になります。一見、矛盾しているように思えますが、筆者の恩師 稲葉雅章 大阪公立大学(旧 大阪市立大学) 代謝内分泌内科名誉教授の抗体併存説では説明可能です。すなはち、橋本病もバセドウ病も、元をたどれば同じ自己免疫疾患で、免疫細胞の比率によりどちらになるか決まります。そして、何かのきっかけで免疫細胞の比率が変わると入れ替わる可能性があります。(橋本病とバセドウ病は入れ替わる---元は同じ自己免疫性甲状腺疾患)
抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)の免疫グロブリンG(IgG)分画
抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)の免疫グロブリンG(IgG)分画は、あくまで研究分野の話で、保険適応もなく、普及していないため、長崎甲状腺クリニック(大阪)では測定できません。
橋本病を基盤とする無痛性甲状腺炎、甲状腺機能亢進症/バセドウ病単独での抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)のIgG分画(サブクラス)
- TgAb IgG3は、橋本病を基盤とする無痛性甲状腺炎(66.7%)で、甲状腺機能亢進症/バセドウ病単独(35.5%)、橋本病合併甲状腺機能亢進症/バセドウ病(36.4%)より高い傾向にある(P=0.066)。
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病単独のTgAb IgG2 とTgAb IgG4 は、橋本病合併甲状腺機能亢進症/バセドウ病、橋本病を基盤とする無痛性甲状腺炎より有意に高い。
抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体:TPOAb) IgG分画に有意差は無い
(Zhonghua Yi Xue Za Zhi. 2014 Jan 14;94(2):110-4.)
抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)が本当は高値なのに低く測定され(偽低値)、「正常範囲内につき橋本病(確定)でない」と誤った判断がされる危険があります(偽陰性)。
簡易測定法(凝集法)のサイロイドテストと精密法(イムノアッセイ法)の抗サイログロブリン抗体(Tg抗体:TgAb)、またはマイクロゾームテストと抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)が乖離することは以前より知られていました[Thyroid. 2001 Mar;11(3):265-9.]。[Eur J Endocrinol. 1994 Jun;130(6):552-8.]
現在、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)測定の主流はエクルーシス試薬を用いたECLIA法ですが、このキットではFT3、FT4が高め・TSHが低めに出てしまう偽高値・偽低値が問題になっています。
バセドウ病抗体TRAb(ECLIA)も偽高値になる場合があり、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)で同じことが起きても不思議は無い。
実際、日本甲状腺学会にて、サイロイドテスト陽性・2step測定法のアーキテクト®(アボットジャパン)および1step測定法のアキュラシード®(富士フイルム和光純薬)で抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性なのに、エクルーシス試薬を用いたECLIA法で偽陰性だった橋本病の報告がありました。(第66回 日本甲状腺学会 P17-5 抗サイログロブリン抗体が偽陰性を呈した慢性甲状腺炎の一症例)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。