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橋本病(慢性甲状腺炎)       [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波(エコー)検査の長崎クリニック(大阪)]

橋本策(はかる)博士

甲状腺の基礎知識を、初心者でもわかるように、長崎クリニック(大阪市東住吉区)院長が解説します。

高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 甲状腺編 part3 を御覧ください。

Summary

橋本病(慢性甲状腺炎)の性別・年齢、原因、症状、検査、治療、再発、生活上の注意を、長崎クリニック(大阪)院長が解説します。甲状腺超音波(エコー)検査、ヨード過剰摂取制限、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)も説明。

橋本病(慢性甲状腺炎)とは

日本甲状腺学会 ロゴマーク

橋本病(慢性甲状腺炎)は、橋本策(はかる)博士が1912年(大正元年)、世界で初めてドイツの医学雑誌に論文発表した病気です。

日本甲状腺学会のロゴマークにもなっています。

橋本病(慢性甲状腺炎)患者の性別・年齢層

橋本病(慢性甲状腺炎)患者の年齢層

橋本病(慢性甲状腺炎)は女性に多く、男女比は男性1人に対して女性20~30人です[逆に言えば橋本病(慢性甲状腺炎)の21-31人に1人は男性]。年齢では、20歳代後半以降-60歳が約70%を占めます。

※参考資料:伊藤病院 橋本病年齢別患者数

橋本病(慢性甲状腺炎)の原因

橋本病(慢性甲状腺炎)は、自己免疫による甲状腺の慢性炎症です。正常な免疫は、細菌・ウイルス・癌細胞などから自分の体を守るものですが、それが逆に自分の体を攻撃する状態が自己免疫です。 橋本病(慢性甲状腺炎)は、自分の甲状腺を攻撃し、その結果、甲状腺に慢性炎症がおこる病気です。

橋本病(慢性甲状腺炎)と遺伝

ドイツの双生児調査では、橋本病(慢性甲状腺炎)の70%は遺伝的であるとされます(Eur J Endocrinol 154:29-38,2006)。橋本病(慢性甲状腺炎)の原因と考えられる遺伝子(疾患感受性遺伝子)は、HLA遺伝子・CTLA-4遺伝子・PTPN22遺伝子・Tg(サイログロブリン)遺伝子などが報告されています。

橋本病(慢性甲状腺炎)を発症させる環境因子

遺伝以外に橋本病(慢性甲状腺炎)を発症させるものとして、環境因子(生活習慣とも言えます)があります。ヨードの過剰摂取が、橋本病(慢性甲状腺炎)の発症に深くかかわるのは良く知られます。薬剤(B型C型肝炎治療に使うインターフェロン、癌の免疫療法などに使うインターロイキン2)も関与します。

その他、ウイルス感染、化学物質なども報告されています。

橋本病(慢性甲状腺炎)を発症させる内因性因子

女性である事・出産も橋本病(慢性甲状腺炎)の発症に関与します。私、長崎 俊樹は、女性ホルモンが、甲状腺の自己免疫に関与する可能性を考えています。

橋本病(慢性甲状腺炎)の症状

甲状腺の腫れ(甲状腺腫)

甲状腺の腫れ(甲状腺腫):甲状腺の慢性炎症のため、甲状腺が腫れます。バセドウ病の甲状腺腫と比べ、橋本病の甲状腺腫は硬く、表面に凹凸あります。敏感なひとは、のどの違和感、飲み込みにくいなど自覚症状ある場合があります。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症

橋本病(慢性甲状腺炎)=甲状腺機能低下症ではありません。橋本病(慢性甲状腺炎)により、甲状腺の破壊が進行し、甲状腺ホルモンを十分作れなくなると甲状腺機能低下症になります。つまり、初期・軽症の橋本病(慢性甲状腺炎)で、血液中の甲状腺ホルモン値が正常なら、甲状腺機能低下症とは言えません。

 (驚いたのは、一般内科医のみならず、内分泌代謝専門医と称する人達にも橋本病=甲状腺機能低下症と思い込んでいる方が多いのです)

橋本病(慢性甲状腺炎)の約30%に、甲状腺機能低下症があり、残りの70%は甲状腺機能が正常です。

甲状腺機能低下症の症状は以下の通りです。

  1. 全身の新陳代謝代謝の低下(甲状腺ホルモンは糖・脂肪を分解して熱を作るホルモンです)
    全身の熱の産生が減り、寒さに弱く、低体温気味になります。
    食欲がないのに体重が増える(カロリー消費が減ってお腹がすかない、脂肪が分解されない。むくみも関与)
    胃腸の働きが悪くなり、便秘します。
    皮膚が乾燥します。
  2. むくみ:「粘液水腫」と呼ばれます。弾力性があり、押してへこませてもすぐ元に戻ります。朝起きると手や顔がこわばり、関節リウマチと勘違いすることがあります。顔・まぶた・唇がむくんで、舌が大きくなり、ろれつが回りにくいことあります。また、喉頭にむくみがくると声がかすれ(嗄声)ます。
  3. 心拍数が少なく、徐脈になります。1/3~1/2の方で、心臓を包む袋(心のう)に水がたまります(心のう液貯留)。
  4. 無気・うつ傾向になります、脳の代謝が低下し、頭の回転が鈍くなり認知症のようになります。また、居眠りをするようになります。
  5. 月経の量が多くなり、長く続くことあります(過多月経)。不妊、性欲減退、インポテンツになることもあります。

橋本病(慢性甲状腺炎)の検査

  1. 自己免疫抗体の検出:自分の甲状腺を破壊し、甲状腺に慢性炎症をおこす自己免疫抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)もしくは抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]が、血液検査で検出されると橋本病(慢性甲状腺炎)の診断が確定します。
      
  2. 血中サイログロブリン:甲状腺組織の破壊により、血中へ流出するため、破壊活動性を反映します。ただし、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)を持っていると、実際よりも低い測定値になります。甲状腺分化癌(乳頭癌濾胞癌)、甲状腺良性腫瘍(良性濾胞腺腫)、腺腫様結節(過形成結節)中心の腺腫様甲状腺腫でも、過剰産生され上昇します。 (サイログロブリン、一体何をやってるの?
     
  3. 甲状腺超音波(エコー)検査:長崎甲状腺クリニック(大阪)では、得意の甲状腺超音波(エコー)検査で甲状腺の破壊の程度を評価します。(橋本病の抗体・破壊の程度の評価

    現実に自己免疫抗体が検出されない橋本病(慢性甲状腺炎)が存在し、
    また自己免疫抗体の基準値が甘すぎるため、甲状腺超音波(エコー)検査で明らかな慢性甲状腺炎でも、自己免疫抗体が基準値の上限近くの正常範囲内という例が多数存在します。

    慢性甲状腺炎(橋本病)の診断ガイドラインでは、「甲状腺超音波検査で内部エコー低下や不均一を認めるものは慢性甲状腺炎(橋本病)の可能性が強い。」要するに慢性甲状腺炎(橋本病)の疑いと言う事になりますが、あまりに時代遅れの診断基準です。
     
  4. どうしても慢性甲状腺炎(橋本病)の診断が付かない、慢性甲状腺炎(橋本病)かどうか確定しなければならない場合、穿刺細胞診おこない、慢性甲状腺炎(橋本病)の原因となるリンパ球が甲状腺内に浸潤しているのを証明します。[どうしても慢性甲状腺炎(橋本病)かどうか確定しなければならない状況は、現実的にはあまり存在しないのですが]

  5. 甲状腺機能低下症橋本病(慢性甲状腺炎)の約30%に、遊離T4(FT4)低値およびTSH高値の甲状腺機能低下症を認めます。

    甲状腺機能低下症でおこる検査所見として、「悪玉コレステロール(LDLコレステロール)上昇」、「中性脂肪(TG)上昇」、「CPK上昇」、「貧血」、「γ-グロブリン上昇」などがあります。ただし、これらがあるからと言って甲状腺機能低下症とは限りません。

2. 橋本病(慢性甲状腺炎)の超音波(エコー)検査

橋本病(慢性甲状腺炎)の破壊の程度の評価  を御覧ください。

日本の古い診断基準では、橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体[抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)もしくは抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)]の検出か、下記の穿刺細胞診所見でしか橋本病(慢性甲状腺炎)を診断できません。それは、高解像度のデジタルハイビジョン超音波装置が開発される前に作られた診断基準。デジタルハイビジョン超音波装置を用いれば、自己免疫抗体が陽性化する前[橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体は年齢とともに上昇]の甲状腺の慢性炎症/破壊の程度を評価できます。

3. 慢性甲状腺炎(橋本病)の穿刺細胞診所見

慢性甲状腺炎(橋本病)の穿刺細胞診所見。細胞はエメラルドグリーンの好酸性、核の大小と核溝を認め、正常な甲状腺細胞と異なり、良性濾胞腺腫(好酸性細胞型)甲状腺濾胞癌(好酸性細胞型)甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型のようです。リンパ球が多数見られ、慢性甲状腺炎(橋本病)の確定診断になります。

橋本病(慢性甲状腺炎)の治療

甲状腺機能正常橋本病の治療

ヨード過剰摂取制限:ヨードは口から入ると100%吸収され、

  1. 甲状腺組織の破壊を促進
  2. 甲状腺ホルモンの合成を抑制(ウォルフチャイコフ効果)
  3. 無痛性甲状腺炎(痛みを伴わない甲状腺の亜急性破壊)を誘発
  4. 甲状腺癌の発生率を増加させます。

詳しくは、ヨードと甲状腺 を御覧下さい。

甲状腺機能低下症の治療

甲状腺機能低下症の治療の必要性

甲状腺機能低下症がある場合、血中の甲状腺ホルモンを正常範囲にする治療が必要です。たとえ、体がだるい、寒がりであるなどの自覚症状がなくても、甲状腺ホルモン不足が長期間続くと心臓がだめになる心筋症・不整脈[甲状腺と心臓病(サイロイドハート)]、動脈硬化の促進による心血管障害(狭心症/心筋梗塞)、脳梗塞が問題になります(甲状腺と動脈硬化)。

甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]

甲状腺機能低下症の治療方法は、破壊された自分の甲状腺で合成できない甲状腺ホルモンを補うことです。甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]でサイロキシン(T4)の不足を補います。

高齢者や心臓に病気を持つ人は、少量からチラーヂンSの服薬を始めます。急劇な甲状腺ホルモンの増加は心臓に負担をかけるからです。長崎クリニック(大阪)では、定期的に心電図を見ながら慎重にチラーヂンSを増量します。

また、チラーヂンSの副作用はチラーヂンS錠で副作用・ チラーヂンS錠が下痢/食事/薬で吸収されない?を御覧ください。

甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]治療の効果

甲状腺ホルモン、TSH(甲状腺刺激ホルモン)が正常になると、

  1. 甲状腺機能低下症状が改善します。
  2. 甲状腺の腫れ(甲状腺腫)は、ある程度小さくなりますが、正常サイズにもどるのは難しいです。のどの圧迫感・違和感は改善します。しかし、甲状腺機能が正常になっても、甲状腺の慢性炎症と慢性炎症で増殖した線維物質が消えるわけでなく、のどの圧迫感・違和感が完全に消えない場合もあります。著しいとかいうことはありません。

もし、甲状腺機能が正常になっても甲状腺機能低下症状が改善しない場合、内分泌的には副腎・下垂体・亜鉛欠乏などを疑わねばなりません。

甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]をいつまで飲むの?

それぞれの患者様に適したチラーヂンS薬の量(維持量)が決まれば、その後は服薬を続けます。

甲状腺のすでに破壊されたところが元に戻るわけではないため、チラーヂンSの服用は終生になります。ただし、破壊の程度が軽い場合、ヨード過剰摂取制限すると、生き残った甲状腺濾胞細胞のホルモン産生能力が回復し、チラーヂンSが不要になることあります。

ヨード過剰摂取制限

甲状腺機能正常橋本病の治療と同じ

橋本病(慢性甲状腺炎)の生活上の注意

  1. 甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]を飲み忘れない。(食事の一部と割り切って)1日1回必ず飲んでください。特に、重度の甲状腺機能低下症で、2週間以上服薬中断すると危険な粘液水腫性昏睡にいたることがあります。
  2. ヨード過剰摂取制限を続けてください。
  3. 血液中の甲状腺ホルモン濃度を正常に維持できている限り、その他の制限はなにもありません。ある意味、チラーヂンSさえ飲んでいれば、健康な人と同じと言えます。スポーツや旅行なども制限なくしていただけます。

橋本病(慢性甲状腺炎)と甲状腺腫瘍・甲状腺癌

橋本病(慢性甲状腺炎)と甲状腺腫瘍・甲状腺癌のが合併が多いです。日本甲状腺学会編の甲状腺腫瘍診療ガイドラインによれば、甲状腺超音波(エコー)スクリーニング検査では、

  1. 健康女性の甲状腺腫瘍発見率28.14%に対し、橋本病女性は32.4%
  2. 健康女性の甲状腺がん発見率0.66%に対し、橋本病女性は8.6%(橋本病女性20人に1人以上が甲状腺がんという事になります)
  3. 健康男女の甲状腺がん発見率0.46%に対し、橋本病男女は4.7%
  4. 橋本病の甲状腺腫瘍の26.5%は、甲状腺がん乳頭癌20%,濾胞癌1%,悪性リンパ腫6%)

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