ビタミンAと甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波エコー 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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- 甲状腺ホルモン異常と皮膚・脱毛①
- 甲状腺と皮膚の異常②皮膚炎
- 甲状腺と皮膚の異常③悪性腫瘍編(甲状腺乳頭癌・濾胞癌・未分化癌の皮膚浸潤・転移、悪性黒色腫、ボーエン病、基底細胞母斑症候群、パジェット病、メルケル細胞がん)
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Summary
ビタミンA・レチノイド(ビタミンA誘導体)は①甲状腺代謝を調節、ヨウ素(ヨード)取り込み増加②制御性T細胞(Treg)活性化、腸内フローラに働き自己免疫抑制③甲状腺乳頭癌の攻撃性を低下させ予後改善。ビタミンA欠乏症の症状は甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、シェーグレン症候群に似て①発疹、皮膚角化、乾燥②眼球乾燥症、夜盲症③免疫不全、気道感染④小児発育遅滞⑤甲状腺機能低下症とヨウ素欠乏症、自己免疫性甲状腺疾患、橋本病に影響⑥甲状腺乳頭癌の予後悪化。甲状腺機能低下症ではカロチンをビタミンAに変換出来ず、過剰なカロチンは手掌や足底に沈着し黄色く。
Keywords
ビタミンA,レチノイド,甲状腺,ヨウ素,甲状腺乳頭癌,ビタミンA欠乏症,甲状腺機能低下症,橋本病,カロチン,症状
ビタミンAおよびレチノイド(ビタミンA誘導体)は必須の脂溶性ビタミンです。レチノール、レチナール、9-シス-レチノイン酸、トレチノイン、および13-シス-レチノイン酸は天然型ビタミンAですが、他のものは主に治療目的で使用される合成化合物レチノイド(ビタミンA誘導体)です。
ビタミンAおよびレチノイド(ビタミンA誘導体)は、
- 核内受容体との相互作用により、遺伝子レベルで甲状腺の代謝を調節するため、ビタミンA欠乏症は甲状腺機能低下症とヨウ素欠乏症(ヨウ素取り込み障害)に関連します。[Nutrients. 2021 May 18;13(5):1703.][Int J Vitam Nutr Res. 2007 May;77(3):236-40.]
- リンパ球上のレチノイド受容体を介し、制御性T細胞(Treg)の活性化、増殖・分化、その他の免疫機能に関与するため、甲状腺自己免疫疾患に影響します。[J Exp Med. 2007 Aug 6;204(8):1765-74.]
腸内フローラに対して保護的に働き、自己免疫疾患を抑制する可能性があるため[J Exp Med. 2007 Aug 6;204(8):1765-74.]、腸内フローラが関与するとされる橋本病を抑える可能性がある[Rev Endocr Metab Disord. 2018 Dec;19(4):293-300.]
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甲状腺乳頭癌の攻撃性を低下させ予後を改善させる。ビタミンEも同じ。[Eur J Clin Nutr. 2022 Mar;76(3):469-476.]
- ヒト甲状腺癌細胞株におけるヨウ素(ヨード)取り込みとナトリウム-ヨウ素シンポーター(NIS)活性を増加させるため、甲状腺分化癌(乳頭癌、濾胞癌)のI-131 アイソトープ治療に役立つ可能性がある。[Horm Metab Res
. 2019 Jan;51(1):69-75.]
[Front Endocrinol (Lausanne). 2022 Oct 11;13:968215.]
レチノールとレチノール結合タンパク質(RBP)は、血中の甲状腺ホルモン輸送に関与するトランスサイレチン(TTR)と三次複合体を形成[Hepatobiliary Surg Nutr. 2014 Jun;3(3):126-39.]。
ビタミンA欠乏症の原因は
- 摂取不足(偏食)
- 脂肪吸収障害(脂溶性ビタミン吸収障害);クローン病
- 肝疾患;原発性胆汁性肝硬変(PBC)
- 妊娠
ビタミンA欠乏症の症状は
- 発疹;皮膚の角化、乾燥、鱗屑、毛包の肥厚(甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、シェーグレン症候群 のよう)
- 眼球乾燥症、夜盲症(甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、シェーグレン症候群 のよう)
- 免疫不全、気道感染(甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症、シェーグレン症候群 のよう)
- 小児では発育遅滞(甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症 のよう)
- 不妊症(甲状腺機能低下症、亜鉛欠乏症 のよう)
- 甲状腺機能低下症とヨウ素欠乏症(ヨウ素取り込み障害)[Nutrients. 2021 May 18;13(5):1703.][Int J Vitam Nutr Res. 2007 May;77(3):236-40.]
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自己免疫性甲状腺疾患、橋本病に影響する可能性[J Exp Med. 2007 Aug 6;204(8):1765-74.]
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甲状腺乳頭癌の予後が悪化する可能性[Eur J Clin Nutr. 2022 Mar;76(3):469-476.]
麻疹(はしか)感染ではビタミンA欠乏症がおこるため、ビタミンA大量療法(24時間間隔で2回のビタミンA投与)を行う場合があります。眼障害や失明を予防し、麻疹による死亡率を50%減少させます。
カロチンはニンジンなど緑黄色野菜に豊富に含まれる赤橙色色素。健康食品として有名で、体内の活性酸素の発生を抑え、発がん予防作用があります。甲状腺ホルモンはカロチンをビタミンAへ変換します。甲状腺機能低下症では、カロチンをビタミンAに変換出来なくなります。過剰になったカロチンは手掌や足底に沈着し黄色くなります。そのため黄疸と勘違いして、肝臓を調べても異常なく、原因不明・ミカンの食べ過ぎと誤診されていることもあります(実は甲状腺機能低下症)。
甲Joう君黄色くない?
長崎甲状腺クリニック(大阪)は、イソトレチノイン(ロアキュティン®、アキュテイン®)とは一切、関わりません。
報告では、正常範囲ながら甲状腺刺激ホルモン(TSH)上昇、甲状腺ホルモン(FT3,FT4)低下が認められたそうです。しかし、なぜイソトレチノインが甲状腺ホルモン合成を阻害するのか不明です。(J Dermatolog Treat. 2017 Mar;28(2):141-144.)(Indian J Dermatol Venereol Leprol. 2016 Sep-Oct;82(5):587-8.)。
また、イソトレチノインが甲状腺機能亢進症/バセドウ病を誘発した報告があります(Case Rep Dermatol. 2012 Sep-Dec; 4(3): 256–260.)。
イソトレチノイン(ロアキュティン®、アキュテイン®)の甲状腺以外の副作用として、
- 妊娠中、妊活中の患者が服用すると、胎児奇形、流産、死産、早産
- うつ、精神病(幻覚、幻聴)、自傷行為、自殺企図など重大な精神障害
- 炎症性腸疾患(Isr Med Assoc J. 2009 Aug; 11(8):505-6.)
がある危険な薬です。(Ophthalmic Physiol Opt. 2008 Sep; 28(5):497-501.)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。