肥満症とメタボリック症候群の原因・内臓脂肪[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
動脈硬化:専門の検査/治療/知見[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門・動脈硬化・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。肥満自体の診療を行っておりません。長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。
Summary
肥満指数[BMI]25以上で肥満。肥満症とメタボリック症候群の原因となる内臓脂肪型肥満。内臓脂肪は高血圧を起こし、インスリン作用を弱め、肝臓の糖・脂肪合成を促進、耐糖能障害・糖尿病・高脂血症が悪化、動脈硬化が進行。甲状腺機能低下症では脂肪の分解が低下し、内臓脂肪が減りにくく甲状腺ホルモン補充が必要。脂肪細胞はホルモン様の生理活性物質(サイトカイン)を作る内分泌臓器。女性の肥満は生理不順、無月経、不妊の原因。肥満女性の妊娠は、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、帝王切開の原因。神経性過食症は心理的サポートが必要な肥満症。
Keywords
肥満症,メタボリック症候群,内臓脂肪,高血圧,糖尿病,高脂血症,動脈硬化,甲状腺機能低下症,脂肪,甲状腺
サノレックス(一般名マジンドール)は使用いたしません。これは、依存性・禁断症状が生じる危険性のある薬です。3か月以上の使用は禁止されているため、患者が薬を求めて肥満指導をしている医療機関をハシゴしているようです。
ただの肥満と思っていても、実は甲状腺機能低下症・甲状腺機能亢進症/バセドウ病・副腎皮質ホルモン分泌過剰[クッシング症候群(あるいはクッシング病)]によるステロイド肥満・インスリノーマ(インスリン分泌腫瘍)などのホルモンの病気のことがあります(内分泌肥満)。内分泌肥満はいくら食事療法・運動療法しても効果少なく、逆に生命に危険が及ぶ状態になる事もあります。肥満の方はまず内分泌肥満を疑い、ホルモン検査をお勧めします。詳細は、 内分泌肥満 を御覧ください
厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査結果の概要」によると、
肥満者(BMI≧25 kg/m2)の割合は、
- 男性(33.0%)
- 女性(22.3%)
肥満者(BMI≧25 kg/m2)の最も高い年齢は
- 女性なら60-69歳(28.1%)
- 男性なら40-49歳(39.7%)
です。
肥満と異なり、肥満症は正式な病気です。「肥満に起因・関連する健康障害を合併している、もしくは、現在は明らかな健康障害なくても将来的に発症するハイリスク肥満で、医学的に減量を必要とする肥満」を「肥満症」と言います。
肥満症は下記のような減量を必要とする健康障害がおこりやすくなります。
- 脂肪細胞の質的異常による肥満症
耐糖能障害・2型糖尿病
脂質代謝異常:高コレステロール血症・低HDLコレステロール血症・高トリグリセリド血症
- 脂肪細胞の量的異常による肥満症
骨・関節疾患:変形性関節症(OA)[変形性膝関節症・変形性股関節症]/変形性脊椎症/腰痛症睡眠時無呼吸症候群・Pickwick症候群・成人発症肥満型喘息・月経異常
※は肥満関連腎臓病含まれません。
おへその高さの腹囲が男性で85cm以上、女性で90cm以上(腹部CT検査の内臓脂肪面積が100cm2以上に相当)がメタボリック症候群の前提条件です。しかし実際それより低くても内臓脂肪がたまっている方は大勢おられます。
一方、女性の方が皮下脂肪が多いため、女性の肥満症の過半数はメタボリックシンドロームと違います。
脂肪細胞はホルモン様の生理活性物質(サイトカイン)を作り出す内分泌臓器なのです。特に脂肪細胞が作り出すサイトカインをアディポカインと言います。
内臓肥満では、内臓脂肪細胞は
の分泌が低下し、
インスリン抵抗性を増加させる
- TNF-α
- レジスチン(Nature, 409:307-312, 2001)
の分泌が亢進します。
メタボリック症候群の元凶、内臓脂肪を直接、画面に写し出し、厚さを測定します。内臓脂肪は高血圧を引き起こし、インスリン作用を弱め、肝臓の糖・脂肪合成を促進。糖尿病・高脂血症が悪化、動脈硬化が進みます。また、甲状腺機能低下症では脂肪の分解が低下しているため、内臓脂肪が減りにくく、甲状腺ホルモン補充が必要です。
- 食事量:25-30kcal/kg標準体重(実際の体重ではありません)
- 1日40分・週3回の運動:机上の空論、働いている人は、そんな時間作れません。仕事を終え、疲労こんぱい状態でおこなうと事故・ケガのもと。
詳しくは、肥満指導・治療 を御覧下さい。
内臓脂肪細胞が造るアンジオテンシンⅡは高血圧、高脂血症、糖尿病を悪化させ、動脈硬化を促進。狭心症/心筋梗塞、脳梗塞、慢性腎臓病(CKD)の発症率が上がります。
アンジオテンシンⅡ測定は保険適応外ですので5000円(税抜き)掛かってしまいます。
最近、肥満遺伝子が発見されました。この遺伝子は脂肪細胞だけにあり、食欲を抑える働きのレプチンというたんぱく質をつくります。
肥満者では脳の食欲中枢にあるレプチン受容体の働きが悪く、食欲を抑える事ができないと考えられております。そのため血中レプチン濃度が代償的に高くなります。血中レプチン濃度が高い方は脳の食欲中枢に異常があると考えられます。
レプチン測定は保険適応外ですので---円(税抜き)掛かってしまいます。
レプチンが視床下部で合成されるTRH(TSH放出ホルモン)を調節しているとの論文が多数あります。詳しくは、 内分泌肥満 を御覧ください。
肥満低換気症候群(ピックウイック症候群)は肥満指数[BMI(body mass index)=体重(kg)/{身長(m)} x{身長(m)}]が30kg/m2以上の高度肥満者におこります。肥満低換気症候群(ピックウイック症候群)では、
- 換気障害による慢性呼吸不全(慢性低酸素血症/高CO2血症)
- 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)を伴うことが多い[Med Clin North Am. 1985 Nov;69(6):1265-80.]
- 肺高血圧症[J Thorac Dis. 2017 Mar;9(3):779-788.]・慢性右心不全(不整脈、肝障害、腎機能低下)
- 精神症状
- 高血圧、多血症
- 甲状腺機能低下症(18.8%)、潜在性甲状腺機能低下症(6.2%)[Nat Sci Sleep. 2020 Sep 16;12:649-659.]
- 重症例では呼吸性アシード―シス、多臓器不全、急性心不全、脳心血管障害、突然死
がおこります。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)患者において、肥満低換気症候群は男性よりも女性、特に閉経後の女性に多く、しかも高血圧、糖尿病、甲状腺機能低下症の有病率が高い。[J Sleep Res. 2016 Aug;25(4):445-53.]
(From New To ICUより改変)
ネフローゼ同様の高度蛋白尿ですが、血清アルブミンはほぼ正常でネフローゼ症候群の診断基準を呈するものは稀。
浮腫軽度。緩徐に慢性腎不全へ進行することがあります。
腎生検で糸球体肥大(必須)・巣状分節性糸球体硬化(FSGS)が認められます。
減量により改善し、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬/アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)が有効。
正常な月経(生理)周期の女性が肥満によって月経異常(生理不順)をきたす割合は60%といわれ、最悪、続発性無月経になります。そして、妊活中なら、当然、不妊の原因となります。
卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)は脂溶性ホルモンなので、脂肪細胞にどんどん吸収され、働かなくなります。
さらに、肥満になるとインスリン抵抗性→高インスリン血症→卵巣の莢膜細胞で男性ホルモン(アンドロゲン)産生が亢進→男性ホルモン(アンドロゲン)は女性ホルモン(エストロゲン)に転換され、慢性的なエストロゲン過剰状態が続き、排卵が阻害。多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と同じです。
真逆の体重減少性無月経
体重減少性無月経は、
- 全身性消耗疾患による著しい体重減少
- 過度な運動による体重減少
により生理(月経)が止まる状態。
体重減少性無月経とは、体脂肪の減少により、脂肪細胞で合成・分泌される化学物質(アディポサイトカイン)レプチン産生が低下。
レプチン刺激による視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone, GnRH;LHRH)のパルス状分泌の障害
→下垂体の黄体刺激ホルモン(LH)/卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌低下
→エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)分泌低下
女性アスリートの生理不順、無月経、不妊も同じです(女性アスリートの甲状腺 )。
神経性過食症では、
- う歯、歯牙侵食
- 手の吐きダコ
- 唾液腺腫脹、血清アミラーゼ高値
- 低カリウム血症
が起こります。
神経性過食症と甲状腺
神経性過食症の
- 過食期には、摂取カロリーが多い程、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値は高くなり、脂肪燃焼を促進するための生理的代償反応と推察されます。
- 入院後の行動療法で、摂取カロリーを適正化すると甲状腺ホルモン(FT3、FT4)、リバース・トリヨードサイロニン(rT3)は有意に減少します。理由は定かではありませんが、脂肪燃焼の必要がなくなったためかもしれません。(Psychoneuroendocrinology. 1996 Apr;21(3):249-61.)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,浪速区,生野区,東大阪市も近く。