甲状腺癌と紛らわしい結節性橋本病（橋本病結節）[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用)・橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
甲状腺癌と紛らわしい結節性橋本病（橋本病結節）[本ページ]
Summary
橋本病（慢性甲状腺炎）ではリンパ球浸潤に伴う炎症から濾胞細胞の好酸性変性[好酸性細胞（Hürthle細胞,ハーテル細胞）]・過形成、浮腫、線維化で結節性病変を形成[結節性橋本病（橋本病結節）]。病理学的に腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節と同じで、橋本病（慢性甲状腺炎）を基盤とする腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節。超音波（エコー）検査では内部が極めて低エコーのため甲状腺癌、甲状腺原発悪性リンパ腫と鑑別必要。細胞診では好酸性細胞、リンパ球集簇、炎症性多核巨細胞を認め、甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型、通常型甲状腺乳頭癌・亜急性甲状腺炎と鑑別要。
Keywords
橋本病,慢性甲状腺炎,リンパ球浸潤,好酸性細胞,ハーテル細胞,結節,結節性橋本病,橋本病結節,腺腫様甲状腺腫
橋本病（慢性甲状腺炎）では、リンパ球浸潤に伴う炎症から、濾胞細胞の好酸性変性・過形成、浮腫、線維化などの変化で結節性病変が形成されます[結節性橋本病（橋本病結節）]。病理学的には腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節と同じ事で、橋本病（慢性甲状腺炎）を基盤とする腺腫様甲状腺腫・腺腫様結節になります。
腺腫様結節と橋本病結節は視点が違うだけで、本質的には同じものです。上記の画像はその典型例で、結節の内部構造が超音波（エコー）上、いずれでもあります。
腺腫様結節・橋本病結節(拡大)
橋本病結節、腺腫様結節どちらと言える超音波（エコー）画像です。
結節性橋本病（橋本病結節）は、超音波（エコー）検査において内部が極めて低エコー（真っ黒）に写り、甲状腺癌、甲状腺原発悪性リンパ腫と鑑別が必要です。。
写真は 結節性橋本病（橋本病結節）超音波（エコー）画像
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像 ドプラー；結節内に血流を認め、のう胞（嚢胞）で無いのが分かります。
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像（拡大）
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像（拡大） ドプラー
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像（拡大）
4mm台の橋本病結節；小さすぎて穿刺細胞診もできません・
結節性橋本病（橋本病結節）多発 超音波（エコー）画像；こぼ倍率では、嚢胞変性か、結節性橋本病（橋本病結節）か判別難。
結節性橋本病（橋本病結節）多発 超音波（エコー）画像；こぼ倍率では、嚢胞変性か、結節性橋本病（橋本病結節）か判別難。
結節性橋本病（橋本病結節）多発 超音波（エコー）画像（拡大）；この倍率では、嚢胞変性でなく、結節性橋本病（橋本病結節）であるのが分かります。
結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像（拡大） ドプラーモード；低エコー内部に血流を認め、嚢胞変性でなく、結節性橋本病（橋本病結節）であるのが証明されます。
ケース①
線維化した結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像；結節性橋本病（橋本病結節）は見え方だけで、組織成分を特定するのは困難です。この結節性橋本病（橋本病結節）は線維化して硬く、穿刺してもほとんど細胞が採れませんでした。
線維化した結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像 ドプラーモード；ドプラーモードでも組織成分を特定するのは困難です。
線維化した結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像 ドプラーモード（拡大）；拡大でも組織成分を特定するのは困難です。
ケース②
線維化した結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像だけでは、甲状腺悪性リンパ腫か甲状腺乳頭癌か分かりません。
線維化した結節性橋本病（橋本病結節）ドプラーモード；線維組織が主体なので、血流に乏しい。
線維化した結節性橋本病（橋本病結節） 超音波（エコー）画像 エラストグラフィー；線維組織が主体なので硬い。
ケース①
橋本病リンパ球浸潤、橋本病結節 どちらともとれる見え方です。境界がはっきりしているので橋本病結節とも言えるし、炎症性変化が主体なので橋本病リンパ球浸潤とも言えます。
ケース②
悪性リンパ腫に見えるが細胞診で特に問題なく、橋本病リンパ球浸潤、橋本病結節 どちらともとれる見え方です。境界がはっきりしているので橋本病結節とも言えるし、炎症性変化が主体なので橋本病リンパ球浸潤とも言えます。
ケース③
悪性リンパ腫に見えるが細胞診で特に問題なく、橋本病リンパ球浸潤、橋本病結節 どちらともとれる見え方です。境界がはっきりしているので橋本病結節とも言えるし、炎症性変化が主体なので橋本病リンパ球浸潤とも言えます。
ゲイン補正してエコー輝度を上げると悪性リンパ腫のような網目状構造は認めません。
ケース④
甲状腺悪性リンパ腫に見えるが橋本病結節
甲状腺悪性リンパ腫に見えるが橋本病結節(拡大)
甲状腺悪性リンパ腫に見えるが橋本病結節(拡大)ドプラーモード
甲状腺悪性リンパ腫に見えるが橋本病結節 エラストグラフィー；このケースでは比較的軟らかい。橋本病結節であっても線維化が強ければ硬くなるし、甲状腺悪性リンパ腫でも細胞数が少なければ軟らかくなるので、エラストグラフィーだけでは何も言えない。
ケース①
1年以内に現れ悪性リンパ腫を疑われたが橋本病結節だった
1年以内に現れ悪性リンパ腫を疑われたが橋本病結節だった ドプラーモード
1年以内に現れ悪性リンパ腫を疑われたが橋本病結節だった（拡大）
ケース①
1年以内に発生し、悪性リンパ腫を疑われたが橋本病結節だった
1年以内に発生し、悪性リンパ腫を疑われたが橋本病結節だった(拡大)
甲状腺乳頭癌で右半葉切除後に発生した橋本病結節；甲状腺乳頭癌の再発か、甲状腺悪性リンパ腫の合併か穿刺細胞診をしなければ分かりませんでした。
甲状腺乳頭癌切除後に発生した橋本病結節(拡大)
甲状腺乳頭癌切除後に発生した橋本病結節(拡大)ドプラーモード
結節性橋本病（橋本病結節）の細胞診では、わずかに異型のある好酸性細胞（Hürthle 細胞、ハーテル細胞、ヒューテル細胞）が増殖し、リンパ球集簇、炎症性多核巨細胞を認めます。
- 好酸性細胞・リンパ球浸潤は、甲状腺乳頭癌の特殊型の一つである甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型でも見られます。甲状腺乳頭癌ワルチン腫瘍型は、境界不明瞭な腫瘤である点が異なります。
- 炎症性多核巨細胞は、通常型甲状腺乳頭癌・亜急性甲状腺炎にも見られます。
結節性橋本病（橋本病結節） 好酸性細胞・リンパ球浸潤（Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology）
結節性橋本病（橋本病結節） 好酸性細胞・リンパ球浸潤（Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology）
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。
