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甲状腺腫瘍・甲状腺がん[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波検査(エコー) 内分泌 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

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甲状腺腫瘍

甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。

その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。

Summary

甲状腺腫瘍が増えているのは超音波(エコー)検査、肺CT、頸椎MRIや頚動脈エコーで偶然見つかるため。人間ドックの甲状腺超音波(エコー)検査で20%に甲状腺腫瘍(甲状腺結節)がみつかり、約2-3%が甲状腺癌。甲状腺腫瘍には腺腫様甲状腺腫濾胞性腫瘍良性濾胞腺腫濾胞腺腫良悪鑑別困難例甲状腺濾胞癌)、甲状腺乳頭癌濾胞型甲状腺乳頭癌などの亜型、甲状腺微小乳頭癌浸潤型微小乳頭癌甲状腺低分化がん甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌甲状腺原発扁平上皮癌粘表皮癌CASTLE甲状腺癌甲状腺原発悪性リンパ腫転移性甲状腺癌などがある。

Keywords

甲状腺腫瘍,超音波,エコー,検査,甲状腺結節,甲状腺癌,腺腫様甲状腺腫,腺腫様結節,良性濾胞腺腫,甲状腺乳頭癌

甲状腺腫瘍の種類

近年、甲状腺腫瘍が増え続けています。これは、超音波(エコー)診断装置の進歩に加え、肺CT、頸椎MRIや頚動脈エコーで偶然見つかるものが増えているためです。人間ドックで甲状腺超音波(エコー)検査をおこなうと10-20%位に甲状腺腫瘍(甲状腺結節)がみつかり、男女比1:2、約半数が10mm以上との報告が最も多いです。

甲状腺結節取扱い診療ガイドライン2013では、甲状腺結節の約2-3%(30-50人に1人)が甲状腺癌とされます。よって甲状腺超音波(エコー)検査で約0.5%(200人に1人)甲状腺癌が見つかる事になります。

甲状腺腫瘍には以下のようなものがあります。

甲状腺癌の種類と頻度
  1. 良性と言われていたが、高頻度に悪性が見つかる事が報告された腺腫様甲状腺腫
  2. 良性濾胞腺腫(いわゆるアデノーマ)
  3. 濾胞腺腫だが良悪鑑別困難例(境界病変)
  4. 悪性の甲状腺濾胞癌甲状腺乳頭癌甲状腺髄様癌甲状腺未分化癌甲状腺原発悪性リンパ腫

 (甲状腺癌の内訳は右の図)

隠れ甲状腺癌(甲状腺ラテント癌)

隠れ甲状腺癌(甲状腺ラテント癌)は、剖検(死後病理解剖する事)すると、日本人の3-5.2%に存在するとの報告があります(甲状腺結節取扱いガイドライン2013,p8-22)。フィンランド人、ハワイアンでも同様に高い数字です(Cancer 56:531-538,1985)。

腺腫様甲状腺腫

腺腫様甲状腺腫 を御覧ください。

甲状腺濾胞性腫瘍

  濾胞性腫瘍 を御覧ください。

良性濾胞腺腫

良性濾胞腺腫 を御覧下さい。

甲状腺専門医を悩ませる濾胞腺腫良悪鑑別困難例の細胞像 

濾胞腺腫良悪鑑別困難例 を御覧下さい。

甲状腺濾胞癌

甲状腺濾胞癌 を御覧ください。

甲状腺乳頭癌

甲状腺乳頭癌 を御覧下さい。

甲状腺低分化がん

甲状腺低分化がん を御覧ください。

甲状腺髄様癌

甲状腺髄様癌    を御覧ください。

甲状腺原発悪性リンパ腫

甲状腺原発悪性リンパ腫に詳細があります。

その他(甲状腺専門医以外誰も知らなくて良いです)

甲状腺原発Granular cell tumorは極めてまれな神経細胞由来腫瘍、ほとんど良性、好酸性細胞を認める。甲状腺神経鞘腫はシュワノーマ。甲状腺血管肉腫はヨード欠乏地域、特にアルプス地方で報告が多い。甲状腺超音波(エコー)所見は血管壁が何層か重なった様な構造。甲状腺平滑筋肉腫は高齢者に多く、報告例は臨床的経過から甲状腺未分化癌が疑われるも組織生検で確定。

稀中の稀、誰も知らないGranular cell tumor

甲状腺原発Granular cell tumorは、現在まで10例が報告されているだけの、極めてまれな神経細胞由来の腫瘍です。最後の10例目以外は全て良性です。当然、サイログロブリンは陰性ですが、細胞診では、好酸性細胞を認めるため橋本病結節の鑑別要です。(第55回 日本甲状腺学会 P1-06-08 気管浸潤を伴う甲状腺Granular cell tumor)(Int J Clin Exp Pathol. 2014; 7(8): 5186–5191.)

下記写真Korean J Otorhinolaryngol-Head Neck Surg. 2014 Feb;57(2):108-111.

Granular cell tumor超音波検査(エコー)画像

Granular cell tumor超音波検査(エコー)画像

Granular cell tumor 細胞診

Granular cell tumor 細胞診

稀中の稀、誰も知らない甲状腺血管肉腫

甲状腺血管肉腫ヨード欠乏地域、特にアルプス地方で報告が多く、これまで約50例が報告されるのみです。日本では高知医療センターが報告しています(第59回日本甲状腺学会 P2-4-7 甲状腺血管肉腫の一例)。

甲状腺血管肉腫 超音波(エコー)画像

甲状腺超音波(エコー)所見は、58%が低エコー・高エコー混在型、36%が低エコー型、6%が高エコー型(Anticancer Res. 2015 Oct;35(10):5185-91.)。

あたかも血管壁が何層か重なった様な(玉ねぎの皮状)構造をしています。

穿刺細胞診での診断率は約20%

免疫組織染色で

  1. CD31,CD34,FactorVIII 陽性
  2. サイログロブリン陰性

死亡率も50~90%と高い。分子標的薬の有効性も報告されています。

甲状腺血管肉腫 細胞診

甲状腺血管肉腫 細胞診;細胞密度高い

甲状腺血管肉腫 細胞診

甲状腺血管肉腫 細胞診;血管平滑筋様の紡錘形細胞

稀中の稀、誰も知らない甲状腺平滑筋肉腫

稀中の稀、誰も知らない甲状腺平滑筋肉腫。平滑筋肉腫は高齢者に好発、甲状腺原発の平滑筋肉腫は極めて稀( Cancer 41:2267~2275, 1978.)。

甲状腺原発平滑筋肉腫の発生論は

  1. 血管壁の平滑筋細胞由来(Cancer 62:2558~2563, 1988.)
  2. 甲状腺未分化癌の化生変化、退行分化’Pathology 25:203~205, 1993.)
  3. 腺腫様甲状腺腫内の間葉系細胞の癌化(耳展 51:3;145~149,2008)

などの説があります。

報告例では臨床的経過から甲状腺未分化癌が疑われるも組織生検で甲状腺平滑筋肉腫と診断されたそうです。8年間サイズ変化の無い5cm大の腫瘤が、突然8cm大に増大。シクロホスファミド・ビンクリスチン・ドキソルビシン・ダカルバジン(CYVADIC 療法)に無反応。

甲状腺平滑筋肉腫

甲状腺平滑筋肉腫の超音波(エコー)所見;筋線維束が幾重にも重なった様な内部構造(Oncol Lett. 2016 Jun;11(6)3982-3986.)

甲状腺平滑筋肉腫 エラストグラフィー

甲状腺平滑筋肉腫のエラストグラフィー;硬そうなイメージがありますが、以外にも硬くないのには驚き(Oncol Lett. 2016 Jun;11(6)3982-3986.)

甲状腺平滑筋肉腫の組織

甲状腺平滑筋肉腫の組織は、紡錘形細胞が線維束を形成。免疫染色は筋系マーカーのACTA2(アルファアクチン2;smooth muscle actin)、デスミン(Desmin)、間葉系細胞マーカーのビメンチン(vimentin)陽性(Braz J Otorhinolaryngol. 2016 Nov - Dec;82(6):715-721.)

甲状腺原発滑膜肉腫‎‎

‎滑肉肉腫の15%は、頭頚部、体幹などに発生。甲状腺原発滑膜肉腫‎‎は極めて稀で、転座t(X;18)(p11.2;q11.2)が原因。

  1. 平均年齢は38歳
  2. 男女比は4:1で男性に多い
  3. 5例中3例で、術後切除標本で滑肉肉腫の診断が行われた。
  4. うち2人は遠隔転移
  5. 通常の甲状腺癌と区別が付かず、ほとんどは切除標本で術後に診断される
    (Anticancer Res. 2018 Sep;38(9):5275-5282.)
  6. 甲状腺微小乳頭癌の合併(Pathologica. 2018 Sep;110(2):106-110.)②甲状腺乳頭癌の合併(Iran J Otorhinolaryngol. 2019 Jan;31(102):69-72.)も報告
  7. 確定診断はSYT/SSX融合転写産物の分子遺伝学的解析(Int J Surg Case Rep. 2021 Aug;85:106245.)
甲状腺原発滑膜肉腫‎‎ CT画像

甲状腺原発滑膜肉腫‎‎ CT画像(Clin Exp Otorhinolaryngol. 2011 Dec;4(4):204-6.)

甲状腺原発滑膜肉腫‎‎ 組織

甲状腺原発滑膜肉腫‎‎ 組織(Int J Surg Case Rep. 2021 Aug;85:106245.)

甲状腺原発滑膜肉腫 肺転移

甲状腺脂肪腫

甲状腺脂肪腫は、ほとんど存在しませんが、報告例はあります。甲状腺脂肪腫は脂肪組織と濾胞細胞の混合腫瘍で(J Jpn Soc Clin Cytol 40 : 622-625, 2001)。

甲状腺脂肪腫は超音波(エコー)検査で高エコー、CT検査で脂肪成分が大部分を占めます。

甲状腺脂肪腫 超音波(エコー)検査画像(J Ultrasound. 2018 Jun;21(2)65-168.)

甲状腺脂肪腫 超音波(エコー)画像
甲状腺脂肪腫 単純CT画像

甲状腺脂肪腫 単純CT画像(Am J Neuroradiol. 2002 Nov-Dec;23(10)1640-1.)

鑑別診断として

  1. 結節性甲状腺アミロイドーシス ;穿刺細胞診でアミロイドを認める
  2. 脂肪化生を伴う濾胞腺腫濾胞癌 ;脂肪の割合が、はるかに少ない。虚血により脂肪化生が起こるとされます(Surg Today 34 : 593-596, 2004)。

 があります。

甲状腺脂肪腫 組織像

甲状腺脂肪腫 組織像

脂肪化生 組織像

比較対象として甲状腺組織の脂肪化生 組織像

甲状腺髄外造血

甲状腺での髄外造血(骨髄以外での造血)は、通常の状態ではありません。髄外造血するのは肝臓、脾臓です。しかし、極めて稀に、甲状腺での髄外造血する事がります。

甲状腺髄外造血は、

  1. 甲状腺結節の0.005%(2万分の1の確率)に存在
  2. 血液疾患の既往歴を持っていない
  3. 約90%が女性
  4. 約45%に石灰化
  5. 約14%で原発性骨髄線維症
  6. 甲状腺癌の合併はなし

甲状腺髄外造血の箇所は、超音波(エコー)検査ではあたかも甲状腺腫瘍のように見え、

  1. 卵殻状石灰化の事もあれば、石灰化していないケースもあります
  2. 腺腫様甲状腺腫と区別できない事もあります。

(J Formos Med Assoc. 2018 Dec;117(12):1108-1114.)(J Am Soc Cytopathol. 2016 May-Jun;5(3):133-138.)

甲状腺髄外造血 超音波(エコー)画像 卵殻状石灰化

甲状腺髄外造血 超音波(エコー)画像 卵殻状石灰化

甲状腺髄外造血 超音波(エコー)画像 腺腫様甲状腺腫様

甲状腺髄外造血 超音波(エコー)画像 腺腫様甲状腺腫の様な見え方

甲状腺髄外造血 穿刺細胞診

穿刺吸引細胞診を行うと、通常の骨髄と同じく巨核球・赤芽球・成熟段階の顆粒球の3系統の造血細胞と脂肪細胞を認めますが、血液癌を疑う異型性はありません。

(J Formos Med Assoc. 2018 Dec;117(12):1108-1114. )

甲状腺髄外造血 穿刺細胞診所見
(A)骨髄球、骨髄芽球、赤芽球
(B-D)巨核球、骨髄球、赤芽球

甲状腺未分化癌と鑑別を要します。

甲状腺のう胞

甲状腺のう胞は、

  1. 真性の嚢胞は稀;多のう胞性甲状腺疾患(PCTD)
  2. 破壊によるのう胞変性[橋本病(慢性甲状腺炎)破壊性甲状腺炎バセドウ病腺腫様甲状腺腫]
  3. 小児のコロイドのう胞
  4. のう胞型腺腫様結節のう胞型濾胞腺腫のう胞形成型甲状腺乳頭癌のう胞型髄様癌

1-3.および細胞が壁に沿って単層配列(1列)の のう胞型濾胞腺腫は、臨床的には単なる嚢胞(のう胞)として扱います。

良性であれば、

  1. エコー上、穿刺細胞診(FNA)が行えるだけの組織成分がない
  2. 組織成分があった場合、穿刺細胞診(FNA)を行えば、泡沫細胞が採取される
のう胞型腺腫様結節 超音波(エコー)画像

のう胞型腺腫様結節 超音波(エコー)画像

び細胞が壁に沿って単層配列(1列)の のう胞型濾胞腺腫

細胞が壁に沿って単層配列(1列)の のう胞型濾胞腺腫

甲状腺のう胞はほとんどの場合、治療を必要としません。しかし、

  1. 巨大甲状腺のう胞が気管食道などを圧迫し、息がしにくい、飲み込みにくい場合
  2. 巨大甲状腺のう胞が縦隔進展する場合
  3. のう胞内出血の場合
  4. 美容上の問題;「首が腫れていて気になる」など

は、穿刺排液を行いますが、中の液体は粘稠で、太い針でも完全に抜けない事が多いです。

穿刺排液困難、何度、穿刺排液しても液がたまる巨大のう胞腺腫は手術適応になります。経皮的エタノール注入治療(PEIT)を行う施設もありますが、筆者はお勧めしていません。

甲状腺のう胞に見えるが甲状腺腫瘍

嚢胞でなく甲状腺腫瘍 超音波(エコー)画像 

超音波(エコー)画像では、極めて低エコー(真っ黒)で、内部構造が無いように見え、あたかも甲状腺のう胞ですが、実は甲状腺腫瘍の事があります。

しかし、ドプラーモードで見ると、内部血流が、はっきり見え、甲状腺腫瘍である事がわかります。

甲状腺のう胞に見えるが甲状腺腫瘍 (拡大画像)

甲状腺のう胞に見えるが甲状腺腫瘍 (拡大画像)

嚢胞でなく甲状腺腫瘍 ドプラー

のう胞でなく甲状腺腫瘍 ドプラー;内部血流が、はっきり見え、甲状腺腫瘍である事がわかります。

良性と診断された甲状腺結節の転帰

‎細胞診と超音波(エコー)検査で良性と診断された甲状腺結節は、約5年間のフォローで

  1. ‎11.1%でサイズ増大が認められ、4.9mm(95%CI、4.2-5.5mm)の増大。多結節性の場合に増大しやすい。
  2. 0.3%で実は甲状腺癌だった。サイズ増大したのは0.2%。
  3. 9.3%で新たな甲状腺結節が出現。0.1%が甲状腺癌だった

(JAMA. 2015 Mar 3;313(9):926-35.)

伊藤病院で同じく良性と診断された甲状腺結節を10年以上フォローした報告では、

  1. 0.78%で実は甲状腺乳頭癌
  2. 0.56%は新たに出現した甲状腺結節の甲状腺癌

だった(第64回 日本甲状腺学会 4-1)。

人工知能(AI)ACR TI-RADS(Artificial Intelligence to Revise)を用いた甲状腺結節・甲状腺腫瘍の超音波(エコー)診断

甲状腺では人工知能(AI)を用いた甲状腺結節・甲状腺腫瘍の超音波(エコー)診断システムが開発されている。超音波(エコー)画像は反射した超音波を信号化し画像に構成したため、完全に甲状腺結節の良悪性を診断できず、経験を積んだ甲状腺専門医でも判断が難しい事がある。人間の経験を教師データとして学習する人工知能(AI)も限界は同じ。判断付かないものを決断するのは人間しかできない。AI画像診断システムが出した答えを最終的に承認するのは医師。医師がAI画像診断システムと同等の知識を持っていなければ不可能。結局、甲状腺専門医以外の医師が行ってはならない。

AI(人工知能)の危険性

AI(Artificial Intelligence:人工知能)とは、経験(教師データ)から学習し、それを基に未知のデータを自ら判断し、答えを出すシステムです。映画「ターミネーター」で人類を滅ぼす審判を下す”スカイネット”が、最も有名なAI(人工知能)の例でしょう。架空の話ですが、最終的な判断をAI(人工知能)に委ねる恐ろしさが、良く分かります。

ターミネーター審判の日
ブライキングボス

古くは「新造人間キャシャーン」で人類を淘汰しようとするブライキング・ボス。環境保全用に作られたアンドロイドで、決してAIが狂った訳ではなく、地球環境を守るためには、人類の粛清が不可欠と判断したのです(リメイクされたOVA版)。

また、Googleで試験導入されたAI(人工知能)が、ヒトラーを肯定する答えを出して、急遽、引っ込められたのは、記憶に新しい出来事でした。

現在、医療分野での識別系AI(人工知能)導入が進められ、放射線科の画像診断、内視鏡診断、病理診断、皮膚疾患の診断、眼底写真の読影などに応用されています。識別系のAIなら使い方次第で大きな恩恵となります。問題は予測系AIによる診断と治療の選択です。患者の検査データ・画像情報から最適の病名、治療法を選び出す事は可能でしょう。しかし、それらは最も確率の高い候補であって、本当に良いかどうかを決めるのは人間です。

AI(人工知能)は

  1. 経験したこと(教師データ)からしか答えを出せない
  2. 倫理観、感情を持たないため、予想もしない間違った、非倫理的な答えを出す

事を忘れず、あくまで最終診断は人間が下さねばなりません。

甲状腺とAI(人工知能)

識別系AIとして、1次Screeningや教育的な目的で、CAD(Computer Assisted Diagnosis)を応用した超音波(エコー)画像の人工知能(AI)診断が臨床応用されています。

甲状腺ではACR TI-RADS(Thyroid Imaging Reporting and Data System)(Artificial Intelligence to Revise)を用いた甲状腺結節・甲状腺腫瘍の超音波(エコー)診断システムが開発されています。Am-CAD UT®(AmCad BioMed)とS-Detect®(Samsung)があります。

しかし、このシステムは、自ずと限界があります。そもそも超音波(エコー)画像だけでは、完全に甲状腺結節の良悪性を診断できません。胃・大腸内視鏡検査の肉眼画像と異なり、超音波(エコー)画像は直接病変を見るのでなく、検者がプローブを当てた場所で、反射した超音波を信号化し画像に構成したもの、要するに影を見ているだけです。そのため、

  1. 人間では簡単な腫瘍と非腫瘍(不均質さ)の区別が難しい
  2. 人間では簡単な不均質さ、無エコー領域とノイズ(アーチファクト)の区別が難しい
  3. 超音波診断装置の解像度、画像処理技術の原理(メーカーの特許)の違いにより、ばらつきが大きい
  4. 検者にしかプローブの位置情報が分からない

などの理由でAI画像診断システムに適しません。

甲状腺結節・甲状腺腫瘍は、超音波(エコー)で良性に見えても悪性だったり、その逆も日常茶飯事です。どんなに経験を積んだ甲状腺専門医でも乗り越えれない壁ですので、人間の経験を教師データとして学習する人工知能(AI)も限界は同じです。判断付かないものを決断する、これは人間にしかできない事、最後は人間なのです。

そして最も危険なのは、非専門医、非医師がAI画像診断システムを用いて診断を下す事です。AI画像診断システムが出した答えを最終的に承認するのは生身の医師です。それには診断医がAI画像診断システムと同等以上の知識を持っていなければ不可能です。結局、甲状腺専門医以外の医師が行ってはならないのです。

余談ですが、映画「ターミネーター3」で防衛AIシステム”スカイネット”の起動を承認してしまった軍人の間違いが機械と人間の戦争の開始点。

甲状腺癌のprecision medicine(精密医療)[がんゲノム医療]

※長崎甲状腺クリニック(大阪)では、がんゲノム医療、遺伝子パネル検査、患者申出療養制度に対応しておりません。

precision medicine(精密医療)は、個別の遺伝子変異などに基づき最適な治療や予防を行うもので、がんゲノム医療とほぼ同義になっています。そのため、従来の発症臓器別治療は、臓器を問わない遺伝子変異別の治療に移行しました。

遺伝子パネル検査は、次世代シークエンサーの遺伝子解析装置を用い、癌細胞の塩基配列を高速で解析する検査です。癌細胞の変異遺伝子が判明すれば、そこに効く分子標的薬を選択できます。

遺伝子パネル検査は標準治療がある場合、それが終了した後(要するに完治しなかった場合)、次に分子標的薬を探索する場合に限り保険適応が認められます。※放射線治療無効な甲状腺分化癌乳頭癌濾胞癌 に レンビマ ネクサバール を投与する際には必要ありません。

甲状腺癌に対して遺伝子パネル検査をいつ行うべきか?

  1. 甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)では、131-I放射線治療 が無効あるいは行えず、レンビマ ネクサバール も使用不能になった時
  2. 甲状腺低分化がん甲状腺未分化癌 ではレンビマ が使用不能になった時
  3. 甲状腺髄様癌ではバンデタニブ(カプレルサ錠®)レンビマ が使用不能になった時

など、標準治療で万策尽きた時に行うべき。

ただし、甲状腺癌の進行は緩徐な事が多いため、検体が古くなり、DNAが変性し検査不能になっている可能性があります。

遺伝子パネル検査の内、

  1. OncoGuide™ NCCオンコパネル システム;国立がん研究センターが開発
  2. FoundationOne® CDx がんゲノムプロファイル

が2019年に保険適応になっています。

※長崎甲状腺クリニック(大阪)では、遺伝子パネル検査は行っておりません。

(国立がん研究センター HPより)

OncoGuide™ NCCオンコパネル システム

穿刺細胞診で採取した甲状腺癌細胞に対する次世代シーケンシング(NGS)の技術は、ほぼ確立されています(J Mol Diagn 2013 Mar;15(2):234-47.)。

甲状腺癌のprecision medicine(精密医療)として、

RET阻害薬レットヴィモ®(セルペルカチニブ:セルパーカチニブ:selpercatinib)が、RET遺伝子変異を持つ

  1. 進行または転移を有する全身療法が必要な12歳以上の甲状腺髄様癌
  2. 放射性ヨード治療抵抗性で、全身療法が必要な12歳以上の進行RET融合遺伝子陽性甲状腺癌(甲状腺乳頭癌、おそらく甲状腺低分化癌も含まれると思います)

に承認されています。

BRAF 遺伝子変異陽性癌にタフィンラー ®(ダブラフェニブ:dabrafenib)も承認されています。

これらは患者申出療養制度により甲状腺癌に対しても使用が可能となります。※長崎甲状腺クリニック(大阪)では、対応しておりません。

その他、

  1. ペムブロリズマブ(Pembrolizumab:キイトルーダ®)マイクロサテライト不安定性が高いMSI-High固形癌に
  2. ロズリートレク®(エヌトレクチニブ:Entrectinib);ROS1(c-ros遺伝子1)陽性、またはNTRK(神経栄養因子受容体)融合遺伝子陽性の固形がんに。NTRKファミリーの選択的チロシンキナーゼ阻害剤
  3. ラロトレクチニブ(Larotrectinib);NTRK融合蛋白質陽性の切除不能または転移を有する癌
  4. 甲状腺未分化癌では、種々の遺伝子変異に対する分子標的薬の効果が報告されています(Acta Med Iran. 2017 Mar;55(3):200-208.)

があります。NTRK融合遺伝子陽性の固形がんに対する承認に続き、ROS1融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんに対する承認を取得

甲状腺癌の悪液質(カヘキシア:Cachexia)

癌の悪液質(カヘキシア:Cachexia)は、進行がんに見られる栄養不良状態で、

  1. 著しい筋組織の減少
  2. 栄養療法で改善困難
  3. 進行性に機能障害をもたらす

のが特徴の複雑な代謝障害。

  1. 癌細胞に対する慢性的な免疫反応と炎症が起こり、炎症性サイトカインによって、①栄養素をエネルギーに変換できない②食欲不振、倦怠感
  2. がん細胞のエネルギー代謝により蛋白、栄養素を横取りされる

ため、低栄養、体重減少に至ります。

癌の悪液質(カヘキシア:Cachexia)

癌の悪液質は段階によって

  1. 前悪液質;代謝異常が軽度で、明らかな悪液質の症状を呈さない
  2. 不可逆的悪液質;高度代謝障害により栄養療法で改善しない終末期
  3. 悪液質;その中間

に分類されます。

悪液質では、

  1. がん患者の生活の質(QOL)が著しく低下
  2. がん化学療法に対する反応性が低下
  3. 予後を悪化させる。死亡率が増加

します。

甲状腺では特に甲状腺未分化癌(ATC)が悪液質を起こします。

しかし、意外にも、甲状腺に限らず癌の悪液質患者では、低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)になり難いとの報告があります(Tumori. 1989 Apr 30;75(2):185-8.)。

さらに、悪液質患者で生じる低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス)は、低栄養によるもので、良性疾患の低栄養による場合と変わらないとされます(Ann Surg. 1985 Jan;201(1):45-52.)。

甲状腺癌と放射線治療

長崎甲状腺クリニック(大阪)は、「甲状腺癌と放射線治療」に関するセカンドオピニオンはお断りしております。

甲状腺外科

甲状腺癌と紛らわしい結節性橋本病(橋本病結節)

橋本病(慢性甲状腺炎)ではリンパ球浸潤に伴う炎症から濾胞細胞の好酸性変性[好酸性細胞(Hürthle 細胞)]・過形成、浮腫、線維化で結節性病変を形成[結節性橋本病(橋本病結節)]。病理学的に腺腫様甲状腺腫腺腫様結節と同じで、橋本病(慢性甲状腺炎)を基盤とする腺腫様甲状腺腫腺腫様結節。超音波(エコー)検査では内部が極めて低エコーのため甲状腺癌甲状腺原発悪性リンパ腫と鑑別必要。細胞診では好酸性細胞、リンパ球集簇、炎症性多核巨細胞を認め、甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型通常型甲状腺乳頭癌亜急性甲状腺炎と鑑別要。

橋本病(慢性甲状腺炎)では、リンパ球浸潤に伴う炎症から、濾胞細胞の好酸性変性・過形成、浮腫、線維化などの変化で結節性病変が形成されます[結節性橋本病(橋本病結節)]。病理学的には腺腫様甲状腺腫腺腫様結節と同じ事で、橋本病(慢性甲状腺炎)を基盤とする腺腫様甲状腺腫腺腫様結節になります。

橋本病結節 超音波(エコー)画像

結節性橋本病(橋本病結節)は、超音波(エコー)検査において内部が極めて低エコー(真っ黒)に写り、甲状腺癌甲状腺原発悪性リンパ腫と鑑別が必要です。。

写真は 結節性橋本病(橋本病結節)超音波(エコー)画像

橋本病結節 超音波(エコー)画像

結節性橋本病(橋本病結節) 超音波(エコー)画像

橋本病結節 超音波(エコー)画像 拡大 ドプラー

結節性橋本病(橋本病結節) 超音波(エコー)画像 拡大 ドプラー

 結節性橋本病(橋本病結節) 超音波(エコー)画像
結節性橋本病(橋本病結節) 超音波(エコー)画像
結節性橋本病(橋本病結節) 超音波(エコー)画像

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結節性橋本病(橋本病結節) 超音波(エコー)画像(拡大)

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結節性橋本病(橋本病結節)の細胞診では、わずかに異型のある好酸性細胞(Hürthle 細胞、ハーテル細胞、ヒューテル細胞)が増殖し、リンパ球集簇、炎症性多核巨細胞を認めます。

  1. 好酸性細胞・リンパ球浸潤は、甲状腺乳頭癌の特殊型の一つである甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型でも見られます。甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型は、境界不明瞭な腫瘤である点が異なります。
  2. 炎症性多核巨細胞は、通常型甲状腺乳頭癌亜急性甲状腺炎にも見られます。
橋本病結節 好酸性細胞・リンパ球浸潤

結節性橋本病(橋本病結節) 好酸性細胞・リンパ球浸潤(Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology)

橋本病結節 好酸性細胞・リンパ球浸潤

結節性橋本病(橋本病結節) 好酸性細胞・リンパ球浸潤(Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology)

甲状腺癌の予後

甲状腺関連の上記以外の検査・治療    長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

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