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「放射線治療無効な分化型甲状腺癌」にネクサバール(ソラフェニブ) [甲状腺 専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック(大阪)]

甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)

甲状腺の、長崎甲状腺クリニック(大阪市東住吉区)院長が海外論文に眼を通して得たもの、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)ではネクサバール錠®(ソラフェニブ)の取扱いはありません

ネクサバール(ソラフェニブ)

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Summary

ネクサバール錠(ソラフェニブ)は根治切除不能、放射線内照射(131-I アブレーション)抵抗性の分化型甲状腺癌(甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌)に保険適応のある分子標的薬。がん細胞増殖に必要なチロシンキナーゼ経路のRaf、血管新生に必要な血管内皮増殖因子受容体(VEGFR) ・血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)を阻害。無増悪生存期間の延長効果。手足症候群は100%出て、すべての患者に副作用。レンビマ®(レンバチニブ)は、作用機序、副作用の種類と頻度が異なるため切り替える事も。効いて癌細胞が壊死(死滅)すると皮膚・咽頭・気管と交通し廔孔形成、血管壁が壊れ大出血。

Keywords

ネクサバール,ソラフェニブ,放射線抵抗性,分化型甲状腺癌,甲状腺乳頭癌,甲状腺濾胞癌,分子標的薬,手足症候群,副作用,出血

ネクサバール®(ソラフェニブ)の適応

ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)は、 「根治切除不能な分化型甲状腺癌」(要するに転移などがあり、手術で完全にとり切れない甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)で、以下のように放射線内照射(131-I アブレーション)に抵抗性の症例に保険適応が認められています。

今後考えられるネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)の有効な使用法として、

  1. 日本の放射線治療病室の入院待ちは、平均6か月程です。つまり、甲状腺全摘出して後、すぐに放射線治療開始できないのです。その間、ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)を一時的に使用できれば良いと思うのですが、現時点で保険適応はなく、厚生労働省も許可していません。
  2. そもそも、131-I アブレーションは、甲状腺全摘出後にしか行えません。何らかの事情で、甲状腺全摘出できない方に使用するのは良い考えと思いますが、現時点で保険適応はなく、厚生労働省も許可していません。

このような使い方も可能では?

今後考えられるネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)の有効な使用法として、

  1. 日本の放射線治療病室の入院待ちは、平均6か月程です。つまり、甲状腺全摘出して後、すぐに放射線治療開始できないのです。その間、ネクサバール錠®200mg(一般名:ソラフェニブトシル酸塩)を一時的に使用できれば良いと思うのですが、現時点で保険適応はなく、厚生労働省も許可していません。
  2. そもそも、131-I アブレーションは、甲状腺全摘出後にしか行えません。何らかの事情で、甲状腺全摘出できない方に使用するのは良い考えと思いますが、現時点で保険適応はなく、厚生労働省も許可していません。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の作用機序

ネクサバール®(ソラフェニブ)の作用機序は、

ソラフェニブの作用機序
  1. 甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の細胞増殖に必要なシグナル伝達酵素であるチロシンキナーゼを阻害し、細胞増殖を抑えます。チロシンキナーゼの経路(MAPキナーゼ経路)の中には、Rafという甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌の増殖に重要なタンパク質があるため、癌細胞の増殖がストップするのです。(このような特定の物質を狙い撃ちする薬を分子標的薬と言います)
     
  2. 癌細胞が増殖するには栄養血管が必要で、癌細胞は自分で栄養血管を作ります(血管新生)。血管新生の指令にはPDGFやVEGFというサイトカイン物質が関与し、その受容体である血管内皮増殖因子受容体(VEGFR) ・血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)を阻害すれば血管新生は抑えられ、癌細胞に栄養が。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の効果

国際第3相試験(DECISION試験)の結果[Lancet 384(9940):319-28,2014]から、

  1. ソラフェニブ治療を受けた患者では無増悪生存期間(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌が悪化する事無く生きられた期間)が、プラセボ群(有効成分の入っていない薬を飲んだ群)の5.8カ月に対して10.8カ月(ハザード比0.587)という結果でした。この無増悪生存期間の延長は、患者の年齢・疾患の程度・転移部位に関係なくみられたそうです。
     
  2. 完全奏効(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌が消失)した患者はゼロ。客観的奏効率(腫瘍サイズが測定可能なほど減少)は、ソラフェニブ群で12%、プラセボ群では1%未満。
     
  3. 甲状腺乳頭癌のBRAF遺伝子変異・甲状腺濾胞癌のRAS遺伝子変異は、ソラフェニブ治療による無増悪生存期間の延長とは関連しませんでした。

国際第3相試験(DECISION試験)は、PS(パフォーマンスステータス、全身状態)0-2(悪くても日中の50%以上はベッド外)の全身状態の良い患者を対象にしたものですが、PS3-4(日中の50%以上をベッドか椅子で-寝たきり状態)であっても充分な効果が認められた症例も報告されています。(第58回 日本甲状腺学会 P2-6-1 PS不良の多発性骨転移・肺転移を伴う甲状腺乳頭癌患者に対してソラフェニブを使用し著効した1例)

下記の如く、重篤な副作用を起こすため、副作用で苦しむ日々を3カ月(150日)延長するだけなのかもしれません。実際に使用された先生に聞いたところ、「とんでもない薬だ!」との感想でした。

ネクサバール®(ソラフェニブ)の副作用

ソラフェニブ治療を受けたほぼすべての患者に副作用が出現。約3分の2が副作用のため、一時的に治療中止あるいは投与量を減量、約19%が完全に治療を中止。

ネクサバール®(ソラフェニブ)は、分子標的薬という新しい作用機序の薬であるため、従来の抗癌剤にはほとんどみられない副作用が高頻度に発現します。

可逆性後頭葉白質脳症
  1. 中毒性表皮壊死融解症,皮膚粘膜眼症候群,皮膚有棘細胞癌(手足症候群は100%出る)
  2. 消化管出血,気道出血,脳出血
  3. 劇症肝炎
  4. 間質性肺炎
  5. 高血圧クリーゼ
  6. 可逆性後白質脳症(radiopaediaより)
  7. 心筋梗塞,うっ血性心不全
  8. 消化管穿孔,消化管潰瘍
  9. 出血性腸炎,虚血性腸炎
  10. 白血球減少
  11. 膵炎
  12. 腎不全,ネフローゼ症候群
  13. 低ナトリウム血症低カルシウム血症
  14. ショック,アナフィラキシー
  15. 横紋筋融解症

など副作用のデパートです。2014年の甲状腺学会でも、このような副作用に「がん専門医でない甲状腺専門医が対応できるのか?」との意見が相次ぎました。確かに、これほど重篤な副作用のオンパレードでは甲状腺専門病院・クリニックでの対応は不可能と思えます。甲状腺専門医がいて、かつ全科そろった大学病院クラスでなければ使用は困難でしょう。

レンビマ®(レンバチニブ)は、作用機序の違いから、副作用の種類と頻度がネクサバール®(ソラフェニブ)と異なるため、副作用でレンビマ®(レンバチニブ)に変更する事もあります。(第59回 日本甲状腺学会 専門医教育セミナーⅠ甲状腺癌分子標的薬治療-根治手術不能甲状腺癌から未分化癌までTKI使用のタイミングと副作用マネージメント)

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)が効いて甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)が縮小しても要注意

ネクサバール錠®(ソラフェニブ)が効いて甲状腺分化癌(甲状腺乳頭癌甲状腺濾胞癌)が縮小しても

  1. 腫瘤が壊死(組織が死滅する事)すると、皮膚・咽頭・気管と交通し、廔孔(孔が開く)形成。
    皮膚廔・気管廔は難治性で塞がりにくく、大血管に接している場合、血管壁が破壊され、大出血する事あります。
  2. ネクサバール錠®(ソラフェニブ)を(減量でなく)休薬すると、腫瘍が増大し、投薬前より大きくなる事あります(フレア現象)。

(第58回 日本甲状腺学会 ランチョンセミナー1 進行・転移性甲状腺癌治療-分子標的薬治療の課題と展望)

ネクサバール®(ソラフェニブ)の副作用「手足症候群」に鰹節(かつおぶし)が有効?

ネクサバール®(ソラフェニブ)の副作用「手足症候群」に鰹節(かつおぶし)が有効との報告があります。手足症候群は血流障害が原因のため、血管拡張作用を持つアミノ酸;ヒスチジンを含む鰹節(かつおぶし)の摂取で、手足症候群の発症率が減少したそうです。(Cancer Manag Res. 2018 Apr 17;10:805-813. )

 

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長崎甲状腺クリニック(大阪)

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