甲状腺機能亢進症 バセドウ病治療薬・抗甲状腺薬メルカゾールとPTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)の副作用[長崎甲状腺クリニック]
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
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バセドウ病で長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方への注意
バセドウ病の治療開始(再開)後は頻回の副作用チェックが必要なため①大阪市と隣接市の方に限定、②来院できず薬を自己中断する方、副作用時の対応を理解できない方をお受けできません。
Summary
甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者の13.5%が抗甲状腺薬メルカゾールとPTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)による副作用で使用不能に。重篤な副作用は無顆粒球症、劇症肝炎、胆汁うっ滞型肝障害、薬剤誘発性過敏症、横紋筋融解症、SLE様症状、ANCA関連血管炎、インスリン自己免疫症候群、再生不良性貧血、血小板減少。軽い副作用は、かゆみ・発疹、肝障害、発熱(薬剤熱) 、筋肉痛、高CK血症(副作用ではない可能性)、関節痛、唾液腺炎など。メルカゾール副作用のためPTUに変更しても高率に副作用がおきる。信じ難いがヨウ化カリウム(KI)でも薬剤熱。
Keywords
バセドウ病,甲状腺機能亢進症,治療,抗甲状腺薬,メルカゾール,プロパジール,チウラジール,副作用,筋肉痛,薬剤熱,甲状腺ホルモン
甲状腺機能亢進症/バセドウ病治療薬・抗甲状腺薬メルカゾールとPTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)の副作用 (本ページ)
甲状腺機能亢進症/バセドウ病患者の13.5%が抗甲状腺薬による副作用のため、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療あるいは手術療法(甲状腺全摘出)に切り替わります。
抗甲状腺薬の歴史は第2次世界大戦前へ遡り、1928年にキャベツから分離されたのが始まりです。プロピルチオウラシル(PTU)は1946年に、メチマゾール(MMI)は1949年に導入された古い古い薬です。危険な副作用を起こす可能性が高く、おそらく、現代の審査なら認可されないでしょう。21世紀になっても、代わりになる薬は開発されていません。
メルカゾール(MMI)とPTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)の副作用に違いはあるのでしょうか?副作用の種類は、ほとんど同じで、投与2週以降に多いとされます(実際、2週以内も結構ある)が、発生頻度や重症度、発生時期が異なります。例えば、最も重篤な(重症の)無顆粒球症は、メルカゾールの約0.3%、プロパジールの約0.4%に発症します。劇症肝炎など重症の肝障害はPTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)に多く、しかも数年・数十年して発症するもの程、重症化するとされます。
概して、
- メルカゾールの副作用は容量依存性(量が多い程、起こり易い)。無顆粒球症も容量依存性に起こるので注意
- PTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)の副作用は長年、容量と無関係とされていましたが、最近の報告で用量依存性が証明されました。[Endocr J. 2024 Jul 12;71(7):695-703.]
筆者の経験でも、1日4錠以上を数年-数十年服薬している人にANCA関連血管炎が起こるケースはよくあるが、1日2錠以下では見た事が無い)。
PTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)では長期投与による重篤な(重症の)副作用がおきるため注意深い経過観察が必要。
です。
抗甲状腺薬の重大な副作用は
- 無顆粒球症 (命の危険)
- 劇症肝炎 (命の危険)
- 胆汁うっ滞型肝障害 (命の危険)
- ANCA関連血管炎 (命の危険)
- 全身性エリテマトーデス(SLE)、SLE様症状・抗リン脂質抗体症候群誘発(命の危険)
- 薬剤誘発性過敏症(薬剤過敏症症候群:DIHS) (重症薬疹と言う表現も出来ると思います) (命の危険)
- インスリン自己免疫症候群
- 横紋筋融解症 (命の危険)
- 再生不良性貧血 (命の危険)
- 血小板減少 (命の危険)
- 妊娠早期の服用でメルカゾール胎児奇形症候群
メチマゾール誘発性胆汁うっ滞型肝障害 (命の危険):報告では、
- メルカゾール中止してヨウ化カリウム(KI)に変更。AST/ALT, ALP、γ-GTP は改善しても総ビリルビンは10 mg/dL 以上に上昇。肝生検で薬剤性肝障害と診断。ステロイドパルス無効、週2回ビリルビン吸着療法を行い、5か月後に改善(第56回日本甲状腺学会 P1-086 メルカゾールによる胆汁鬱滞型肝障害を呈し、4回のビリルビン吸着療法およびステロイドパルス療法にてTRAb 陰性化したバセドー病の1例)
- メチマゾール(メルカゾール)中止して、イソグリチルリチン酸マグネシウムと他の肝保護薬による治療4週間後に肝機能はほぼ正常化。[Oncotarget. 2016 Jan 26;7(4):5088-91.]
- メチマゾール(メルカゾール)中止して、経口メチルプレドニゾロン投与16週間後に肝機能は正常化。アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療を行う。[Oncotarget. 2016 Jan 26;7(4):5088-91.]
メチマゾール誘発性胆汁うっ滞のメカニズムは完全には解明されていませんが、
- 門脈系の相対的な低酸素症
- ジルベール症候群(Gilbert症候群:ギルバート症候群)やデュビン・ジョンソン症候群などの胆汁代謝障害(体質性黄疸)が、メチマゾール(メルカゾール)投薬後に顕在化
- メチマゾール代謝の過程で産生される複数の活性物質が、肝細胞および間質に損傷を与える
- アレルギー反応(最も可能性が高い)
などが考えられます。[Oncotarget. 2016 Jan 26;7(4):5088-91.]
メチマゾール誘発性胆汁うっ滞型肝障害がおきた場合、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療、手術療法(甲状腺全摘出)になります。ただし、プロピルチオウラシル(PTU)に切り替えて、上手くいく場合もあります[World J Gastroenterol. 2009 Jun 21;15(23):2817-33.]。
薬剤誘発性過敏症[薬剤過敏症症候群(DIHS:Drug Induced Hypersensitivity Syndrome)]は、重症皮疹の1つです。
抗甲状腺薬のMMI(メルカゾール)、PTU(プロパジール、チウラジール)の他、
- 抗てんかん薬のカルバマゼピン・フェノバルビタール・フェニトイン(薬剤性甲状腺機能障害もおこす)
- サラゾスルファピリジン;潰瘍性大腸炎治療薬のサラゾピリン®、抗リウマチ薬のサラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN錠®)
- 痛風治療薬のザイロリック®(アロプリノール錠)
- 糖尿病性神経障害治療薬・抗不整脈薬のメキシチールカプセル®(メキシレチン塩酸塩)
- 抗生剤のミノマイシン/セフェム剤
でも起こります。
突発性発疹の原因でもあるヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)などのウイルス再活性化を伴います。[HHV-7,サイトメガロウイルス(CMV),エプスタイン‐バールウイルス (EBV) の事もある])(日皮会誌 2006; 116: 1563―1568.)。
抗甲状腺薬開始2-6週間後(一般的な薬疹は1-2週間なので遅発性)に発症、
- 四肢・体幹の掻痒感/皮疹(紅斑)→全身に急速に拡大→紅斑は融合、一部紫斑→重症多形滲出性紅斑
同じく重症多形滲出性紅斑のスティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson 症候群:SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)と異なり、粘膜疹は通常伴わないか軽度
- 38℃以上の発熱
- 顔面浮腫/浮腫性紅斑・喉頭浮腫
ただし、口腔粘膜と咽頭に異常を認めず(粘膜症状を伴わない薬疹);中毒性表皮壊死症やスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と異なる
- 全身倦怠感・肝障害・腎障害;報告例ではAST(GOT) 342 IU/L、ALT(GPT) 531 IU/L、Cr 1.75 mg/dL(第56回日本甲状腺学会 P1-090 PTU により薬剤性過敏症症候群を発症し不幸な転帰をきたしたバセドウ病の1 例)
- 全身リンパ節腫脹、肝脾腫
投与中止後も発疹、発熱、肝腎障害が再燃・遷延化することがあります。また、自己免疫疾患への移行も報告されています。
(写真;Dermatologica Sinica 2013;31(4): 196-204)
薬剤誘発性過敏症(DIHS)の診断は、
- 白血球増多[初期は正常、白血球減少(好中球減少 無顆粒球症と鑑別)] or 好酸球増加(初期は正常) or 異型リンパ球出現(初期は出ない)[ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)他、ヘルペスウイルス属なので当然か]
- CRP陽性
-
リンパ球幼若化試験(DLST)・リンパ球刺激試験;①必ずしも陽性に出ない(感度約50%)、②すぐに結果が出ない、③他剤との交差反応で偽陽性などの問題がある。8週以降に陽性が出ることもあるので、初期に陰性でも否定できない[Thyroid. 2005 Dec;15(12):1333-6.]
- 抗HHV-6 IgG抗体価(ペア血清、発症2週以内と4週以降で4倍以上の上昇)、HHV-6 DNA定量(リアルタイムPCR法、3~5日で結果が出る)陽性
- 皮膚生検
薬剤誘発性過敏症(DIHS)治療は、皮膚科に入院してステロイド剤の内服が原則(プレドニン30~40 mg/日)で、ステロイドパルス療法が有効なこともあります[Thyroid. 2005 Dec;15(12):1333-6.]。抗ヒスタミン剤とST合剤、Cefozopranなども併用。ステロイド治療中にDIC・多臓器不全で死亡することがあります。一方、ステロイドを使わずに軽快する例もありますが、高熱と皮膚症状が長く続きます。
原因薬剤を中止しても沈静化せず、重篤化(重症化)しDIC・多臓器障害(肝機能障害・腎機能障害・脳炎・肺炎・破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺炎)・好酸球性心筋炎]を生じると致死率は10%です。 また、原因薬剤以外の薬剤、または初めて使用する薬剤でも薬剤アレルギーが起きます(多剤感作)。
(第56回 日本甲状腺学会 P1-090 PTU により薬剤性過敏症症候群を発症し不幸な転帰をきたしたバセドウ病の1 例)(第59回 日本甲状腺学会 P4-4-3 薬剤性過敏症症候群の経過中に慢性甲状腺炎を発症した1例)
MPO-ANCAと甲状腺 を御覧ください。
メルカゾール(チアマゾール)内服開始数か月後にも横紋筋融解症を発症するので注意を要する。
- 筋肉痛と褐色尿がおこる(運動時だけの事もある)
- 尿検査で潜血強陽性、沈渣で赤血球
麦茶のようなミオグロビン(Mb)尿
- 血液検査で、CK(CPK;クレアチンキナーゼ)異常高値;10万U/L 以上の事も、ミオグロビン(Mb)異常高値
甲状腺機能亢進症/バセドウ病自体(甲状腺クリーゼがほとんど)、2次的な低カリウム血症でも横紋筋融解症を起こす。
横紋筋融解症発症時の治療は、
- 抗甲状腺薬を即中止
- 腎機能に異常なければ大量補液
- 腎機能障害あれば透析
- 抗甲状腺薬を変更(メルカゾール→プロパジール)しても横紋筋融解症は再燃するため、アイソトープ(放射性ヨウ素; I-131)治療か手術療法(甲状腺全摘出)が必要になる
抗甲状腺薬の軽い副作用は
- かゆみ・発疹・蕁麻疹・膨疹(最も多い副作用):薬を開始して1~2週間後(2〜3週間以内)、10人に1人の頻度でおこります(メルカゾール6錠、プロパジール6錠ともに10%、メルカゾール3錠で5%の確率)。抗アレルギー薬がよく効き、不思議なことに月日が経てば消える場合が多い。1ヶ月以降にもおきる可能性があります。
①薬剤誘発性過敏症 と鑑別要
②血管炎(点状紫斑)や蕁麻疹様血管炎(全身に赤色皮疹、ステロイド内服必要)と鑑別要。皮膚生検で好酸球浸潤を伴う多形紅斑型炎症なら薬疹。どの道、抗アレルギー薬が無効の場合は薬を中止します。
③バセドウ病再発による再投与なら、すでに感作が成立しているため、服用後すぐに薬疹が現れる。
- 肝障害[メルカゾール6錠で5%、3錠で3.5%(重症0.1%)、プロパジール6錠で15%]。ただし、①過剰な甲状腺ホルモン自体の肝毒性、さらに②甲状腺ホルモン低下による代謝変動で肝酵素上昇をおこす可能性もあるので判断が難しい(甲状腺ホルモン異常と肝障害)。
鑑別にはリンパ幼若化試験などが参考になるが、数日かかるため間に合わず、陽性に出ても断定できない不確かなものです。隈病院の網野先生はALT(GPT)≧150 IU/L、田尻クリニックの田尻先生はALT(GPT)≧100 IU/Lで薬剤性肝障害と考え、抗甲状腺薬を変更すべきと述べられており、長崎甲状腺クリニック(大阪)ではALT(GPT)≧100 IU/Lを採用しています。[※投薬前からALT(GPT)が正常値を超えている場合は、この限りではない]
- 発熱(薬剤熱)
- 筋肉痛(2%):体位変換で増強し、側腹部・側胸部におこりやすい。抗甲状腺薬の減量で消えることが多く、減量できるまで筋緊張を緩和する薬(ミオナール®、芍薬甘草湯など)・痛み止め[カロナール(アセトアミノフェン)、ロキソニン(ロキソプロフェン)など])で凌ぎます。
- 関節痛(1-2%);antithyroid arthritis syndrome
ANCA関連血管炎の関節痛と鑑別必要
関節痛がおこれば、抗核抗体(ANA)とANCAを測定
- 唾液腺炎;かなり稀。報告では、①両側性顎下腺・耳下腺腫脹と軽度圧痛、②38℃台の発熱と炎症反応、③急性膵炎を伴う事も。流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)、ミクリッツ病(IgG4唾液腺炎)と鑑別要。(Clin Endocrinol (Oxf). 1999 Nov;51(5):667-70.)(第62回 日本甲状腺学会 P21-5 メチマゾールにより両側唾液腺炎を来したバセドウ病の1例)
薬剤熱の原因はアレルギー反応、体温調節系の変化、特異体質など様々です。感染症が否定的で、発熱の原因が薬剤以外に無い場合、薬剤熱が疑われます。しかし実際のところ、ウイルス感染による発熱を完全に否定するのは難しく、薬剤熱を診断するための検査も存在しません。結局、原因薬剤を中止しない限り熱が引かないので、止めた後に解熱して初めて「薬剤熱だったのか」と言う事になります。
抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)で生じる薬剤熱は、
- あまり重症感のない発熱(38度以上)が特徴[ただし、甲状腺機能亢進症/バセドウ病では代謝亢進のため、元々、高体温(それでも37度台)なのでややこしい]
午前中は平熱で、夕方から39 度台の高熱を認める間欠熱の場合もある
- 好酸球増多、肝機能障害、皮疹を伴わない場合も多い
- 白血球/好中球増加、CRP上昇(炎症所見)がよくみられ、
①扁桃腺腫大・発赤あり。風邪・急性扁桃炎・急性咽頭炎と紛らわしい(例:WBC 11700/μL、CRP 11.28 mg/dL)(無顆粒球症ではない)
②扁桃腺に異常なく、尿路感染症、不明熱のパターンもあり(第61回 日本甲状腺学会 O8-4 チアマゾールによる薬剤熱が疑われたTRAb陰性のバセドウ病の 1例)
- 意識は清明(甲状腺クリーゼ ではない)
- 抗甲状腺薬中止後、49-72時間で解熱するため、風邪・急性扁桃炎・急性咽頭炎と結局鑑別できない
- リンパ幼若化試験(DLST)・リンパ球刺激試験は、①必ずしも陽性に出ない(感度約50%)、②すぐに結果が出ない、③他剤との交差反応で偽陽性などの問題がある。
(第55回 日本甲状腺学会 P2-06-02 チアマゾールによる薬剤熱が疑われたバセドウ病の一例)
- 非常に厄介な状態として、抗甲状腺薬メルカゾールで薬剤熱をおこした後、複数の他剤でも薬剤熱をおこすようになり、甲状腺全摘出せざる得ない症例もあります。(第58回 日本甲状腺学会 P2-10-4 チアマゾール内服を契機に多剤薬剤アレルギーによる発熱を生じ薬剤中止後も発熱が遷延したバセドウ病の一例)[CMAJ. 1987 Jan 15;136(2):121-7.][Ther Umsch. 2011 Jun;68(6):303-8.]
- 炎症所見が消えれば、別系統の抗甲状腺薬に変更
信じ難いがヨウ化カリウム(KI)で薬剤熱
ヨウ化カリウム(KI)副作用は、高カリウム血症以外にないと考えがちですが、薬剤熱の原因となる可能性があります(筆者は見たことがありませんが・・・)。メルカゾールは継続、ヨウ化カリウム(KI)のみを中止し薬剤熱が回復した報告があります。(第62回 日本甲状腺学会 P18-2 無機ヨードによる発熱が疑われたバセドウ病の一例)
海外でも、ヨウ化カリウム(KI)投与による薬剤熱が報告されています(N Y State J Med. 1965 Sep 1;65:2263-5.)。15年間、去痰目的にヨウ化カリウム(KI)投与されて薬剤熱が続いた報告もあります(Arch Intern Med. 1982 Aug;142(8):1543-4.)。
まれな文献・学会報告レベルの副作用は
高CK(CPK:クレアチンキナーゼ)血症
高CK(CPK:クレアチンキナーゼ)血症が遷延:メルカゾール開始3ヵ月後に血清クレアチニンキナーゼ(CPK or CK)が1132 IU/L(MB 2%,MM 98%)に上昇。筋肉痛など自覚症状なく、血清Cr正常・尿潜血[ミオグロビンにも反応](-)・尿蛋白(-)と腎臓も問題なく、横紋筋融解症も否定的。ヨウ化カリウム(KI)に変更して約3 ヶ月後にCK(CPK)正常化したそうです。TSH低値、FT3、FT4がほぼ正常化した時点で発症する場合が多く、甲状腺機能改善に伴う細胞膜透過性亢進が原因と推測されていますが、原因不明です(Arch Intern Med. 1997,24;157:693-6.)。(第56回日本甲状腺学会 P1-087 Thiamazole で加療中に高CPK 血症が遷延したバセドウ病の1 例)
さらに、他の報告では、筋力低下・筋痛を伴い、血中CK(CPK)値 17774 IU/L、Cr 0.37 mg/dL、K 4.4 mEq/L、AST 378 IU/L、ALT 371 IU/L、ALP 278 IU/L、γ-GTP 27 IU/L と腎障害は無いものの、肝障害を合併しています。甲状腺全摘術後2 ヵ月して血中CK(CPK)値は改善傾向にあるが、増悪・寛解を繰り返しているそうです。(第56回日本甲状腺学会 P1-092 チアマゾール使用後に著明な血清CK 値上昇を認めたバセドウ病の一例)
別の報告では、甲状腺機能が改善するとともに、倦怠感・筋痙攣(けいれん)が出現、TSH低値、FT3、FT4がほぼ正常化した時点でCK(CPK) 2757 IU/L とピークになる。メルカゾールからPTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)に変更しても改善なく、バセドウ病が再燃した際にCK(CPK) 137 IU/L と正常化し、以後甲状腺機能が正常化しても筋症状を認めることなく経過したそうです。
やはり、甲状腺機能改善に伴う細胞膜透過性亢進が原因で、抗甲状腺薬は無関係の可能性が高いです。(Arch Intern Med. 1997,24;157:693-6.)(第57回 日本甲状腺学会 P2-022 バセドウ病治療中に高CK 血症が遷延した1 例)
- メルカゾールで副作用が出たため、PTU(プロピルチオウラシル;プロパジール、チウラジール)に変更した場合、最初からPTUを使用した場合よりも高率(33.6%:45 名/134 名)に副作用がおこります。
- メルカゾールで副作用が出たわけでなく、将来の妊娠準備のためプロパジールに変更した場合、8.2%(15 名/183 名) に副作用が起こりました。
(第55回 日本甲状腺学会 P2-06-03 2 種類の抗甲状腺薬の間で処方変更された時の副作用頻度の検討
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,生野区,東大阪市,浪速区も近く。