長崎俊樹 院長ブログ[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]

 

こんにちは。甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)専門の長崎甲状腺クリニック(大阪)院長　長崎俊樹です。日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医として甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,内分泌などのホットな話題をお届けします。

岩手県盛岡市の有名な甲状腺疾患専門医療機関、栗原クリニックが第66回 日本甲状腺学会で驚くべき報告をされていました。（筆者は感動しています）

生殖補助医療（ART）[主に体外受精(IVF)と推察されます]を受けている39歳前後の女性で、1.0<TSH<2.5 μIU/mL （男女・年齢問わない一般的な正常範囲は0.5-5.0 μIU/mL ）にコントロールしても妊娠しない、妊娠しても流産を起こす場合、TSH≒0.5 μIU/mL にコントロールすると妊娠・出産できたケースが複数あったそうです。

具体的には、

1. 38歳、流産歴2回、甲状腺ホルモン剤　レボチロキシン（チラーヂンSと思われます）投与にてTSH 0.41 μIU/mL。妊娠7週、第一子出産。
2. 37歳、2020年の流産後2022年まで妊娠なし、同剤にてTSH＜0.02 μIU/mL。妊娠8週、第一子出産
3. 39歳、2020年から2022年まで生殖補助医療（ART）5回受けるも妊娠なし、同剤にてTSH 1.81 μIU/mL。妊娠6週で流産。その後、TSH 0.68 μIU/mL で妊娠4週、第一子出産。
4. 39歳、不妊治療開始後2年で妊娠なし、同剤にてTSH 0.69 μIU/mL になるが子宮外妊娠。その後も同レヴェルのTSH を維持し再妊娠、第一子出産。
5. 39歳、同剤にてTSH 1～2.18 μIU/mL では妊娠なし、TSH 0.33 μIU/mL で妊娠7週、第一子出産。

（第66 日本甲状腺学会 P2-7　生殖補助医療を受けていても不妊、流産を繰り返す甲状腺機能低下症例で甲状腺ホルモン補充を増量することにより妊娠・出産できた症例報告)

この報告をもとに長崎甲状腺クリニック(大阪)ではどう対処すべきか色々と検討してみました。

FT4,FT3が正常範囲にあるのが前提として、さすがにTSH＜0.5 μIU/mL は潜在性甲状腺機能亢進症状態のため、不妊治療中の女性全てに行うのは無理があります。

やはり対象は栗原クリニックさんと同じく、体外受精( IVF )を複数回おこなっても妊娠しない39歳前後の女性に限定させていただきます。

それでもTSH＜0.5 μIU/mL は潜在性甲状腺機能亢進症状態のため、長崎甲状腺クリニック(大阪)では0.5<TSH<1.0 μIU/mL を目標にコントロールいたします。

また、万が一にも、TSHの下がり過ぎによる心房細動(Af)などの不整脈、狭心症・心筋梗塞が起きたら困るので、必要に応じて心電図を撮らせていただきます。また、心臓疾患が疑われた時は、当院が信頼する循環器内科を受診していただきます。

結論として、長崎甲状腺クリニック(大阪)では、

「体外受精( IVF )を複数回おこなっても妊娠しない、流産する39歳前後の女性に限定して、0.5<TSH<1.0 μIU/mL を目標にコントロールいたします。」

ただし、一歩間違えると甲状腺ホルモン過剰状態（人工的なバセドウ病状態）を作り出してしまい、綱渡りのような難しい投薬になります。そのため、当院が指定する日時に必ず来院できる方に限定せていただきます。

以下のように、

1. 仕事があるので簡単に都合を付けれない
2. 土曜日にしか来院できない
3. 遠方なので簡単に行けない（大阪市と隣接市の方に限定させていただきます）

などの方は、責任を持って投薬できないため、申し訳ありませんがお受けできません（来院されてもお断りするしかありません）。

※栗原クリニックの開設は昭和56年とのことで、筆者はまだ高校1年生でした。素晴らしい発表ありがとうございました。

今日は「体外受精( IVF )を複数回おこなっても妊娠しない39歳前後の女性に限定して、0.5<TSH<1.0 μIU/mL を目標にコントロールいたします」の話でした。

文責：長崎甲状腺クリニック(大阪)院長　日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医　長崎俊樹

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く