甲状腺・糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH) [橋本病 バセドウ病 動脈硬化 長崎甲状腺クリニック 大阪]
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糖尿病:専門の検査治療[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
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Summary
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)には単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があり、原因は、一次性;肥満やメタボリックシンドローム、二次性;内分泌疾患(甲状腺機能低下症、成長ホルモン分泌不全、クッシング(Cushing)症候群、インスリノーマ、多囊胞性卵巣症候群など)、糖尿病・脂質代謝異常、神経性食思不振症、薬剤性(副腎皮質ステロイド剤、タモキシフェン、アミオダロン)。糖尿病患者は肝障害・肝癌の合併多く、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)由来の肝癌が、男女共に40%前後。アルコール性肝硬変の糖尿病の有病率は常習飲酒者で高い。
Keywords
糖尿病,甲状腺機能低下症,脂肪肝,橋本病,甲状腺,非アルコール性脂肪性肝疾患,肝癌,非アルコール性脂肪肝炎,NASH,アルコール性肝硬変
1型、2型糖尿病問わず甲状腺疾患の合併が多いとされます。詳しくは 甲状腺と糖尿病 を御覧下さい
非アルコール性脂肪性肝疾患(nonalcoholic fatty liver disease:NAFLD)は、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧患者に多く、単純性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分かれます。
正常人の肝臓と腎臓は同じ黒さですが、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)では蓄積した脂肪のため腎臓より白く見えます。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の原因は、
- 一次性(大多数);肥満やメタボリックシンドロームによる。
- 二次性(まれ);
内分泌疾患(甲状腺機能低下症、成長ホルモン分泌不全、クッシング(Cushing)症候群、インスリノーマ、多囊胞性卵巣症候群など)
糖尿病・脂質代謝異常
高度の栄養障害(消化吸収障害、神経性食思不振症)
薬剤性(副腎皮質ステロイド剤(医原性クッシング症候群)、タモキシフェン、アミオダロンによるミトコンドリア毒性など)
橋本病(慢性甲状腺炎)を合併する非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、(甲状腺機能が正常であっても)脂質異常(LDLコレステロール、中性脂肪)・肝線維化マーカー(4型コラーゲン)の上昇が見られたとする報告があります。(第54回 日本甲状腺学会 P222 慢性甲状腺炎が非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者の病態に与える影響の検討)
潜在性甲状腺機能低下症は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の独立した危険因子です。(J Hepatol. 2012 Nov;57(5):1153-4.)[JGH Open. 2019 Oct 1;4(3):400-404.]
肝線維化の早期スクリーニング指標 Fib4 index と Fib4 index 2.67 以上(肝線維化疑い群)の頻度は、潜在性甲状腺機能低下症患者において有意に高い[JGH Open. 2019 Oct 1;4(3):400-404.]。
更に、潜在性甲状腺機能低下症は、特に70 歳以上の高齢男性において脂肪肝の独立した危険因子とされます。高齢男性潜在性甲状腺機能低下症患者におけるFib4 index 2.67 以上(肝線維化疑い群)の頻度は、70歳以上の男性で急増(70 歳以上の男性 19%、女性 2.5%)。
一方、肝線維化疑い群の約40% に潜在性甲状腺機能低下症を認め、70歳以上の潜在性甲状腺機能低下症は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の独立した危険因子だった(オッズ比3.0:95% 信頼区間1.2-7.4、p= 0.02)との事です。(第59回 日本甲状腺学会 O7-1 潜在性甲状腺機能低下症は肝機能障害の危険因子である:人間ドック15,206 名のFib4 index の解析から)
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者では、甲状腺機能低下症および自己免疫性甲状腺炎(橋本病)の発生率が有意に高い。[Eur J Gastroenterol Hepatol. 2021 Dec 1;33(1S Suppl 1):e1008-e1012.]
甲状腺機能低下症は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の発生率を有意に増加させ、甲状腺機能亢進症は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の危険因子と考えられます。[Eur Rev Med Pharmacol Sci. 2023 Dec;27(23):11402-11411.]
甲状腺機能低下症誘発性非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の機序として、
- 脂質代謝
- インスリン抵抗性
- アディポネクチン(APN)やレプチンなどのアディポサイトカイン
- 炎症性サイトカイン
- 酸化ストレス
などの複雑に絡み合うモデルが考えられています。[下;Int J Mol Sci. 2020 Aug 18;21(16):5927.]
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の中でも、肝がんや肝硬変へ進展する非アルコール性脂肪肝炎(NASH)においては、甲状腺機能低下症の有病率が約2倍以上とされます。(J Clin Gastroenterol. 2003 Oct;37(4):340-3.)
甲状腺機能低下症で非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を発症する機序として、
- 脂肪分解の低下
- インスリン抵抗性増大による糖代謝障害
により中性脂肪が肝に蓄積するためと考えられます。
また、甲状腺機能低下症の原因は、ほとんど橋本病(慢性甲状腺炎)なので、炎症性サイトカインにより脂肪肝が非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に移行する可能性が推察されます。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、甲状腺がん男性における危険因子の1つです[Clin Gastroenterol Hepatol. 2021 Apr;19(4):788-796.e4.]。
また、甲状腺乳頭癌女性のリンパ節転移率、BRAF V600E変異率、進行度と強い関連があります[Endocrine. 2023 Jun;80(3):619-629.]。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と糖尿病
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は内臓脂肪の代表。インスリンの反応を妨げ、糖尿病を悪化。血圧、血中脂質を上昇させます。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と非アルコール性脂肪肝炎(NASH)の治療
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療は、胆石・慢性C型肝炎と同じウルソ(熊の胆汁)で、疎水性胆汁酸から肝細胞を保護します。高トリグリセリド(中性脂肪)血症治療薬のフィブレート系薬剤は、リン脂質を排泄し肝細胞保護。インスリン抵抗性改善薬チアゾリジン剤も有効とされます。
代謝異常関連脂肪性肝疾患(Metabolic dysfunction-associated fatty liver disease:MAFLD) は、脂肪肝の新たな診断基準です。脂肪肝に加えて、
- 2型糖尿病
- BMI(肥満指数)が23以上の過体重/肥満
- 代謝異常
のいずれかを伴う病態です。
代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)患者は、非MAFLDの対象者と比較して、
- 子宮体がん(ハザード比[HR] = 2.36、95%CI 1.99-2.80)
- 胆嚢がん(2.20、1.14-4.23)
- 肝臓がん(1.81、1.43-2.28)
- 腎臓がん(1.77、1.49-2.11)
- 甲状腺がん(1.69、1.20-2.38)
- 食道がん(1.48、1.25-1.76)
- 膵臓がん(1.31、1.10-1.56)
- 膀胱がん(1.26、1.11-1.43
- 乳がん(1.19、1.11-1.27)
- 結腸直腸癌および肛門癌(1.14、1.06-1.23)
のリスクが増加します。特に女性の代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)は、胴囲、肥満度(BMI)、有するメタボリック症候群の数で調整した後も、肝臓がん、腎臓がん、甲状腺がんのリスクと有意な関連を示しました。[Metabolism. 2022 Feb;127:154955.]
糖尿病と非B型非C型肝細胞癌
糖尿病患者は肝障害・肝癌の合併率高い。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)由来の肝癌が、男女共に40%前後存在します。HCV(慢性C型肝炎)由来は50%程で、アルコール性は10%以下になります。
糖尿病のあるなしに関わらない非B型非C型肝細胞癌
糖尿病のあるなしに関わらない非B型非C型肝細胞癌の50%はアルコール性肝障害発癌で、23%は非アルコール性脂肪肝炎(NASH)。非B型非C型肝細胞癌は、B型/C型肝細胞癌に比べて
- 高齢
- 肝硬変の合併が少ない
- 腫瘍径大きい
とされます。
女性は男性と同量のアルコール摂取量でもアルコール障害が強く出やすいです。過剰飲酒により大半が脂肪肝になりますが、アルコール性肝炎に進行するのは10~20%程度です。
アルコール性肝炎の治療は
- 断酒
- 過剰なエネルギー摂取を控えバランスのとれた食事
- 低蛋白・低栄養状態では高蛋白・高エネルギー食
- アカンプロサートは飲酒欲求を軽減
- 飲酒量低減薬 ナルメフェン(セリンクロ錠®)は選択的オピオイド受容体調節薬で飲酒量低減を促す
- 保険適用外だが降圧薬α1ブロッカーのプラゾシン(ミニプレス®)が飲酒量を減らします;中枢神経系にもα1受容体が存在するためです。海外ではPTSD、パニック障害の治療にも用いられる
アルコール性肝硬変患者における糖尿病の有病率は、常習飲酒群(一日飲酒量60-110 g)の方が大量飲酒群(一日飲酒量110 g以上)より高い。糖尿病の合併率は、常習飲酒群の男性で45%、女性で17%と報告されています。
アルコール性肝硬変は、非アルコール性肝硬変に比べ
- 若年死亡・静脈瘤破裂が多い
- 他疾患での死亡が多い
- 精神科通院歴が多い
- 肝がんは少ない
とされます。[Hepatology. 2023 Jun 1;77(6):2128-2146.][Diabetes Metab. 2021 Sep;47(5):101272.]
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