長崎俊樹 院長ブログ[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
2025.01.26
不妊治療中・妊娠中の甲状腺機能低下症/橋本病女性に対する米国甲状腺学会ガイドライン2017の欠陥
こんにちは。甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門の長崎甲状腺クリニック(大阪)院長 長崎俊樹です。日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医として甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,内分泌などのホットな話題をお届けします。
残念なことに、日本において、不妊治療中・妊娠中の甲状腺機能低下症/橋本病患者に対する治療目標を定めたガイドラインは存在しません。
仕方なく、米国甲状腺学会ガイドライン2017の管理基準を流用しているのが現状です。
やはりアメリカは橋本病の患者が少ないためか、あるいは橋本病の研究者が少ないためか、「理解していない」部分が多くあります。なぜ不妊治療中・妊娠中甲状腺ホルモン剤)治療をするのか、原理を理解していないようです。
一般的には、米国甲状腺学会ガイドライン2017に準じて
- 妊娠前期(13週まで):甲状腺刺激ホルモン(TSH) <2.5 μIU/mL
- 妊娠中期(14週~27週): 〃 <3.0 μIU/mL
- 妊娠後期(28週~41週): 〃 <3.0 μIU/mL
になるようコントロールします[Thyroid. 2017 Mar;27(3):315-389.]。(橋本病/甲状腺機能低下症妊娠の管理基準)
ただし、これには理解不能な制限が加えられており、
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陰性の場合、TSH 2.5~4.0 μIU/mLでの甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)による治療は推奨されない
- 抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性の場合、TSH 2.5~4.0 μIU/mLでの甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)による治療を考慮することが推奨される
と書かれています。これの欠陥性を証明できる事実があります。
それは、バセドウ病や甲状腺癌・甲状腺腫瘍で甲状腺を全部摘出した女性です。甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服薬し、TSHが2.5~4.0 μIU/mL だったとします。甲状腺は全てなくなっているため、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)があろうが、なかろうが何の関係もありません。
つまり、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)など最初から問題でなく、TSHの値が全てなのです(先入観を捨てて考えりゃ分かる話なんだが・・・)。
「抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)が陰性だからチラーヂンSは必要ない」なんて言ってる医者(非甲状腺専門医)もいるのに驚きました。
すなわち、「TSH>5.0(or 4.0) μIU/mLであろうが、<5.0 (or 4.0) μIU/mLであろうが」、「甲状腺自己抗体(橋本病抗体)の有無によらず」、着床(妊娠成立)して、妊娠を維持するための条件はTSH 2.5 μIU/mL 未満なのです。
続きは、不妊治療中・妊娠中の甲状腺機能低下症/橋本病女性に対する米国甲状腺学会ガイドライン2017の欠陥 を御覧ください。
今日は「不妊治療中・妊娠中の甲状腺機能低下症/橋本病女性に対する米国甲状腺学会ガイドライン2017の欠陥」の話でした。
文責:長崎甲状腺クリニック(大阪)院長 日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 長崎俊樹
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く