首の腫瘤・しこり・腫れ、甲状腺と思っても・超高解像度超音波エコー検査[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) をクリックください
首の腫瘤・しこり・腫れに気付き、あるいは家族・友人・健康診断・かかりつけ医で指摘され、甲状腺の病気と思い長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方が大勢います。もちろん、甲状腺の病気である事が多いのですが、超高解像度超音波(エコー)で調べると思いもよらない甲状腺以外の病気が見つかる事があります。
このページでは、実際あったそのようなケースを集めてみました。
Summary
首の腫瘤・しこり・腫れに気付き、家族・友人・健康診断で指摘され、甲状腺の病気と思い長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診する方は多い。甲状腺超音波(エコー)検査を超高解像度 超音波(エコー)診断装置で行うと甲状腺以外の病変もある。頸椎横突起が頸椎の変形、ゆがみ、ストレートネックのため皮膚の上から硬く触れたり、頸筋炎、結節性筋膜炎、乳癌・肺癌・腎臓癌・悪性黒色腫などのリンパ節転移、肺癌の左鎖骨上リンパ節転移(ウィルヒョウリンパ節)、頚部リンパ節反応性(炎症性)腫大、結核性リンパ節炎、内頸静脈血栓症、頚部脂肪腫、粉瘤、ユーイング肉腫、滑膜肉腫、皮下動脈瘤の事も。
keywords
甲状腺エコー,結核性リンパ節炎,超音波検査,甲状腺,リンパ節転移,肺癌,ウィルヒョウ,頸静脈血栓,頚部腫瘍,粉瘤,唾石症
超高解像度 甲状腺超音波(エコー)検査
骨・筋
リンパ節
- 肺癌の左鎖骨上リンパ節転移(ウィルヒョウリンパ節)
- 甲状腺以外からの頸部リンパ節転移
- 悪性リンパ腫
- 急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)
- 頚部リンパ節反応性(炎症性)腫大
- 結核性リンパ節炎
頚部腫瘍
内頸静脈血栓症
皮下動脈瘤
唾液腺
頸椎横突起が皮膚の上から硬く触れる
頚性めまい
頚性めまいは、頚部の回転・伸展により生じるめまいで、頚椎、頚筋異常、椎骨動脈、椎骨動脈周囲の交感神経の異常などによります。
結節性筋膜炎は、よく見かける皮下腫瘤で、線維芽細胞の炎症性増殖のため腫瘍ではありません。20%は頭頸部(頚部皮下、外耳道、眼窩、口腔粘膜、咽頭、唾液腺など)に発生。臨床的には2cm未満の急激に増大する皮下腫瘤で、時に軽度の痛みを伴います。穿刺細胞診では、紡錘形の筋線維細胞と炎症細胞を認めます。
舌骨小角 右の方が大きく、患者さんが自分の手で触れて、甲状腺の腫瘍ではないかと心配になり長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診。
甲状腺以外からの頸部リンパ節転移として、乳癌・肺癌・腎臓癌・悪性黒色腫などがあります。これらが甲状腺に到達すると、転移性甲状腺癌(他臓器の癌から甲状腺への転移) になります。
腎臓癌(腎細胞癌) リンパ節転移 超音波(エコー)画像
悪性黒色腫 リンパ節転移 超音波(エコー)画像
頚部リンパ節生検の注意
全身のリンパ節が腫れていれば、頚部リンパ節が最もリンパ節生検に適している。
頚部リンパ節生検前は
- 抗がん剤治療法を開始してはいけない
- プレドニン投与してはいけない
- 原発巣、主な病変を特定する(2cm以上が腫瘍の可能性高い、FDG-PET/CTが参考に)
- 炎症の影響が少ない部位を特定する
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)は最も頻度の高い小児がんで、60%が小児発症、50歳以降にも多い。急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)は、先行する頸部腫瘤(リンパ節腫大)の後、発熱・倦怠感で発症する場合があります。その他、貧血による労作時息切れで医療機関を受診する場合もあり(欠落症状、正球性貧血)。
また、急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)は中枢神経や精巣に浸潤する可能性があります。
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)による免疫不全で、腓腹筋膿瘍から多発性甲状腺膿瘍、敗血症、DICを発症した報告があります(BMJ Case Rep. 2016 Nov 29;2016:bcr2016216523.)。
また、急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)の甲状腺浸潤の報告もあります(Endocr Pathol. 2012 Dec;23(4):268-9.)。
採血すれば、白血球増多と異常細胞を認め、急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)の診断は容易です。異常細胞は、ペルオキシダーゼ反応陰性、表面マーカー解析はCD3(T細胞由来)、CD19、CD10、CD20、CD22(B細胞由来)陽性、CD33 陰性[急性骨髄性白血病(AML)ではない]。TdT(terminaldeoxynucleotidyltransferase:末端デオキシヌクレオチドトランスフェラーゼ)陽性。染色体検査でPhiladelphia 染色体が検出。
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)の骨髄血塗抹May-Giemsa染色;N/C 比が高く、核形不整、大小不同、アズール顆粒を持たない細胞が増殖。
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、ALL)の治療はイマチニブ(グリベック®)。イマチニブ(グリベック®)は、Philadelphia 染色体により形成されるBCR-ABL 融合蛋白の細胞増殖シグナルを抑える作用。慢性骨髄性白血病(CML)にも有効。
予防的頭蓋照射は、視床下部-下垂体-甲状腺(HPT)軸への影響が危惧されますが、8年間のフォローアップで特に影響ないとの報告があります(Clin Endocrinol (Oxf). 2001 Jul;55(1):21-5.)。
骨髄移植(BMT)後は甲状腺機能低下症や甲状腺結節のリスクが高くなります(Bone Marrow Transplant. 2005 May;35(10):991-5.)。(造血幹細胞移植と甲状腺)
一般的な頚部リンパ節の反応性(炎症性)腫大は、下の写真のごとく
- 細身の楕円形
- リンパ門が存在[白い筋(すじ)、コーヒー豆サイン]
- 血流は炎症が強いと増加する場合があるが、リンパ門に沿った血管がメイン
当然、甲状腺の外に位置しますが、触診だけで甲状腺内外を判断するのは難しく、超音波(エコー)診断で一目瞭然。ちなみにCT・MRIでは3mm-10mmスライスなので細かい病変は診断不能、CTでは放射線被ばくの問題あり。造影剤使用でヨード造影剤腎症、ヨード造影剤アレルギーの危険。
亜急性甲状腺炎と鑑別を要する伝染性単核球症は、高熱・喉(のど)の痛み・首のリンパ節が腫れるのに加え、肝機能異常、異型リンパ球など特徴的な検査所見があるため診断に困る事は少ない。
頚部リンパ節反応性腫大(炎症による腫れ)には、悪性リンパ腫、転移性リンパ節と鑑別が非常に難しいケースがあります。
下記の腫大した複数の頚部リンパ節は、左側のみの病変で、球状に近い形態、内部は不均一な網目状に見えます。周囲の血流は増加し、エコー上は悪性リンパ腫、転移性リンパ節と考えざる得ません。しかし、リンパ節生検までして結局、良性反応性腫大でした。そして、その頚部リンパ節反応性(炎症性)腫大は、数年経過しても変化無く腫れたままです。
この異常な頚部リンパ節反応性腫大の原因と考えられるのは、巨大甲状腺腫を伴う炎症が強い橋本病(慢性甲状腺炎)です。抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)・抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)も強陽性、sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)高値、写真のように破壊性変化が強いのが分かります。
結局、この患者さんは、甲状腺による気管の圧排が強く、臥位で「呼吸が苦しい」などの症状が強くなり、甲状腺全摘手術とリンパ節切除となりました。病理標本の免疫組織染色を行いましたが、甲状腺・リンパ節ともに明らかな悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)と診断できず、Minor clonal/MALT lymphoma-like populations in lymphocytic thyroiditis との結論になりました。
Clonal B cell populations(B細胞クローン集団)を有する橋本病患者は10-13年の追跡期間中に悪性リンパ腫を発症せず、悪性リンパ腫の発生母体にはならないとされます [J Clin Pathol. 2004 Dec; 57(12): 1258–1263.]。
頚部悪性リンパ腫に見えるが反応性リンパ節腫大 超音波(エコー)画像;コーヒー豆サインは見えず、いびつな形(わらじ状)のリンパ節は、あたかも悪性リンパ腫のようです。
頚部悪性リンパ腫に見えるが反応性リンパ節腫大 超音波(エコー)画像;;いびつな形(わらじ状)のリンパ節は、あたかも悪性リンパ腫のようですが、よく見るとコーヒー豆サインが見られます。
- 結核性リンパ節炎の9割は頚部に出ます。
腋窩リンパ節の事も - 肺病変(肺結核)を伴わない事が30%。甲状腺結核を伴う事があります。
- 長期間続く発熱・微熱と頸部リンパ節腫大
- 無痛性が多いが、(発熱する程、活動性が高い場合)痛みを伴うこともあり、リンパ節の上の皮膚が赤く腫れることもあります。
- 石灰化を伴い、周囲と癒着するリンパ節は、甲状腺乳頭癌・甲状腺低分化癌・甲状腺未分化癌のリンパ節転移との鑑別必要です。
- リンパ節生検し、ヘマトキシリンエオジン(H-E)染色、抗酸菌染色(Ziehl-Neelsen染色)で赤紫色に染まる菌体
→結核菌、非結核性抗酸菌、ハンセン病のいずれかを確定するため、膿のPCR検査と培養確定 - 皮膚限局の病変の場合、治療は外来で抗結核薬を6~12ヶ月服用します。
脂肪、筋肉、血管、神経、関節、リンパ管など、やわらかい組織にできた腫瘍を、まとめて軟部腫瘍と言います(脂肪腫、筋腫、血管脂肪腫、血管腫、神経腫・神経鞘腫)。
軟部腫瘍は
- 手足に発生する事が多く、時に血管や神経を圧迫しますが、頚部にもできます(甲状腺腫瘍と鑑別)。
- 発症年齢は、子どもから高齢者までと幅広く、年齢や性別によって発生部位の傾向が異なります。
- 良性が70%、悪性(軟部肉腫または悪性軟部腫瘍)が30%
頚部脂肪腫
急激に増大する頸部脂肪肉腫
血管脂肪腫
血管脂肪腫は脂肪腫の一種で脂肪と血管を含みます。20歳から30歳までの若年成人に発症し、その原因として、
- 遺伝性
- 副腎皮質ステロイドの長期間使用
- 糖尿病
- 外傷
などが考えられます。
ほとんどが前腕ですが、頚部に現れる場合もあります。痛みを伴う点が脂肪腫と異なり、脂肪肉腫とも鑑別を要します。[Skeletal Radiol. 2023 Mar;52(3):541-552.]
甲状腺に発生する血管脂肪腫もあります。
(Cleveland ClinicのHPより改変)
粉瘤(アテローマ、アテローム)]
パラガングリオーマは、頭蓋底・頸部・胸部・膀胱付近などの傍神経節に発生する腫瘍(傍神経節腫)です。交感神経由来のパラガングリオーマは、カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなど)を過剰産生する場合が多く、副交感神経由来のパラガングリオーマはホルモン産生しないことが多い。副腎に発生しカテコラミンを過剰分泌する腫瘍は褐色細胞腫で、副腎以外の傍神経節に発生するのがパラガングリオーマと呼ばれます。
甲状腺と左総頸動脈の間や、甲状腺近傍に位置し、甲状腺腫瘍と鑑別が難しいパラガングリオーマの報告があります。[Oncol Lett. 2014 Nov;8(5):1925-1928.][Case Rep Endocrinol. 2016;2016:8527279.]
また、甲状腺にパラガングリオーマが発生する事もあります(甲状腺パラガングリオーマ)。
ユーイング肉腫 MRI T2W画像 (International Journal of Head and Neck Surgery, September-December 2012;3(3)165-167.)
滑膜肉腫は比較的まれな悪性軟部腫瘍です。滑膜細胞に似ていますが、滑膜由来かどうか不明です。頭頚部は四肢に次ぐ滑膜肉腫の好発部位(9%)です。穿刺細胞診では細胞数多く、粘着性・散在性パターン、紡錘形-円形細胞です。
甲状腺腫瘍と紛らわしかったり、甲状腺に浸潤する報告もあります。(ANZ J Surg. 2017 Nov;87(11):E214-E215.)(Zhonghua Zhong Liu Za Zhi. 2019 Sep 23;41(9):716-718)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。