甲状腺の病気に似たミトコンドリア病・ライソゾーム病(ポンペ病・ファブリー病) [橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック(大阪)]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科(現、大阪公立大学大学院医学研究科) 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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この「ブラックジャックによろしく」のマンガを見ていただければ解り「ますが、ポンペ病は甲状腺機能低下症と全く同じ症状・CPK(CK)上昇です。確率的に考えれば、圧倒的に甲状腺機能低下症ですが・・。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。ミトコンドリア病・ライソゾーム病(ポンペ病、ファブリー病) の診療を行っておりません。
Summary
ミトコンドリア病は母系遺伝。ミトコンドリア脳症:橋本脳症の様に若年時より大脳小脳萎縮、低身長・成長ホルモン(GH)分泌不全、難聴、視神経萎縮、ミトコンドリアミオパチー:甲状腺中毒性ミオパシーの様な筋力低下、甲状腺機能低下症性ミオパシーの様な高CK(CPK)血症。バセドウ病眼症(甲状腺眼症)の様な両眼性眼瞼下垂、慢性進行性外眼筋麻痺、心筋症、1型/2型糖尿病、甲状腺機能低下症、低カルシウム血症(副甲状腺機能低下症)、乳酸アシドーシス。ポンペ病は筋型糖原病(グリコーゲン ストレージ病)で筋力低下・高CK(CPK)血症がおこり、甲状腺機能低下症/橋本病に類似。
Keywords
甲状腺,ミトコンドリア病,ライソゾーム病,ポンペ病,ミトコンドリアミオパチー,ファブリー病,バセドウ病,甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症,橋本病
甲状腺の病気に似ているミトコンドリア病
ミトコンドリア病の臨床症状は、
- ミトコンドリア脳症:橋本脳症・ヘルペス脳炎様症状・脳卒中様発作、若年時より大脳小脳萎縮していき、未治療のクレチン症(先天性甲状腺機能低下症)の様に認知症進行、甲状腺眼症(バセドウ眼症)のような視神経萎縮、外眼筋麻痺、網膜色素変性(夜盲、視野狭窄、視力障害、羞明、色覚異常などの症状)
- 難聴[先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)、ペンドレッド症候群の様]
- ミトコンドリアミオパチー:バセドウ病/甲状腺機能亢進症の甲状腺中毒性ミオパシーのような筋力低下(ミオパチー)、甲状腺機能低下症性ミオパシーのような高CK(CPK)血症(42%)。バセドウ病眼症(甲状腺眼症)のような両眼性眼瞼下垂、慢性進行性外眼筋麻痺。
- 心筋症(肥大型、拡張型、左室流出路狭窄性いずれもあり)(Circulation. 2013 May 14;127(19):1957-67.)[甲状腺心臓(サイロイドハート)の様]
- 甲状腺機能低下症(17%)
成長ホルモン(GH)分泌不全性低身長(33%
低カルシウム血症(副甲状腺機能低下症)
(Nat Rev Endocrinol. 2017 Feb;13(2):92-104.) - 糖尿病(1型/2型糖尿病)(12%)
高脂血症(45%)(Nat Rev Endocrinol. 2017 Feb;13(2):92-104.)
- 乳酸アシドーシス
- 多発性神経障害(J Neurol Sci. 2011 May 15;304(1-2):9-16.)
(J Inherit Metab Dis. 2002 May;25(2):97.)
ピルビン酸、乳酸、乳酸/ピルビン酸比が上昇。乳酸は、解糖系の最終産物で、LDH(乳酸脱水素酵素)によりピルビン酸から産生されます。
ミトコンドリア病の低身長
ミトコンドリア病の低身長は、90%に見られ、成長ホルモン製剤が効き難いのが特徴です。原因として、
- 下垂体性成長ホルモン(GH)分泌不全
- 血管内皮機能障害による視床下部-下垂体の脳虚血
- ミトコンドリア異常によるホルモン産生細胞機能低下
- 低アルギニン血症、高血糖による成長ホルモン分泌刺激の低下
が考えられています(第113回日本内科学会 P68 成長ホルモン補充療法が効果不十分な低身長患者のフォローアップの必要性)。
メラス(MELAS)
メラス(MELAS)はミトコンドリア病の一病型で、低身長・難聴・認知症症状[ここまでは、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の様]・糖尿病に加え
脳卒中様症状おこし、CT・MRIで後頭頭頂葉に好発する梗塞様の所見を認めるが、脳梗塞と異なり血管支配領域に一致せず、可逆性で病変の消失、出現を繰り返します。また、副甲状腺機能低下症と同じく、約20%に大脳基底核に石灰化が見られます。
稲川淳二の怪談「宝物殿」に出てくる男子短命家系の金貸しは、ファブリー病(Fabry病)なのでしょうか?
体内の細胞内に不要な糖脂質「GL-3(グロボトリアオシルセラミド、またはセラミドトリヘキソシド:(CTH)」が蓄積し、
- 遺伝性腎不全(腎ファブリー病);透析患者の1.2%を占める。男性Fabry 病で進行しやすい。
- 心肥大;原因不明の左室肥大
・心不全・狭心症
・2次性代謝性心筋症(心ファブリー病);肥大型心筋症の約1%が心ファブリー病、まれに2次性代謝性拡張型心筋症。
- 発汗障害(低汗症→暑くても汗が少ない)、皮膚乾燥[甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群(ドライアイ,口内乾燥)、糖尿病性自律神経障害、Horner 症候群と鑑別]
- 四肢の疼痛(運動時の手足の痛み)、筋肉痛、関節痛
- 胃腸障害
- 角膜混濁
- 胸から膝までの発疹;下背部や臀部に小型の紫紅色丘疹
に。甲状腺機能低下症/橋本病の症状に似ています。
ファブリー病の診断は、
- 血液検査でα-ガラクトシダーゼ(α-GAL)酵素活性の測定、遺伝子診断
- 尿検査でαガラクトシダーゼ酵素活性の測定
- 腎生検で組織にGL-3(グロボトリアオシルセラミド、セラミドトリヘキソシド:(CTH)蓄積を証明
欠損酵素(αガラクトシダーゼ)を点滴で2週間に1回補充する治療(酵素補充療法)が開発されています。ただし、GL-3(グロボトリアオシルセラミド、またはセラミドトリヘキソシド:(CTH)が既に蓄積し、病状が進行した後では効果が薄いです。
ファブリー病と甲状腺
ファブリー病では甲状腺にもグロボトリアオシルセラミドが蓄積し(Intern Med. 1994 Mar;33(3):172-6.)、潜在性甲状腺機能低下症の有病率が36.4%になります(J Inherit Metab Dis. 2005;28(5):715-22.)。
酵素補充療法を行うと甲状腺機能は改善します。また、甲状腺超音波(エコー)検査では、ファブリー病患者の71%が低エコー輝度で、酵素補充療法後は43%に減少します。(Minerva Endocrinol. 2011 Mar;36(1):1-5.)
グロボトリアオシルセラミドが蓄積による視床下部機能不全も起こります(Intern Med. 1994 Mar;33(3):172-6.)。
シスチン症は常染色体劣性遺伝によるシスチン(アミノ酸の1つ)代謝異常で、ライソゾーム膜に存在するシスチン輸送体のシスチノシン(CTNS)遺伝子変異が原因。シスチンが全身に蓄積し
- 再発性角膜潰瘍
- 筋力低下、筋萎縮、嚥下障害(20%)
- 肝臓腫大
- 腎不全
- 甲状腺腫、甲状腺機能低下症;5~10 歳で発症(50%)
- 膵性糖尿病(5%)
- 原発性性腺機能低下症(70%)
尿中シスチン濃度が上昇、
- ファンコニ症候群(Fanconi症候群);成長障害、腎不全・くる病(95%)→小児期に腎移植
が起こります。[Orphanet J Rare Dis. 2016 Apr 22;11:47.]
糖原病I型(フォンギルケ病)では、グルコース不足による低血糖に加えて、肝臓、腎臓、腸管に多量のグリコーゲンが蓄積し障害をおこします。
- 低血糖→脳障害、高脂血症、高尿酸血症、乳酸アシドーシス
- 肝腫大
- 腎不全
- 丸顔、成長障害
- 甲状腺機能低下症/橋本病(Ib型のみ);甲状腺ホルモン遊離サイロキシン (FT4) が低下。甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)上昇。[J Pediatr. 2007 Mar;150(3):300-5, 305.e1.]
- TRH負荷試験でTSHが過剰反応[J Pediatr. 2007 Mar;150(3):300-5, 305.e1.]
- 全身性アミロイドーシス(Ib型のみ);甲状腺機能低下症を発症[Eur J Pediatr. 1990 Feb;149(5):344-5.]
-
成長ホルモン(GH)分泌不全;1a型の40%、1b型の57.1%[J Pediatr. 2010 Apr;156(4):663-70.e1.]
-
抗下垂体抗体(APA)は1b型で陽性率が高い[J Pediatr. 2010 Apr;156(4):663-70.e1.]
- 自己免疫疾患(Ib型のみ);好中球減少症・好中球機能障害、炎症性腸疾患[Acta Paediatr. 2003 Dec;92(12):1415-21.][Eur J Pediatr. 2005 Aug;164(8):501-8.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。