サルコペニア/サルコペニア肥満症・必須アミノ酸/L-ロイシンと甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(第二内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。サルコペニア/サルコペニア肥満症・フレイルの治療を行っておりません。
Summary
サルコペニアは筋肉量減少による身体機能低下で、甲状腺機能低下症様のADL低下、基礎代謝低下、疲労、冷え性、サルコペニア肥満、骨粗しょう症を引きおこす。副腎皮質機能低下症、成人成長ホルモン分泌不全症、男性更年期障害では2次性サルコペニアに。加齢で骨格筋細胞のcAMP産生能低下→2型ヨードサイロニン脱ヨード酵素(DIO2)活性低下、甲状腺ホルモン作用減弱、糖・脂肪分解によるエネルギー代謝低下。また、甲状腺ホルモン低下自体でサルコペニアが進行。サルコペニア症状は甲状腺機能低下症/橋本病の様。サルコペニア予防に筋トレとバランス食・必須アミノ酸L-ロイシン摂取。
Keywords
サルコペニア,筋肉量,肥満,甲状腺機能低下症,サルコペニア肥満,2次性サルコペニア,必須アミノ酸,甲状腺ホルモン,甲状腺,L-ロイシン
体を支える筋肉は、運動による刺激と、食事から摂取する栄養で維持されています。特に病気がなくても、40歳を超えると少しずつ筋肉量が減り始めます。さらに様々な原因で筋肉量が減少すると、身体機能が低下します。この様な状態をサルコペニアと呼びます。
サルコペニアの原因は、加齢だけでなく
- 副腎皮質機能低下症 (2次性サルコペニア)
- 成人成長ホルモン分泌不全症 (2次性サルコペニア)
- 男性更年期障害 (2次性サルコペニア)
によって引き起こされている可能性があります。
サルコペニアの原因は、
- 加齢[一次性(加齢性)サルコペニア]
- 運動不足(身体活動度の低下)
- 栄養障害・過度のダイエット(特に筋肉たんぱく質の合成を促進する分枝鎖アミノ酸の不足)
- ビタミンD欠乏、代償性の副甲状腺ホルモン上昇
- インスリン抵抗性・糖尿病(筋肉たんぱく質の合成が阻害され、分解亢進)
- 酸化ストレス、炎症(TNF-α,IL-6上昇) ;(筋肉たんぱく質の分解亢進、インスリン抵抗性増大)
- 内分泌疾患(2次性サルコペニア)[上記;副腎皮質機能低下症、成人成長ホルモン分泌不全症、男性更年期障害)
加齢による一次性(加齢性)サルコペニアは、
- 60歳以上の15-30%、80歳以上の高齢者では50%におきる
- 元々、筋肉量の多い男性で顕著。筋肉量が少ない女性では、男性ほどはっきりしません。
加齢によるサルコペニアの原因は、
- 血清ホルモン値の変化、ミトコンドリア機能不全、細胞障害の蓄積、軽度の慢性炎症(Trends Endocrinol Metab. 2014 Apr; 25(4):212-23.)
- たんぱく同化抵抗性(タンパク質から体組織を作れない)
- たんぱく質摂取不足;上記1.2.は不可抗力ですが、これは自己努力で、ある程度改善可能
どう言う訳か、日本人のタンパク質摂取量は男女、年齢を問わず年々減少しており、サルコペニアを加速させています。慢性腎臓病(CKD)などにタンパク質過剰摂取は良くありませんが、医師の指導の下、食事内容を考え直すのが良いでしょう。
骨格筋内の2型ヨードサイロニン脱ヨード酵素(DIO2)により、甲状腺ホルモンFT4(遊離サイロキシン)のヨード(ヨウ素)が一つ外れ、ホルモン作用が強いFT3(遊離トリヨードサイロニン)に変換されて、糖・脂肪分解(エネルギー代謝)が促進されます。[2型甲状腺ホルモン脱ヨード酵素(DIO2)と耐糖能障害 ]
加齢によって骨格筋細胞のミトコンドリア機能とATP→cAMP産生能が低下します(Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Apr 12; 102(15):5618-23.)。2型ヨードサイロニン脱ヨード酵素(DIO2)は、骨格筋細胞内cAMPの増加により活性化されるため、加齢で骨格筋内の甲状腺ホルモン作用は減弱します。
また、、
- 甲状腺ホルモンは、反応の遅い筋繊維を反応の速い筋繊維へ移行させる働きがある(Thyroid. 2008 Feb; 18(2):205-16.)
- 潜在性甲状腺機能低下症では、筋力と筋断面積が低下し、治療後に改善される(Thyroid. 2006 Apr;16(4):375-80.)
など、甲状腺ホルモンの低下自体がサルコペニアの進行に関与している可能性があります。
サルコペニアの症状、
- 歩行が遅い、手すりなしで階段を上がれない、ペットボトルのキャップを開けにくい等の筋力低下→ひどくなると体を動かしにくい、転びやすい(甲状腺機能低下症/橋本病の様)[甲状腺機能低下症・橋本病の筋症状]
- 嚥下障害(固形物・液体を飲み込みにくい);飲み込むのも筋肉を使う運動です。甲状腺の病気(甲状腺腫、甲状腺腫瘍、甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病)に似ています[嚥下障害]。
- 疲労、冷え性、肥満(サルコペニア肥満症)、食欲不振、不眠症(入眠困難、中途覚醒など)など、全身の基礎代謝の低下(甲状腺機能低下症/橋本病の様)
- 病気やケガに成り易く、その治療過程で、合併症や副作用を起こし易くなります(新陳代謝の低下、免疫力低下)[甲状腺機能低下症と免疫力低下]
筋肉量を増やすトレーニング
生活習慣や加齢など病気以外が原因のサルコペニアは「筋肉量を増やすトレーニング」によって解消できる可能性があります。できる限り自分の足で歩く有酸素運動、筋肉に負荷を掛けるレジスタンス運動に努めねばなりません。
某学会が推奨するサルコペニア予防のトレーニング法、
- 10回で筋肉の限界が来て、それ以上できない運動を10回(1セット) x 3セット(2セット目以降は負荷を下げても良い)
- 48~72時間(2日~3日)休んで(この間に筋肉が増えます)、2~3回/週おこないます。
筆者は、この運動をして腰を痛めました。こんな事するより、日常的によく動き、バランスの良い食事をする方が、はるかに重要だと思います。
良質なタンパク質摂取
サルコペニア予防のため、バランスがとれた食事と良質なタンパク質摂取を心掛けましょう。特に、必須アミノ酸のL-ロイシンを多く含むタンパク質が有効です。筋肉の合成促進には、ロイシンをはじめとする必須アミノ酸が材料として必要です。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区も近く。