甲状腺:専門の検査/治療/知見② [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 エコー検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください
(目次)
放射線と甲状腺
甲状腺の病気で注意する事
- ヨウ素(ヨード)と甲状腺 ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物
- 禁煙指導;タバコは甲状腺の病気に悪影響・受動喫煙の恐怖;甲状腺に忍び寄る副流煙
- 甲状腺と風邪薬/痛み止め 急性扁桃炎(溶連菌感染)でバセドウ病再発!
- チラーヂンS錠で副作用 チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない? チラーヂンSの飲み間違い
- 甲状腺と茶, コーヒー,活性酸素 甲状腺とアンチエイジング・ビタミン
- セレン欠乏症・亜鉛欠乏症は甲状腺機能低下症 甲状腺と銅
- ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物) 大豆で甲状腺機能低下症になるのか?(大豆と甲状腺)
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症 アルコールと甲状腺
甲状腺と遺伝
甲状腺と似ている病気
- 似ている、合併している副腎皮質機能低下症 甲状腺腫瘍と副腎腫瘍
- 髄膜炎菌/肺炎球菌で副腎クリーゼ(急性副腎不全)、副腎出血
- 成人成長ホルモン分泌不全症
- 甲状腺と似ている合併している亜鉛欠乏症、甲状腺でむずむず脚症候群
- 甲状腺と似ている女性更年期障害 男性更年期障害
- 現代日本にも脚気(かっけ)・ビタミンB1欠乏
- 食べ物がのどに引っかかる感じ[嚥下(えんげ)時の違和感]、嚥下障害。甲状腺それとも?
- サルコペニア/サルコペニア肥満症・フレイル
- 高マグネシウム血症 低マグネシウム血症 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と似ているセロトニン症候群・カルチノイド症候群
- 化学物質過敏症 甲状腺の病気に似ているミトコンドリア病・ライソゾーム病(ポンペ病・ファブリー病など)
- 甲状腺に似ている合併している起立性調節障害 血管迷走神経反射と甲状腺
甲状腺と関節痛、関節リウマチ、筋肉痛・筋けいれん
- 関節痛、関節リウマチと甲状腺 関節痛・EMO症候群とバセドウ病・橋本病
- バセドウ病と筋肉痛・筋けいれん 甲状腺機能低下症・橋本病と筋肉痛・筋けいれん
- 橋本病 バセドウ病と似た・合併する筋の病気 甲状腺と整形外科の病気 スポーツ・アスリート・ドーピングと甲状腺
甲状腺と認知症、てんかん、神経内科、橋本脳症、精神神経病、頭痛
- 甲状腺で認知症? 甲状腺と老年症候群・ロコモティブシンドローム・加齢黄斑変性・高齢者貧血
- 甲状腺とてんかん
- 甲状腺と神経内科(パーキンソン病,多系統萎縮症,本態性振戦) 末梢神経障害(手根管症候群ほか)
- 橋本脳症 脳梗塞と甲状腺 脳腫瘍と甲状腺 可逆性の脳梁膨大部病変を伴う軽症脳炎/脳症 (MERS)
- 甲状腺機能亢進症とストレス・精神神経病 甲状腺機能低下症と精神神経病 発達障害 人格変化・異食症・神経性やせ症(神経性食思不振症)・神経性過食症
- 甲状腺機能低下症と頭痛 甲状腺機能亢進症/バセドウ病と頭痛
- ダウン症候群・ターナー症候群と甲状腺
- めまい・ふらつき/メニエールと甲状腺/動脈硬化
甲状腺と免疫(IgG4、胸腺、APS)
薬剤性甲状腺機能障害
甲状腺と血液の病気
- 甲状腺と再生不良性貧血 造血幹細胞移植と甲状腺
- 多発性骨髄腫と甲状腺・高カルシウム血症
- 甲状腺と出血①後天性血友病A/後天性von willebrand病 ②免疫性血小板減少性紫斑症(ITP)
- 血栓性微小血管症(TMA)と甲状腺 甲状腺と血球貪食症候群 赤血球増加症 ・血小板増加症
甲状腺と泌尿器(前立腺・膀胱)
甲状腺と救急・外科手術
- 橋本病急性増悪
- 甲状腺と救急:甲状腺損傷・気道閉塞・そのくすりダメ 甲状腺と救急(アウトドア編)
- 甲状腺手術[気道狭窄時の気道確保・ECMO・麻酔・内臓逆位・胸骨切開/胸骨切除・手術痕を目立たなくする皮膚縫合・経皮経食道胃管挿入術(PTEG/ピーテグ)] 甲状腺の手術合併症
- 橋本病の手術・橋本病の巨大甲状腺腫に131-Iアイソトープ治療
- 甲状腺内視鏡手術・甲状腺ロボット手術
- 穿刺細胞診(穿刺時出血,急性反応)
- 脳死と甲状腺 甲状腺と歯科治療・抜歯・顎関節症
甲状腺未知の領域
- サイログロブリンの役割、高値が意味するもの 甲状腺アミロイドーシス
- 甲状腺と伝染性紅斑(リンゴ病)、コクサッキー、アデノ、RSウイルス ヘルペス・伝染性単核球症・突発性発疹
- 手術不能・適応外甲状腺腫瘍にラジオ波焼灼療法(RFA)、iPS細胞から甲状腺細胞が作れる?、腫瘍抗原ペプチドワクチン療法、甲状腺がん探知犬
- 乳癌と甲状腺
甲状腺の社会問題
- 橋本病に対する偏見、ヒヤリハット・処方ミス;チウラジールとチラージン、ノセボ効果、トランスジェンダー、法医学
- 働き過ぎると甲状腺機能低下症に成り易い??
- 甲状腺と体臭症、発汗
- 海外から日本へ来る甲状腺患者、海外で長期滞在する日本人 環境ホルモン 重金属と甲状腺
- 乱用される『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用 他臓器癌合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病で抗甲状腺薬使えなくなる
- 患者自身が作り出す「やせ薬」による甲状腺中毒症
- 甲状腺と震災、水害、台風、避難生活、クラッシュ症候群 地球温暖化、PM2.5と甲状腺
- 甲状腺癌の終末期医療(ターミナルケア)/緩和ケア/ベストサポーティブケア(BSC)
- 温泉・入浴・お風呂・サウナと甲状腺 献血と甲状腺
ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は発音が似ているが全くの別物。甲状腺の病気ではヨウ素(ヨード)の過剰摂取制限が必須。甲状腺機能低下症/橋本病では葉酸の吸収障害・利用障害により、甲状腺機能亢進症では葉酸の需要増大により葉酸欠乏に。特に妊娠期の葉酸不足は胎児の二分脊椎症など神経管閉鎖障害発症リスクを高める。ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなどの野菜類、イチゴや夏みかんなどの果物類、大豆や納豆などは葉酸を含むが甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)の吸収障害に注意。最も簡単で確実なのは葉酸サプリメントを飲むこと。
ヨウ素(ヨード)は制限、葉酸(ようさん)はドンドン摂取
長崎甲状腺クリニック(大阪)では混同を避けるため、患者さんには「ヨード」と言う表現に統一しています。しかし、発音が似ているため、世間では、ヨウ素(ヨード)[ようそ]と葉酸(ようさん)を混同している方が多くいます。
甲状腺が悪い方にヨウ素(ヨード)の過剰摂取制限は必須[ヨード(ヨウ素)と甲状腺]ですが、葉酸(ようさん)は摂った方が良いのです。
特に甲状腺機能低下症/橋本病の妊婦さんは、
- ヨウ素(ヨード)を厳格に制限して(ヨードと甲状腺)
- 葉酸(ようさん)を可能な限り摂取
せねばなりません(妊娠と葉酸)。
葉酸(ようさん)とは
葉酸(ようさん)は水溶性ビタミンB群の一種で、妊娠期に欠かせない栄養素として注目されています。その名(葉っぱの酸)の通り、
- ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物の緑葉、野菜類に多く
- イチゴや夏みかんなどの果物類
- 大豆や納豆など
にも含まれています。葉酸(ようさん)はタンパク質や核酸合成の補酵素として、細胞合成に必要です。また、ビタミンB12と共に、赤血球合成に必要です。
ただし、甲状腺機能低下症/橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)を服用中の方は、これらがチラーヂンS錠の吸収障害をおこすたえめ、摂取の仕方に工夫が必要です[葉酸(ようさん)をどの様に補給するか?]。
甲状腺と葉酸欠乏
甲状腺の病気では葉酸欠乏がおこりやすいのため要注意です。
- 甲状腺機能低下症では、葉酸の吸収障害・利用障害により
- 甲状腺機能亢進症では、葉酸の需要増大により
葉酸欠乏が起こります。
妊娠期において葉酸は胎児の体を形成するのに必要不可欠です。胎児の細胞分裂が最も活発な妊娠初期(4週~13週)の葉酸欠乏は、二分脊椎症など神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなります(妊娠初期が最も重要)。
葉酸を強化した、おそらくパンや小麦を原料としたおやつ類(現在、81か国が推奨)を食べ続けた妊婦は、そうでない妊婦と比べると、子供の脳(前頭・側頭部)の皮質厚が増加するとされます。(JAMA Psychiatry. 2018 Jul 3.)
そのため、妊活中の女性はいつ妊娠しても良い様に、1日400μgの葉酸サプリを補充することが推奨されています(産婦人科診療ガイドライン-産科編2017)。
また、授乳期の葉酸欠乏は、乳児の発育障害の原因になるため、授乳期も葉酸サプリを続けた方が良いでしょう。
葉酸は動脈硬化を予防
葉酸は、動脈硬化の危険因子のホモシステインの産生を抑制します。ホモシステインは、必須アミノ酸のメチオニンが代謝されて生成されるアミノ酸です。血中ホモシステインは、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症、深部静脈血栓症の危険因子です。甲状腺機能低下症、2型糖尿病、葉酸・ビタミンB6・ビタミンB12欠乏で高値になります。
葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血
葉酸はビタミンB12とともに、造血に不可欠です。葉酸欠乏は、巨赤芽球性貧血という大球性貧血(大きな赤血球だが数は少ない)をおこします。
詳しくは、 葉酸欠乏性貧血 を御覧ください。
葉酸欠乏による口内炎・皮膚炎・肌荒れ
葉酸が欠乏すると新陳代謝が活発な口腔内や皮膚、粘膜などに炎症や肌荒れが現れます。

妊娠希望女性は葉酸1日400μg、妊婦推奨量は440μgです。葉酸400μgは、ほうれん草約200g(1把分)に相当しますが、そんな量のほうれん草を食べ続ければシュウ酸カルシウムの過剰摂取になり、腎臓結石・尿路結石になります。
甲状腺機能低下症/橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)を服用中の方なら、ほうれん草のシュウ酸カルシウムと食物繊維がチラーヂンS錠の腸吸収を妨げます。
その他、ブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物、イチゴや夏みかんなどの果物類も同じく食物繊維がチラーヂンS錠の吸収障害を起こし、納豆など大豆製品はチラーヂンS錠を吸着し、腸から吸収させないようにします(チラーヂンS錠で副作用・ チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない?)。
甲状腺機能正常橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS錠)を服用する必要のない方は、気にせずこれらの食品を摂取して問題ありません。これらの食品は甲状腺を腫れさせるゴイトロゲンと呼ばれるものが多いですが、動物実験のみの話で、常識量の摂取で甲状腺に問題が出た報告は1例もありません。[ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物)]
葉酸は加熱に弱いため、調理中に失活しますが、だからといって特に夏場、生のままで食べればO-157大腸菌などによる食中毒の可能性もゼロではありません。
結論として、最も簡単で確実なのは、葉酸サプリメントを飲むことです。ただし、ヨウ素(ヨード)が入っているのは止めてください。
筆者がお勧めなのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド」で、余計なものが一切入っていないです。(筆者も服用しています)
甲状腺を腫れさせる物質、ゴイトロゲンを含む食物、キャベツ、ハクサイ等あるが、常識量を普通の人間が食べても甲状腺が腫れたり、甲状腺機能低下症おこしたりしない。高容量を使った動物実験のみの話。唯一の報告は異常な量のゴイトロゲンを長期間摂取した超非常識な88歳の中国人女性、生のチンゲン菜を1日推定1.0~1.5kg、数ヶ月間食べ続けた。甲状腺腫瘍・甲状腺癌の大きさを増大させる可能性も、理論上は有るが一例の報告もない。ゴイトロゲンは食物繊維を多く含みチラーヂンSの吸収障害おこすので、ゴイトロゲンが直接、甲状腺を腫れさせたり、甲状腺機能低下症を引き起こす様に錯覚する。
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ゴイトロゲンの真実
甲状腺腫瘍・甲状腺癌の大きさを増大させる可能性も、理論上は有り得ます。ただし、だれも証明した人はなく、そのような報告もありません。ゴイトロゲンには、以下のようなものがあります。
- 大豆
- アマの種子[亜麻仁油(アマニ油)]
- サツマイモ・タケノコ
- イチゴ・ナシ・モモ
- キャベツ、メキャベツ、ハクサイ、カリフラワー、ブロッコリー、カブ、チンゲン菜、ルッコラ、ダイコン、ワサビ、クレソン
- ホウレンソウ、ミズナ、ノザワナ、コマツナ、チンゲンサイ
- ピーナッツ
以上、ゴイトロゲンと言われる食品は、甲状腺機能低下症でチラーヂンSを服薬されている方には問題起こす可能性があります。それは、いずれも食物繊維を多く含むため、チラーヂンSの吸収を邪魔するのです。あたかも、ゴイトロゲンが直接、甲状腺を腫れさせたり、甲状腺機能低下症を引き起こすような錯覚を起こすのです。
詳しくは、 チラーヂンS錠で副作用・ チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない? を御覧下さい。
糖尿病があり、ダイエット目的で生のチンゲン菜を1日推定1.0~1.5kg、数ヶ月間食べ続け、粘液水腫性昏睡になった88歳の中国人女性の報告があります。生のチンゲン菜は、グルコシノレートを加水分解するミロシネーゼを含み、グルコシノレートの分解産物のチオシアネート、ニトリル、オキサゾリジンは、動物実験で使用する程の高濃度では甲状腺ホルモン合成阻害作用があります(甲状腺へのヨウ素の取り込みを阻害)。加熱調理でミロシネーゼは不活性化されます。(N Engl J Med. 2010 May 20;362(20):1945-6.)
大豆と甲状腺は、深い関係があります。しかし、大豆製品を食べて甲状腺機能が低下するのを証明できた正式な甲状腺学会・論文報告は、まだありません。確かに、イソフラボン類(大豆の有効成分でゲニステインやダイゼインなどがある)が甲状腺ホルモンの合成を抑えるという動物実験は複数存在します(逆に甲状腺ホルモン合成を促進するのもあります)。あくまで、動物実験です。英国、米国、中国などヨード欠乏国では色々な報告(甲状腺ホルモン合成を抑制・促進両方)がありますが、実際、日本人で起きたのを証明できた正式な甲状腺学会・論文報告は、まだありません。
動物実験の話で、日常生活上、人間、特に日本人で起こらない
イソフラボン類(大豆の有効成分でゲニステインやダイゼインなどがある)が甲状腺ホルモンの合成を抑えるという動物実験は複数存在します。あくまで、動物実験です。実際、人間、特に日本人で起こるのを証明できた正式な甲状腺学会・論文報告は、まだありません。動物実験は、通常ではありえない大量のイソフラボン類を強制的に投与し(そもそも動物実験とは、そう言うものです)、血中濃度を異常な高値(薬理学的濃度と言います)にします。それに対して、生物(動物も人間も)の通常血中濃度を生理的濃度と呼び、この濃度では何も起こらないのです(一般的に薬理学的濃度は生理的濃度の数百-数万倍です、正に「薬も毒になる」)。
以上より、日常生活で食べる量のイソフラボン類で甲状腺機能低下症が起こるとは、到底、考えられません。(正式な甲状腺学会・論文報告はまだありませんが、)動物実験で使用するのと同じ大量のイソフラボン類を人間が摂取を続ければ(例えば乾燥大豆の大量摂取を続ける、イソフラボン類の健康食品・サプリの大量摂取を続けるなど)、日本人でも起こる可能性はあります(しかし、極めて稀なケースでしょう)。
以下は、長崎甲状腺クリニック(大阪)新着情報の続き
信じるに足るだけの直接証拠がなく残念なのですが、1例だけ、「普通に市販されているイソフラボン類の健康食品(大麦若葉)を6カ月摂取して潜在性甲状腺機能低下症が重症の甲状腺機能低下症になった」と言う関東の症例報告があります(J Med Case Rep. 2017 Sep 5;11(1):253.)。ただ、元々、橋本病の抗体が強陽性の高齢者で、イソフラボン類が原因と断定できる直接の証拠は提示されておらず(偶然かもしれないし、ヨード・海藻系など他の原因かもしれない、普通に考えれば重度の無痛性甲状腺炎、IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎))、他の橋本病患者で同様の報告は1例もありません。さらに、画像はCTのみで、甲状腺超音波(エコー)検査の画像が無く、所見は腫れている以外記載されておらず、甲状腺に何が起きたのか(破壊は進んだのか、その後回復したのか、内部血流はどうなのか等)判断できません。
筆者が診ている橋本病患者で、大麦若葉を服用し、甲状腺機能低下症が悪化した人が数人いましたが、全てチラーヂンSの吸収障害でした。特に、IgG4甲状腺炎(橋本病型IgG4甲状腺炎)は、橋本病抗体強陽性者の30%に見られる橋本病(慢性甲状腺炎)の急速進行型で、甲状腺機能低下が速いのが特徴。おそらく、関東の症例はこれだろうと筆者は考えます。
ヨード欠乏国では色々な報告があるが・・
日本は国際的にも稀なヨード過剰摂取国(ヨードと甲状腺)。日本以外はヨード欠乏国で、島国なのにヨード欠乏国の英国では、日本の平均摂取量よりやや少ないイソフラボン類(大豆の有効成分)の摂取で、潜在性甲状腺機能低下症から顕在性甲状腺機能低下症へ進行するが、日本で同じことは起こらない(Nutrients. 2016;8. pii: E754)。筆者の推測ですが、イソフラボン類摂取で、益々ヨード欠乏が進んだからではないでしょうか?どの道、日本では関係無い事です。
その一方で、ヨード欠乏国の中国の報告では、橋本病患者にイソフラボン類の一つゲニステインを与えると甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO-Ab)、抗サイログロブリン抗体 (Tg-Ab)が有意に減少、甲状腺ホルモンFT4が有意に増加(要するに、甲状腺を破壊する抗体が減り、甲状腺機能が改善)したそうです。(Immunobiology. 2017 Feb;222(2):183-187)
そもそもイソフラボンは、フィトエストロゲン(女性ホルモン、エストロゲン活性を有する植物由来の化合物)なので、橋本病の自己免疫を抑える作用があっても不思議ではありません。あくまで、ヨード欠乏国の中国の報告であり、日本で同じ事が言えるか不明です。
群馬大学の研究データでは、イソフラボン類のゲニステインとダイドゼインが甲状腺ホルモン受容体を介して、甲状腺ホルモン刺激伝達経路を活性化するとの事です。人間で同じことが起こるか不明ですが、前述のデータの根拠の1つになります。(Toxicol Sci. 2018 Aug 1;164(2):417-427.)
嚥下(えんげ)時の違和感、嚥下障害
食べ物がのどに引っかかる感じがして(嚥下時の違和感)、あるいは食べ物を飲み込みにくかったり、食事中にむせたり、咳こんだりする嚥下障害で、長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方が多くいます。甲状腺の病気の事もあれば、他の原因の事もあります。
- 甲状腺:橋本病・バセドウ病などの甲状腺の腫れ(びまん性甲状腺腫)、甲状腺腫瘍・甲状腺癌による食道圧排
- 口内炎/口腔内潰瘍 ベーチェット病
- 口腔乾燥症
- 舌の病気
- のどの病気と咽頭・のど・扁桃・喉頭
- 女性更年期障害 ;更年期の女性ホルモン減少による粘液分泌低下と脳の過敏性亢進
- 食道の病気と甲状腺
- 反回神経麻痺:甲状腺癌の浸潤・圧迫、甲状腺腫瘍・甲状腺癌・バセドウ病の手術後、肺癌、食道癌、胸部大動脈瘤
- 全身性硬化症(強皮症)
- 脳血管障害(脳梗塞・脳出血など)による麻痺(嚥下障害の約40%)・加齢
- 変形性頚椎症
- 加齢によるオーラルフレイル
- 認知症、うつ病などで食欲制御が傷害:精神疾患患者の32%が嚥下障害を持っている(Dysphagia 21 (2): 95-101.)
- 身体表現性障害(咽喉頭異常感症:ヒステリー球);マスクストレス、その他ストレスや自律神経の乱れによる
2~なら他の医療機関でも診断できますが、1は他の医療機関で診断が難しい様です。逆に、長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺のみに特化しているため、甲状腺以外には対処できません。
嚥下時の違和感だけなら良いですが、嚥下障害が起きると食物を摂取できなくなるため、脱水や低栄養に至ります。無理に食べると
を引き起こす危険性があります。
嚥下障害の治療は、原因になっている病気を治す事です。しかし、加齢、脳梗塞など、それ以上の改善が見込めない場合、口のまわり・頬・舌の筋肉を鍛える誤嚥予防運動があります。また、誤嚥の予防も必要です(誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎)。
甲状腺の病気が原因の場合
甲状腺の病気が原因の場合、
などがあります。巨大な良性甲状腺腫瘍、小さくても甲状腺癌以外では、嚥下時の違和感があっても、嚥下障害に至る事は稀です。
ただし、例外はあり、
では嚥下障害も起こります。
起立性調節障害は、
- 日内リズムが後ろにズレて午前中に交感神経活動が活性化しない→朝起きられない、いつまでもボーッとしている。起きようとすると、脳に血液を送るのが遅れるため、めまい、頭痛、動悸、失神→また寝込んでしまう。午前中は体がだるい。(甲状腺機能低下症のよう)
- 夜間に交感神経が活発化→夜は元気、寝付きが悪くなる。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の睡眠相後退症候群のよう)
などの甲状腺の病気に似た症状が起こります。また、起きれないため、不登校、遅刻の常習者のレッテルを貼られて、社会的な不利益を被る事があります。
血管迷走神経反射は、
- 朝礼が長引いた時などにクラクラと倒れる
- 採血したら気分が悪くなる
- 新型コロナワクチン接種後に失神(アナフィラキシーショックとの鑑別要)
- 電車の中で、立っていると目の前が真っ暗になり、冷や汗が出て、動悸がする
など、よく"貧血"と呼ばれるものです。別に赤血球が少ない訳では無いので、貧血ではありませんが、他に適当な呼び名が無いのも事実です。"血管迷走神経反射"では難しくて、一般の人には浸透しにくいようです。
血管迷走神経反射は自律神経失調症の1つで、その本態は自律神経が原因の神経調節性失神(神経起因性失神)です。要するに、自律神経のバランスが著しく崩れ、脳に血液を押し上げれなくなった状態です。当然、脳は酸欠になり、失神やめまいなどを生じます。
注意を要するのは、と思っていても実は重篤な心臓の病気(洞不全症候群、房室ブロックなど)が隠れている事です。
甲状腺の病変による頸部圧迫で血管迷走神経反射が誘発された報告があります。
リーデル甲状腺炎による頸部圧迫で血管迷走神経反射が頻発するも、緊急手術で頸部圧迫を緩和すると血管迷走神経反射も消失。(Asian J Surg. 2016 Jan;39(1):41-4.)
日本人の死因の一位を占める癌と、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の合併は、それ程、珍しくなくなっています。他臓器癌合併した甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、抗がん剤等の使用状況で、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)使えなくなる事があります。
大阪大学の報告では、甲状腺機能亢進症/バセドウ病にメルカゾール投与開始、副作用なく減量中、乳癌見つかり、切除後、 抗がん剤投与しWBC1090、RBC187万、Hb5.3、Plt2万 と汎血球減少おこる。メルカゾール中止、KI投与後、131Iアイソトープ治療を施行したそうです。(第60回 日本甲状腺学会O8-1 癌合併例のバセドウ病治療について)
献血できない場合
甲状腺の病気を持っていて、献血ができない場合があります。日本赤十字社のマニュアルに照らし合わせると、献血が不可能なのは、
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の治療薬である抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)を飲んでいる人
- 甲状腺癌の診断を受けて経過観察中・治療中の方
- 甲状腺癌治癒後5年未満の方
- 造血器腫瘍の既往がある方、甲状腺悪性リンパ腫 が該当します
になります。
1.については、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)入りの血液を輸血すれば、輸血された人の甲状腺ホルモン合成が抑えられるかもしれません。
2.4.については、癌細胞や癌細胞が産生するサイトカイン入りの血液を輸血すれば、輸血された人に大変な事が起こるかもしれません。
3.の「5年未満」については、甲状腺癌の再発期間は最長42年で、他の癌に比べるとかなり長いため、5年以上経っても治っているか不明なので、「43年未満」と考えた方が良いと考えます(甲状腺乳頭癌再発)。
献血可能な場合
甲状腺の病気を持っていても献血可能な場合として、
- 甲状腺機能低下症/橋本病の治療薬. チラーヂンSを飲んでいる人。甲状腺ホルモン剤のチラーヂンSは、献血者の不足分の甲状腺ホルモンを補っているだけなので、献血に際し、全く問題ありません。当然、献血当日に服用していてもかまいません。
- 甲状腺良性腫瘍;ただし、良悪性が確定していないグレーゾーンについては、明確な規定はありませんが、筆者は献血しない方が良いと思います。特に、手術しなければ良悪性が確定しない 濾胞性腫瘍は止めた方が良いと思います(あくまで、筆者の個人的な意見です)
- 亜急性甲状腺炎の既往(完全に治っている場合)
Summary
日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医の長崎甲状腺クリニック大阪。甲状腺超音波エコー検査、甲状腺機能亢進症/バセドウ病,甲状腺機能低下症/橋本病,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎,甲状腺腫瘍,甲状腺乳頭癌,甲状腺濾胞癌,甲状腺髄様癌など専門の検査/治療を解説。ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物。チラーヂンS錠の副作用・下痢/食事/薬での吸収障害。甲状腺を腫らすゴイトロゲン、甲状腺機能亢進症/バセドウ病と熱中症、穿刺細胞診の合併症、橋本病の巨大甲状腺腫と131-Iアイソトープ治療、手術療法。ヒヤリハット、チウラジールとチラージン、甲状腺と体臭症も説明。
Keywords
甲状腺腫瘍,甲状腺,甲状腺癌,甲状腺機能低下症,甲状腺ホルモン,バセドウ病,橋本病,甲状腺機能亢進症,無痛性甲状腺炎,亜急性甲状腺炎
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。