めまい、ふらつき、メニエールと甲状腺/動脈硬化[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
動脈硬化:専門の検査/治療/知見[橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科学教室で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞の発症率が上がります。甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]で治療すれば、血管年齢など動脈硬化が改善することを、私、長崎俊樹が国際医学界で初めて証明しました。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。めまい自体の検査/治療を行っておりません。
めまいのある方は、まず耳鼻咽喉科、次に脳神経外科(あるいは神経内科)を受診し、異常がなければ甲状腺専門医を受診してください。
Summary
甲状腺機能低下症、バセドウ病/甲状腺機能亢進症ともに全身状態悪化によるめまい。抗甲状腺薬でANCA関連中耳炎も。良性発作性頭位めまい症と橋本病(慢性甲状腺炎)、メニエール病と甲状腺機能低下症/橋本病の関連が報告。回転性めまいは①小脳梗塞(甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病は動脈硬化が進行)・出血・腫瘍・聴神経腫(上下方向の垂直眼振が特徴)②椎骨脳底動脈系梗塞;前下小脳動脈閉塞・後下小脳動脈閉塞・椎骨動脈解離(Wallenberg症候群;延髄外側症候群)、③鎖骨下動脈盗血症候群(動脈硬化、大動脈炎症候群)。
Keywords
回転,めまい,メニエール,動脈硬化,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺,小脳,甲状腺機能亢進症,バセドウ病
甲状腺機能低下症患者の67%にめまいが起きるとされます(Laryngoscope. 1977 Dec; 87(12):2082-9.)。
甲状腺ホルモン自体が原因で、めまいが起こるメカニズムは証明されていません。甲状腺機能低下症/橋本病でも、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも様々な体の異常をきたすため、自律神経失調、不眠・精神の不安定化や生理不順などから2次的にめまいが誘発されます。
よって、めまいから甲状腺の病気が見つかる事もあるのです。
また、甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病による動脈硬化の進行が、難治性のめまいを起こす場合があります。
加えて、バセドウ病/甲状腺機能亢進症において甲状腺ホルモン合成を抑える薬、抗甲状腺薬MMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール、チウラジール)の副作用でANCA関連血管炎がおきた場合、ANCA関連中耳炎がめまいの原因となることがあります。
めまい止めトラベルミン®は、
- ジフェンヒドラミンサリチル酸塩(抗ヒスタミン剤;抗コリン作用を有する)
- ジプロフィリン(気管支拡張剤テオフィリンと同じキサンチン系薬剤)
を含有し、甲状腺ホルモンと同様に交感神経刺激作用があるため、甲状腺機能亢進症/バセドウ病の症状を増悪させる危険があります。
甲状腺機能が正常化・安定しているバセドウ病患者なら、問題ありませんが、甲状腺ホルモンが正常化していない・不安定な状態で服薬するのはいけません。
良性発作性頭位めまい症と甲状腺
良性発作性頭位めまい症と橋本病(慢性甲状腺炎)の因果関係を肯定する論文、否定する論文(Acta Otolaryngol. 2015 Aug;135(8):754-7.)両方があります。
肯定する論文では、良性発作性頭位めまい症の27.1%に橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体(Med Hypotheses. 2000 Apr;54(4):614-5.)を認めます。
良性発作性頭位めまい症とは
日本めまい平衝学会のガイドラインによると
- 特定の頭位変換(頭の位置)で、回転性あるいは動揺性のめまい(注視眼振検査では、眼球が回転する様な眼振:回旋性眼振);起床時、寝返りを打つ、前かがみ、洗濯物を干すとき、就寝時など
- めまいは頭位変換後数秒で出現、次第に増強、そして減弱ないし消失。この間1分以内が多い。
- 繰り返し同じ頭位変換を行うと、めまいは軽減、最後は消失。
- 難聴、耳鳴、耳閉塞感などの聴覚症状なし。
- 顔面神経(第VIII脳神経)以外の脳神経症状(構音障害、運動失調・運動麻痺、感覚障害、眼神経麻痺、ホルネル症候群)は無い。
特に4.がメニエール病との、5.が小脳・椎骨脳底動脈が原因のめまいとの鑑別点です。
しかし、実際の臨床現場において、頭位変換で誘発されるめまいは小脳梗塞・小脳腫瘍や小脳出血でもおこります。良性発作性頭位めまい症は急ぐ病気ではありませんが、脳梗塞・脳出血は緊急性を要します。良性発作性頭位めまい症と決めつけるのは危険です。
病院によっては、「めまいで耳鼻科紹介の場合、事前にCTで異常なしを確認した後でなければ診療しない」という院内ルールがあるそうです。(気持ちはわかりますが、これを他の病院や紹介元のクリニックに強要すると社会的な問題になりそうです。)
内耳水腫が
- 聴覚器官である蝸牛に起これば耳閉感(耳が詰まった感じ)、耳鳴り、音が響く感じ、低音性難聴
- 平衡器官の三半規管と耳石器に起こればめまい。軽度なら不動感(フワフワ浮いたようなる感じ)、重ければ回転性めまい(グルグル回る感じ)。持続時間は10分程から数時間までの事が多く、短いめまいはメニエール病とは考えにくいです。注視眼振検査では、病変がある耳の方に目が揺れる水平性眼振を認めます。
の症状になります。持続時間は30分から数時間が多いです。
めまい発作が起きたり、起きそうな場合は、静かな環境を保ち気持ちを落ち着かせる。メニエール病の治療は、保存療法が原則。難治性なら、中耳加圧治療、内リンパ嚢開放術、選択的前庭機能破壊術を行うこともあります。
メニエール病の34.3%に甲状腺機能低下症が存在し、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を補充すると全ての患者でメニエール病症状が改善したそうです(J Clin Diagn Res. 2016 May;10(5):MC01-3.)。
また、メニエール病には、特定のヒト白血病抗原(HLA抗原)や内耳抗原に対する自己免疫が関与するとされます。メニエール病患者の38%で甲状腺自己抗体(橋本病抗体・バセドウ病抗体)陽性[内分けは抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)のみ(68.4%)、TPO-Ab+TRAb(TSHレセプター抗体)(15.8%)、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)のみ(10.5%)、TPO-Ab+Tg-Ab(5.2%)]とされます。(Clin Exp Immunol. 2008 Apr;152(1):28-32.)
天気痛(気象病、天気病)は40歳代の女性に多く、甲状腺の病気と発症年齢がオーバーラップします。天気痛は気圧の変動を内耳が感知し、脳がストレスと認識して自律神経が乱れる自律神経失調症が原因とされます。
天気痛(気象病、天気病)の症状は
- 頭痛(片頭痛、緊張型頭痛)、肩こり
- めまい・耳鳴り
- 首の痛み、肩・膝・腰の痛み;いわゆる「雨が降ると関節が痛い」
- うつ症状
- 全身倦怠感;「梅雨の時期のだるさ」
などで、甲状腺機能低下症/橋本病、甲状腺機能亢進症/バセドウ病を疑うような症状です(もちろん、甲状腺機能は正常なので甲状腺の病気は否定されます)。
天気痛(気象病、天気病)に決定的な治療法は無く、規則正しい健康的な生活で全身状態を整えるしかありません。
甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞の発症率が上がります。甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]で治療すれば、総頚動脈内膜中膜肥厚度(CCA IMT)、血管年齢など動脈硬化が改善することを、私、長崎俊樹が医学界で初めて証明しました。
小脳性めまい
回りがグルグル回るめまい(回転性めまい)はメニエールと考えがちですが、動脈硬化などが原因の小脳性・椎骨脳底動脈性めまいの事もあります。
- 小脳性;小脳梗塞、小脳出血(出血後の血腫)、小脳腫瘍、聴神経腫、甲状腺癌の小脳転移
- 椎骨脳底動脈性
①椎骨脳底動脈系梗塞;動脈硬化、スタンダール症候群・美容院脳卒中
②椎骨動脈解離(頚部痛も伴う);頚部外傷、重量挙げ・ダンベル、むやみな首のマッサージなど首に強い衝撃を受けた際の血管損傷による
③鎖骨下動脈盗血症候群]
などが原因です。
小脳性めまいは、注視眼振検査で上下左右方向のランダムな水平性垂直性眼振(水平のみ垂直のみの場合もあり)。一方、メニエール性めまいは異常のある耳(三半規管)を向く、水平性眼振のみ。
小脳性めまいは、
- 梗塞・出血した側と反対側をにらむような偏視
- 小脳失調性歩行障害を伴い、体のバランスが不安定なため体幹が左右に動揺し、つぎ足歩行が困難、歩幅は拡大する(動揺歩行)。即ち、歩けない状態なので、①車椅子で来院するか、②救急搬送されるか、いずれかが多い。
- 企図振戦;何か動作をしようとした時の手の震え、震えて物をつかめない
- 頭蓋内圧亢進による後頭部痛、吐き気
などの症状を伴います。
同時に小脳障害では、平衡障害により酔っぱらっているような歩行(酩酊様歩行)、開脚(wide-based gait)、体幹動揺がみられます。
セファドール(ジフェニドール)は
- 前庭神経路の調整作用
- 椎骨動脈の循環改善する作用
があります。
小脳出血
高血圧性の小脳出血は、左右いずれかの歯状核に多い。脳動静脈奇形(AVM)破裂や凝固異常による小脳出血は正中部におきる可能性あり。
スタンダール症候群・美容院脳卒中症候群は、長時間、上を向いた姿勢、頚を後ろに反らした姿勢を続けると椎骨脳底動脈系が圧迫され、血流障害に陥るために生じます。
フランスの文豪スタンダールが、イタリア、サンタ・クローチェ聖堂の天井・壁に書かれたフレスコ画を長時間見上げて鑑賞した後、椎骨脳底動脈血流不全による強烈なめまいに襲われ、倒れたのが病名の由来です。
現在でも、サンタ・クローチェ聖堂ではスタンダール症候群を発症する観光客がいるそうです。
美容院脳卒中症候群もシャンプー台の上に首を乗せ、大きく後ろに反らす姿勢で同じ現象が起こります。いずれも、一時的な脳血流不全で終われば良いのですが、圧迫部で椎骨動脈解離、血栓が生じ小脳梗塞、椎骨脳底動脈梗塞に至る可能性もあります。
小脳梗塞・椎骨脳底動脈系梗塞
ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)の症状は、
- めまい(前庭神経核の障害)
- 聴力正常(蝸牛神経核は障害されない)
- 飲み込みの障害(嚥下障害)、声のカスレ(嗄声)(疑核=舌咽神経と迷走神経の運動核の障害)口蓋垂は健側へ偏位;巨大甲状腺腫、甲状腺腫瘍・甲状腺癌による圧迫・反回神経麻痺のよう
- 吃逆(しゃっくり)が止まらない;横隔膜の不随意攣縮により声門が突然閉塞して起きる
- 感覚障害
病側(脳梗塞側)の顔面感覚障害;顔面が腫れぼったく、しびれる感じ
健側の体の感覚障害;首から下が痛い - ホルネル症候群;交感神経下行路の障害により、
①病側顔面の縮瞳、眼瞼下垂(甲状腺眼症の様)、眼裂狭い、発汗低下、体温低下(甲状腺機能低下症、橋本病(慢性甲状腺炎)合併シェーグレン症候群の様)
②健側体幹の体温低下 - 片麻痺は起こらない。
椎骨動脈解離
小脳出血(出血後の血腫)
小脳出血で血腫が大きい場合には脳幹が圧迫され、命に危険がおよぶことがあります。小脳出血後の血腫は、3cm以上なら神経症状によらず緊急手術適応となります。3cm未満なら保存治療となりますが、時間が経つと3cm以上になる可能性あるため、どの道、脳外科に頼む必要があります。
鎖骨下動脈盗血症候群は動脈硬化、あるいは大動脈炎症候群で鎖骨下動脈の起始部が閉塞すると、反対側の椎骨動脈から閉塞した末梢側に血液が逆流し、脳血流が減少します。
閉塞側の上肢を動かすと、めまい・失神、視力障害が誘発されます。また、上肢・下肢に血流が届かなくなり(脈なし病)、手足が冷たく、しびれたりします。
動脈硬化のない若い女性では、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)に合併する大動脈炎症候群(脈なし病、高安動脈炎)の可能性あり。
自己免疫性甲状腺疾患(橋本病・バセドウ病)に合併する大動脈炎症候群(脈なし病、高安動脈炎)が原因で、めまい・失神が起きる場合があります。
大動脈から分枝した動脈の炎症で
- 鎖骨下動脈盗血症候群
- 頸動脈・椎骨動脈の狭窄・閉塞
がおき、脳血流不全からめまい、失神に至ります。
甲状腺腫瘍、甲状腺がんの頸部リンパ節転移で、頸動脈洞が圧排されると、めまい・ふらつき・失神が起きる事があります(頸動脈洞症候群、頸動脈洞反射、頸動脈洞過敏)。
頸動脈洞に存在する圧受容器(頸動脈小体)が圧迫されると、舌咽神経を介し、延髄弧束核→迷走神経背側核・疑核・延髄橋網様体に刺激が伝わり、迷走神経心臓枝が心臓のリズムを作る(日本心臓財団 HP改変)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区も近く。