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下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症・思春期早発症・松果体部腫瘍[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症

甲状腺専門内分泌代謝長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科教室(第二内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。視床下部・下垂体の診療を行っておりません。

  1. ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン):性腺(卵巣・精巣)を刺激するホルモン。LHFSH hCGがあります。
  2. LH(黄体形成ホルモン):下垂体前葉で合成・分泌され、卵巣ではLHに反応し, 女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が産生されます。精巣ではLHに反応し、男性ホルモン(テストステロン)が産生されます。
    女性では月経周期の途中のLHサージ(急激なLH上昇)が排卵を誘発します。LHは更に排卵後の卵胞を黄体化させ、プロゲステロンを分泌させます。
  3. FSH(卵胞刺激ホルモン):下垂体前葉で合成・分泌され、卵巣内の未成熟な卵胞の成長を刺激し成熟させる。男性では、FSHは精巣のアンドロゲン結合タンパク質の産生を刺激し、精子形成を促進。
  4. hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン): 受胎の直後から胎盤の一部で作られます。LH(黄体形成ホルモン)と構造が似ており、通常は14日程度で消える黄体を長持ちさせ、妊娠を継続させます。 
  5. GnRH(LH-RH)[性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone, GnRH)]:は視床下部で合成・分泌され、下垂体前葉からFSHLHを分泌させます

Summary

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症は、中枢性思春期早発症(器質性と特発性)・下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍(FSH産生腫瘍が多い)・視床下部腫瘍(胚細胞腫,奇形腫,過誤腫)によるhCGまたはGnRH産生。症状は、小児の2次性徴、成人男性の女性化乳房、閉経前の成人女性の過少月経、腫瘍による中枢神経症状。血中ゴナドトロピン[LH(黄体形成ホルモン)FSH(卵胞刺激ホルモン)hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)]高値。GnRH(LHRH)は測定不能。鑑別診断として、原発性性腺機能低下症[性腺(卵巣・精巣)自体のホルモン産生能力低下]に対する、(性腺刺激ホルモンである)ゴナドトロピンの分泌過剰。

Keywords

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症,中枢性思春期早発症,脳腫瘍,下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍,FSH産生腫瘍,視床下部腫瘍,hCG,GnRH,2次性徴,女性化乳房

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の分類

中枢性思春期早発症は、

  1. 原因不明の「特発性中枢性思春期早発症」;最も頻度が高く、女児に多い。
     
  2. 「器質性中枢性思春期早発症」;男児に多い。
    下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍(FSH産生腫瘍が多い)
    視床下部腫瘍(胚細胞腫,奇形腫,過誤腫)によるhCG またはGnRH産生
    星状細胞腫など脳腫瘍、脳炎後遺症・水頭症など

に分類されます。

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の症状

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の症状は、

  1. 小児は思春期早発症:性ホルモン分泌亢進による2次性徴が低年齢で起こる。「女子は8歳前、男子は9歳前に二次性徴が出現したとき」と定義されますが、10歳未満で陰毛発生・変声、9歳未満で精巣や陰茎の発育、11歳未満での腋毛などの場合もあります。
  2. 身長増加促進と骨成熟促進;早期の思春期スパートによる身長促進。早期の骨端線閉鎖による最終的な低身長。
  3. 成人男性:女性化乳房
  4. 閉経前の成人女性:過少月経
  5. 腫瘍による頭蓋内圧亢進による頭痛・眼の奥の痛み、視野・視力障害

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の診断

小児思春期早発症が疑われる場合、まずは

  1. 成長曲線との対比
  2. 手根骨エックス線撮影による骨年齢の評価;利き手と逆手の手根骨で骨年齢を算出

を行う。

  1. 血中ゴナドトロピン(LHFSHhCG)高値
  2. 性ステロイドホルモン高値
  3. GnRH(LHRH)は測定できません
  4. MRIで視床下部や下垂体に腫瘍の有無を確認
  5. 手術標本(ということは手術して摘出した後しかわからない)あるいは下垂体生検し、免疫染色でゴナドトロピン産生を証明

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の鑑別診断

下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の鑑別診断として、原発性性腺機能低下症[性腺(卵巣・精巣)自体のホルモン産生能力低下]に対する(性腺刺激ホルモンである)ゴナドトロピンの分泌過剰が挙げられます。

原発性性腺機能低下症では、

  1. ゴナドトロピン値の高値は同じ
    精巣機能低下症/卵巣機能低下症では、FSH >20 mIU/mL
  2. 性ホルモン分泌低下が異なる

また、2次性徴が低年齢で起こる臨床症状から、

  1. 甲状腺機能低下症(末梢性思春期早発症)
  2. 先天性副腎過形成(末梢性思春期早発症)
  3. クッシング症候群(末梢性思春期早発症)
  4. マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群
  5. エストロゲンを分泌する性腺腫瘍(卵巣腫瘍、精巣腫瘍)(末梢性思春期早発症)

を鑑別する必要があります。

[N Engl J Med. 2008 May 29;358(22):2366-77.][Pediatr Rev. 2006 Oct;27(10):373-81.]

特発性中枢性思春期早発症と甲状腺

特発性中枢性思春期早発症において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)はLH(黄体形成ホルモン)に関連して高く、甲状腺ホルモンの遊離チロキシン(FT4)は低くなります。

そして、GnRH(LH-RH)[性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone, GnRH)]アゴニスト治療によるGnRH 受容体のダウンレギュレーションで、TSH・LHともに低下します。[Ann Pediatr Endocrinol Metab. 2019 Jun;24(2):124-128.][Tohoku J Exp Med. 2020 Nov;252(3):193-197.]

GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)誘導体[GnRHアゴニスト]で破壊性甲状腺中毒症型(薬剤性無痛性甲状腺炎)、甲状腺機能低下症粘液水腫性昏睡甲状腺機能亢進症/バセドウ病が誘発、悪化、再発します。(前立腺がん、乳癌子宮内膜症子宮筋腫の治療で薬剤性甲状腺中毒症

特発性中枢性思春期早発症の治療

特発性中枢性思春期早発症の治療は、LH-RH アナログ製剤。

 視床下部過誤腫による思春期早発症

視床下部過誤腫(ししょうかぶかごしゅ、hypothalamic hamartoma)は、5-10万人に一人の頻度で発生する稀な腫瘍。胎性期の視床下部様組織が、あり得ない場所にできる異所性腫瘍です。胎生期に形成されるため、生まれた後に大きくなる事はありません。

視床下部過誤腫の主な特徴は、

  1. てんかん発作;笑い発作、けいれん
  2. てんかん性脳障害
  3. 思春期早発症

(写真 J Neurosurg Pediatr. 2013 Apr;11(4):464-8.)[Epileptic Disord. 2003 Dec;5(4):177-86.]

視床下部過誤腫 MRI画像

笑い発作

視床下部過誤腫は笑い病とも呼ばれます。笑い発作は、強迫的な笑い表情、微笑、声をあげて大笑い、楽しい感じを伴わない笑いの事が多い。視床下部過誤腫が「笑いのツボ」である乳頭体を刺激するのが原因。抗てんかん薬では治りません。 

視床下部過誤腫でなくても、乳頭体に異常放電が起こる脳の障害、例えば、特発性のてんかん等でも笑い病・笑い発作になります。映画「ジョーカー/JOKER」がその典型例で、主演のホアキン・フェニックスが見事に「強迫的な大笑い」を演じています。

ホアキン・フェニックス
ジョーカー

けいれん発作

けいれん発作は、周囲に体をぶつけ、全身傷だらけになるので虐待と間違われる事があります。

てんかん性脳障害

てんかん発作に続発する二次的な脳障害で、早期の視床下部過誤腫治療により、てんかん発作が消失すれば改善します(早期に治療されなければ不可逆性)。 

精神発達遅滞

精神発達遅滞が起きる前に、早期の視床下部過誤腫治療が必要です。 

行動異常

視床下部過誤腫が大きいと、多動や制御の効かない行動をおこし、ADHD(注意欠陥/多動性障害) 、甲状腺機能亢進症/バセドウ病 と間違えられる事があります。

思春期早発症

視床下部過誤腫が大きいと思春期早発症を起こす事があります。視床下部過誤腫がLH-RHを作るのでなく、サイトカイン(生理活性タンパク)TGFα・TGFβを分泌し、本物の視床下部からのLH-RH分泌を促進させます。

早期に視床下部過誤腫の全摘出が必要だが、早期からのホルモン療法[LH-RHアナログ,リュープロリン(リュープリン®)投与]が有効。 

視床下部過誤腫の治療

視床下部過誤腫の治療、抗てんかん薬・ホルモン療法[LH-RHアナログ,リュープロリン(リュープリン®)投与]は対症療法に過ぎず、根治的には、視床下部過誤腫の摘出しかありません。しかし、視床下部は、脳の最も深い所にあり手術が困難です。手術後、記憶障害の後遺症もあります。

松果体部腫瘍

松果体部腫瘍は、小児期の発生が多いが、どの年齢層にも発生します。

  1. 胚細胞腫(最多)
  2. 絨毛癌
  3. 卵黄嚢腫瘍
  4. 奇形腫
  5. 松果体細胞腫・悪性の松果体芽細胞腫

などです。

(図 Altair Healthより改変)

松果体

松果体部腫瘍の症状は

  1. 中脳水道狭窄による水頭症・頭蓋内圧亢進症状
  2. 視蓋前域の圧迫;眼球運動障害・上方注視麻痺、眼瞼下垂、瞳孔の対光反射・調節反射の消失(Parinaud症候群)
  3. 特に男児で視床下部の圧迫により思春期早発症

β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、はα-フェトプロテイン(AFP)が上昇松果体腫・松果体芽腫は上昇しない

治療は外科的切除、術後放射線治療・抗がん剤治療

松果体腫 MRI画像

松果体腫 MRI画像 (Radiopaediaより)

松果体 胚細胞腫 MRI画像

松果体 胚細胞腫 MRI画像 (Radiopaediaより)

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区,天王寺区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

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