甲状腺と副腎皮質機能低下症(副腎疲労性症候群),アジソン病[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
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甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症(アジソン病,ACTH単独欠損症)に似ている合併している
も御覧ください。
Summary
副腎疲労性症候群→副腎皮質機能低下症(アジソン病,ACTH単独欠損症)。甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症に症状が類似し合併もある。低血糖・低ナトリウム血症・高カリウム血症・好酸球増加・好中球減少で疑いACTH、コルチゾール測定。血中DHEA-Sは副腎皮質機能を正確に反映。診断は迅速ACTH負荷試験、ACTH分泌能評価[原発性か続発性(2次性)副腎皮質機能低下症か鑑別①CRH(1μg)負荷試験②インスリン低血糖試験]。治療はヒドロコルチゾン(コートリル®)10-20mg/日内服。発熱・外傷・ストレス時は通常の2~3倍服用(シックデールール)。
Keywords
甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺機能低下症,副腎皮質機能低下症,アジソン病,DHEA-S,コルチゾール,ACTH,副腎疲労性症候群,副腎
副腎疲労性症候群→正式には副腎皮質機能低下症
「副腎疲労性症候群」と言う言葉がネット上に見られますが、正式な医学用語としては、副腎皮質機能低下症 になります。要するに、ストレスに対処するために必要な副腎皮質ホルモンが足りず、十分、ストレスを受け止められない病態です。
甲状腺機能障害の症状と副腎皮質機能低下症の症状は似ているため、甲状腺の病気を疑っても甲状腺に異常なく、実は副腎皮質機能低下症の場合があります。また、甲状腺と副腎の病気は合併している事もあって、互いの症状を悪化し合うため、両方見つけて治療するのが大事です。副腎は90%障害されねば症状が出ませんが、甲状腺の影響により出やすくなります。
体重減少・食欲不振で甲状腺に異常がなければ、副腎皮質機能低下症か、甲状腺以外の癌かのいずれか!
副腎皮質機能低下症の症状は
- 全身倦怠感・食欲不振(甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症に類似)
- 体重減少/筋力低下(甲状腺機能亢進症/バセドウ病に類似)
- 低血圧(血圧80 mmHg台以下ならショックバイタルと紛らわしい)
徐脈(発熱していれば頻脈になる)
低血糖症
低ナトリウム血症・高カリウム血症 [甲状腺機能低下症に類似。体液量の増減ないため、皮膚の乾燥(細胞外液量減少)や四肢に浮腫(細胞外液量増加)を認めない。]
- 腹痛・悪心・嘔吐
・下痢(甲状腺機能亢進症/バセドウ病に類似)
・便秘(甲状腺機能低下症に類似)
- 発熱・微熱(例えば、「1週間前から38℃ 台の発熱が持続し、解熱しない」)
- 皮膚の色素沈着、日焼けが周囲の人より目立つ;ACTH高値でメラニン産生が亢進。顔、口腔粘膜と四肢[膝や肘関節伸側]・体幹部[腰、脇]の皮膚に色素沈着(甲状腺機能亢進症/バセドウ病に類似)
アジソン病の爪:黒い線が複数の手足の爪に現れます。皮膚の色素沈着より早期に気付かれやすい。老化現象・メラニン色素の沈着と鑑別要
口腔粘膜の色素沈着はポイツ・ジェガーズ(Peutz-Jeghers)症候群と鑑別
続発性(2次性)副腎皮質機能低下症では逆にACTH分泌不全により皮膚は白くなる。
- 脱毛(甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症に類似)
- 精神症状(無気力、不安、うつ[表情に乏しく、診察時も無関心な様子で言葉数が少ない])(甲状腺機能低下症に類似)
- 関節痛[バセドウ病関節症)肥大型骨関節症)、抗甲状腺薬の副作用の関節痛,橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群の多発性関節炎に類似]
- 高カルシウム血症(副腎皮質機能低下症の6%)(Adrenal insufficiency. Lancet 361: 1881-1893, 2003) 。グルココルチコイド不足による消化管でのカルシウム吸収の亢進や腎でのカルシウム排泄の低下が関与するとされます。[Addisonʼs disease - clinical studies.A report of 108 cases. Acta Endocrinol (Copenh) 76:127-141,1974](甲状腺機能亢進症/バセドウ病、原発性副甲状腺機能亢進症に類似)。
などで、甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症に極めて良く似ています。上記症状があり、採血で甲状腺機能が正常の場合、副腎皮質機能低下症を疑う必要があります。
長期にステロイドを使用した後、副腎皮質機能低下症おこす場合、医原性クッシング症候群によるクッシング徴候に、上記症状がプラスされます。
副腎皮質機能低下症の原因・分類として
- 原発性副腎皮質機能低下症
自己免疫性副腎皮質炎・アジソン病:副腎皮質に対する自己免疫
- 副腎結核(胸部X線で胸膜肥厚と肺野の石灰化病変、CT・MRIなどで副腎の腫大~萎縮・石灰化)、真菌、後天性免疫不全症候群(AIDS)による副腎皮質障害
- 続発性(2次性)副腎皮質機能低下症
ACTH単独欠損症:中高年男性に多い。下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の欠損
視床下部・下垂体の疾患(下垂体腺種や頭蓋咽頭腫など)
外因性ステロイドによる副腎廃用萎縮、ACTH分泌抑制
(参考 下垂体前葉機能低下症 )
原発性副腎皮質機能低下症では、アルドステロン合成障害により、高カリウム血症を認めますが、続発性(2次性)副腎皮質機能低下症ではコルチゾールのみの障害なので高カリウム血症になりません。
副腎皮質機能低下症を疑う検査所見として、
- 低血糖(甲状腺機能低下症に類似)
- 低ナトリウム血症(甲状腺機能低下症に類似)・高カリウム血症
- 白血球数減少・好中球減少・好酸球(アレルギーの白血球)増加、軽度の貧血
- 心電図は低電圧、PR間隔とQT間隔の延長を示すことがある(甲状腺機能低下症に類似)
副腎皮質機能低下症において低ナトリウム血症をおこす機序は、
- コルチゾール、アルドステロン合成・分泌障害
- 循環血液量減少に対する代償性の抗利尿ホルモン分泌亢進
抗副腎皮質抗体(保険適応外)
ステロイド合成酵素に対する自己抗体。自己免疫性の副腎皮質機能低下症(アジソン病)で検出。(※保険適応外)
副腎皮質機能低下症の診断は、
- 迅速ACTH負荷試験(まず第一に行う負荷試験);原発性副腎皮質機能低下症だけなく、続発性(2次性)副腎皮質機能低下症でも2次的に副腎皮質が萎縮しているためコルチゾール分泌は低反応
60分後の血清コルチゾール18 μg/dL 以上を正常値にすると、続発性(2次性)副腎皮質機能低下症の過半数は低反応
30分後の血清コルチゾール20 μg/dL 以上を正常値にすると、続発性(2次性)副腎皮質機能低下症のほとんどは低反応
(第113回日本内科学会 P84 続発性副腎不全診断の問題点)
- ACTH分泌能の評価[原発性副腎皮質機能低下症と続発性(2次性)副腎皮質機能低下症の鑑別]①CRH(1μg)負荷試験;
原発性副腎機能低下症ではACTH高値(30 pgmL 以上)・コルチゾール低反応ないし無反応(15 μg/dL 以下)続発性(2次性)副腎皮質機能低下症ではACTHまたはコルチゾールは低反応ないし無反応※ピーク値が前値の1.5倍以上で反応ありとみなす視床下部性副腎皮質機能低下症では障害後1年以内ならACTH前値は低いが過大反応の場合が多い。長期にわたるとCRHの連続投与で正常反応を示す
②インスリン低血糖試験;低血糖ストレスが視床下部からのCRH分泌を増加させるCRH負荷試験でコルチゾール頂値 18 μg/dL 以上の場合に行う。コルチゾール頂値 20 μg/dL 以下なら視床下部性
※ACTH: 下垂体から分泌される副腎皮質刺激ホルモン
[J Clin Endocrinol Metab. 1984 Jun;58(6):1064-7.][Klin Wochenschr. 1982 Dec 15;60(24):1485-91.]
副腎皮質機能低下症の治療適応
顕在性(はっきりとした)副腎皮質機能低下症は、副腎皮質ホルモン剤[ヒドロコルチゾン(コートリル®)]補充が必要になります。潜在性(軽い)ものは副腎皮質ホルモン剤を使うか否か、判断が難しい場合があります。
例えば、
- 早朝の血中コルチゾールが低値でも、入院して一日のコルチゾール量を調べれば正常である
- 早朝の血中コルチゾールが低値でも、入院してACTH負荷試験をすれば、ややコルチゾール分泌のピークが遅れ、やや低値なだけで、コルチゾール総分泌量が低下しているとは言い難い
- 血中DHEA-S(デヒドロエピアンドロステロンサルフェート;コルチゾールより半減期が長く、副腎皮質の状態をより正確に反映)が正常なら、副腎皮質ホルモン剤を使用する程の副腎皮質機能低下症とは考え難い
などの場合です。
副腎皮質機能低下症の治療方法
副腎皮質機能低下症の治療は
- ヒドロコルチゾン(コートリル®)10-20mg/日を内服します。
- 肥満予防のため、成人では15 mg/日の維持量が推奨されます。
- 20mg/日以上は、薬剤性クッシング症候群を引き起こす
- 朝が多めとなるよう、朝夕に分けて2:1の割合で投与します。
- コートリル®は10mg錠しかないので、錠剤を1/2-1/4に割る、割れないような量(1/3や1/5など)は粉砕。
- ヒドロコルチゾン補充量が適切であるかどうかを判定する指標はありません。
- 原発性副腎皮質機能低下症は回復する見込みがないので、経過中に再評価する必要はありません。
- 発熱・外傷などストレスにさらされた際は急性副腎不全(副腎クリーゼ)の危険があるため、グルココルチコイドの内服量を通常の2~3倍服用します。(シックデー ルール or レスキュー使用 or ステロイドカバー)
- 麻酔を伴う大手術時には 10倍以上に増量します。[ヒドロコルチゾン(コートリル®)100-300mg/日]
治療により驚くほど症状が改善します。
副腎皮質ホルモンの効果減弱させる薬剤は、
- フェニトイン・フェノバルビタール・カルバマゼピン・リファンピシン(てんかん薬と甲状腺)
で、肝臓の薬物代謝酵素CYP3A4を誘導し、副腎皮質ホルモンの代謝分解を亢進させます。甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の効果減弱と同じ原理。ヒドロコルチゾン(コートリル®)は2倍程度に増量する必要があります。
副腎皮質ホルモンの効果増強させる薬剤は、
- エストロゲン(経口避妊薬を含む)
-
イミダゾール系抗真菌剤
-
エリスロマイシン
シックデイルール
副腎皮質機能低下症で副腎皮質ホルモン剤(コートリル®)服用中に新型コロナウイルスやインフルエンザ、急性胃腸炎など感染症にかかった場合、通常の2~3倍量に匹敵する副腎皮質ホルモンが必要になります。適切な補充がなされないと、命に係わる急性副腎不全(副腎クリーゼ)に至ります。
特に、新型コロナウイルス感染(COVID-19)では中等症患者の20%が甲状腺中毒症[無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)]を発症し、過剰な甲状腺ホルモンにより副腎皮質ホルモンの分解が亢進するため、5倍量以上の副腎皮質ホルモンが必要になる場合があります。
嘔吐などで副腎皮質ホルモン剤(コートリル®)の内服が難しい時、下痢がひどい時などは副腎皮質ホルモン点滴が必要です。
妊娠時の副腎皮質機能低下症の治療
妊娠時の副腎皮質機能低下症の治療は、
- 非妊娠時と変わりません。
- 妊娠初期の副腎皮質ホルモン増量は、口唇裂・口蓋裂などの胎児奇形をおこす危険性があるため、緊急時のみに限定します。
- 妊娠後期にヒドロコルチゾン5-10mg追加すると言う意見もありますが、必要ないと言う意見も多く、決着していません。[Clin Endocrinol (Oxf). 2013 Apr;78(4):497-502.]
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。