転移性副腎腫瘍・ 副腎皮質癌・ 副腎原発悪性リンパ腫(PAL)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
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甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
転移性副腎腫瘍は肺がんなどの副腎転移が多く、超音波検査で低エコー、副腎出血を起こす事も。手術適応は少なく、切除後の予後は不変。甲状腺乳頭癌の副腎転移は癌死後の剖検で見つかる事が多く、存命中に見つかるのは稀。副腎の悪性リンパ腫は周囲からの転移性がほとんど。副腎原発悪性リンパ腫(PAL)は稀で両側性が多く、自己免疫疾患合併率が高い、副腎不全・中枢神経浸潤も起こしやすい。副腎皮質癌は稀でLi-Fraumeni症候群の合併が多く、癌抑制遺伝子・p53遺伝子と関連。副腎皮質癌のホルモン産生は60%で、コルチゾール産生するクッシング症候群が最多。
Keywords
転移性副腎腫瘍, 副腎原発悪性リンパ腫,転移,副腎腫瘍,副腎,悪性リンパ腫,PAL,甲状腺,副腎転移,副腎皮質癌
転移性副腎腫瘍と手術適応
甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の最も一般的な遠隔転移部位は肺・骨、低頻度ながら脳です。稀な転移部位は、肝臓、副腎、腎臓、膵臓、皮膚などです。(Endocr Pathol. 2016 Mar;27(1):55-64.)
甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の副腎転移は、癌死後の剖検で見つかる事が多いですが、存命中に見つかる稀な症例もあります。I-131 シンチグラフィー、I-131 アブレーション・アジュバント・治療における集積(取り込み)から発見されるケース[Acta Clin Croat. 2018 Jun;57(2):372-376.]は当然として、それ以外では、
- 特に高血圧を合併しているとホルモン産生(機能性)副腎腫瘍(褐色細胞腫、原発性アルドステロン症、クッシング症候群 )との鑑別が必要になります。(Endocr J. 2003 Apr;50(2):179-87.)
多発性内分泌腺腫症1型(MEN1)の可能性も考えられます。
- 大きさの増大を認めれば原発性副腎皮質癌合併(重複癌)の可能性があります。もし原発性副腎皮質癌なら、根本的な治療方針が変わるため、組織診断が必要になります。(J Med Case Rep. 2013 Jul 26;7:200.)(J Am Vet Med Assoc. 2015 Feb 1;246(3):303-5.)
I-131 シンチグラフィーで集積すれば、甲状腺乳頭癌の副腎転移と診断できますが、取り込まない場合、腹腔鏡下副腎摘出術にて病理標本を確認するしかありません。
(第57回 日本甲状腺学会 P2-076 原発性アルドステロン症を合併し副腎原発悪性腫瘍との鑑別に苦慮した甲状腺乳頭癌副腎転移の1 例)(第53回 日本甲状腺学会 P-242 甲状腺全摘手術 15 年後に副腎転移を認めた甲状腺乳頭癌の一例)
※放射性ヨウ素(I-131)が腎臓に貯留して偽陽性になる場合があります。[Clin Nucl Med. 1996 Dec;21(12):932-7.]
副腎偶発腫瘍(インシデンタローマ)・非機能性副腎腫瘍として副腎摘出術を受けた後に、病理標本から甲状腺乳頭癌の副腎転移が判明し、原発巣の甲状腺乳頭癌にたどり着いた報告があります。[AACE Clin Case Rep. 2022 Jan 13;8(3):131-134.]
甲状腺乳頭癌の副腎転移 I-131 SPECT/CT;左副腎に放射性ヨウ素の集積[Acta Clin Croat. 2018 Jun;57(2):372-376.]
転移性副腎腫瘍を手術切除後の予後
転移性副腎腫瘍を手術切除後の予後は、副腎以外の転移巣があっても無くても変わらないとの報告があります(Ann Surg. 2018 Mar 23. )。
副腎皮質癌(原発性副腎皮質癌)は、極めて稀で、高悪性度の癌です。副腎皮質癌の発生年齢は5歳以下の小児と40~50歳台の2峰性です(J Clin Endocrinol Metab 91: 2027-2037, 2006)。Li-Fraumeni症候群の合併が多く、癌抑制遺伝子であるp53遺伝子変異との関連が有名(J Urol 169: 5-11, 2003)。
副腎皮質癌には
- ホルモン産生する機能性(60%)[コルチゾール産生するクッシング症候群が最多(良性のクッシング症候群と異なりDHEA-Sが高値になります)、約30%は複数のホルモン産生(アンドロゲン、エストラジオール、ホルモン前駆体)](J Clin Endocrinol Metab 91: 2650-2655, 2006)
- ホルモン産生しない非機能性
があります。
副腎皮質癌の治療はヨーロッパでは、ミトタン、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチンの4剤併用療法(M-EDP療法)が有効とさてています。
副腎皮質癌を疑う場合
副腎皮質癌を疑う場合
- 4cm以上
- 増大傾向
- CT、超音波(エコー)検査にて内部不均一(褐色細胞腫でも同じ)
- CT値は10HU以上(褐色細胞腫でも同じ)
副腎皮質癌のCT値
副腎皮質癌のCT値は、20HU以上と高値になります(10HU以上なら疑います)。しかし、褐色細胞腫でも同じく、CT値は、20以上になるため注意が必要です。
良性の副腎皮質腺腫、副腎脂肪腫、副腎嚢胞などは、CT値は10未満の低値になります。
副腎皮質癌と甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の合併
副腎腫瘍と甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)が合併している場合、
- 甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の副腎転移
- 副腎皮質癌と甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)の合併(重複癌)(J Med Case Rep. 2013 Jul 26;7:200.)(J Am Vet Med Assoc. 2015 Feb 1;246(3):303-5.)
なのか鑑別が必要です。後者でかつ、肺転移、脳転移があった場合、どちらの転移なのかによって治療方針が変わります(Rare Tumors. 2011 Oct 21;3(4):e45. doi: 10.4081/rt.2011.e45.)
下;甲状腺乳頭癌に合併した副腎皮質癌(重複癌)MRI画像(J Med Case Rep. 2013 Jul 26;7:200.)
副腎・甲状腺など内分泌臓器に発生する悪性リンパ腫は3%程度とされます[Medicine (Baltimore)40 : 31-84, 1961]。
副腎の悪性リンパ腫は、周囲組織や後腹膜リンパ節から進展してくる転移性がほとんどで,副腎原発悪性リンパ腫(PAL)は稀です(Clin Lymphoma 4 : 154-160, 2003)。
- 副腎原発悪性リンパ腫(PAL;Primary adrenal lymphoma)は、両側性が多い。
- 副腎原発悪性リンパ腫(PAL)は、自己免疫疾患の合併率が高いです。
- 副腎原発悪性リンパ腫(PAL)は、化学療法が奏功しますが、診断・治療が遅れ、副腎不全・中枢神経浸潤を起こしやすいです。
症状は、
- 腹痛,腰痛,
- 発熱,体重減少
- 副腎機能不全
を呈します。診断は、
- sIL2-R (可溶性インターロイキン2受容体)高値
- MRIで造影効果に乏しい境界明瞭な腫瘤
- Ga(ガリウム)シンチグラフィーで陽性
- CTガイド下生検で確定します。
小児癌の一種、神経芽腫(神経芽細胞腫:ニューロブラストーマ)は副腎に発生する事が多い神経細胞の癌です。白血病、脳腫瘍に次いで多いです。
神経芽腫(神経芽細胞腫:ニューロブラストーマ)の症状は
- 発熱
- 腹部腫瘤で偶然、発見される
- 骨髄転移よる骨痛、歩行時の痛み
- 脊椎神経の圧迫症状
などです。
神経芽腫(神経芽細胞腫:ニューロブラストーマ)の検査所見・診断は
- 血清神経特異エノラーゼ(NSE) 高値
- 尿中バニリルマンデル酸(VMA)高値
- 123I-MIBGシンチ;転移巣の検索
進行性神経芽細胞腫の治療は、
- 手術
- 放射線療法
①I-131-メチヨードベンジルグアニジン(I-131-MIBG)
②全身放射線療法
放射線治療後の2次性原発がん(second primary cancers)としての甲状腺癌は、他の癌に対する照射後よりも2-5倍多いとされます。(Cancer Res. 1991; 51, 2885.)(Br J Cancer. 1992 Mar;65(3):425-8.)
甲状腺への被ばく量で補正して計算しても、神経芽腫での甲状腺がん発生率はウィルムス腫瘍(Wilms' tumor)、悪性リンパ腫よりも有意に高く、何らかの遺伝的素因(神経芽細胞腫と分化型甲状腺がんの発生に共通のメカニズム)があると推察されます。(Cancer Res. 1991; 51, 2885.)(Br J Cancer. 1992 Mar;65(3):425-8.) - 化学療法(抗がん剤)
I-131-メチヨードベンジルグアニジン(I-131-MIBG)による放射線療法で甲状腺機能障害
I-131-メチヨードベンジルグアニジン(I-131-MIBG)による放射線療法により、12-85%で甲状腺機能障害が生じます。ほとんどが甲状腺機能低下症です。(Cancer. 2002 Apr 1;94(7):2081-9.)(Lancet. 1993 Jul 3;342(8862):57.)(Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2015;42(5):706-15.)。
I-131-MIBGは、ほとんどが尿に排出されますが、1%は肝臓で代謝され、遊離したI-131は甲状腺に取り込まれ(集積し)ます。その結果、甲状腺組織が破壊されると同時に、放射線誘発性甲状腺癌が発生します。(Pediatr Blood Cancer. 2013 Nov;60(11):1833-8.)
甲状腺を保護するため、安定ヨウ素(ヨウ化カリウム)を2-10時間前に投与し、Wolff-Chaikoff効果によりI-131の取り込み(集積)を抑制します。しかし、甲状腺機能低下症と放射線誘発性甲状腺癌を防ぐには不十分です。甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン)、メチマゾール、ヨウ化カリウム(KI)の併用はヨウ化カリウム(KI)単独よりも甲状腺保護効果に優れるとされます。[Cancer. 2003 Jul 15;98(2):389-96.]
全身放射線療法
全身放射線療法も甲状腺機能低下症を起こします(Rev Chil Pediatr. 2020 Jun;91(3):379-384.)。
化学療法
化学療法でも甲状腺機能障害が生じます。(Rev Chil Pediatr. 2020 Jun;91(3):379-384.)
ビンクリスチンは、甲状腺濾胞細胞のマイクロチュブル-マイクロフィラメント系に作用し、濾胞内からのサイログロブリン取り込みを阻害します。
シスプラチン(CDDP)は、甲状腺濾胞細胞を直接障害します。
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