動脈硬化を防ぐ油/動脈硬化の特殊血液検査(EPA/AA比)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
動脈硬化:専門の検査/治療/知見[橋本病 バセドウ病 エコー 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
単価不飽和脂肪酸オレイン酸[オメガ(ω)9系]はオリーブ油、なたね油(キャノラ油)に多く悪玉コレステロール(LDL)を減らし動脈硬化・老化・発がん予防。多価不飽和脂肪酸α‐リノレン酸[オメガ(ω)3系]は、しそ油、えごま油、あまに油(亜麻仁油)、なたね油で多くDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変換、血栓・動脈硬化・癌抑制、アレルギー改善。多価不飽和脂肪酸リノール酸[オメガ(ω)6系]は紅花油・ひまわり油・大豆油・ごま油で多くアラキドン酸(AA)に変換、血栓・動脈硬化・発がん促進、アレルギー悪化。エイコサペンタエン酸(EPA)/アラキドン酸(AA)共に必須脂肪酸で脂肪酸分画 EPA/AA比測定。
Keywords
多価不飽和脂肪酸,α‐リノレン酸,DHA,ドコサヘキサエン酸,EPA,エイコサペンタエン酸,動脈硬化,リノール酸,AA,アラキドン酸,EPA/AA比
甲状腺疾患における動脈硬化は、長年にわたる私、長崎俊樹の研究テーマです。
甲状腺機能低下症/潜在性甲状腺機能低下症/橋本病では動脈硬化が進行し、狭心症/心筋梗塞の発症率が上がります。甲状腺ホルモン剤[レボチロキシン(チラーヂンS)]で治療すれば、血管年齢など動脈硬化が改善することを、私、長崎俊樹が医学界で初めて証明しました。(甲状腺と動脈硬化)
しかしながら、動脈硬化が改善すると言っても、完全に正常化するとは限りません。特に、一度できてしまったプラークが消えることはありません。動脈硬化がこれ以上進行しないよう、食事に含まれる油に注意が必要です。
院長の論文
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Decrease in carotid intima-media thickness in hypothyroid patients after normalization of thyroid function. (Clinical Endocrinology)
甲状腺機能低下症/橋本病での総頚動脈壁肥厚度(CCA IMT)の増大(動脈硬化の進行)と、治療後の改善を医学界で初めて証明
単価不飽和脂肪酸とは
オレイン酸[オメガ(ω)9系]が代表的で、食品から取り入れるほか、体内でも合成されるので必須脂肪酸ではありません。血中の善玉HDLコレステロールに影響なく(減らさない)、悪玉コレステロール(LDL)のみを減らし動脈硬化・老化・発がんの予防になります。オレイン酸はもっとも酸化しにくく、動脈硬化・老化・発がんの原因になる過酸化脂質が発生しにくいのです。オレイン酸は免疫系に関係する物質を生成せず、アレルギー(アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症)には中立です。
オレイン酸はオリーブ油、なたね油(キャノラ油)に多く含まれます。オリーブ油(脂肪酸の約70~80%はオレイン酸)を多く摂る地中海沿岸に動脈硬化が少ないのも納得できます。
瀬戸内海の小豆島は、日本を代表するオリーブ産地です。
多価不飽和脂肪酸とは
- リノール酸[オメガ(ω)6系]; 酸化されやすく、摂取しすぎると体内で有害な過酸化脂質となり、肺がん、乳がん、大腸がん、前立腺がんを促進します。 紅花油・ひまわり油・大豆油・ごま油は植物性なので体に良いと信じられていましたが、オメガ6系のリノール酸であるため現在では悪玉とされています。リノール酸から生じるはアラキドン酸は発がん・血栓・動脈硬化を促進、アレルギー(アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症)を悪化させます。
- α‐リノレン酸[オメガ(ω)3系]; しそ油、えごま油、あまに油(亜麻仁油)、菜種油(キャノーラ油)の順で多く含まれます。α-リノレン酸は体内で、 DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)に変換されます。それらは、血栓・動脈硬化を予防、大腸がん・乳がん・前立腺がんなどの癌を抑制し、アレルギー(アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症)を改善させます。
飽和脂肪酸とは
飽和脂肪酸は肉や乳製品などの動物性食品に多く含まれる脂肪酸で、摂取しすぎると悪玉コレステロール(LDL)や中性脂肪が増え、動脈硬化が促進されます。
※マーガリンは、リノール酸を含み悪玉の要素があるものの、善玉のオレイン酸も多く、一見、悪い油に見えません。しかしマーガリンは、加工される過程(200℃以上に加熱)で不飽和脂肪酸がおかしな形(トランス型)になります。
トランス脂肪酸は、
- HDLコレステロールを低下させる
- 中性脂肪を増加させる
- 血管内皮機能を低下させる
- 日本では食品に含有量が表示されていない
など非常に悪いものです。マーガリン過剰摂取による心筋梗塞の増加に対して、米国食品医薬品局(FDA)はトランス脂肪酸の使用を全面的に禁止しました。
日本ではメーカーの努力により、トランス脂肪酸を極力含まないマーガリンが開発されています。小岩井 マーガリン ヘルシータイプはトランス脂肪酸が最も少なく10g当り0.034gの含有量です(トランス脂肪酸が少ない安心マーガリンおすすめ7選)。
一方、バターのトランス脂肪酸含量は10g当り約0.2g、チーズでは約0.08gとされ、改良型マーガリンの方がはるかに少ない量です。
必須脂肪酸 EPA/AA比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)
エイコサペンタエン酸(EPA)/アラキドン酸(AA)共に人間の体内で合成できない必須脂肪酸で、食事から摂取しなければなりません。
背の青い魚、背の青くない魚(鯛,ししゃもなど)イカ・うなぎにも多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA)は、α‐リノレン酸より生成される[オメガ(ω)3系]で血栓・動脈硬化を予防。
アラキドン酸(AA)はリノール酸[オメガ(ω)6系]で血栓・動脈硬化を促進。
脂肪酸分画 EPA/AA比(エイコサペンタエン酸/アラキドン酸比)測定
エイコサペンタエン酸(EPA)製剤(イコサペント酸エチル:エパデール®)の効果
EPA(エイコサペンタエン酸)/DHA(ドコサヘキサエン酸)製剤(オメガ‐3脂肪酸エチル;ロトリガ®)
ヒトが生成することができないDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのオメガ3系脂肪酸は、魚類、しそ油、えごま油、あまに油(亜麻仁油)、菜種油(キャノーラ油)などに多く含まれています。しかし、食事で摂取しても動脈硬化を予防できる量に達することは難しく、カロリーオーバーになる可能性もあります。
ロトリガ®(オメガ‐3脂肪酸エチル)の脂質改善効果は、1日4gの服用で中性脂肪(トリグリセライド)を 約20 mg/dL、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を 5 mg/dL 未満下げ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を 5 mg/dL未満上げます。
しかも安全性が高く、強力にLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を下げるスタチン系薬剤、中性脂肪(トリグリセライド)を下げるフィブラート系薬にも併用可能です。エイコサペンタエン酸(EPA)製剤(イコサペント酸エチル:エパデール®)より強力ですが、抗凝固作用も強いため、出血傾向に注意を要します。
問題は値段です。 まだジェネリック医薬品(後発医薬品)が出ていないため、2g/包=229.10円 x 2包/日で458.2円/日になります。3割負担でも1日320.74円とそれなりの負担になります。エイコサペンタエン酸(EPA)製剤(イコサペント酸エチル:エパデール®)も効果的にはそこまで大差なく、遥かに安いジェネリックがあるので、そちらをお勧めします。
エパデール®・ロトリガ®は必ず食直後に飲む
エイコサペンタエン酸(EPA)製剤(イコサペント酸エチル:エパデール®)やロトリガ®(オメガ‐3脂肪酸エチル)は、胆汁酸や食物などが一緒でなければ、消化管から吸収されません。空腹時に飲んでもほとんど吸収されないため、食直後に飲む必要があります。
EPA/AA比以外
バターは牛乳を原料として作られ、乳脂肪分が80%以上を占めます。マーガリンは食用油脂を原料として作られ、油脂成分が80%以上です。
動物性脂肪とバターを頻繁に摂取する人は、橋本病(慢性甲状腺炎)の自己免疫抗体である抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)の陽性率が高いとされます。同時に、野菜を頻繁に摂取する人と、ドライフルーツ、ナッツ、ミューズリーを多く摂取する人は、抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)、抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)の陽性率が低くなります。[Nutrients. 2017 Oct 28;9(11):1186.]
NIH-AARPダイエットおよび健康調査は、食事と甲状腺がんの関係を調べた前向き研究です。甲状腺がんリスクを増大させる傾向があるのは、
- 青年期の鶏肉/七面鳥の摂取(HR = 1.59, 95%CI: 0.97-2.60; ptrend < 0.01)
- 青年期の甘い焼き菓子の摂取(HR = 1.59, 95%CI: 1.09-2.34; ptrend = 0.04)
- 青年男性のツナ缶詰の摂取(HR = 1.69, 95%CI: 1.01-2.83; ptrend = 0.03)
- 中年男性のブロッコリー摂取(HR = 2.13, 95% CI: 1.13-3.99; ptrend < 0.01)
一方、甲状腺がんリスクを減少させる傾向があるのは、青年期/中年期のバター/マーガリンの摂取(HR = 0.64, 95%CI: 0.44-0.91; ptrend < 0.02 / HR = 0.66、95%CI:0.46-0.95;ptrend = 0.03)との結果です。[Int J Cancer. 2015 Nov 15;137(10):2413-23.]
しかし、逆の結果も報告されており、イタリアとスイスで実施された4つの症例対照研究のプール分析によると、甲状腺がんリスクが低いのは、生ハムと魚の摂取が多い人で、高いのはチーズ、バター、オリーブ以外の油の摂取が多い人です。[Int J Cancer. 1991 May 30;48(3):395-8.]
スウェーデンとノルウェーの症例対照研究でも、バター(OR = 6.1、CI = 1.2-5.1)およびチーズ(OR = 5.1、CI = 0.2-4.2)の大量摂取は甲状腺がんリスクの増加と関連していました。[Cancer Causes Control. 1997 Mar;8(2):205-14.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。