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甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝性      [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:最新・専門の検査/治療/知見②甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)でしかできない検査/治療・当院ホームページでしか得られない情報が満載です。これらは、院長が最新の海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  糖尿病編 をクリックください

長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君 crush yellow

甲状腺編 では収録しきれない最新・専門の検査/治療です。

Summary

甲状腺癌と遺伝性/遺伝子変異、甲状腺癌の遺伝子異常を標的とする分子標的治療、遺伝性大腸ポリープ/大腸がんと甲状腺癌を解説します。甲状腺乳頭癌甲状腺髄様癌の遺伝性、篩(ふるい・モルラ)型甲状腺乳頭癌レンビマ・ネクサバールも説明します。

甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝性

遺伝性甲状腺腫瘍

甲状腺乳頭癌

甲状腺癌の85%を占める甲状腺乳頭癌の5-8%は遺伝性であり、多くは常染色体優性遺伝と考えられています。第一度近親者に3名以上見つかれば家族性甲状腺乳頭癌とほぼ確定されます。血縁者内でBRAFという遺伝子の同じ個所に変異が証明できます。

BRAFの変異にも多くの種類がありますが、その遺伝子を構成する600番目のアミノ酸の情報が、本来はバリンのはずが、グルタミン酸に変わるV600Eという変異が、45%(29-69%と報告は様々)の甲状腺乳頭癌に見付かっています。

V600E変異のある甲状腺乳頭癌は、変異がない癌と比較して、甲状腺外に浸潤し易く、ヨードが取り込みにくいため放射性ヨード治療が有効でなく、悪性度が高いと考えられます。

近親者が甲状腺乳頭癌をされている方は、甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
また、御自分が甲状腺乳頭癌なら、血縁者の甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。

放射性ヨード療法抵抗性の局所進行性・転移性甲状腺分化癌に、BRAF阻害/血管新生阻害作用を持つソラフェニブの保険適応が認められています[長崎甲状腺クリニック(大阪)では扱っていません]。(甲状腺癌の遺伝子異常を標的とする分子標的治療)

TERT遺伝子プロモーター領域の変異

BRAF変異にTERT遺伝子プロモーター領域の変異を伴う甲状腺乳頭癌は、BRAF変異のみの甲状腺乳頭癌と比べ、年齢・腫瘍サイズ・甲状腺外浸潤・遠隔転移が多く、再発率も高いとされます(J Clin Oncol 32:2718-2726, 2014)。

TERT = Telomerase reverse transcriptase (テロメラーゼ逆転写酵素)

家族性非髄様癌性甲状腺癌

家族性非髄様癌性甲状腺癌は、おもに甲状腺乳頭癌で前述のことです。遺伝形式は、不完全浸透の常染色体優性遺伝(要するに50%の確率で遺伝する)です。

甲状腺髄様癌と多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)

多発性内分泌腺腫症(MEN)は、複数の内分泌臓器に良悪性の腫瘤が生じる常染色体優性遺伝性疾患です。3-4万人に1人で、MEN1型と2型に分かれ、原因遺伝子は異なります。

多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)とは

甲状腺C細胞(甲状腺傍濾胞細胞)

甲状腺内に、ごくわずか存在するC細胞(甲状腺傍濾胞細胞)はカルシトニンというホルモンを分泌します。これは血液中のカルシウム濃度を下げるホルモンです。C細胞が癌化したものが甲状腺髄様癌です。甲状腺髄様癌は約30%は遺伝性であり、約70%は非遺伝性(散発性)です。

甲状腺髄様癌の20%は、遺伝性の多発性内分泌腫瘍症2型[Multiple Endocrine Neoplasia type 2、略してMEN (メン) 2型]と呼びます。

甲状腺髄様癌の詳細は 甲状腺髄様癌 を御覧ください。

多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)の遺伝子異常

多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)は、がん遺伝子であるRET遺伝子(受容体依存性チロシンキナーゼ遺伝子)の機能獲得型変異です。RET遺伝子が常に活性化された状態になります。

多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)の遺伝子検査

多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)は常染色体優性遺伝性疾患なので、50%の確率で血縁者に患者が存在します。保険適応はありませんが、発症前遺伝子診断でMEN2変異遺伝子保有者を見つければ、定期検診により早期発見が可能になります。アメリカ甲状腺学会のガイドラインでは、MEN1で10歳前後、MEN2で幼児期の発症あるため、それ以前の遺伝子診断を推奨しています。(Revised American Thyroid Association Guidelines for the Management of Medullary Thyroid Carcinoma Thyroid. 2015 Jun 1; 25(6): 567–610. )

詳細は、 甲状腺髄様癌のRET遺伝子検査 を御覧下さい。

多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)の分類

MEN 2型は3つのタイプに分類されます。

MEN 2A(94%)

ほぼ100%に甲状腺髄様癌、68%に副腎の褐色細胞腫(その半数は両側)、13%に副甲状腺機能亢進症(軽症が多い)を発生します。(Jpn J Clin Oncol 1997;27:128-134.)

MEN 2B(5%)

ほぼ100%に甲状腺髄様癌、約50%に副腎の褐色細胞腫、ほぼ100%に舌や口唇・眼瞼・腸の粘膜下神経腫(抗S-100蛋白抗体陽性)、神経節腫、角膜神経腫、約80%にマルファン様体型[やせ型で手足が長い(過伸展)
欧米ではもっとも悪性度の高い甲状腺髄様癌ですが、日本の10年生存率92%との報告あり

MEN3

MEN2型の中で神経線維腫症(レックリングハウゼン病)を伴う

甲状腺髄様癌

甲状腺髄様癌は必発で、ほとんど20歳前に発症しているが、症状が乏しいため、40歳台で見つかる事が多い。

米国甲状腺学会の診療指針では、RET遺伝子コドン634変異(p.C634R)の甲状腺髄様癌は、5歳以下の予防的甲状腺全摘が進められています。 (Revised American Thyroid Association Guidelines for the Management of Medullary Thyroid Carcinoma Thyroid. 2015 Jun 1; 25(6): 567–610. )

日本で予防的甲状腺全摘術が行われたことはなく、

  1. 実際に甲状腺髄様癌が見つかった後か
  2. 甲状腺髄様癌が見つからなくても血清カルシトニンが高値またはグルコン酸カルシウム負荷試験でカルシトニンが上昇する場合(超音波検査で見つからない微小な甲状腺髄様癌か、前癌段階の甲状腺C細胞過形成)

の時だけです。

甲状腺髄様癌の中で3番目に予後の悪い多発性内分泌腺腫症2a 型(MEN2a)の10年生存率は90%以上で、肺転移があり、両側副腎・甲状腺全摘出術施行後12年経ち、CEAカルシトニン高値が続いても生存している症例が報告されています。(第56回 日本甲状腺学会 P2-093 甲状腺全摘後CEA、カルシトニンの高値が持続するも長期生存している多発性内分泌腫瘍2a 型の一例)

原発性副甲状腺機能亢進症

MEN1と同じく軽症が多いが、MEN1と異なり、1腺のみの腫大がほとんど。手術も腫大腺の摘出のみで、MEN1の様な予防的な4腺摘出は行ないません。甲状腺髄様癌で甲状腺全摘出する際も、予防的副甲状腺摘出は行いません。

褐色細胞腫

褐色細胞腫は、約66%が両側性(約20%は片側性であっても時間をおいて発生してくる異時性)です。非遺伝性褐色細胞腫と異なり悪性・異所性は少ない。

褐色細胞腫合併のときは、甲状腺手術の前に褐色細胞腫を摘除します。 甲状腺手術がストレスとなり、致死的な高血圧クリ-ゼ褐色細胞腫クリ-ゼ)おこす危険があるからです。

粘膜神経腫

MEN 2Bでは、多発性の粘膜神経腫を眼瞼・口唇・舌に認めます。

(右)MEN 2B 口唇・舌の粘膜下神経腫腸

頚部神経腫

頚部神経腫は迷走神経・交感神経幹・腕神経叢から発生し、紡錘形で血流を認めないのが特徴です。多発性内分泌腺腫症2B型(MEN2B)の可能性あり、甲状腺髄様癌、副腎の褐色細胞腫がないか調べる必要あります。

(→)ヘタのような頚部神経腫の紡錘部(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

頚部神経鞘腫(schwannoma)

頚部神経鞘腫(schwannoma)は硬く、血流に乏しい腫瘤で、発生母体の神経(写真では迷走神経)に連続しています。(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

頚部神経鞘腫(schwannoma)は、穿刺細胞診では、紡錘形細胞よりさらに細長いうなぎ様核(eel-like nuclei)を持つ細胞です。

家族性髄様癌(FMTC)

甲状腺髄様癌の10%は、遺伝性に甲状腺髄様癌のみができる家系で、MEN 2型とは区別して、家族性髄様癌(Familial Medullary Thyroid Carcinoma:FMTC)と呼びます。

MEN 2型あるいは家族性髄様癌(FMTC)は、常染色体優性遺伝です。親から子供へ男女関係なく遺伝し、遺伝する確率は1/2です。逆に遺伝しない確率も1/2ですので、血縁者全員が遺伝するわけではありません。ほぼ100%にRET遺伝子変異を認めます。

甲状腺乳頭癌と多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)

多発性内分泌腺腫症(MEN)とは

多発性内分泌腺腫症(MEN)は、複数の内分泌臓器に良悪性の腫瘤が生じる常染色体優性遺伝性疾患です。3-4万人に1人(見逃されている例が多いと思われます。)で、MEN1型と2型に分かれ、原因遺伝子は異なります。

甲状腺乳頭癌と多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)

内分泌の専門家でも知らない方が多いのですが、MEN1型(教科書的には原発性副甲状腺機能亢進症、膵消化管内分泌腫瘍、下垂体腺腫を主徴)でも20%に副腎腫瘍、2%に甲状腺癌を合併します。

多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の遺伝子変異

腫瘍抑制遺伝子MEN1遺伝子の機能喪失型変異が90%に認められます。MEN1遺伝子はmeninと呼ばれる蛋白をコードしていて、転写調節、ゲノム安定性、細胞増殖など多くの機能に関与します。

多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の遺伝子検査

多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)は常染色体優性遺伝性疾患なので、50%の確率で血縁者に患者が存在します。保険適応はありませんが、発症前遺伝子診断でMEN1変異遺伝子保有者を見つければ、定期検診により早期発見が可能になります。アメリカ甲状腺学会のガイドラインでは、MEN1で10歳前後、MEN2で幼児期の発症あるため、それ以前の遺伝子診断を推奨しています。(Revised American Thyroid Association Guidelines for the Management of Medullary Thyroid Carcinoma Thyroid. 2015 Jun 1; 25(6): 567–610. )

多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の病変

多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の各病変は異なる時期に発症し、生涯浸透率も異なるため、診断に時間が掛かる事あります。

病変 浸透率 特徴
原発性副甲状腺機能亢進症95% 若年発症(40歳までにほぼ全例が発症)
多腺性(過形成)
軽症(18%は副甲状腺ホルモンか血清Ca濃度が正常)
骨密度低下は非遺伝性より高度

膵・消化管内分泌腫瘍
ガストリノーマ(40%)
非機能性腫瘍(30%)
インスリノーマ(10%)
グルカゴノーマ(まれ)
ソマトスタチノーマ(まれ)
VIP産生腫瘍(まれ)

60% 膵消化管神経内分泌腫瘍(NET)の6-10%
75%が2個以上の腫瘍
一部悪性
ガストリノーマは胃十二指腸にも発生
インスリノーマの25%は成人前に診断
非機能性腫瘍が2cmを超えると肝転移の危険性
機能性腫瘍は手術適応
遠隔転移・切除不能時は
①分子標的薬(エベロリムス、スニチニブ)
②ストレプトゾシン
③オクトレオチド徐放剤(ガストリノーマ、VIP産生腫瘍)
下垂体腫瘍
プロラクチン産生下垂体腺腫(20%)
非機能性下垂体腺腫(15%)
成長ホルモン産生下垂体腺腫(5%)
ACTH産生下垂体腺腫(まれ)
TSH産生下垂体腺腫(まれ)
50%逆に、プロラクチン産生下垂体腺腫
成長ホルモン産生下垂体腺腫(先端巨大症)
MEN1型は1%未満に過ぎません。
臨床像は、散発性の機能性・非機能性下垂体腺腫との違いに乏しい。
副腎皮質腫瘍 20%ほとんどが非機能性。手術を要する大きさになる事少ない。
胸腺・気管支神経内分泌腫瘍
(NET;neuroendocrine tumor)
7%ほぼ全例悪性。副甲状腺手術時に予防的胸腺摘出する事もある。
皮膚腫瘍 40%顔面血管線維腫、皮膚脂肪腫
甲状腺乳頭癌 2%
  1. 若年性原発性副甲状腺機能亢進症はMEN1型の可能性高いです。
  2. その他、内臓脂肪腫もあります。

Carney症候群

家族性のCarney症候群は再発性の心臓粘液腫に,皮膚粘液腫,粘液様乳線維腺腫,多発性内分泌腫瘍(クッシング症候群成長ホルモン・プロラクチン産生下垂体腺腫,精巣腫瘍,良性濾胞腺腫または甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌,卵巣嚢腫),骨軟骨粘液腫を伴います。

早老症、ウェルナー症候群で甲状腺癌糖尿病

ウェルナー症候群は日本人に多い常染色体劣性遺伝の早老症です。DNA修復遺伝子のWRNの異常で起こります。思春期以降、

ウェルナー症候群
  1. 白髪/脱毛、白内障、皮膚の萎縮や角化・潰瘍(足部の皮膚潰瘍は難治性)、四肢の筋・軟部組織の萎縮
  2. 甲状腺癌
  3. 糖尿病(高インスリン血症を伴う耐糖能障害)
  4. 脂質代謝異常(高トリグリセライド血症、高LDLコレステロール血症)
  5. 動脈硬化(狭心症、心筋梗塞)
  6. 性腺機能低下症
  7. 骨粗鬆症
  8. 悪性腫瘍:甲状腺癌以外に悪性黒色腫、骨肉腫、造血系腫瘍、肺癌(近年増加)

など老化徴候が出現します。

平均死亡年齢が50歳代で、60歳を超えて普通に生活する患者も増えています。

甲状腺癌の遺伝子変異

甲状腺癌の細胞増殖経路

甲状腺癌の遺伝子変異

甲状腺癌は、病型により特徴的な遺伝子変異があります(図を参照)。

  1. 甲状腺乳頭癌は、細胞増殖にかかわるMAPキナーゼ系の中のRET/RAS/RAF遺伝子(RET遺伝子は変異でなく再配列)
  2. 甲状腺濾胞癌は、細胞増殖にかかわるMAPキナーゼ系の中のRAS遺伝子、ステロイド核内ホルモン受容体のPPARガンマ遺伝子再配列
    甲状腺濾胞癌のRAS遺伝子変異は55%、良性濾胞腺腫でも23%に認められます。(第54回 日本甲状腺学会 P151 濾胞性腫瘍におけるRAS遺伝子変異)
  3. 甲状腺髄様癌は、細胞増殖にかかわるMAPキナーゼ系の中のRET遺伝子
  4. 甲状腺低分化癌甲状腺未分化癌では、それらに加え、WNT-ベータカテニンのCTNNB1(カドヘリン関連蛋白ベータ1)変異
    カドヘリンは細胞表面の糖タンパク質で、細胞接着をつかさどる

などです。これらの遺伝子から甲状腺癌/甲状腺癌の家系性を診断しようと言う試みもあり、甲状腺髄様癌などは確立されています。

甲状腺癌の遺伝子異常により影響受けるシグナル伝達経路を標的とする分子標的治療

甲状腺癌の遺伝子異常により影響受けるシグナル伝達経路を標的とする分子標的治療が開始されています[長崎甲状腺クリニック(大阪)での取り扱いはありません]。

  1. ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)が、 「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に
  2. レンビマカプセル®(一般名:レンバチニブ)が「根治切除不能の甲状腺癌」治療薬として

保険適応が認められました。ネクサバール®が分化型甲状腺癌(乳頭癌濾胞癌)にしか適応がないのに対して、レンビマカプセル®は甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌を含むすべての甲状腺癌に適応があります。

どちらも分化型甲状腺癌(乳頭癌濾胞癌)に使用する場合、甲状腺全摘後

  1. 131-I アブレーションが有効でない甲状腺分化癌
  2. 131-I 総投与量が600mCiを超えても制御できない甲状腺分化癌

になります。効果は、ネクサバール®については、無増悪生存期間を約150日延長させるが、全生存期間は延長しないDECISION試験の報告があります[Lancet 384(9940):319-28,2014]。しかも、最後の砦のくすりなので、重篤な副作用の結果、副作用で苦しむ日々を150日延長するだけなのかもしれません。実際に使用された先生に聞いたところ、「とんでもない薬だ!」との感想でした。

分子標的薬の作用機序

ネクサバール錠®は、分化型甲状腺癌細胞の増殖に働くMAPキナーゼ経路を直接阻害、血管新生に働くVEGF受容体、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)活性も阻害

レンビマカプセル®は、甲状腺癌の血管新生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、MAPキナーゼ経路を阻害。

分子標的薬の副作用

ネクサバール錠®には,従来の抗癌剤にはほとんどみられない副作用が高頻度に発現します。

  1. 中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群,皮膚有棘細胞癌(手足症候群は100%出る)
  2. 消化管出血/消化管穿孔/消化管潰瘍、気道出血、脳出血
  3. 劇症肝炎
  4. 間質性肺炎
  5. 高血圧クリーゼ
  6. 可逆性後白質脳症
  7. 心筋梗塞、うっ血性心不全
  8. 出血性腸炎、虚血性腸炎
  9. 白血球減少
  10. 膵炎
  11. 腎不全、ネフローゼ症候群
  12. 低ナトリウム血症低カルシウム血症
  13. ショック,アナフィラキシー
  14. 横紋筋融解症

と、全身臓器の副作用になります。

レンビマカプセル®の副作用も同じようなものですが、ネクサバール錠®より血管新生阻害作用が強いため、高血圧・ネフローゼ症候群・出血・血栓症が多いとされます。

分子標的薬の問題点

甲状腺学会でも、全科がかかわるような副作用に「がん専門医でない甲状腺専門医が対応できるのか?」との意見が相次ぎました。確かに、これほど重篤な副作用のオンパレードでは甲状腺専門病院・クリニックでの対応は不可能と思えます。甲状腺専門医がいて、かつ全科そろった大学病院クラスでなければ使用は困難でしょう。

遺伝性大腸ポリープ/大腸がんと甲状腺癌

遺伝性に大腸ポリープ/大腸がんが多発する病気[家族性大腸腺腫症、ガードナー症候群、コーデン(Cowden)病]と甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の関連が知られます。

近親者・御自分が大腸ポリープ/大腸がんの方は、甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
また、近親者・御自分が甲状腺癌なら、大腸検査が必要です。

  1. 家族性大腸腺腫症:常染色体優性遺伝による癌抑制遺伝子APC(adenomatous polyposis coli)変異で若年者で大腸癌に。甲状腺、子宮、卵巣でもAPC遺伝子が存在します。
  2. ガードナー(Gardner)症候群:常染色体優性遺伝で骨腫と軟部腫瘍を併発、40歳までに100%癌化
  3. 遺伝性非ポリポーシス大腸がん(リンチ症候群)は全大腸がんの数パーセントで、ミスマッチ修復遺伝子異常です。甲状腺癌との因果関係は現在のところありません。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌(cribriform-morular variant)

家族性大腸腺腫症(FAP)、ガードナー症候群に関連する甲状腺乳頭癌篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌です。もちろん、散発性のFAP非関連癌も存在します。篩型乳頭癌はほとんど30歳以下の女性(男女比≒1:10)に発症し,常染色体優性遺伝形式を示しません。(APC遺伝子異常による大腸腺腫症は常染色体優性遺伝ですが)

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は、FAP遺伝子異常により、腺腫様甲状腺腫濾胞性腫瘍のような多結節病変を形成します。通常の甲状腺乳頭癌とは異なり、甲状腺髄様癌に似た紡錘型細胞が特徴で、紡錘型細胞が篩(ふるい)・モルラ(渦巻状の小結節)構造を形成します(papillary carcinoma, cribriform-morular variant)。

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は、甲状腺乳頭癌高細胞型と同じく、悪性度が高い点が、通常型甲状腺乳頭癌と異なります。(写真:隈病院 第9,10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

モルラ型甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)像

モルラ型甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)像①

甲状腺乳頭癌モルラ型 超音波(エコー)像

モルラ型甲状腺乳頭癌 超音波(エコー)像②

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織[篩(ふるい)型構造]

モルラ型甲状腺乳頭癌
篩(ふるい)型構造:濾胞の内腔にコロイドがない;弱拡大

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織モルラ(高細胞)

モルラ型甲状腺乳頭癌:高細胞

甲状腺乳頭癌モルラ型 病理組織モルラ(渦巻状構造)

モルラ型甲状腺乳頭癌:モルラ(渦巻状の小結節)構造

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の細胞診

篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌の細胞診は、

  1. 高細胞・多発空胞・硝子球・peculiar nuclear clearing[充実性領域の細胞を主体に核が明るく抜ける像]など特徴的
  2. あるいは結合性に富み重積性を示す紡錘形細胞集塊のこともあり[甲状腺髄様癌胸腺様分化を伴う紡錘形細胞腫瘍(SETTLE)と鑑別]

通常の甲状腺乳頭癌のようなすりガラス状の核はありません。

甲状腺乳頭癌モルラ型 細胞診

通常型甲状腺乳頭癌と異なり、サイログロブリン陰性で、乳癌と同じくエストロゲン受容体・プロゲストロン受容体(ER/PgR)を持ち、免疫染色で区別できます。通常型甲状腺乳頭癌と同じくTTF-1は陽性です。

また、通常型甲状腺乳頭癌では核のみβカテニン染色で染まりますが、篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌は細胞質も染まります。
※β-カテニンはAPC蛋白の下流の物質

モルラ型甲状腺乳頭癌:多発空胞

モルラ型甲状腺乳頭癌:硝子球

モルラ型甲状腺乳頭癌:peculiar nuclear clearing

コーデン(Cowden)症候群

コーデン(Cowden)症候群

コーデン(Cowden)症候群:常染色体優性遺伝でPTEN遺伝子変異による過誤腫

  1. 大腸ポリープ
  2. 顔面多発丘疹、四肢の角化、多発性毛根腫、口腔内乳頭腫症
  3. 甲状腺良性疾患70%(腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫)・甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)3-10%
  4. 副甲状腺腫(稀)
  5. 乳癌乳癌25~50%
  6. 子宮内膜癌5~10%

(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

更に、甲状腺微小乳頭癌の合併を認めた10歳の男児症例も報告されています。(第56回 日本甲状腺学会 O2-6 PTEN 遺伝子に異常を認めたCowden 症候群に対して甲状腺全摘を施行した小児症例)

ポイツ・ジェガーズ症候群

小宇宙2

ポイツ・ジェガーズ症候群は、癌抑制遺伝子STK11の機能喪失型変異で、

  1. 口唇・眼瞼・頬・四肢末端皮膚の色素沈着で、幼少期より出現し、成人で自然消失
  2. 小腸ポリポーシス(過誤腫ポリープ)(慢性的な腸出血、再燃性腸閉塞・腸重積)
  3. 消化器癌が最多(60%)
    女性は乳癌(40-50%)、性索腫瘍、卵巣癌、子宮頸部悪性腺腫
    男性は石灰型精巣セルトリ細胞種(エストロゲン分泌し、女性化乳房)を合併。

「胃癌および甲状腺癌を合併したpeutz-jeghers症候群の1剖検例」(第93 回日本病理学会総会)
(第55回 日本甲状腺学会 P2-04-01 Peutz-Jegers 型大腸ポリープおよび直腸癌を重複した甲状腺癌の一症例)
などの報告がありますが、甲状腺との遺伝子的な関係は証明されていません。

「栄養状態並びに甲状腺機能を16年間観察したPeutz-Jeghers症候群の1例」(日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76 (2015)  No. 5  p. 1053-1058):ポリープの再発に伴い低栄養,サルコペニア,低T3低T4症候群をきたし、ポリープ摘出術で改善する病態を繰り返すそうです。

分子標的薬アービタックス®(セツキシマブ)

分子標的薬アービタックス®(セツキシマブ)は、上皮成長因子受容体(EGFR)を阻害し、癌細胞の増殖を抑えます。大腸がん・頭頸部がんが保険適応ですが、EGFR受容体陽性の甲状腺未分化癌副甲状腺癌にも有効との報告が出ています。

家族性腺腫様甲状腺腫

腺腫様結節 超音波(エコー)画像

腺腫様結節 超音波(エコー)画像

DICER1遺伝子変異

DICER1は、ミトコンドリアRNAプロセッシングに必要なRNAse(RNA分解酵素, RNase IIIエンドリボヌクレアーゼ)です。DICER1は、甲状腺において甲状腺細胞分化・濾胞内コロイドの維持に関与するとされます。(Endocrinology.2015;156(4):1590-1601)

DICER1遺伝子変異は、甲状腺,肺,腎,卵巣などの腫瘍、家族性腺腫様甲状腺腫と関連するとされます(JAMA.2011;305(1):68-77)。日本でも、DICER1遺伝子変異による甲状腺機能正常家族性腺腫様甲状腺腫の家系が初めて報告されました。(第58回 日本甲状腺学会 O-2-5 DICER1遺伝子に胚細胞変異を認めた家族性腺腫様甲状腺腫の一家系)

Keap1遺伝子変異

KEAP1遺伝子変異が同定された非中毒性多結節性甲状腺腫の家系も、日本で報告されています(日本外科学会雑誌 巻:114 ページ:698)。センサー分子KEAP1は、毒性化学物質を感知して転写因子Nrf2を活性化.活性化したNrf2は生体防御遺伝子群の発現誘導を介して毒性化学物質を解毒・排出します。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 地下鉄 谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

診療時間電話番号や地図はこちら

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