長崎甲状腺クリニック 大阪の亜急性甲状腺炎の治療プロトコル[橋本病 バセドウ病 超音波 エコー 検査 エラストグラフィー 甲状腺機能低下症]
甲状腺専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
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国際学会デビューは1995年、アメリカ メリーランド州 ボルチモアでした。
(右端)コンベンションセンター(学会場)
(中央)隣接するハイアットリージェンシーが大西洋に面しています。
------甲状腺を連想させる形に運命的なものを感じます。
亜急性甲状腺炎の診療停止について
日本での新型コロナウイルス感染が完全に終息するまで亜急性甲状腺炎の診療は停止(ステロイド投与中のコロナ感染は重症化するため)。
亜急性甲状腺炎のステロイド治療は、新型コロナウイルス感染にすぐ対処できるよう、コロナ病床のある病院で行った方が良いと思います。
亜急性甲状腺炎の基本的なことは亜急性甲状腺炎を御覧ください。
亜急性甲状腺炎のステロイド治療は、一端、開始すれば(平均)3-4カ月掛かり、途中で止める事はできません。長崎甲状腺クリニック(大阪)に継続して通院できない方は、受診を御遠慮ください。
Summary
長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナルの亜急性甲状腺炎の治療は、中途再燃・再発を防ぐため、超音波(エコー)検査で炎症範囲を毎回調べ、改善度に応じてステロイド量を調整。炎症の強い部分は黒く、血流乏しく、エラストグラフィーで青くなる。副作用チェックはステロイド肝障害・膵炎・筋障害・低カリウム血症・糖尿病。甲状腺乳頭癌の合併、亜急性甲状腺炎ではなく、甲状腺乳頭癌の事も。亜急性甲状腺炎はバセドウ病,橋本病に合併、あるいは誘発する事も。頚部腫大、甲状腺中毒症が先行する場合、エコー検査で偶然見つかる事も。数年かかっても完全治癒しない亜急性甲状腺炎も稀に存在。
Keywords
甲状腺,甲状腺機能低下症,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,甲状腺乳頭癌,橋本病,亜急性甲状腺炎,橋本病,エコー,ステロイド,再発
亜急性甲状腺炎は診断さえ付けば、副腎皮質ステロイドが劇的に効きます。2-3日で嘘のように痛みが消え、血液検査でも炎症反応(WBC/CRP)・甲状腺ホルモン値が正常化するため、あたかも完治したような錯覚をおこします。そして、うかつに副腎皮質ステロイドを中止、急な減量おこなうと、短期間で再燃・再発し、結局一からやり直すことになります(結局1年以上かかった症例も報告されています)。中途再燃・再発した亜急性甲状腺炎の方が長崎甲状腺クリニック(大阪)を訪れ、ステロイド治療をやり直すことが非常に多いのが現状です。
なるほど痛みも消え、炎症反応(WBC/CRP)・甲状腺ホルモン値も正常化した状態では、何を基準にステロイド減量していけば良いのか判らないのが一般的です。教科書には「3か月かけて、2週間に5mgずつ減量せよ」と書いてあります。
また、ステロイドの開始量も、外来使用最大量の20mgに設定します。しかし、どうしても30mg以上必要と判断される場合、大阪市立大学医学部附属病院(現、大阪公立大学医学部附属病院) 代謝内分泌内科への入院となります(20mgまで減量した時点で退院)。
以前、甲状腺学会で中村浩淑先生も同じ方法で亜急性甲状腺炎を治療していることを知り驚きました。
近年、甲状腺以外の病気で、ステロイド治療によるB型肝炎・C型肝炎の再活性化が問題になっています。亜急性甲状腺炎にステロイド治療を行う前には
- 肝炎の既往歴について問診
- 肝炎ウイルス抗原・抗体検査;HBs抗原、HCV抗体
※HBc抗体;
HBs抗原陰性でもHBc抗体陽性なら、HBs抗体の有無にかかわらずB型肝炎に感染したことがあり、体内にB型肝炎ウイルスが潜伏感染しています。したがって、免疫抑制剤(ステロイドを含む)や抗がん剤などの使用に際しては、HBs抗原、HBs抗体とともにHBc抗体を測定することが推奨されています。(免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン、厚労省、2009)
B型肝炎ウイルスのワクチン接種でHBc抗体が陽性となることはほとんどありません。
により、ステロイド投与が可能か確認が必要。
B型肝炎キャリアや慢性B型肝炎であった場合、B型肝炎ウイルスの再活性化予防治療も必要になるため、消化器内科か肝胆膵内科がある総合病院での治療になります。
2010年のアメリカ胸部学会ガイドラインでは、ニューモシスチス肺炎の予防にST合剤を投与する基準は、
「プレドニゾロン(PSL)20mg以上/日の投与を1カ月以上続ける時」
となっています。特に「T細胞系の免疫不全や、免疫抑制剤、TNF阻害薬の使用時には考慮すべき」とあります。(Am J Respir Crit Care Med. 2011 Jan 1;183(1):96-128.)
よって、通常の亜急性甲状腺炎治療で、ST合剤の予防投与はありませんが、大阪市立大学医学部附属病院(現、大阪公立大学医学部附属病院) 代謝内分泌内科に入院して30mg以上使用する場合は必要になります。
ST合剤を使用する場合、具体的な投与方法は、
- バクタ®:1日1回2錠 連日 or 1日1回1錠 連日 or 1日1回2錠 3日/週
- アトバコン(サムチレール®)750mg 2回/日 連日
などです。アレルギー、肝障害、血球減少、高カリウム血症などの副作用が出やすいので注意。これらに耐性がある場合は、ペンタミジンを採用。
ST合剤の中止基準はありませんが、
- プレドニゾロン(PSL)10-20mg/日以下になれば中止。
- プレドニゾロン(PSL)を終了するまで続ける。(ステロイド積算量がニューモシスチス肺炎のリスクになるので)
と、主に二通りの考え方があります。
長崎甲状腺クリニック(大阪)オリジナル亜急性甲状腺炎治療副作用チェックとして
- 肝機能(ステロイド肝障害)
- 膵酵素(ステロイド膵炎)
- 筋酵素(ステロイド筋障害)
- カリウム(ステロイド低カリウム血症)
- 血糖(グルコース)もしくはHbA1C(ステロイド糖尿病)
を必要に応じて1カ月ごとに調べます。
日本では亜急性甲状腺炎の数%が不可逆な破壊(永続性甲状腺機能低下症)になるとされます。Saudi Arabiaでは14.3%(Int J Endocrinol. 2014;2014:794943.)
隈病院の統計では、53.6%が発症後6カ月以内に一時的に甲状腺機能低下症になるが、永続的甲状腺機能低下症に至るのは5.9%。副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)使用で永続的甲状腺機能低下症になる確率は下がります。永続的甲状腺機能低下症になった人は全員、甲状腺の左右両側に低エコー領域があり、最終的に甲状腺は萎縮したそうです。(J Endocrinol Invest. 2009 Jan;32(1):33-6.)
エラストグラフィーを用いて亜急性甲状腺炎が永続性甲状腺機能低下症に至るかを判定する試みがあります。石川県立中央病院の報告では、硬さの指標ストレインレ-ト(strain ratio)が大きいと、永続性甲状腺機能低下症になりやすいとされます(第57回 日本甲状腺学会P2-053 亜急性甲状腺炎経過後に、永続性甲状腺機能低下症に至る要因に関して)。
下は亜急性甲状腺炎の超音波(エコー)画像で、炎症の強い部分は黒く、エラストグラフィーでは青くなります。
既に別の病気でステロイド剤(PSL;プレドニゾロン)を飲んでいる場合、全体量を20mg(治療抵抗性なら30mg)になるように追加投与します。例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)でPSL 12.5mg飲んでいる場合、7.5mgを追加投与します。(第53回 日本甲状腺学会 P42 SLE治療中に発症した亜急性甲状腺炎の一例)
肺移植を受けたレシピエントが新型コロナウイルス感染(COVID-19)後に急性同種移植片拒絶反応と亜急性甲状腺炎を発症し、従来の免疫抑制剤ミコフェノール酸に加えて高用量ステロイド(メチルプレドニゾロン250mg)と免疫抑制剤エベロリムス、血漿交換・フォトフェレーシスが追加された報告があります。[Transplant Proc. 2022 Nov;54(9):2608-2611.]
亜急性甲状腺炎ではなく、甲状腺乳頭癌だった
甲状腺乳頭癌は無痛が普通ですが、
- 被膜浸潤
- 腫瘍内出血
- 急速な増大
- 甲状腺乳頭癌周囲の炎症巣
[血液検査で炎症反応(WBC, CRP)も陽性で、炎症部の穿刺細胞診でも癌細胞検出されず、亜急性甲状腺炎と勘違いします。ステロイド治療で炎症治まれば、低エコー領域は縮小しますが、甲状腺乳頭癌本体は消えないため、再度の穿刺細胞診で診断されます。手術摘出後の病理標本では、甲状腺乳頭癌周囲のリンパ球浸潤が確認されます。]
で痛みが生じることがあります。亜急性甲状腺炎と高をくくっていても、甲状腺超音波(エコー)検査で甲状腺乳頭癌だった症例報告があります。
亜急性甲状腺炎に甲状腺乳頭癌が合併
ステロイド治療の後、甲状腺全体の腫れが引くと、甲状腺乳頭癌の低エコー域も縮小するので、亜急性甲状腺炎の炎症と勘違いする可能性があります。例え縮小しても、消えなければ、しかも石灰化を伴っていれば甲状腺乳頭癌を疑うべきです。亜急性甲状腺炎が沈静化しない内に穿刺細胞診すると、炎症所見が混ざって、病理医が甲状腺乳頭癌の診断を下し難い様です。
コントロール不良糖尿病に亜急性甲状腺炎を合併すると
- 甲状腺中毒症・炎症・ステロイド剤による血糖上昇
- ①甲状腺中毒症・炎症による発汗、②嚥下痛による飲水・摂食不良が原因となり脱水
がおこり、高血糖高浸透圧症候群(高浸透圧高血糖症候群)に至る可能性があります。(第60回 日本甲状腺学会 P1-3-5 亜急性甲状腺炎の発症を契機に、高血糖高浸透圧症候群に至った 2型糖尿病の1例)
患者さんが甲状腺部に痛みを訴える病気で一番多いのは、亜急性甲状腺炎です。しかし、実際、亜急性甲状腺炎以外の場合が約25%存在します。
甲状腺の痛み をご覧ください。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区にも近い。