甲状腺と緑内障(開放隅角緑内障,正常圧緑内障,急性緑内障発作)眼圧[甲状腺機能低下症 橋本病 バセドウ病 甲状腺機能亢進症 長崎甲状腺クリニック]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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(写真 eo健康より)
甲状腺と緑内障(本ページ)
Summary
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では緑内障(開放隅角緑内障、正常圧緑内障)の頻度が高い。甲状腺眼症/バセドウ病眼症では眼窩内の炎症によって眼窩内圧が高くなり、眼球を前に押し出すため眼圧上昇して緑内障に。甲状腺機能低下症では線維柱帯に過剰なムコ多糖体が蓄積して緑内障に。特に、重症甲状腺機能低下症患者に多い。長期間の活動性がある、または過去にあった甲状腺眼症/バセドウ病眼症は抗コリン剤/抗ヒスタミン剤投与で急性緑内障発作の危険。ステロイド剤治療中なら、既に軽いステロイド緑内障をおこしている可能性。緑内障の眼痛は甲状腺眼症/バセドウ病眼症と鑑別要。
Keywords
甲状腺機能亢進症,バセドウ病,緑内障,開放隅角緑内障,正常圧緑内障,甲状腺眼症,バセドウ病眼症,眼圧,甲状腺機能低下症,急性緑内障発作
緑内障の約90%は、検診等で偶然見つかります。40歳以上の約5%(20人に1人)は緑内障です(多治見緑内障疫学調査)。特に、
- 高齢者
- 強度近視者
- 血縁者に緑内障がいる人
は、緑内障の確率が高くなります。
目の中は液体 (房水) で満たされ、 丸い形や大きさを保つために、内から外へ水圧(眼球内の圧力=眼圧)がかかっています。 眼圧は高すぎても低すぎても、 目に問題がおこります。
緑内障の治療は
- 眼圧を下げる点眼薬を中心とした薬物療法(正常眼圧緑内障にも有効)
β遮断薬、炭酸脱水酵素阻害薬;眼房水の産生を抑制プロスタグランジン関連薬(メラニンが増加し色素沈着、毛周期が伸びて眼瞼部多毛)
α1遮断薬
Rhoキナーゼ阻害薬;眼房水の排泄を促進
- レーザー手術
- 観血手術;①線維柱帯切開術(トラベクレクトミー)は術後癒着など合併症が大きい②チューブシャント手術;より進化した治療
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では緑内障(開放隅角緑内障、正常圧緑内障)の頻度が高いとされます。(Am J Ophthalmol. 2000 May;129(5):613-7.)
長期間の活動性がある甲状腺眼症/バセドウ病眼症は緑内障に進展する可能性があります(Ophthalmology. 1997 Jun;104(6):914-7.)
甲状腺眼症/バセドウ病眼症では、眼球の後ろにある眼窩に炎症が起こるため、眼窩内圧が高くなります。一方、緑内障は眼球内の圧力(眼圧)が上昇する病気で、圧が上昇する場所が異なります。しかし、眼窩内圧が高くなると眼球を前に押し出すため、眼圧も連鎖的に上昇します(Otolaryngol Clin N Am. 2006;39:923–42.)。そのため、甲状腺眼症/バセドウ病眼症を、ただの緑内障と間違える事があります。
甲状腺機能低下症/橋本病と緑内障の因果関係が報告されています(Eur J Ophthalmol. 2005;15:556–61.)(Ophthalmology. 2004;111:1649–1652.)。特に、甲状腺ホルモン剤服用を要する重症の甲状腺機能低下症患者に多いとされます[Eye (Lond). 2004 Jun;18(6):600-8.]。
甲状腺機能低下症では、線維柱帯に過剰なムコ多糖体が蓄積し、界面活性剤のように隣接する内皮膜に付着します(Eye. 2004;18:600–608.)。
甲状腺機能低下症/橋本病と緑内障の関連を否定した報告もあります。(PLoS One. 2015 Jul 31;10(7):e0133688.)
急性緑内障発作は、前述の慢性的な緑内障とは異なり、房水を排出する隅角が突然閉塞する病態です(急性閉塞偶角緑内障)。
急性緑内障発作は、
- 高齢女性
- 遠視
- 小眼球
- 浅前房・狭隅角
で起こりやすい。
急性緑内障発作の原因は、
- 白内障で水晶体が厚くなって物理的に閉塞
- 抗コリン作用を持つ薬剤(抗コリン剤/抗ヒスタミン剤など)
- 甲状腺ホルモンは直接関与しません
※長期間の活動性がある、または過去にあった甲状腺眼症/バセドウ病眼症は、抗コリン剤/抗ヒスタミン剤の投与で急性緑内障発作の危険
活動中の甲状腺眼症/バセドウ病眼症で、ステロイド剤治療を受けているなら、既に軽いステロイド緑内障をおこしている可能性があります。抗コリン剤/抗ヒスタミン剤投与で急性緑内障発作が誘発されるかもしれません。
(抗コリン剤/抗ヒスタミン剤による急性緑内障発作)
急性緑内障発作では、眼圧が急上昇して、
- 急激な眼の痛み;甲状腺眼症(バセドウ眼症/橋本病眼症)と勘違い
- 急激な頭痛、むかつき(吐き気)・嘔吐、全身倦怠感[風邪(かぜ)の悪化と勘違いして、抗コリン剤/抗ヒスタミン剤入りの風邪薬(市販の総合感冒薬)を飲み、さらに悪化]
- 霧視(むし:かすみ目)
急激なブラックアウト(目の前が暗くなる。しかし意識ははっきりしています)
→視力低下→失明
- 眼球結膜の充血(強い炎症)
などの症状が起きます。
くも膜下出血などと間違われ、CTを撮るも異常なく、治療が遅れたり、「何もない」と帰されてしまう事もあります。簡単に急性緑内障発作を見分ける方法は、ペンライトを眼の真横から当てると、前眼房が浅くなっているため、表の様に反対側が暗くなるのを確認する事です。
急性緑内障発作時の甲状腺ホルモン値
急性緑内障発作時の甲状腺ホルモン値を調べた報告では、低T3低T4症候群(ノンサイロイダルイルネス)になり、眼圧の低下により正常値に戻ります。(Klin Lab Diagn. 1994;(3):22-3.)
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区,生野区も近く。