甲状腺:専門の検査/治療/知見②[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波 エコー 検査 甲状腺炎 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 エコー検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください
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---全ては専門医療のために---
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放射線と甲状腺
甲状腺の病気で注意する事
- ヨウ素(ヨード)と甲状腺 イソジン/ポビドンヨード ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物
- タバコの害;タバコ・受動喫煙・加熱式タバコは甲状腺に悪影響 たばこの害② 大豆と甲状腺
- 甲状腺と風邪薬(かぜぐすり)/痛み止め 非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs) 急性扁桃炎(溶連菌感染)でバセドウ病再発!
- チラーヂンS錠で副作用 チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない? チラーヂンSの飲み間違い
- 甲状腺と茶, コーヒー,活性酸素 甲状腺とアンチエイジング・ビタミン
- セレン欠乏症は甲状腺機能低下症 甲状腺と銅
- ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物) 大豆で甲状腺機能低下症になるのか?(大豆と甲状腺)
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症 アルコールと甲状腺
甲状腺と遺伝
甲状腺と似ている病気
- 似ている、合併している副腎皮質機能低下症 甲状腺腫瘍と副腎腫瘍
- 髄膜炎菌/肺炎球菌で副腎クリーゼ(急性副腎不全)、副腎出血
- 成人成長ホルモン分泌不全症
- 甲状腺と似ている合併している亜鉛欠乏症、甲状腺でむずむず脚症候群
- 甲状腺と似ている女性更年期障害 男性更年期障害
- 現代日本にも脚気(かっけ)・ビタミンB1欠乏
- 喉(のど)の違和感、喉(のど)に引っかかる感じ[嚥下(えんげ)時の違和感]、嚥下障害。甲状腺それとも?
- サルコペニア/サルコペニア肥満症・フレイル
- 高マグネシウム血症 低マグネシウム血症 セロトニン症候群・カルチノイド症候群
- 化学物質過敏症 甲状腺の病気に似ているミトコンドリア病・ライソゾーム病(ポンペ病・ファブリー病など)
甲状腺と関節痛、関節リウマチ、筋肉痛・筋けいれん
- 関節リウマチ(RA)と甲状腺 関節痛・EMO症候群とバセドウ病・橋本病
- バセドウ病と筋肉痛・筋けいれん 甲状腺機能低下症・橋本病と筋肉痛・筋けいれん
- 橋本病 バセドウ病と似た筋の病気① ② ③ 整形外科(頸肩腕) (股膝脚) スポーツ・アスリート・ドーピング
甲状腺と認知症、てんかん、神経内科、橋本脳症、精神神経病、頭痛
- 甲状腺で認知症? 甲状腺と老年症候群・ロコモティブシンドローム・加齢黄斑変性・高齢者貧血
- 甲状腺とてんかん 神経内科(パーキンソン病) 多系統萎縮症,本態性振戦 ALS、球脊髄性筋萎縮症 末梢神経障害(手根管症候群ほか)
- 橋本脳症 脳梗塞 脳腫瘍 可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)
- 自律神経失調症、起立性調節障害・血管迷走神経反射・掌蹠多汗症 発達障害
- 甲状腺機能低下症と頭痛 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と頭痛
- めまい・ふらつき/メニエールと甲状腺/動脈硬化
甲状腺と免疫(IgG4、胸腺、APS)
- IgG4関連甲状腺炎、リーデル甲状腺炎 橋本病型IgG4甲状腺炎 甲状腺以外のIgG4関連疾患 IL-6・IL-2
- 甲状腺と密接な重症筋無力症 胸腺腫 CASTLE甲状腺癌 APS(多腺性自己免疫症候群)
薬剤性甲状腺機能障害
甲状腺と血液の病気
- 甲状腺と再生不良性貧血 造血幹細胞移植と甲状腺 甲状腺癌の骨髄癌腫症 ・骨髄線維症
- 多発性骨髄腫と甲状腺・高カルシウム血症
- 甲状腺と出血①後天性血友病A/後天性von willebrand症候群 ②免疫性血小板減少性紫斑症(ITP)
- 血栓性微小血管症(TMA)と甲状腺 甲状腺と血球貪食症候群 赤血球増加症 ・血小板増加症
甲状腺と泌尿器(前立腺・膀胱)
甲状腺と救急・外科手術
- 橋本病急性増悪
- 甲状腺と救急①甲状腺損傷・ダメな薬 ②気道閉塞・窒息,甲状腺内異物 ③アウトドア編
- 甲状腺手術[気道狭窄時の気道確保・ECMO・麻酔・内臓逆位・胸骨切開/胸骨切除・手術痕を目立たなくする皮膚縫合・経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)] 甲状腺の手術合併症① ②
- 橋本病の手術・橋本病の巨大甲状腺腫にI-131アイソトープ治療
- 甲状腺内視鏡手術・甲状腺ロボット手術
- 穿刺細胞診(穿刺時出血) (急性反応) (病理診断)
- 脳死と甲状腺 甲状腺と歯科治療・抜歯・顎関節症
甲状腺未知の領域
- サイログロブリンの役割、高値が意味するもの 甲状腺アミロイドーシス
- 甲状腺と伝染性紅斑(リンゴ病)、コクサッキー、アデノ、RSウイルス ヘルペス・伝染性単核球症・突発性発疹
- 手術不能・適応外甲状腺腫瘍にラジオ波焼灼療法(RFA)、iPS細胞から甲状腺細胞が作れる?、腫瘍抗原ペプチドワクチン療法、甲状腺がん探知犬
- 乳癌と甲状腺
甲状腺の社会問題
- 橋本病に対する偏見、ヒヤリハット・処方ミス;チウラジールとチラージン、ノセボ効果、トランスジェンダー、法医学
- 働き過ぎると甲状腺機能低下症に成り易い??
- 甲状腺と体臭症、発汗
- 海外から日本へ来る甲状腺患者、海外で長期滞在する日本人 環境ホルモン 重金属と甲状腺
- 乱用される『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用 他臓器癌合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病で抗甲状腺薬使えなくなる
- 患者自身が作り出す「やせ薬」による甲状腺中毒症
- 甲状腺と震災、水害、台風、避難生活、クラッシュ症候群 地球温暖化、PM2.5と甲状腺
- 甲状腺癌の早期発見は過剰診断・過剰診療なのか?
- 甲状腺癌の終末期医療(ターミナルケア)/緩和ケア/ベストサポーティブケア(BSC)
- 温泉・入浴・お風呂・サウナと甲状腺 献血と甲状腺 小児虐待
ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は発音が似ているが全くの別物。甲状腺の病気ではヨウ素(ヨード)の過剰摂取制限が必須。甲状腺機能低下症/橋本病では葉酸の吸収障害・利用障害により、甲状腺機能亢進症では葉酸の需要増大により葉酸欠乏に。特に妊娠期の葉酸不足は胎児の二分脊椎症など神経管閉鎖障害発症リスクを高める。ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなどの野菜類、イチゴや夏みかんなどの果物類、大豆や納豆などは葉酸を含むが甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収障害に注意。最も簡単で確実なのは葉酸サプリメントを飲むこと。
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ヨウ素(ヨード)は制限、葉酸(ようさん)は推奨量摂取
ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は発音が似ているが全くの別物です。世間ではヨウ素(ヨード)[ようそ]と葉酸(ようさん)を混同している方が多くいます。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では混同を避けるため、患者さんには「ヨード」と言う表現に統一しています。
甲状腺が悪い方にヨウ素(ヨード)の過剰摂取制限は必須[ヨード(ヨウ素)と甲状腺]ですが、葉酸(ようさん)は摂った方が良いのです。
特に甲状腺機能低下症/橋本病の妊婦さんは、
- ヨウ素(ヨード)を厳格に制限して(ヨードと甲状腺)
- 葉酸(ようさん)を推奨量摂取
せねばなりません(妊娠と葉酸)。
葉酸(ようさん)とは
葉酸(ようさん)は水溶性ビタミンB群の一種(ビタミンB9)で、妊娠期に欠かせない栄養素として注目されています。その名(葉っぱの酸)の通り、
- ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物の緑葉、野菜類に多く
- イチゴや夏みかんなどの果物類
- 大豆や納豆など
に含まれています。葉酸(ようさん)はタンパク質や核酸合成の補酵素として、細胞分裂・増殖(要するに生命維持)に必要です。また、ビタミンB12と共に、赤血球合成に必要で、不足すると葉酸欠乏性貧血に至ります。
ただし、甲状腺機能低下症/橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)を服用中の方は、これらがチラーヂンSの吸収障害をおこすため、摂取の仕方に工夫が必要です[葉酸(ようさん)をどの様に補給するか?]。
甲状腺と葉酸欠乏
甲状腺の病気では葉酸欠乏がおこりやすいのため要注意です。
- 甲状腺機能低下症では、葉酸の吸収障害・利用障害
- 甲状腺機能亢進症では、葉酸の需要増大[Nuklearmedizin. 1979;18(6):278-82.]
により葉酸欠乏が起こります。
妊娠期において葉酸は胎児の体を形成するのに必要不可欠です。胎児の細胞分裂が最も活発な妊娠初期(4週~13週)の葉酸欠乏では、二分脊椎症など神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなります(妊娠初期が最も重要)[Reprod Toxicol. 2018 Sep;80:73-84.]。
葉酸を強化した(おそらくパンや小麦を原料とする)おやつ類(現在、81か国が推奨)を食べ続けた妊婦では、そうでない妊婦と比べると、子供の脳(前頭・側頭部)の皮質厚が増加するとされます(要するに、胎児脳の発達が良くなる)。(JAMA Psychiatry. 2018 Jul 3.)
そのため、妊活中の女性はいつ妊娠しても良い様に、1日400μgの葉酸サプリを補充することが推奨されています(産婦人科診療ガイドライン-産科編2017)。
また、授乳期の葉酸欠乏は乳児の発育障害の原因になるため、授乳期も葉酸サプリを続けた方が良いでしょう。
葉酸は動脈硬化を予防
葉酸は、動脈硬化の危険因子であるホモシステイン産生を抑制します。ホモシステインは、必須アミノ酸のメチオニンが代謝されて生成されるアミノ酸です。血中ホモシステインは、
- 脳梗塞、閉塞性動脈硬化症(ASO)、深部静脈血栓症の危険因子
- 甲状腺機能低下症、2型糖尿病、葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12欠乏で高値になります
甲状腺機能低下症患者の血中ホモシステインは、甲状腺ホルモン剤(チラーヂン、レボチロキシン)単独で治療するより、葉酸を併用して治療する方が低下します。[Caspian J Intern Med. 2012 Spring;3(2):417-20.]
葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血
葉酸はビタミンB12とともに、造血に不可欠です。葉酸欠乏は、巨赤芽球性貧血という大球性貧血(大きな赤血球だが数は少ない)をおこします。
詳しくは、 葉酸欠乏性貧血 を御覧ください。
葉酸欠乏による口内炎・皮膚炎・肌荒れ
葉酸が欠乏すると、新陳代謝が活発な口腔内や皮膚・粘膜などに炎症や肌荒れが現れます。
妊娠希望女性は葉酸1日400μg、妊娠中は440μgが推奨量です。葉酸400μgは、ホウレン草約200g(1把分)に相当しますが、そんな量のホウレン草を食べ続ければシュウ酸カルシウムの過剰摂取で、腎臓結石・尿路結石ができます。
甲状腺機能低下症/橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服用中の方なら、ホウレン草のシュウ酸カルシウムと食物繊維がチラーヂンSの腸吸収を妨げます。
その他、ブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物、イチゴや夏ミカンなどの果物類も同じく食物繊維がチラーヂンSの吸収障害を起こし、納豆・豆腐・豆乳など大豆製品はチラーヂンSを吸着し、腸から吸収させないようにします(チラーヂンSの吸収障害をおこす食べ物)。
甲状腺機能正常橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服用する必要のない方は、これらの食品を摂取して問題ありません。これらの食品は甲状腺を腫れさせるゴイトロゲンと呼ばれるものが多いですが、あくまで動物実験のみの話で、常識量の摂取で甲状腺に問題が出た報告は1例もありません。[ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物)]
葉酸は加熱に弱いため調理中に失活しますが、だからといって特に夏場、生のままで食べればO-157大腸菌などによる食中毒の可能性もあります。
また、食品中の葉酸は、ほとんどがポリグルタミン酸型で、腸の消化酵素の働きでモノグルタミン酸型に変換された後に吸収されます。一方、葉酸サプリメントは最初からモノグルタミン酸型のため、食品中の葉酸よりも吸収が良いのです。食品中の葉酸のバイオアベイラビリティ(生物学的利用能、どれだけの量が全身に循環するのかを示す指標)は、葉酸サプリメントの約80%です[Am J Clin Nutr. 2007 Feb;85(2):465-73.]。
結論として、最も簡単で確実なのは、葉酸サプリメントを飲むことです。ただし、甲状腺の病気がある方は、ヨウ素(ヨード)を同時に含む製品を避けてください。
筆者がお勧めなのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド」で、余計なものが一切入っていません。(筆者も服用しています)
葉酸過剰摂取
女性の葉酸摂取限界量(1日耐容上限量)は
- 18~29歳で900μg
- 30~49歳で1,000μg
です。[BMC Public Health. 2011 Jan 21;11(1):46.]
葉酸過剰摂取の弊害として、
- 妊娠中の血清葉酸濃度が高い女性では、年齢や生殖能力とは無関係に双子妊娠(双胎)の確率が高くなる[N Engl J Med. 1994 Jun 9;330(23):1687-8.]
- 妊娠初期の葉酸摂取量増加は、胎児においてうつ病、統合失調症・双極性障害・喘息に関連するメチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)677T-対立遺伝子の頻度を増加させる[Nat Rev Genet. 2005 Mar;6(3):235-40.]
などの報告があります。「過ぎたるは猶及ばざるが如し」なので、決められた量を超えないよう気を付けましょう。
甲状腺を腫れさせる物質、ゴイトロゲンを含む食物、キャベツ、ハクサイ等を常識量だけ食べても甲状腺が腫れたり、甲状腺機能低下症になったりしない。高容量を使った動物実験のみの話。唯一の報告は異常な量のゴイトロゲンを長期間摂取した超非常識な88歳の中国人女性で、生のチンゲン菜を1日推定1.0~1.5kg、数ヶ月間食べ続けた。甲状腺腫瘍・甲状腺癌を増大させる可能性も、理論上は有るが報告はない。ゴイトロゲンは食物繊維を多く含みチラーヂンSの吸収障害をおこすので、ゴイトロゲンが直接、甲状腺を腫れさせたり、甲状腺機能低下症を引き起こす様な錯覚に陥る。
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ゴイトロゲンの真実
甲状腺腫瘍・甲状腺癌の大きさを増大させる可能性も、理論上は有り得ます。ただし、だれも証明した人はなく、そのような報告もありません。ゴイトロゲンには、以下のようなものがあります。
- 大豆
- アマの種子[亜麻仁油(アマニ油)]
- サツマイモ・タケノコ
- イチゴ・ナシ・モモ
- キャベツ・メキャベツ・ハクサイ(白菜)はアブラナ科ですが、レタスはキク科なので違います。
カリフラワー、ブロッコリー、カブ、チンゲン菜、ルッコラ、ダイコン、ワサビ、クレソン - ホウレンソウ、ミズナ、ノザワナ、コマツナ、チンゲンサイ
- ピーナッツ
ゴイトロゲンと呼ばれる食品は、甲状腺機能低下症でチラーヂンSを服薬されている方には問題を起こす可能性があります。それは、いずれも食物繊維を多く含むため、チラーヂンSの腸吸収を邪魔(阻害)します。あたかも、ゴイトロゲンが直接、甲状腺を腫れさせたり、甲状腺機能低下症を引き起こす(あるいは悪化させる)ような錯覚を与えるのです。
詳しくは、 チラーヂンSの吸収障害をおこす食べ物 を御覧下さい。
糖尿病を患っており、ダイエット目的で生のチンゲン菜を1日推定1.0~1.5kg、数ヶ月間食べ続け、粘液水腫性昏睡をおこした88歳中国人女性の報告があります。生のチンゲン菜は、グルコシノレートを加水分解するミロシネーゼを含み、グルコシノレートの分解産物チオシアネート・ニトリル・オキサゾリジンは、動物実験で使用する高濃度において甲状腺ホルモン合成阻害作用があります[甲状腺へのヨウ素(ヨード)取り込みを阻害]。加熱調理でミロシネーゼは不活性化されるので、火を通せば良かったのにね。(N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1945-6.)
これはアブラナ科の野菜キャベツ、メキャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、全般に言える事で、
- 生で食わなきゃ何も問題ない
- 1日1.0~1.5kg、数ヶ月間食べ続けなきゃ何も問題ない
(Hum Toxicol. 1986 Jan;5(1):15-9.)
ので安心して食べてください。アブラナ科野菜は「台所のドクター」と言われ、イソチオシアネートは抗がん、抗炎症、抗酸化(活性酸素を抑える、動脈硬化を抑える)作用があります。 亜麻仁油(アマニ油)は、動脈硬化を予防する特保として厚生労働省が認めています。(アブラナ科の植物 ケノコトより)
※キャベツとハクサイ(白菜)はアブラナ科ですが、レタスはキク科なので違います。
大豆と甲状腺には深い関係があるが、大豆製品を食べて甲状腺機能低下症になるのを証明できた正式な甲状腺学会・論文報告はまだない。イソフラボン類(大豆の有効成分でゲニステインやダイゼインなど)が甲状腺ホルモン合成を抑えるという動物実験は複数存在する(逆に甲状腺ホルモン合成を促進するのもある)が、あくまで動物実験。英国、米国、中国などヨード欠乏国では甲状腺ホルモン合成抑制・促進両方の報告はあるが、ヨード(ヨウ素)過剰摂取国の日本人で証明できた正式な甲状腺学会・論文報告はまだない。
大豆と甲状腺は、深い関係があります。大豆食品はアジアの伝統的な食事の一つですが、健康に良いとされているため、非アジア人の閉経後女性にも人気が高まっています。最もメジャーなのは、ホルモン特性と非ホルモン特性の両方を持つイソフラボンです。健康な被験者に大豆食品またはイソフラボンを投与した合計14件の臨床試験では、1つの例外を除いて、ごくわずかの甲状腺機能変化しか認められませんでした。結論として、甲状腺機能正常でヨード欠乏でない健康人(健康な日本人)が常識量の大豆食品・イソフラボンを摂取しても甲状腺機能低下症になりません。[Thyroid. 2006 Mar;16(3):249-58.]
そして、日本人が常識量の大豆製品を食べて甲状腺機能低下症になるのを証明できた正式な甲状腺学会・論文報告もありません。(因果関係の証明を欠いた報告はありますが・・)
イソフラボン類(大豆の有効成分でゲニステインやダイゼインなど)が甲状腺ホルモンの合成を抑えるという動物実験は複数存在します。あくまで、動物実験の話です。実際、人間、特に日本人で起こるのを証明できた正式な甲状腺学会・論文報告は、まだありません。動物実験は、通常ではありえない大量のイソフラボン類を強制的に投与し(そもそも動物実験とは、そう言うものです)、血中濃度を異常高値(薬理学的濃度と言います)にします。それに対して、生物(動物も人間も)の通常血中濃度を生理的濃度と呼び、この濃度では何も起こらないのです(一般的に薬理学的濃度は生理的濃度の数百-数万倍です、正に「薬も毒になる」)。
以上より、日常生活で食べる量のイソフラボン類で甲状腺機能低下症が起こるとは、到底、考えられません。(正式な甲状腺学会・論文報告はまだありませんが、)動物実験で使用するのと同じ大量のイソフラボン類を人間が摂取を続ければ(例えば乾燥大豆の大量摂取を続ける、イソフラボン類の健康食品・サプリの大量摂取を続けるなど)、日本人でも起こる可能性はあります(しかし、極めて稀なケースでしょう)。
以下は、長崎甲状腺クリニック(大阪)新着情報の続き
信じるに足るだけの直接証拠がなく残念ですが、1例だけ、「普通に市販されているイソフラボン類の健康食品(大麦若葉)を6カ月摂取して潜在性甲状腺機能低下症が重症の甲状腺機能低下症になった」と言う関東の症例報告があります(J Med Case Rep. 2017 Sep 5;11(1):253.)。
ただ、元々、橋本病の抗体が強陽性の高齢者で、イソフラボン類が原因と断定できる直接の証拠は提示されておらず(必要条件のみで十分条件が示されていない)、偶然かもしれないし、ヨード(ヨウ素)・海藻系など他の原因かもしれない。普通に考えれば重度の無痛性甲状腺炎や橋本病型IgG4甲状腺炎による不可逆的な破壊がおきた可能性もある。何よりも、他の橋本病患者で同様の報告は1例もありません。さらに、掲載されている画像はCTのみで、甲状腺超音波(エコー)検査の画像が無く、所見は腫れている以外の記載はありません。そのため、甲状腺に何が起きたのか(破壊は進んだのか、その後回復したのか、内部血流はどうなのか等)判断できません。
筆者が診ている橋本病患者で、大麦若葉を服用した後、甲状腺機能低下症が悪化した人は数人いましたが、全てチラーヂンSの吸収障害でした。特に、橋本病型IgG4甲状腺炎は、橋本病抗体強陽性者の30%に見られる橋本病(慢性甲状腺炎)の急速進行型で、急激な甲状腺機能低下の進行が特徴。おそらく、関東の症例はこれだろうと筆者は考えます。
日本は国際的にも稀なヨード(ヨウ素)過剰摂取国[ヨード(ヨウ素)と甲状腺]。日本以外はヨード(ヨウ素)欠乏国が大半で、島国なのにヨード欠乏国の英国では、日本の平均摂取量よりやや少ないイソフラボン類(大豆の有効成分)摂取で、潜在性甲状腺機能低下症から顕在性甲状腺機能低下症へ進行するが、日本で同じことは起こらない(Nutrients. 2016;8. pii: E754)。
また、スペイン(ヨード欠乏国)の報告でも、大豆飲料は潜在性甲状腺機能低下症患者においてTSHをごく軽度上昇させるとされます[Nutr Hosp. 2023 Oct 6;40(5):1056-1067.]。
イタリア(ヨード欠乏国)でも、牛乳アレルギーの子供に与えられる大豆ベースの乳児用調製粉乳により、生後12か月のヨウ素欠乏児が豆乳誘発性甲状腺機能低下症をおこした報告があります。[Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Aug 11;13:927726.]
筆者の推測ですが、イソフラボン類摂取で、益々ヨード欠乏が進むからではないでしょうか?どの道、日本では関係無い話です。
その一方で、ヨード欠乏国の一つ、中国の報告では、橋本病患者にイソフラボン類の一つゲニステインを与えると甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO-Ab)、抗サイログロブリン抗体 (Tg-Ab)が有意に減少、甲状腺ホルモンFT4が有意に増加(要するに、甲状腺を破壊する抗体が減り、甲状腺機能が改善)したそうです。(Immunobiology. 2017 Feb;222(2):183-187)
そもそもイソフラボンは、フィトエストロゲン(女性ホルモン、エストロゲン活性を有する植物由来の化合物)なので、橋本病の自己免疫を抑える作用があっても不思議ではありません。あくまで、ヨード欠乏国の中国からの報告であり、日本で同じ事が言えるか不明です。
群馬大学の研究データでは、イソフラボン類のゲニステインとダイドゼインが甲状腺ホルモン受容体を介して、甲状腺ホルモン刺激伝達経路を活性化するとの事です。人間で同じことが起こるか不明ですが、前述のデータに根拠を与える1つです。(Toxicol Sci. 2018 Aug 1;164(2):417-427.)
また、大豆にはサポニン (saponin)が含まれています。サポニンが甲状腺ホルモン合成に影響した動物実験は複数ありますが[Biol Pharm Bull. 2006 Aug;29(8):1759-63.]、人体での報告はありません。
日本人の死因第一位を占める癌と、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併は、それ程、珍しくありません。他臓器癌合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、抗がん剤等の使用状況により、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)を使えない場合があります。
他臓器癌合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病の治療は、抗甲状腺薬と抗がん剤化学療法両方が好中球減少症のリスクを有するため困難です。軽症であればヨウ化カリウム(KI)単独治療も考えられるが、いつエスケープ現象をおこして効かなくなるか分かりません。そのため、早々にアイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療、手術療法(甲状腺全摘出) を考えるべきです。[Endocr J. 2020 Jul 28;67(7):751-758.]
大阪大学の報告では、甲状腺機能亢進症/バセドウ病にメルカゾール投与開始し、副作用なく減量している最中に乳癌が見つかる。乳癌切除後、 抗がん剤投与によりWBC 1090 /µL、RBC 187万 /µL、Hb 5.3 g/dL、Plt 2万 /µLと汎血球減少がおこる。メルカゾール中止を余儀なくされ、KI投与後にアイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療を施行したそうです。(第60回 日本甲状腺学会O8-1 癌合併例のバセドウ病治療について)
Summary
日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医の長崎甲状腺クリニック大阪。甲状腺超音波エコー検査、甲状腺機能亢進症/バセドウ病,甲状腺機能低下症/橋本病,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎,甲状腺腫瘍,甲状腺乳頭癌,甲状腺濾胞癌,甲状腺髄様癌など専門の検査/治療を解説。ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物。チラーヂンS錠の副作用・下痢/食事/薬での吸収障害。甲状腺を腫らすゴイトロゲン、甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症、穿刺細胞診の合併症、橋本病の巨大甲状腺腫とI-131アイソトープ治療、手術療法。ヒヤリハット、チウラジールとチラージン、甲状腺と体臭症も説明。
Keywords
甲状腺腫瘍,甲状腺,甲状腺癌,甲状腺機能低下症,甲状腺ホルモン,バセドウ病,橋本病,甲状腺機能亢進症,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。