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甲状腺腫瘍    [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波検査(エコー)の長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺の基礎知識を、初心者でもわかるように、長崎クリニック(大阪市東住吉区)院長が解説します。

高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 甲状腺編 part3 を御覧ください。

Summary

甲状腺腫瘍の頻度、腺腫様甲状腺腫,良性濾胞腺腫,甲状腺濾胞癌,甲状腺乳頭癌,甲状腺低分化がん,甲状腺髄様癌,甲状腺未分化癌,甲状腺原発悪性リンパ腫の分類,症状,診断,治療を、長崎クリニック(大阪)院長がわかりやすく解説します。超音波検査(エコー)所見、細胞診の所見についても説明します。

以下の超音波および病理写真には、長崎クリニック(大阪)のオリジナル以外に、神甲会 隈病院より御提供いただいたものを含みます(第9,10回神戸甲状腺診断セミナー)。この場を借りて、宮内 昭院長、病理診断科の廣川 満良先生他、隈病院の諸先生方に感謝の意を表します。

甲状腺腫瘍何がどれくらいみつかるの?

近年、甲状腺腫瘍が増え続けています。これは、超音波(エコー)診断装置の進歩に加え、肺CTや頚動脈エコーで偶然見つかるものが増えているためです。人間ドックで甲状腺超音波(エコー)検査をおこなうと20%位に甲状腺腫瘍(甲状腺結節)がみつかるとの報告が最も多いです。

甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013では、甲状腺結節の約2-3%が甲状腺癌とされます。

甲状腺腫瘍には以下のようなものがあります。

甲状腺癌 頻度
甲状腺癌の種類と頻度
  1. 良性と言われていたが、高頻度に悪性がみつかる事が報告された腺腫様甲状腺腫
  2. 良性濾胞腺腫(いわゆるアデノーマ)
  3. 濾胞腺腫だが良悪鑑別困難例(境界病変)
  4. 悪性の甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌甲状腺原発悪性リンパ腫

 (甲状腺癌の内訳は右の図)

個別の甲状腺腫瘍

甲状腺腫瘍

腺腫様甲状腺腫

腺腫様甲状腺腫とは

腺腫様甲状腺腫は、

  1. 多発性の非腫瘍性結節(過形成:正常な細胞が過度に増殖)
  2. 破壊と変性:出血、嚢胞変性(組織が溶ける)、線維化、石灰化、炎症

による甲状腺の腫れです[要するに破壊と増殖による、甲状腺の結節(しこり)]。破壊と増殖の原因は、何であっもよく、

  1. 橋本病
  2. バセドウ病
  3. 先天性甲状腺機能低下症
  4. 薬剤性
  5. ヨード過剰摂取
  6. 家族性腺腫様甲状腺腫 (遺伝性)

など全て該当します。

腺腫様甲状腺腫の症状

腺腫様甲状腺腫の症状は、

  1. 甲状腺腫の腫れ
  2. 破壊性変化が優位だと、甲状腺ホルモンを作る細胞が減り、甲状腺機能低下症
  3. 腺腫様結節が遺伝子変異し、甲状腺ホルモンを作る刺激信号に制限が掛からなくなり、甲状腺機能亢進症をおこす機能性甲状腺腫(バセドウ病の抗体が陰性の甲状腺機能亢進症---甲状腺機能性結節
  4. 腺腫様結節に混ざって甲状腺癌が発生。
    伊藤病院の報告では、腺腫様甲状腺腫として手術した301例中18例(6.0%)に、甲状腺癌がみつかったとされます。(日本臨床外科医学会雑誌Vol. 58 (1997)  No. 4  P 729-734 )

腺腫様甲状腺腫のエコー像

エコー上、腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫と類似しますが

  1. 被膜があれば良性濾胞腺腫ですが、被膜がなければ腺腫様甲状腺腫[ただし腺腫様甲状腺腫でも、腫瘍の境界部のハロー(halo:低エコー帯)は、不完全な形で存在します]
  2. 中心に達する栄養血管がなければ腺腫様甲状腺腫
  3. 良性濾胞腺腫は石灰化を伴う事が少ないが、腺腫様甲状腺腫は多々石灰化します。しかも、石灰化した腺腫様甲状腺腫は悪性(甲状腺がん)の可能性が生じます。(Thyroid cancer associated with adenomatous goiter: an analysis of the incidence and clinical factors.Surg Today. 1997;27(6):495-9.)

と区別できます。(実際、被膜も栄養血管も評価が難しい場合が多いです)

腺腫様結節 超音波(エコー)像
腺腫様結節 超音波(エコー)画像

腺腫様甲状腺腫は、多発性の非腫瘍性結節(過形成:正常な細胞が過度に増殖)=腺腫様結節の集合体です。大小多数の白い結節が(充実性)腺腫様結節です。

エコー0-1

のう胞型腺腫様結節です。

エコー0

.

さらに詳しいエコー上の腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫の鑑別点(専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

さらに詳しいエコー上の腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫の鑑別点としては、境界の粗雑さは、腺腫様甲状腺腫は0%ですが、良性濾胞腺腫では3.2%です。(図:第16回隈病院甲状腺研究会より)

濾胞性腫瘍と腺腫様結節 超音波(エコー)所見の比較①

濾胞性腫瘍と腺腫様結節 超音波(エコー)所見の比較①

濾胞性腫瘍と腺腫様結節 超音波(エコー)所見の比較②

濾胞性腫瘍と腺腫様結節 超音波(エコー)所見の比較②

典型的な腺腫様結節 超音波(エコー)画像

典型的な腺腫様結節 超音波(エコー)画像

典型的な濾胞性腫瘍 超音波(エコー)画像

典型的な濾胞性腫瘍 超音波(エコー)画像

スポンジ状形態
スポンジ状形態 超音波(エコー)画像

スポンジ状形態(spongiform appearance)は、多数の細かいのう胞変性(甲状腺腫瘍内部組織が溶けて空洞化すること)が甲状腺腫瘍の50%以上を占める形態です。スポンジ状形態はもっとも確実な良性の所見と報告されます(Radiology 247:762-770,2008)。しかし、スポンジ状形態の腺腫様甲状腺腫だけでなく、多のう胞型甲状腺乳頭癌も存在するため100%確実とは言えないようです。(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

腺腫様甲状腺腫の細胞像

腺腫様甲状腺腫の細胞像は良性濾胞腺腫と類似しているため、両者を鑑別し難く、エコー所見と合わせて診断しなければなりません。

(以下の細胞診の所見は、医療関係者以外の方は無視してください。写真のみご覧になり、「こんなものか」と思っていただければ十分です。)

  1. 採取される濾胞細胞が多く、シート状、濾胞状、樹枝状、乳頭状(甲状腺乳頭癌と鑑別)にあらゆる配列があります。
  2. 濾胞細胞が多いため、悪性腫瘍のように細胞集団の重積がみられることがますが、配列は整然としています。
  3. 良性の特徴である核は小型、核形の不整は少なく、核内クロマチンは細顆粒状で目立ちません。
  4. 悪性と紛らわしいのは、濾胞上皮は多様、細胞の大小不同や、好酸性細胞が認められます。
  5. 背景にはコロイド、泡沫細胞、間質細胞がよくあります。
腺腫様結節 細胞診

腺腫様甲状腺腫の治療

腺腫様甲状腺腫の治療は、

  1. 原則、経過観察。甲状腺組織の破壊と増殖おこす原因の除去(例えば、ヨード過剰摂取制限など)。急激に増大する結節、石灰化を伴う結節あれば甲状腺癌を疑い精査。
  2. 甲状腺機能低下症あれば、甲状腺ホルモン補充
  3. 手術:①癌と確定できない、または癌ではない甲状腺腫瘍の手術適応 ②甲状腺機能亢進症をおこす機能性甲状腺腫

良性濾胞腺腫

良性濾胞腺腫

良性濾胞腺腫は、日本人に多く発生する甲状腺の良性腫瘍です。なぜできるのか、原因は不明です。痛みのない甲状腺のしこりで、ゆっくり大きくなるのが特徴です。良性濾胞腺腫腺腫様甲状腺腫と鑑別が困難です。

良性濾胞腺腫のエコー像

エコー上、腺腫様甲状腺腫良性濾胞腺腫と類似しますが

  1. 被膜があれば良性濾胞腺腫ですが、被膜がなければ腺腫様甲状腺腫[ただし腺腫様甲状腺腫でも、腫瘍の境界部のハロー(halo:低エコー帯)は、不完全な形で存在します]
  2. 中心に達する栄養血管がなければ腺腫様甲状腺腫
  3. 良性濾胞腺腫は石灰化を伴う事が少ないが、腺腫様甲状腺腫は多々石灰化する。しかも、石灰化した腺腫様甲状腺腫は悪性(甲状腺がん)の可能性が生じます。

と区別できます。(実際、被膜も栄養血管も評価が難しい場合が多いです)

良性濾胞腺腫:被膜を持ち、甲状腺との境界が明瞭

良性濾胞腺腫:中心へ行く栄養血管あり

のう胞型良性濾胞腺腫=のう胞性良性濾胞腺腫=のう胞腺腫。

エコー0-2

のう胞型良性濾胞腺腫→の所に被膜が存在します。

被膜が石灰化した良性濾胞腺腫

石灰化した被膜内に中心栄養血管があります。良性濾胞腺腫

良性濾胞腺腫の細胞像

(以下の細胞診の所見は、医療関係者以外の方は無視してください。写真のみご覧になり、「こんなものか」と思っていただければ十分です。)

良性濾胞腺腫は、腺腫様甲状腺腫と異なり、

  1. 採取される細胞は少なく、濾胞状や平面状に配列
  2. 重積が少ない
  3. 核はほぼ均一、核内クロマチン顆粒は軽度肥大しやや密
小宇宙 3

良性濾胞腺腫の治療

良性濾胞腺腫の治療は、

  1. 原則、経過観察。急激に増大したり、石灰化を伴えば甲状腺癌を疑い精査。
  2. 手術:①癌と確定できない、または癌ではない甲状腺腫瘍の手術適応 ②甲状腺機能亢進症をおこす機能性甲状腺腫

良性濾胞腺腫の特殊型(専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

  1. 良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)
  2. 良性濾胞腺腫(淡明細胞型)
  3. 良性濾胞腺腫(粘液性間質)
  4. 甲状腺硝子化索状腺腫
良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)(専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)は被膜が目立たないのが特徴。

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)超音波画像

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)超音波(エコー)画像

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)ドプラー

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)ドプラー

細胞所見は、細胞質がライトグリーン好性、核は大小不同・核溝があります。(以下の写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)超音波(エコー)像

良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)

良性濾胞腺腫(淡明細胞型)(専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

良性濾胞腺腫(淡明細胞型)は、被膜がはっきりしていて、細胞所見は淡明・泡沫状の細胞質です。腎癌の甲状腺転移と鑑別を要します。(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

良性濾胞腺腫 淡明細胞型 超音波(エコー)像

良性濾胞腺腫 淡明細胞型 超音波(エコー)像

良性濾胞腺腫 淡明細胞型 細胞診

良性濾胞腺腫 淡明細胞型 細胞診

良性濾胞腺腫 淡明細胞型 超音波(エコー)像

良性濾胞腺腫 淡明細胞型 超音波(エコー)像

良性濾胞腺腫(淡明細胞型)腎臓癌は甲状腺に転移によく似ています。

腎臓癌は甲状腺に転移、転移性甲状腺癌となります。臨床的に問題となる転移性甲状腺癌で、もっとも多いのは腎臓癌の甲状腺転移です。エコー上、良性濾胞腺腫(淡明細胞型)、悪性の甲状腺濾胞癌と見分けが付きません。また、明細胞型腎臓癌は穿刺細胞診でも甲状腺濾胞癌の明細胞型と区別しにくいです(核内封入体もあり、免疫染色で甲状腺由来のTTF-1あるいはサイログロブリンに染まらず、CD10に染まります)。

良性濾胞腺腫(粘液性間質)(専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)

良性濾胞腺腫(粘液性間質)は、豊富な粘液を認めますが、濾胞内のコロイド由来ではなく、間質の粘液です(細胞診のみでは判りません。組織を見れば判ります。)また、豊富な粘液を作るための毛細血管網も見られます。(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

良性濾胞腺腫 粘液間質 超音波(エコー)像
良性濾胞腺腫 粘液間質 細胞診
硝子化索状腺腫(専門的過ぎます、医療関係以外の方は無視してください)
甲状腺硝子化索状腺腫とは
甲状腺硝子化索状腺腫 病理組織

甲状腺硝子化索状腺腫は、良性濾胞腺腫の特殊型とされます(AFIP 1992; 31-40)甲状腺硝子化索状腺腫は、特徴的な索状配列と、索状方向に垂直な核の組織像です。(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺硝子化索状腺腫超音波(エコー)画像

甲状腺硝子化索状腺腫超音波(エコー)画像は、

  1. かなり低エコー
  2. 多発石灰化

で、甲状腺乳頭癌に近い見え方です。しかし、

  1. 中心血流と豊富な血流

があり、甲状腺濾胞癌の特徴も有します(しかし良性濾胞腺腫です)。(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺硝子化索状腺腫のエコー像
甲状腺硝子化索状腺腫 超音波(エコー)画像
甲状腺硝子化索状腺腫細胞診

甲状腺硝子化索状腺腫細胞診では乳頭状の細胞集塊,甲状腺乳頭癌に特徴的な核内封入体、核溝が認められ、甲状腺乳頭癌との鑑別は困難です。しかし、硝子様物質の周囲に腫瘍細胞が放射状に配列し、yellow bodyが見えれば甲状腺硝子化索状腺腫見当がつきます。(写真:隈病院 第9,10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺硝子化索状腺腫 細胞診
甲状腺硝子化索状腺腫の細胞診

甲状腺専門医を悩ませる濾胞腺腫良悪鑑別困難例の細胞像 

甲状腺専門医、および病理診断医を最も悩ませる問題の1つが濾胞腺腫良悪鑑別困難例です。

上條甲状腺クリニックのデータでは、4cm以上の濾胞腺腫良悪鑑別困難例は、50%甲状腺濾胞癌とされます。

(以下の細胞診の所見は、医療関係者以外の方は無視してください。写真のみご覧になり、「こんなものか」と思っていただければ十分です。)

濾胞腺腫細胞像良悪鑑別困難症例は、

  1. 腫瘍細胞が多く採取され、不整な配列(構造異型)
  2. 重積や細胞間結合性低下(構造異型)
  3. 核径不整、核の大小不同(核異型)
  4. クロマチン顆粒の肥大(核異型)

構造の異型(配列等がおかしい)と核異型(核がおかしい)の程度により

favor benign(良性寄り)、borderline(境界)、favor malignant(悪性寄り)に分けます。

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好酸性腫瘍細胞が主体のときは鑑別困難の扱いになります。

Well-differentiated tumor of uncertain malignant potential(WDT-UMP)(専門的すぎるので初心者は無視してください)

WDT-UMPは、濾胞腺腫良悪鑑別困難例とほぼ同じ意味です。(Int J Surg Pathol 2000; 8:181-183)、超音波(エコー)画像から判るように、良性濾胞腺腫よりも、腺腫様結節甲状腺乳頭癌に近い見え方です。

濾胞腺腫良悪鑑別困難例、WDT-UMPを手術すべきか、意見が分かれる所ですが、私自身は「疑わしきはオペする」のが良いと思います。経過観察の末、遠隔転移してから「やっぱり甲状腺癌だったのか・・」では遅いからです。(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺濾胞癌

甲状腺濾胞癌 を御覧ください。

甲状腺乳頭癌

甲状腺乳頭癌 を御覧下さい。

甲状腺低分化がん

甲状腺低分化がん を御覧ください。

甲状腺髄様癌

  1. 甲状腺髄様癌とは
  2. 甲状腺髄様癌の原因
  3. 甲状腺髄様癌の腫瘍マーカー
  4. 甲状腺髄様癌の超音波検査(エコー)
  5. 甲状腺髄様癌の細胞診
  6. 甲状腺髄様癌リンパ節転移
  7. 甲状腺髄様癌の治療
  8. 甲状腺髄様癌の術後再発予測・予後予測
  9. 甲状腺髄様癌の予後

甲状腺髄様癌

甲状腺傍濾胞細胞(C細胞

甲状腺髄様癌は、カルシトニンというホルモン(骨形成に関与する)を作る甲状腺傍濾胞細胞(C細胞)の癌で、甲状腺癌の1-2%を占めます。。特徴ある細胞像のため診断は容易といわれますが、実際特徴を欠き、超音波(エコー)所見・血清カルシトニン値の方が有用なことも多いです。

甲状腺髄様癌の原因

甲状腺髄様癌は約30%は遺伝性(常染色体優性遺伝)であり、約70%は非遺伝性(散発性)です。

甲状腺髄様癌の20%は、遺伝性の多発性内分泌腫瘍症2型[Multiple Endocrine Neoplasia type 2、略してMEN (メン) 2型]です。甲状腺髄様癌の10%は、家族性甲状腺髄様癌(FMTC)です。MEN 2型および家族性甲状腺髄様癌(FMTC)の約95%にRET遺伝子の変異が証明されます(JAMA 1996;276:1575-1579.)。

遺伝性甲状腺髄様癌のRET遺伝子変異

(専門的過ぎます。医療関係者以外の方は無視してください。)

  1. MEN2AのRET遺伝子変異:エクソン10(コドン609, 611, 618, 620)、エクソン11(コドン634)(変異の80%)など
  2. FMTCのRET遺伝子変異:エクソン10( コドン609,611, 618, 620), エクソン11(コドン630, 631, 634,649, 666),エクソン13(コドン768),エクソン14(コドン804, 819, 844),エクソン15(コドン866,891)
  3. MEN2BのRET遺伝子変異:95%がエクソン16(コドン918)

MEN2AとFMTCのRET遺伝子変異は似ていますが、は全く異なります。[Medullary thyroid carcinoma. Endocr Pract 19(4):703-711, 2013] [Medullary thyroid carcinoma and multiple endocrine neoplasia type 2. Endoc Patho 14(2):123-129, 2003]

甲状腺髄様癌の腫瘍マーカー

甲状腺髄様癌は、甲状腺超音波(エコー)検査・細胞診断も当てにならないため、長崎クリニック(大阪)では、甲状腺腫瘍が見つかれば、カルシトニンCEAを測定します。

カルシトニンの測定結果が出るのに1週間要するため、他の甲状腺専門病院/クリニックでは、通常測りません。長崎クリニック(大阪)では、絶対に甲状腺癌を見逃してはならないと考えているため、カルシトニンCEAを測定し、1週間後に再診していただきます。

甲状腺髄様癌の超音波検査(エコー)

甲状腺髄様癌の超音波検査(エコー)所見は、

  1. 50%で良性濾胞腺腫と同じ
  2. 甲状腺乳頭癌の砂粒状石灰化よりも粗大な斑状石灰化は20%のみ(斑状石灰化は甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌でも見られます。)
  3. 甲状腺乳頭癌甲状腺原発悪性リンパ腫のように見えることも多い

ため、超音波検査(エコー)でも簡単に診断できません。

斑状石灰化 超音波検査(エコー)画像

甲状腺髄様癌の細胞診

(以下の細胞診の所見は、医療関係者以外の方は無視してください。写真のみご覧になり、「こんなものか」と思っていただければ十分です。)

甲状腺髄様癌の細胞像は

  1. 腫瘍細胞は少なく、多形細胞(豊富な細胞質の細胞)、類円形細胞、紡錘形細胞など多様
  2. 細胞間の結合性は低下し、散在傾向
  3. 大型核や多核もあるが、核膜は薄く不整が無い
  4. 核内クロマチンは粗くゴマ塩状(神経内分泌腫瘍の特徴である)、核内細胞質封入体を認めることも
  5. 背景にアミロイド様の無構造物質がみられることも
小宇宙 3

(右)類円形細胞、()紡錘形細胞

甲状腺髄様癌リンパ節転移

甲状腺髄様癌はリンパ節転移し、甲状腺エコーでは甲状腺乳頭癌砂粒状石灰化よりも粗大な石灰化を認めます。(写真:隈病院 第9回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

エコー01

甲状腺髄様癌の治療

甲状腺髄様癌の治療は、

  1. 遺伝性髄様癌の場合、遺伝子診断で確認されれば、甲状腺全摘出。頚部リンパ節廓清も。
  2. 散発性(非遺伝性)の場合、甲状腺髄様癌の範囲にあわせた切除。頚部リンパ節廓清も。
  3. 根治切除不能な甲状腺髄様癌には、分子標的薬が保険適応バンデタニブ(カプレルサ®)、レンバチニブ(レンビマ®)、ソラフェニブ(ネクサバール®)の3 剤全てが使用可能。。(「放射線治療無効な甲状腺癌」にレンビマ
甲状腺髄様癌の予防的全摘出

甲状腺髄様癌は、まだ発生していないが、遺伝性甲状腺髄様癌の家系であり、遺伝子診断が確定した場合、予防的甲状腺全摘出おこないます。遺伝性髄様癌ではRETの変異部位とリスク分類,予防的手術の時期のガイドラインがアメリカ甲状腺学会により発表されています。

最も予後の悪いMEN2B型は、米国では、生後6カ月で予防的甲状腺全摘出おこないます。

予防的甲状腺全摘出は、欧米では標準的ですが、日本では中々、行いにくいようです。

甲状腺髄様癌の術後再発予測・予後予測

  1. 甲状腺髄様癌の術後再発予測には、血清カルシトニン値あるいはCEA値を測定。
  2. 甲状腺髄様癌の予後予測には,血清カルシトニン値の倍加時間[doubling time(DT)]を計算(Ann Surg 1984;199:461-466.)。(カルシトニンDT(ダブリング タイム))

甲状腺髄様癌の予後

甲状腺髄様癌の10年生存率は70%前後です。

2番目に予後の悪い非遺伝性(散発型)でも3年後リンパ節再発、17年後多発性肺転移、その後徐々に病巣拡大するも無症状・無治療で18年間生存している症例が報告されています。(第54回 日本甲状腺学会 P166 35年経過した甲状腺髄様癌多発性転移の一例)

甲状腺原発悪性リンパ腫

甲状腺原発悪性リンパ腫(甲状腺編③)に詳細があります。

甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)検査

下記は、甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)画像:リンパ節の病理組織のような網目状構造があれば、比較的に診断は容易です。

甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)画像

甲状腺原発悪性リンパ腫は、低エコー領域にしか見えない事が多く、橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の強い部分、橋本病結節、甲状腺乳頭癌と同じに見えるため超音波検査(エコー)のみでは診断できない事が多いです。

甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)画像

甲状腺原発悪性リンパ腫(MALTリンパ腫)の超音波検査(エコー)画像(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺原発悪性リンパ腫[びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)]の超音波検査(エコー)画像

甲状腺原発悪性リンパ腫[びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)]の超音波検査(エコー)画像(写真:隈病院 第10回神戸甲状腺診断セミナーより提供)

甲状腺原発悪性リンパ腫は、甲状腺濾胞癌とは逆に、中心部程密度が高く、中心部(右の円の中)から細胞を採ると以下のようになります。甲状腺原発悪性リンパ腫の細胞像は、

  1. 単一な腫瘍細胞が多数
  2. 孤立性散在性、細胞集団を形成しません
  3. 核はMALTリンパ腫(中型)、びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)(大型)、ともにN/C比(核/細胞質比)が大で細胞質が乏しい
  4. びまん性大細胞型Bリンパ腫(DLBCL)では、クロマチンは淡く染まり、核小体は明瞭・非腫瘍性の小型リンパ球とtwo cell patternになります
  5. 背景は汚く、貪食細胞が出現することも
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診断つかない甲状腺MALTリンパ腫

異型性の少ない(癌細胞らしくない)MALTリンパ腫は、橋本病(慢性甲状腺炎)の慢性炎症細胞(リンパ球、形質細胞)と区別が難しく、穿刺細胞診では診断できない事がほとんどです(ほとんどがグレ-ゾーンのクラス3になり、明らかに癌と診断できるクラス4,5になる事は稀です)。甲状腺原発悪性リンパ腫の腫瘍マーカーsIL2-R(可溶性インターロイキン2受容体)も正常な事が多く、例え上昇しても軽度ですが、ガリウムシンチグラフィーで陽性に出ることあります。生検による組織診を外科に依頼しますが、それでも確定診断できず、甲状腺を手術で摘出し、手術標本の病理診断で確定する事がよくあります。

その他(甲状腺専門医以外誰も知らなくて良いです)

稀中の稀、誰も知らないGranular cell tumor

甲状腺原発Granular cell tumorは、現在まで10例が報告されているだけの、極めてまれな神経細胞由来の腫瘍です。最後の10例目以外は全て良性です。当然、サイログロブリンは陰性ですが、細胞診では、好酸性細胞を認めるため甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)[Hurthle cell carcinoma]との鑑別要です。(第55回 日本甲状腺学会 P1-06-08 気管浸潤を伴う甲状腺Granular cell tumor)(Int J Clin Exp Pathol. 2014; 7(8): 5186–5191.)

下記写真Korean J Otorhinolaryngol-Head Neck Surg. 2014 Feb;57(2):108-111.

Granular cell tumor超音波検査(エコー)画像

Granular cell tumor超音波検査(エコー)画像

Granular cell tumor 細胞診

Granular cell tumor 細胞診

甲状腺癌と放射線治療

甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)は、正常甲状腺細胞と同様にヨードを取り込む性質を持っています。放射線を出すヨード(放射性ヨード、131Ⅰ)カプセルを飲むと、がんに取り込まれ、その放射線で癌細胞を死滅させます。131Ⅰの放射線のうち、癌細胞を死滅させるのはベータ線です。ベータ線は体内では1mm以下の距離しか届かず、癌細胞のみを死滅させます。

以下の問題点があります。

  1. 甲状腺ホルモン剤を中止するため、甲状腺機能低下症になります。倦怠感、むくみ、体重増加、体温低下などの症状が起こります。治療後にホルモン剤を再開すると改善しますが、一番の問題は心不全の危険です。若くて甲状腺以外問題ない人なら難なく乗り越えられますが、元々、心機能に問題ある方には命の危険が生じます。
  2. (ベータ線とは異なる)ガンマ線を高レベルで浴びると、一般的な放射線障害を起こします。嘔気などの放射線宿酔、唾液腺の腫れや痛み、味覚障害や口中乾燥などの唾液分泌障害です。一時的なものですが、ヨード治療を何度も繰り返すと永続的なものになります。
  3. 胎児への影響から妊婦や妊娠の可能性のある女性には禁忌です。乳汁にも放射性ヨードが排泄されるため授乳もできません。しかし、この治療が原因で不妊が生じることはないと言われています。

甲状腺外科

甲状腺の手術は、外科医の技術・経験に歴然とした差があります。術後の傷口にしても、手術した事さえ判らない位見事なものもあれば、明らかに未熟な術者によるものもあります。長崎クリニック(大阪)は、大阪市立大学医学部附属病院 内分泌外科の小野田 尚佳先生に依頼しています。小野田先生は、内分泌外科一筋、緻密な手術は正に"神の手"と呼ぶにふさわしいものです。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎クリニック(大阪)

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長崎クリニック(大阪)は甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門医・動脈硬化・内分泌・糖尿病の長崎クリニック(大阪市東住吉区)(近く に平野区、住吉区、阿倍野区、松原市)
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]・動脈硬化・内分泌の大阪市東住吉区のクリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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