検索

甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝性      [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 内分泌の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編  内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等  糖尿病編 をクリックください

長崎甲状腺クリニック(大阪) ゆるキャラ 甲Joう君 crush yellow

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

Summary

甲状腺乳頭癌の5-8%は遺伝性、BRAF遺伝子変異(特にV600E変異で、浸潤性・放射性ヨード治療抵抗性)が多い。多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)、Carney症候群、ウェルナー症候群(早老症)の事もある。甲状腺髄様癌もRET遺伝子変異で常染色体優性遺伝性があり(30%)、散在性(FMTC)の事、多発性内分泌腺腫症2型(MEN2)で褐色細胞腫、副甲状腺機能亢進症を伴う事も。甲状腺癌は組織別の遺伝子変異があり、それを標的とする分子標的治薬(レンビマ・ネクサバール)がある。家族性腺腫様甲状腺腫は、遺伝性のものや遺伝性甲状腺ホルモン合成障害によるものがある。

Keywords

甲状腺癌,遺伝,遺伝子,甲状腺乳頭癌,BRAF,多発性内分泌腺腫症,甲状腺髄様癌,RET遺伝子,家族性腺腫様甲状腺腫,遺伝子変異

甲状腺癌/甲状腺腫瘍と遺伝性

遺伝性甲状腺腫瘍

甲状腺乳頭癌

甲状腺乳頭癌に特異的なBRAF遺伝子変異

甲状腺癌の85%を占める甲状腺乳頭癌の5-8%は遺伝性であり、多くは常染色体優性遺伝と考えられています。第一度近親者に3名以上見つかれば家族性甲状腺乳頭癌とほぼ確定されます。血縁者内でBRAFという遺伝子の同じ個所に変異が証明できます。

BRAFの遺伝子変異は、日本人の家族性/非家族性すべて含めた甲状腺乳頭癌の65-85%に認められます。BRAF遺伝子の変異にも多くの種類があります。BRAF遺伝子を構成する600番目のアミノ酸の情報が、本来のバリンからグルタミン酸に変わるV600Eという変異が、45%(29-69%と報告は様々)の甲状腺乳頭癌に見つかっています。

V600E変異のある甲状腺乳頭癌は、変異がない癌と比較して、甲状腺外に浸潤し易く、ヨードが取り込みにくいため放射性ヨード治療が有効でなく、悪性度が高いと考えられていました。ところが、最近の報告では、日本人のV600E変異は、それ以外のBRAF遺伝子変異と比べ悪性度、予後は全く変わらないとされます(Endocr J. 2009;56(1):89-97.)。

近親者が甲状腺乳頭癌をされている方は、甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。
また、御自分が甲状腺乳頭癌なら、血縁者の甲状腺超音波(エコー)検査が必要です。

放射性ヨード療法抵抗性の局所進行性・転移性甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)に、BRAF阻害/血管新生阻害作用を持つソラフェニブの保険適応が認められています[長崎甲状腺クリニック(大阪)では扱っていません]。(甲状腺癌の遺伝子異常を標的とする分子標的治療)

TERT遺伝子プロモーター領域の変異

BRAF変異にTERT遺伝子プロモーター領域の変異を伴う甲状腺乳頭癌は、BRAF変異のみの甲状腺乳頭癌と比べ、年齢・腫瘍サイズ・甲状腺外浸潤・遠隔転移が多く、再発率も高いとされます(J Clin Oncol 32:2718-2726, 2014)。

TERT = Telomerase reverse transcriptase (テロメラーゼ逆転写酵素)、要するに染色体末端に結合し、染色体を伸ばす(テロメア繰り返し配列を付加する)酵素で、細胞の寿命を延ばす・細胞増殖を可能にする。

甲状腺乳頭癌でBRAF変異を伴わないTERT遺伝子プロモーター単独変異は非常に稀で、甲状腺乳頭癌の10–15%にBRAF変異とTERT遺伝子プロモーター変異の両方を認めます。

また、TERT遺伝子プロモーター変異は、年齢と相関し、高齢者ほど陽性率が高く、高齢者ほど甲状腺乳頭癌の悪性度が高いのと合致します。(J Clin Endocrinol Metab. 2013 Sep;98(9):E1562-6.)

TERT遺伝子プロモーター領域の変異は、1個の甲状腺乳頭癌内の全ての細胞に認められる訳ではなく、40–60%の甲状腺乳頭癌細胞にしか存在しないそうです。

家族性非髄様癌性甲状腺癌(FNMTC)

家族性非髄様癌性甲状腺癌(FNMTC)は、おもに甲状腺乳頭癌で前述のことです(甲状腺濾胞癌もありますが)。遺伝形式は、不完全浸透の常染色体優性遺伝(要するに50%の確率で遺伝する)です。

患者本人と、第一度近親者(両親、兄弟姉妹、子供)に2名以上の非髄様性甲状腺がん甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)患者が存在し、かつ、明らかな症候群(表1の遺伝性甲状腺腫瘍)を伴わないものです。3名以上で95%以上、2名以上で50%遺伝性があります。

家族性非髄様癌性甲状腺癌(FNMTC)の特徴は、

  1. 非遺伝性の甲状腺分化癌甲状腺乳頭癌濾胞癌)と比べ、悪性度は高いと言う意見と、同じと言う意見がある
  2. 甲状腺内に多発するため、残存甲状腺・頸部のリンパ節など局所再発率が高くなる。広範な甲状腺切除とリンパ節郭清が必要。

BRAF遺伝子変異で甲状腺乳頭癌を診断する試み

甲状腺癌の遺伝子異常

BRAF遺伝子変異で甲状腺乳頭癌を診断する試みがなされています。

表のごとく、甲状腺乳頭癌由来の甲状腺低分化癌を除けば(甲状腺乳頭癌の超悪性型と考えれば甲状腺乳頭癌の一種)、BRAF遺伝子変異は甲状腺乳頭癌以外ではありえません(特異度100%)。

BRAF遺伝子変異が見つかれば、甲状腺乳頭癌の確定診断できるため、実用化されれば非常に便利です。

例えば、5-6回目の細胞診でやっと診断できる甲状腺乳頭癌、いくら細胞診しても診断できない甲状腺乳頭癌は現実に存在します。このような症例には有用です。

問題は、費用でしょう。明らかに高額な値段になります。全ての甲状腺腫瘍に保険適応すれば日本の医療財政は破綻します(高額な免疫チェックポイント阻害薬で既に破綻していますが)。明らかに甲状腺乳頭癌が疑われるのに、3回以上細胞診しても診断付かない症例に限定すべきと筆者は考えます。

甲状腺髄様癌甲状腺乳頭癌と多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)、2型(MEN2)

家族性髄様癌(FMTC)

甲状腺髄様癌の10%は、遺伝性に甲状腺髄様癌のみができる家系で、MEN 2型とは区別して、家族性髄様癌(Familial Medullary Thyroid Carcinoma:FMTC)と呼びます。

MEN 2型あるいは家族性髄様癌(FMTC)は、常染色体優性遺伝です。親から子供へ男女関係なく遺伝し、遺伝する確率は1/2です。逆に遺伝しない確率も1/2ですので、血縁者全員が遺伝するわけではありません。ほぼ100%にRET遺伝子変異を認めます。

Carney症候群

家族性のCarney症候群は再発性の心臓粘液腫に,皮膚粘液腫,粘液様乳線維腺腫,多発性内分泌腫瘍(クッシング症候群成長ホルモン・プロラクチン産生下垂体腺腫,精巣腫瘍,良性濾胞腺腫または甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌,卵巣嚢腫),骨軟骨粘液腫を伴います。

早老症、ウェルナー症候群で甲状腺癌糖尿病

ウェルナー症候群は日本人に多い常染色体劣性遺伝の早老症です。DNA修復遺伝子のWRNの異常で起こります。思春期以降、

ウェルナー症候群
  1. 白髪/脱毛、白内障、皮膚の萎縮や角化・潰瘍(足部の皮膚潰瘍は難治性)、四肢の筋・軟部組織の萎縮
  2. 甲状腺癌
  3. 糖尿病(高インスリン血症を伴う耐糖能障害)
  4. 脂質代謝異常(高トリグリセライド血症、高LDLコレステロール血症)
  5. 動脈硬化(狭心症、心筋梗塞)
  6. 性腺機能低下症
  7. 骨粗鬆症
  8. 悪性腫瘍:甲状腺癌以外に悪性黒色腫、骨肉腫、造血系腫瘍、肺癌(近年増加)

など老化徴候が出現します。

平均死亡年齢が50歳代で、60歳を超えて普通に生活する患者も増えています。

甲状腺癌の遺伝子変異

甲状腺癌の細胞増殖経路

甲状腺癌の遺伝子異常

甲状腺癌の遺伝子変異

甲状腺癌は、病型により特徴的な遺伝子変異があります(図を参照)。

  1. 甲状腺乳頭癌は、前述のBRAF遺伝子変異の他に、細胞増殖にかかわるMAPキナーゼ系の中のRET遺伝子再配列(変異でなく再配列)やRAS遺伝子変異
     
  2. 甲状腺濾胞癌は、細胞増殖にかかわるMAPキナーゼ系の中のRAS遺伝子、ステロイド核内ホルモン受容体のPPARガンマ遺伝子再配列
    甲状腺濾胞癌のRAS遺伝子変異は55%、良性濾胞腺腫でも23%に認められます。(第54回 日本甲状腺学会 P151 濾胞性腫瘍におけるRAS遺伝子変異)
    また、甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌よりもPI3KI遺伝子変異が多いのが特徴
     
  3. 甲状腺髄様癌は、細胞増殖にかかわるMAPキナーゼ系の中のRET遺伝子変異
     
  4. 甲状腺低分化癌甲状腺未分化癌では、それらに加え、WNT-ベータカテニンのCTNNB1(カドヘリン関連蛋白ベータ1)変異
    カドヘリンは細胞表面の糖タンパク質で、細胞接着をつかさどる

などです。これらの遺伝子から甲状腺癌/甲状腺癌の家系性を診断しようと言う試みもあり、甲状腺髄様癌などは確立されています。

甲状腺癌の遺伝子異常により影響受けるシグナル伝達経路を標的とする分子標的治療

甲状腺癌の遺伝子異常により影響受けるシグナル伝達経路を標的とする分子標的治療が開始されています[長崎甲状腺クリニック(大阪)での取り扱いはありません]。

  1. ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)が、 「根治切除不能な分化型甲状腺癌」に
  2. レンビマカプセル®(一般名:レンバチニブ)が「根治切除不能の甲状腺癌」治療薬として

保険適応が認められました。ネクサバール®が分化型甲状腺癌(乳頭癌濾胞癌)にしか適応がないのに対して、レンビマカプセル®は甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌を含むすべての甲状腺癌に適応があります。

詳しくは、 「放射線治療無効な甲状腺癌」にネクサバール・レンビマ を御覧下さい。

分子標的薬の作用機序

ネクサバール錠®は、分化型甲状腺癌細胞の増殖に働くMAPキナーゼ経路を直接阻害、血管新生に働くVEGF受容体、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)活性も阻害

レンビマカプセル®は、甲状腺癌の血管新生に関与する血管内皮増殖因子(VEGF)受容体、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)、MAPキナーゼ経路を阻害。

家族性腺腫様甲状腺腫

腺腫様結節 超音波(エコー)画像

腺腫様結節 超音波(エコー)画像

遺伝性甲状腺ホルモン合成障害

遺伝性甲状腺ホルモン合成障害の軽症型(常染色体優性遺伝のものと、常染色体劣性遺伝でも軽症のもの)は、甲状腺機能低下する事なく、代償性に甲状腺濾胞細胞の過形成がおこり、家族性腺腫様甲状腺腫になります。(遺伝性甲状腺機能低下症)

橋本病(慢性甲状腺炎)を合併すると、遺伝性甲状腺ホルモン合成障害の軽症例がマスクされ、あたかも甲状腺機能正常橋本病による家族性腺腫様甲状腺腫のように見えます(橋本病も約70%遺伝です)。

例えば、サイログロブリン(遺伝子)異常症に、橋本病(慢性甲状腺炎)を合併すると、

  1. 甲状腺の破壊によりサイログロブリンは高値
  2. 抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性ならサイログロブリンは低値

で、いずれにせよサイログロブリン(遺伝子)異常症の存在に気が付かないでしょう。

DICER1遺伝子変異

DICER1は、ミトコンドリアRNAプロセッシングに必要なRNAse(RNA分解酵素, RNase IIIエンドリボヌクレアーゼ)です。DICER1は、甲状腺において甲状腺細胞分化・濾胞内コロイドの維持に関与するとされます。(Endocrinology.2015;156(4):1590-1601)

DICER1遺伝子変異は、甲状腺,肺,腎,卵巣などの腫瘍、家族性腺腫様甲状腺腫と関連するとされます(JAMA.2011;305(1):68-77)。日本でも、DICER1遺伝子変異による甲状腺機能正常家族性腺腫様甲状腺腫の家系が初めて報告されました。(第58回 日本甲状腺学会 O-2-5 DICER1遺伝子に胚細胞変異を認めた家族性腺腫様甲状腺腫の一家系)

Keap1遺伝子変異

KEAP1遺伝子変異が同定された非中毒性多結節性甲状腺腫の家系も、日本で報告されています(日本外科学会雑誌 巻:114 ページ:698)。センサー分子KEAP1は、毒性化学物質を感知して転写因子Nrf2を活性化.活性化したNrf2は生体防御遺伝子群の発現誘導を介して毒性化学物質を解毒・排出します。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ 谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

診療時間電話番号や地図はこちら