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甲状腺と神経内科①(パーキンソン病・パーキンソン症候群)[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院(現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。神経内科の病気(パーキンソン病・パーキンソン症候群)の診療を行っておりません。

Summary

甲状腺と神経内科。パーキンソン病はドーパミン作動性ニューロンの変性による脳内ドパミン欠乏。甲状腺機能亢進症/バセドウ病甲状腺機能低下症/橋本病とパーキンソン病は①症状が類似(甲状腺機能低下症のような仮面様顔貌・仮性認知症、うつ症状・神経症症状、便秘、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の姿勢時振戦に似た安静時振戦②合併も多く、相互増悪の原因。薬剤性パーキンソン症候群は症状が急に進行し左右差に乏しい、安静時振戦でなく甲状腺機能亢進症/バセドウ病と同じ姿勢時振戦、ドパミントランスポーターシンチグラム(ダットスキャン®)、I-123 MIBGシンチグラフィーで正常。

Keywords

甲状腺,神経内科,パーキンソン病,パーキンソン症候群,ドパミン,安静時振戦,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,甲状腺機能低下症,橋本病

甲状腺とパーキンソン病

甲状腺とパーキンソン病

視床下部-下垂体-甲状腺軸とパーキンソン病の関連

パーキンソン病は、体を動かす機能を調節する脳内のドパミンという物質の不足が原因です。ドパミンの欠乏は、ドーパミン作動性ニューロンの変性によります。

脳内のドーパミン作動系は視床下部-下垂体-甲状腺軸と相互接続されています。ドーパミンは甲状腺刺激ホルモン (TSH) を抑制→甲状腺ホルモンの合成・分泌を低下させます。よって、ドーパミンを増加させるパーキンソン病治療薬、レボドパ、ブロモクリプチンなどは視床下部-下垂体-甲状腺軸を抑制する可能性があります。

同時にドーパミンは、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)をアップレギュレートし、TRHはドーパミンの放出を刺激します。

また、RASD2、WSB1、MAPT、GIRK2、LRRK2、ニューロテンシンやNOX/DUOXなどの遺伝子はパーキンソン病と甲状腺疾患の共通するリスクです。

[J Endocrinol Invest. 2021 Jan;44(1):1-13.]

甲状腺疾患とパーキンソン病は合併率が高く、共通の症状があるため、診断の遅れと混乱の原因になります。 

視床下部-下垂体-甲状腺軸

甲状腺疾患とパーキンソン病の合併

スウェーデンの報告では、6種類の自己免疫疾患でパーキンソン病発症のリスクが高いとされます。

  1. 甲状腺機能低下症/橋本病
  2. 甲状腺機能亢進症/バセドウ病
  3. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  4. 多発性硬化症(MS)
  5. 悪性貧血
  6. リウマチ性多発筋痛症

の6つです (Neurodegener Dis. 2012;10(1-4):277-84.)。

逆にパーキンソン病患者では、甲状腺疾患、特に潜在性甲状腺機能低下症の有病率が高いとされます(Arch Gerontol Geriatr. 2001 Nov-Dec;33(3):295-300.)

特に、70歳未満の女性と70歳以上の男性パーキンソン病患者で、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症ともにリスクが高いとされます(J Parkinsons Dis. 2020 Oct 19.)。

しかし、パーキンソン病と乳がん、卵巣がん、甲状腺がんとの関連はありません[JAMA Oncol. 2015 Aug;1(5):633-40.][Parkinsonism Relat Disord. 2016 Jul;28:68-72.]。

逆に、甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症では、パーキンソン病を発症するリスクが高い[Front Endocrinol (Lausanne). 2022 May 4;13:863281.]。

甲状腺疾患とパーキンソン病の症状の異同

甲状腺とパーキンソン病の症状の異同
  1. 甲状腺機能低下症は動作・脳の活動が緩慢になり、パーキンソン病の仮面様顔貌・仮性認知症・すくみ足に類似
    ただし、パーキンソン病では、皮質下認知症(大脳皮質以外の変性疾患に伴う認知症)も生じる
  2. 甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症/バセドウ病のうつ症状・神経症症状はパーキンソン病でも認める
  3. パーキンソン病の手足のふるえは、
    ①じっとしていても震える安静時振戦
    ②re-emergent tremor(手を挙上してから短時間で出現する振戦)
    です。
    ただし、症状に左右差を認めることが多い。
    一方、本態性振戦、甲状腺機能亢進症/バセドウ病に伴う振戦は、手を伸ばした時などに生じる姿勢時振戦です。
  4. REM睡眠行動異常症(睡眠中に大声・大きく手足をバタつかせる)はパーキンソン病の早期に出現。甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症/バセドウ病と異なります。

  5. パーキンソン病の自律神経障害として便秘が多く、甲状腺機能低下症と同じ
  6. パーキンソン病の歩き始めの一歩が出にくい、狭いところや方向転換で足が止まる等の「すくみ足」は、甲状腺の病気とは異なる。レボドパとドロキシドパ、床に目印をつけるなど外部刺激で改善(矛盾性運動)
    小刻み歩行(ちょこちょこ歩き)も甲状腺の病気と異なる。
パーキンソン病 前傾姿勢

(パーキンソン病 前傾姿勢)

パーキンソン病は、体の片側から症状があらわれ、左右差がある点が甲状腺の病気と異なります。また、緩やかに進行する点は甲状腺機能低下症に似ています。

甲状腺中毒症はパーキンソン病症状を増悪

甲状腺中毒症はパーキンソン病症状を増悪させます。パーキンソン病の安静時振戦・re-emergent tremor(手を挙上してから短時間で出現する振戦)に、甲状腺中毒症による姿勢時振戦が加わります。機序は不明ですが、甲状腺中毒症がパーキンソン病治療薬L-DOPA 抵抗性に関与した可能性も報告されています。(第57回 日本甲状腺学会 P1-096 Parkinson 病の合併により甲状腺機能亢進症の診断に難渋したTSH 産生腫瘍(TSHoma)の一例)[Case Rep Neurol Med. 2014;2014:489275.]

中枢性甲状腺機能低下症下垂体前葉機能低下症に伴う)は、パーキンソン病様の症状をおこす

甲状腺ホルモンは、中枢神経系の交感神経作用を増強するとされます。甲状腺ホルモンの不足が、脳内ドーパミン作用の低下をもたらす可能性は十分考えられます。[J Endocrinol Invest. 2021 Jan;44(1):1-13.]

しかし、甲状腺機能低下症で、神経内科専門医がパーキンソン病と見誤る程の典型的な症状(前方突進現象、歩行障害、首の硬直)は、普通おこりません。

報告例は、下垂体前葉機能低下症に伴う中枢性甲状腺機能低下症で、続発性(2次性)副腎皮質機能低下症成人成長ホルモン分泌不全症も合併します。3系統のホルモン低下による交感神経作用の低下が、脳内ドーパミン作用の低下→パーキンソン病様の症状をおこしたと、筆者は考えます。(第53回 日本甲状腺学会 P-138 パーキンソニズムを呈し、甲状腺ホルモン投与により改善した下垂体機能低下症の1例)

ドパミントランスポーターシンチ(ダットスキャン®)

ドパミントランスポーターシンチ(ダットスキャン®)が、

  1. シナプス前ドパミン障害があるパーキンソン症候群(パーキンソン病・進行性核上性麻痺・パーキンソニズムのある多系統萎縮症・大脳皮質基底核変性症)の早期診断
  2. シナプス前ドパミン障害がないパーキンソン症候群(薬剤性パーキンソニズム・正常圧水頭症(iNPH)・本態性振戦)との鑑別
  3. レビー小体型認知症、アルツハイマー型認知症の鑑別

に保険適応が認められています。※長崎甲状腺クリニック(大阪)では扱っていません、神経内科専門病院をお探しください。

ドパミントランスポーターシンチ(ダットスキャン®)

パーキンソン病のくすり(抗パーキンソン病薬)

パーキンソン病の第一選択薬であるレボドパ、カルビドパ、レボドパ・カルビドパ配合剤は、甲状腺ホルモン剤のチラーヂンSと同じく、酸性下での吸収が良い薬です。

しかし、

  1. 胃液の酸性度をアルカリ側に変える胃酸分泌抑制剤[ネキシウム®(エソメプラゾール)・ガスター®、ランソプラゾール、タケキャブ®など]
  2. 胃酸を中和する制酸剤[酸化マグネシウム、アルミニウム剤(アルサルミン®)等]

を併用すると、消化管からの吸収が低下し、効果が弱くなります。

ドパミンアゴニストは、

  1. 従来の麦角アルカロイド;ブロモクリプチン(パーロデル®)やガベルゴリン(カバサール®、プロラクチン産生性下垂体腺腫(プロラクチノーマ)先端巨大症(成長ホルモン産生下垂体腺腫)にも使用)はD1,D2受容体刺激作用。長期投与において心臓弁膜症があらわれることがあるので、投与前・投、定期的な心エコーや胸部X線検査を受けることが推奨される。
    [投与前に心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変がある(あった)場合は、投与禁忌]
    [投与開始後3~6ヵ月以内に、それ以降は少なくとも6~12ヵ月毎に心エコー検査を行うこと。また、十分な観察(聴診等の身体所見、胸部X線、CT等)を定期的に行うこと。]※妊活中・妊娠中に胸部X線、CTはできないでしょう。
      
  2. 非麦角アルカロイド;ペキソール系のプラミペキソール(ミラペックス®、ビ・シフロール®)はD2受容体刺激作用。心弁膜症の危険が少なく優先的に使用されるが、麦角アルカロイドより効果が劣る。レストレスレッグ(むずむず脚)症候群にも保険適応あり。眠気(突発性睡眠)、めまい・立ちくらみ・ふらつき等の起立性低血圧症状、便秘の副作用が多い。下腿浮腫(甲状腺機能低下症のよう)・姿勢制御異常・衝動制御障害(バセドウ病/甲状腺機能亢進症でも)も。

パーキンソン病と異なるパーキンソン症候群

パーキンソン病と症状が似ているが、原因が別にある病気をまとめて「パーキンソン症候群(パーキンソニズム)」と呼びます。

  1. 薬剤性パーキンソン症候群;症状が急に進行し、左右の差に乏しい点がパーキンソン病と異なります。
    ①ドパミンをブロックする睡眠薬、精神安定剤[スルピリド(ドグマチール®)]、胃薬[スルピリド(ドグマチール®)、メトクロプラミド(プリンペラン®)]など。同時に薬剤性高プロラクチン血症を起こします。
    ドンペリドン(ナウゼリン®)も脳内のドパミンをブロックする事になっていますが、脳への移行は少ないので、パーキンソン病に使用されたりします。
    リチウムによる甲状腺機能低下症と薬剤性パーキンソニズムを同時に認めた報告あり(J Clin Pharm Ther. 2014 Aug;39(4):452-4.)
      
  2. 脳血管障害性パーキンソン症候群;脳梗塞などが原因
  3. 外傷性パーキンソン症候群;脳震盪(のうしんとう)などの外傷性脳損傷
  4. 副甲状腺機能低下症低カルシウム血症による大脳基底核石灰化→可逆的パーキンソニズム(Am J Med. 1993 Apr;94(4):444-5.)

などです。

薬剤性パーキンソン症候群をおこす薬剤は、

  1. ドパミンをブロックする睡眠薬、精神安定剤[スルピリド(ドグマチール®)]、胃薬[スルピリド(ドグマチール®)、メトクロプラミド(プリンペラン®)]など。これらの薬剤のポリファーマシーでおきやすい。
    同時に薬剤性高プロラクチン血症を起こします。
  2. ドンペリドン(ナウゼリン®)も脳内のドパミンをブロックする事になっていますが、脳への移行は少ないので、パーキンソン病に使用されたりします。
  3. リチウムによる甲状腺機能低下症と薬剤性パーキンソニズムを同時に認めた報告あり(J Clin Pharm Ther. 2014 Aug;39(4):452-4.)

薬剤性パーキンソン症候群は

  1. 無動などの運動障害で発症する
  2. 症状が急に進行し、左右の差に乏しい
  3. 安静時振戦でなく、甲状腺機能亢進症/バセドウ病と同じ姿勢時振戦である
  4. ドパミントランスポーターシンチグラム(ダットスキャン®)、I-123 MIBGシンチグラフィーで正常
  5. パーキンソン病のくすり(抗パーキンソン病薬)は有効でない。原因薬剤の減量や変更を優先する。

点がパーキンソン病と異なります。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療      長崎甲状腺クリニック(大阪)

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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