下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症・思春期早発症・松果体部腫瘍[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科教室(第二内科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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- ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン):性腺(卵巣・精巣)を刺激するホルモン。LH、 FSH、 hCGがあります。
- LH(黄体形成ホルモン):下垂体前葉で合成・分泌され、卵巣ではLHに反応し, 女性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が産生されます。精巣ではLHに反応し、男性ホルモン(テストステロン)が産生されます。女性では月経周期の途中のLHサージ(急激なLH上昇)が排卵を誘発します。LHは更に排卵後の卵胞を黄体化させ、プロゲステロンを分泌させます。
- FSH(卵胞刺激ホルモン):下垂体前葉で合成・分泌され、卵巣内の未成熟な卵胞の成長を刺激し成熟させる。男性では、FSHは精巣のアンドロゲン結合タンパク質の産生を刺激し、精子形成を促進。
- hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン): 受胎の直後から胎盤の一部で作られます。LH(黄体形成ホルモン)と構造が似ており、通常は14日程度で消える黄体を長持ちさせ、妊娠を継続させます。
- GnRH(LH-RH)[性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone, GnRH)]:は視床下部で合成・分泌され、下垂体前葉からFSHとLHを分泌させます
Summary
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症は、中枢性思春期早発症(器質性と特発性)・下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍(FSH産生腫瘍が多い)・視床下部腫瘍(胚細胞腫,奇形腫,過誤腫)によるhCGまたはGnRH産生。症状は、小児の2次性徴、成人男性の女性化乳房、閉経前の成人女性の過少月経、腫瘍による中枢神経症状。血中ゴナドトロピン[LH(黄体形成ホルモン)、 FSH(卵胞刺激ホルモン)、 hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)]高値。GnRH(LHRH)は測定不能。鑑別診断として、原発性性腺機能低下症[性腺(卵巣・精巣)自体のホルモン産生能力低下]に対する、(性腺刺激ホルモンである)ゴナドトロピンの分泌過剰。
Keywords
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症,中枢性思春期早発症,脳腫瘍,下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍,FSH産生腫瘍,視床下部腫瘍,hCG,GnRH,2次性徴,女性化乳房
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の分類
中枢性思春期早発症は、
- 原因不明の「特発性中枢性思春期早発症」;最も頻度が高く、女児に多い。
- 「器質性中枢性思春期早発症」;男児に多い。
下垂体ゴナドトロピン産生腫瘍(FSH産生腫瘍が多い)
視床下部腫瘍(胚細胞腫,奇形腫,過誤腫)によるhCG またはGnRH産生
星状細胞腫など脳腫瘍、脳炎後遺症・水頭症など
に分類されます。
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の症状
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の症状は、
- 小児は思春期早発症:性ホルモン分泌亢進による2次性徴が低年齢で起こる。「女子は8歳前、男子は9歳前に二次性徴が出現したとき」と定義されますが、10歳未満で陰毛発生・変声、9歳未満で精巣や陰茎の発育、11歳未満での腋毛などの場合もあります。
- 身長増加促進と骨成熟促進;早期の思春期スパートによる身長促進。早期の骨端線閉鎖による最終的な低身長。
- 成人男性:女性化乳房
- 閉経前の成人女性:過少月経
- 腫瘍による頭蓋内圧亢進による頭痛・眼の奥の痛み、視野・視力障害
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の診断
小児思春期早発症が疑われる場合、まずは
- 成長曲線との対比
- 手根骨エックス線撮影による骨年齢の評価;利き手と逆手の手根骨で骨年齢を算出
を行う。
- 血中ゴナドトロピン(LH、 FSH、 hCG)高値
- 性ステロイドホルモン高値
- GnRH(LHRH)は測定できません
- MRIで視床下部や下垂体に腫瘍の有無を確認
- 手術標本(ということは手術して摘出した後しかわからない)あるいは下垂体生検し、免疫染色でゴナドトロピン産生を証明
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の鑑別診断
下垂体性ゴナドトロピン分泌亢進症の鑑別診断として、原発性性腺機能低下症[性腺(卵巣・精巣)自体のホルモン産生能力低下]に対する(性腺刺激ホルモンである)ゴナドトロピンの分泌過剰が挙げられます。
原発性性腺機能低下症では、
- ゴナドトロピン値の高値は同じ
精巣機能低下症/卵巣機能低下症では、FSH >20 mIU/mL - 性ホルモン分泌低下が異なる
また、2次性徴が低年齢で起こる臨床症状から、
- 甲状腺機能低下症(末梢性思春期早発症)
- 先天性副腎過形成(末梢性思春期早発症)
- クッシング症候群(末梢性思春期早発症)
- マッキューン・オルブライト(McCune-Albright)症候群
- エストロゲンを分泌する性腺腫瘍(卵巣腫瘍、精巣腫瘍)(末梢性思春期早発症)
を鑑別する必要があります。
[N Engl J Med. 2008 May 29;358(22):2366-77.][Pediatr Rev. 2006 Oct;27(10):373-81.]
特発性中枢性思春期早発症と甲状腺
特発性中枢性思春期早発症において、甲状腺刺激ホルモン(TSH)はLH(黄体形成ホルモン)に関連して高く、甲状腺ホルモンの遊離チロキシン(FT4)は低くなります。
そして、GnRH(LH-RH)[性腺刺激ホルモン放出ホルモン(Gonadotropin releasing hormone, GnRH)]アゴニスト治療によるGnRH 受容体のダウンレギュレーションで、TSH・LHともに低下します。[Ann Pediatr Endocrinol Metab. 2019 Jun;24(2):124-128.][Tohoku J Exp Med. 2020 Nov;252(3):193-197.]
GnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)誘導体[GnRHアゴニスト]で破壊性甲状腺中毒症型(薬剤性無痛性甲状腺炎)、甲状腺機能低下症、粘液水腫性昏睡、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が誘発、悪化、再発します。(前立腺がん、乳癌、子宮内膜症、子宮筋腫の治療で薬剤性甲状腺中毒症)
特発性中枢性思春期早発症の治療
特発性中枢性思春期早発症の治療は、LH-RH アナログ製剤。
笑い発作
視床下部過誤腫は笑い病とも呼ばれます。笑い発作は、強迫的な笑い表情、微笑、声をあげて大笑い、楽しい感じを伴わない笑いの事が多い。視床下部過誤腫が「笑いのツボ」である乳頭体を刺激するのが原因。抗てんかん薬では治りません。
けいれん発作
けいれん発作は、周囲に体をぶつけ、全身傷だらけになるので虐待と間違われる事があります。
てんかん性脳障害
てんかん発作に続発する二次的な脳障害で、早期の視床下部過誤腫治療により、てんかん発作が消失すれば改善します(早期に治療されなければ不可逆性)。
精神発達遅滞
精神発達遅滞が起きる前に、早期の視床下部過誤腫治療が必要です。
行動異常
視床下部過誤腫が大きいと、多動や制御の効かない行動をおこし、ADHD(注意欠陥/多動性障害) 、甲状腺機能亢進症/バセドウ病 と間違えられる事があります。
思春期早発症
視床下部過誤腫が大きいと思春期早発症を起こす事があります。視床下部過誤腫がLH-RHを作るのでなく、サイトカイン(生理活性タンパク)TGFα・TGFβを分泌し、本物の視床下部からのLH-RH分泌を促進させます。
早期に視床下部過誤腫の全摘出が必要だが、早期からのホルモン療法[LH-RHアナログ,リュープロリン(リュープリン®)投与]が有効。
視床下部過誤腫の治療
視床下部過誤腫の治療、抗てんかん薬・ホルモン療法[LH-RHアナログ,リュープロリン(リュープリン®)投与]は対症療法に過ぎず、根治的には、視床下部過誤腫の摘出しかありません。しかし、視床下部は、脳の最も深い所にあり手術が困難です。手術後、記憶障害の後遺症もあります。
松果体部腫瘍の症状は
- 中脳水道狭窄による水頭症・頭蓋内圧亢進症状
- 視蓋前域の圧迫;眼球運動障害・上方注視麻痺、眼瞼下垂、瞳孔の対光反射・調節反射の消失(Parinaud症候群)
- 特に男児で視床下部の圧迫により思春期早発症
β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)、はα-フェトプロテイン(AFP)が上昇松果体腫・松果体芽腫は上昇しない
治療は外科的切除、術後放射線治療・抗がん剤治療
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区,天王寺区も近く。