長崎俊樹 院長ブログ[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
2014.06.30
血液検査で測れるホルモンの数
こんにちは。甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)・動脈硬化・内分泌代謝専門の長崎甲状腺(クリニック(大阪)院長 長崎俊樹です。日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医として甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,内分泌などのホットな話題をお届けします。
経過観察として、2-3か月に一度の血液検査で測れる甲状腺のホルモンの数は2つが相場とされます。これは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(FT4, FT3)、サイログロブリンすべてから2つを選んでという事です。副腎・下垂体ホルモンも含めて2つと言う場合もあります。もちろん、医学的な理由ではありません。保険診療のルールなのです。日本の社会保険・国民保険とも赤字財政であり、可能な限り医療費を削減するため、暗黙のルールが存在します。医学的な妥当性がないため、文書としては存在しません(ここが役人のずるいところで、もし文書化されれば医学的な根拠を徹底的に追及されます)。
TSH、FT4, FT3どの2つを選ぶのか
- TSH:日内変動がありますが、もっとも感度が高く、もっとも鋭敏に病態を反映するので外せません。
(午前2時をピークに夜間高く、 明け方に下がりますが、こんな時間に誰も採血しません)
季節による甲状腺ホルモンの必要量の変化を鋭敏に反映します[Thyroid. 2018 Apr;28(4):429-436.]。
ただし、中枢性甲状腺機能低下症で、TSHの合成・分泌障害があると、全く役に立ちません。
- FT4:半減期が長く(分解されるのが遅い)、長期的な甲状腺機能を反映します。有意な日内変動がないとされますが、午後4時から午後6時に低下する傾向があります[医学検査.2002;51:207-11.]。
また、LT4[合成甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)]は、血中ではFT4として存在するため、LT4が適切量か判断するにはFT4を測定するのが良いでしょう。長崎甲状腺クリニック(大阪)では、甲状腺機能低下症/橋本病の方はFT4を測定します。
脱ヨード酵素により体内で活性型のFT3に変化するため、甲状腺機能亢進症/バセドウ病で脱ヨード酵素の働きが強ければ、FT4正常でもFT3が高くなり、バセドウ病の活動性を正確に反映しません[長崎甲状腺クリニック(大阪)では、バセドウ病の方はFT4でなく、FT3を測定します]。
高齢・薬剤などの影響で脱ヨード酵素の働きが弱ければ、FT4正常でもFT3が低くなります。
- FT3:半減期が短く(分解されるのが早い)、わずかな日内変動あります。逆に考えると、身体の状態を敏感に反映します。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では、FT4正常でもFT3が高くなることがあり(難治性T3優位型バセドウ病 )、バセドウ病の活動性をFT4より正確に反映します[長崎甲状腺クリニック(大阪)では、バセドウ病の方はFT4でなく、FT3を測定します]。
甲状腺全摘出後は、TSH、FT4よりもFT3が身体症状を強く反映します。体内でホルモン作用を起こすのは、前駆体のFT4でなく、活性型のFT3です。一方、血液中のT3は、80%が末梢でT4からの変換、20%は甲状腺からの直接分泌なので、甲状腺全摘出後は甲状腺からの直接分泌は無くなり、FT4正常でもFT3は通常より低くなります。
(Thyroid. 2017 Apr;27(4):484-490.)(甲状腺癌全摘出後のホルモン補充療法 )
さらに、筆者の経験では、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でアイソトープ(放射線)治療後数年経ち、ほとんど完全に甲状腺が破壊された場合も、甲状腺全摘出術後とほぼ同じ状態なので、TSH、FT4よりもFT3が身体症状を強く反映します。
結局、個々人の病態により、最適な2つを的確に選択せねばなりません。(甲状腺専門医の腕の見せどころでしょうか)
医学的には3つとも測るのがベストなのですが、世の中理不尽にできています。
本日は血液検査で測れるホルモンの数の話でした。
詳しくは、血液検査で測れるホルモンの数 を御覧ください。
文責:長崎甲状腺クリニック(大阪)院長 日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 長崎俊樹
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区も近く。