低尿酸血症と甲状腺 [日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学附属病院(現、大阪公立大学附属病院) 代謝内分泌内科（第2内科）で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺機能亢進症/バセドウ病で尿酸産生過剰が有意なら高尿酸血症、腎血流量増加で腎の尿酸排泄が増大すれば低尿酸血症。腎性低尿酸血症では尿酸を再吸収するトランスポーター異常（尿酸トランスポーター異常症）により尿酸が尿中へ過剰排泄され尿酸結石、運動後急性腎不全に。尿酸値2.0mg/dL以下なら尿酸クリアランス検査。尿路結石予防のため十分な水分補給と尿のアルカリ化を行う。偽性副甲状腺機能低下症、SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)も低尿酸血症に。
Keywords
低尿酸血症,尿酸結石,運動後急性腎不全,腎性低尿酸血症,偽性副甲状腺機能低下症,SIADH,抗利尿ホルモン不適合分泌症候群,甲状腺,甲状腺機能亢進症,バセドウ病
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の血清尿酸値は、健常人と比較して有意に高値を示し、抗甲状腺薬投与による甲状腺機能正常化に伴い低下するとの報告があります。一方で、逆に甲状腺機能亢進症/バセドウ病の血清尿酸値は低値との報告もあります(J Clin Endocrinol Metab. 1960 Nov:20:1457-66.)。
- 甲状腺機能亢進症による代謝亢進で、尿酸産生過剰が有意なら高尿酸血症
- 甲状腺機能充進症による腎血流量増加で、腎の尿酸排泄が増大すれば低尿酸血症(hypouricemia)
になると考えられます。
低尿酸血症でも尿酸結石・運動後急性腎不全をおこす可能性があります。全ての低尿酸血症でおこる訳ではありません。
腎性低尿酸血症は、尿酸を再吸収するトランスポーター（URAT1、URATv1/GLUT9）異常（尿酸トランスポーター異常症）により、尿酸が尿中へ過剰排泄され、尿酸結石が形成されます。運動後急性腎不全の原因にもなります。
尿酸値が2.0 mg/dL 以下の場合、腎性低尿酸血症を疑って、尿酸クリアランス検査を行う事が推奨されます。
腎性低尿酸血症では尿路結石予防のため、
- 十分な水分補給
- 尿をアルカリ化（クエン酸塩や重曹投与など）し、尿酸を水に溶けやすくします
運動後急性腎不全の既往がある場合、急激な運動を避けねばなりません
活性型ビタミンD3治療により低尿酸血症が改善した偽性副甲状腺機能低下症Ⅰb型症例が報告されています。（高尿酸血症と痛風 Vol.23 No.2, 99-102, 2015）[J Clin Endocrinol Metab. 2004 Dec;89(12):5942-7.]
原発性副甲状腺機能亢進症では、高率に高尿酸血症が認められ、副甲状腺腫瘍摘出後に血清尿酸値は正常化します。副甲状腺ホルモン(PTH)受容体以降の異常である偽性副甲状腺機能低下症(pseudohypoparathyroidism)において、低尿酸血症が認められるのは解ります。低尿酸血症を呈する偽性副甲状腺機能低下症Ⅰb型家系では、尿酸の排泄亢進が認められ、副甲状腺ホルモン(PTH)が尿酸排泄に関与している可能性があります。しかし、活性型ビタミンD3治療で回復すると言う事は、副甲状腺ホルモン(PTH)の直接作用でなく、ビタミンD3・カルシウム・リン代謝の関与が考えられます。[J Clin Endocrinol Metab. 2004 Dec;89(12):5942-7.]
SIADH(抗利尿ホルモン不適合分泌症候群)は、体内に水を貯めて尿量を減らす抗利尿ホルモン（バソプレッシン, ADH)が、抑制される事無く分泌され続ける状態。
[必ずしも抗利尿ホルモン（バソプレッシン, ADH)が正常値を超えるとは限らない]。
血管内の水分過剰で、血中Na濃度が薄められ低ナトリウム性低浸透圧血症になり、同時に低尿酸血症になります。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
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