HFpEF(収縮力の保たれた心不全),脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP), ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端(NT-proBNP)と甲状腺[長崎甲状腺CL]
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。
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[Int J Mol Sci. 2024 Jan 8;25(2):794.]
(図;バーチャル臨床甲状腺カレッジより改変)
- 甲状腺と心臓病(高拍出量性心不全,右心不全,左心不全)
- 心のう液貯留・心タンポナーデ
- 甲状腺と心臓腫瘍
- 甲状腺と心膜疾患(収縮性心膜炎,急性心膜炎,心外膜脂肪)
- 甲状腺と心筋症
- 劇症型心筋炎、急性心筋炎、好酸球性心筋炎と甲状腺
- 甲状腺と心臓弁膜症[僧帽弁狭窄症(MS),僧帽弁逸脱症,僧帽弁閉鎖不全症(MR),大動脈弁狭窄症(AS),大動脈弁閉鎖不全症(AR),三尖弁閉鎖不全症(TR)]
- 先天性心疾患[心房中隔欠損症(ASD),動脈管開存症(PD),単心室症]
- 甲状腺と心房細動(Af) 頻脈性不整脈 徐脈性不整脈
- 甲状腺で狭心症・心筋梗塞 急性大動脈解離(AAD) 大動脈瘤・大動脈瘤破裂
- 急性化膿性甲状腺炎・全身膿瘍・感染性心内膜炎
- 肺高血圧症
以下、本ページ
Summary
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)患者における甲状腺機能障害の統合有病率は15%(低T3症候群22%、潜在性甲状腺機能低下症15%)。潜在性甲状腺機能低下症による拡張機能障害はHFpEFと深く関連し、甲状腺を治療するとHFpEFも改善する可能性。FT3/FT4 ratioが低いほど(FT4→FT3への変換が悪いほど)HFpEFは重症。脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)・ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端(NT-proBNP)は甲状腺機能亢進症でも上昇。動物実験でイバブラジンによる選択的な心拍の低下は、甲状腺ホルモンによる心筋の変質を減少させる。
Keywords
甲状腺機能低下症,拡張機能障害,HFpEF,収縮力の保たれた心不全,甲状腺,脳性ナトリウム利尿ペプチド,BNP,NT-proBNP,甲状腺機能亢進症,イバブラジン
全心不全患者の半数を占めるHFpEF(heart failure with preserved ejection fraction:収縮力の保たれた心不全)は、左室駆出率(LVEF)≧50%の心不全です。
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)の原因は確定されていませんが、
- 高齢
- 女性(甲状腺の病気と同じ)
- 高血圧の既往;高血圧緊急症として発症
- 慢性閉塞性呼吸器疾患(COPD)
- 心房細動(Af)(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の後遺症として残存)
- 糖尿病(甲状腺の病気と合併多い)
- 肥満
- 甲状腺機能障害 [ARYA Atheroscler. 2025;21(6):80-98.][Ther Adv Endocrinol Metab. 2020 Oct 4;11:2042018820958331.]
など生活習慣病に関連します。(Int Heart J 56 : 137―143, 2015. )[Pol Arch Intern Med. 2022 May 30;132(5):16227.]
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)の病態として、
- 交感神経系やレニン-アンジオテンシン系の亢進により末梢血管抵抗が増加すると、左室収縮能が保たれていても心拍出量が制限される(afterload mismatch)。
- 左室心筋のリモデリングにより左室拡張能が低下し、拡張障害を来す
肺水腫、呼吸困難に進展する3週以上前に肺動脈圧上昇が生じます(Lancet 377 : 658―666, 2011.)。
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)の治療は
- HFrEF(収縮力の低下した心不全;左室駆出率<40%)と同じ薬物治療[β遮断薬(ベータブロッカー)・ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)・アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)・選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)]では予後改善効果ない
α遮断薬は収縮力に関係なく無効
- 肺うっ血の症状緩和に利尿薬が推奨される
- 血管拡張性硝酸薬による後負荷軽減
- 生活習慣病の治療で予後改善
- SGLT2 阻害薬により予後改善
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)の予後は、HFrEF(収縮力の低下した心不全)と同程度に悪いとされます。
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)患者における甲状腺機能障害の統合有病率は15%(95%信頼区間:7%-29%)。低T3症候群(ノンサイロイダルイルネス、ユウサイロイドシック症候群)の統合有病率は22%(95%信頼区間:20%-25%)、潜在性甲状腺機能低下症は15%(95%信頼区間:1%-68%)。[ARYA Atheroscler. 2025;21(6):80-98.]
潜在性甲状腺機能低下症における拡張機能障害は、HFpEF(収縮力の保たれた心不全)の病態に深く関連しています。潜在性甲状腺機能低下症を治療することによって、HFpEF(収縮力の保たれた心不全)も改善する可能性があります[Chin Med J (Engl). 2020 Feb 5;133(3):364-366.]。[Ther Adv Endocrinol Metab. 2020 Oct 4;11:2042018820958331.]
HFpEF(収縮力の保たれた心不全)において、FT3/FT4 ratio(遊離トリヨードチロニン/遊離チロキシン比)が低いほど(FT4からFT3への変換が悪いほど)、
- 体脂肪が多い
- 肺動脈収縮期血圧(PASP)が高い
- 左室駆出率(LVEF)が低い
- 利尿薬の強化、緊急の心不全受診、心不全入院、または心血管死のリスクが高いと予測される
以上より、FT4からFT3への変換率低下が、HFpEF(収縮力の保たれた心不全)の進行に関連している可能性があります。[Cardiology. 2023;148(3):239-245.]
心臓は甲状腺と同様に、内分泌臓器でもあります。心臓から分泌されるホルモン(心臓ホルモン)の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)は、血管を広げ、ナトリウムを尿中へ捨て、利尿を促す作用があります。血管が広がり、かつ循環血液量が減れば、心臓の負担は減って楽に血液を全身に送り出せます。
よって、心不全が強い程、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が多く分泌されるため、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)または ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端(NT-proBNP)を測定すれば、心不全の重症度を予測できます。
- 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧100 pg/mL
- ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端(NT-proBNP)≧300 pg/mL
で心不全の可能性が高くなります。
さらに、
- 脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)≧35 pg/mL
- ヒト脳性ナトリウム利尿ペプチド前駆体N端(NT-proBNP)≧125 pg/mL
なら、隠れ心不全の可能性があります。
血漿BNP値、血清NT-proBNP値は、
- 慢性腎不全(細胞外液量増加)
- 肝硬変(細胞外液量増加)
- 甲状腺機能亢進症
循環血液量が増加するため?
高拍出量性心不全・心房細動(Af)などの二次的な心血管障害によるもの
[Endocr J. 2009;56(1):17-27.][Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Jan 26:14:1083171.] - 甲状腺機能低下症、潜在性甲状腺機能低下症[Front Endocrinol (Lausanne). 2023 Jan 26:14:1083171.]
- 加齢
- 肥満
など心臓病以外でも上昇します。
ネプリライシンは、
- 心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)などのナトリウム利尿ペプチド(NP)
- ブラジキニンなどの血管作動性ペプチド
- アルツハイマー病の発症に関与するアミロイドβペプチド[Neurosci Lett. 2003 Oct 23;350(2):113-6.]
を基質とし、これらを分解します。
ネプリライシン阻害薬とARB(アンジオテンシン受容体拮抗薬)を組み合わせたアンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)の「エンレスト」が実用化されています。
コララン®錠(イバブラジン塩酸塩)は、
洞結節の過分極活性化環状ヌクレオチド依存性チャネル(HCN)4を阻害→過分極活性化陽イオン電流を抑え、活動電位立ち上がり時間を遅延させ、心拍数のみを減少させる薬です(HCNチャネル遮断薬)。
心筋収縮力は低下しません(陰性変力作用は有しない)。
β遮断薬(ベータブロッカー)を含む慢性心不全の標準的な治療を受けても、
- 安静時心拍数が低下しない(洞調律で75回/分以上)
- それなのに左室駆出率は35%未満に低下している[HFrEF(収縮力の低下した心不全)]
状態で、コララン®錠(イバブラジン塩酸塩)は心拍数を下げ、長期予後を改善します。
また、β遮断薬(ベータブロッカー)が使用できない患者にも投与できます。
糖尿病、高尿酸血症の副作用が報告されています。
ラットを使った動物実験ですが、イバブラジンによる選択的な心拍数の低下は、甲状腺ホルモンによる心筋の変質(リモデリング)を減少させ、線維化と肥大なしに心筋細胞内カルシウムイオンを制御します。(Heart Vessels. 2013 Jul;28(4):524-35.)
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では高拍出量性心不全が多いため、コララン®錠(イバブラジン塩酸塩)の使用機会は少ないかもしれません。
コララン®錠(イバブラジン塩酸塩)との併用禁忌薬剤は、
- イトラコナゾール、クラリスロマイシン、ボリコナゾール、エンシトレルビル フマル酸(ゾコーバ®);CYP3A4阻害作用がある薬剤。コララン®錠(イバブラジン塩酸塩)はCYP3A4によって代謝されるため、代謝が強く阻害されて血中濃度が上昇
- ベラパミル、ジルチアゼム;CYP3A4阻害作用に加え、コララン®錠(イバブラジン塩酸塩)の心拍数減少作用が相加的に増強される
また、グレープフルーツジュースに含まれるフラノクマリン類は、小腸のCYP3A4を阻害するため、ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬(ニフェジピンなど)およびコララン®錠(イバブラジン塩酸塩)の代謝を遅らせ、血中濃度を上昇させます。
ベルイシグアト(ベリキューボ®)は、sGC(可溶性グアニル酸シクラーゼ)刺激によりcGMP産生を促すことで、心不全の進行抑制・血管拡張。
ついに日本でも心不全の「緩和ケア」が2018年から国の方針で始まりました。「緩和ケア」イコール癌の末期医療でしたが、心臓を取り換える以外治療方法がなく、現実的に不可能な末期心不全も末期癌も同じ事でしょう。
ただ、高齢でなく、かつ心臓移植で治療可能なら、希望を捨てるべきでは無いと思います。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,天王寺区,東大阪市,浪速区も近く。





