梅毒と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 動脈硬化 甲状腺超音波エコー 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。梅毒の診療を行っておりません。
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 附属病院 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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1492年、サン・サルバドル島を発見したクリストファー・コロンブスがスペインに帰国した際に梅毒が持ち込まれ、ヨーロッパ中に広がりました。
日本では明との交易で持ち込まれたと考えられています。
徳川家康の次男、結城秀康も梅毒に罹り、最後は梅毒第3期で鼻が欠け、34歳で亡くなったとされます。
江戸時代には梅毒患者が爆発的に増え、解体新書を書いた杉田玄白はオランダから輸入した水銀剤を治療に用いたとされます。
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梅毒と甲状腺(本ページ)
Summary
梅毒はスピロヘータ属の梅毒トレポネーマによる性行為感染症(STD)。5類感染症で増加傾向、女性は甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病と重なる妊娠可能年齢の20代前半に多く胎児感染の先天梅毒増加が危惧される。2期①梅毒性バラ疹は抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)薬剤誘発性過敏症と紛らわしい②神経梅毒、進行麻痺の髄膜脳炎、脳神経症状、けいれん、認知症様症状で橋本脳症と鑑別要。神経梅毒3期の髄膜脳炎症状は抗生剤の普及で減少し認知症、抑うつ症状が増加。梅毒自体が減り甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)も稀になった。
Keywords
梅毒,スピロヘータ,梅毒トレポネーマ,性行為感染症,STD,甲状腺,神経梅毒,進行麻痺,甲状腺梅毒,梅毒甲状腺炎
これは梅毒 啓発キャンペーンのポスターです。性行為感染症(STD)の梅毒が現在、問題になっています。
梅毒は、スピロヘータ属の梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum)が性的接触で直接感染する性行為感染症(STD)。クラミジア感染症など、他の性行為感染症(STD)の既往があれば罹患している確率は高くなる。梅毒は5類感染症で、診断後7日以内に保健所に届出が必要です。
梅毒は2010年以降増加に転じ、2017年には患者数が年間5000人を超えました。
国立感染症研究所感染症疫学センターの2018年の統計では、男性は20代-40代に多く、女性は甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病と好発年齢が重なる妊娠可能年齢の20代前半に多いため、胎児が感染する先天梅毒の増加が危惧されています。
感染症法における五類感染症のうち、全数把握対象疾患である梅毒、風疹、麻疹(はしか)、後天性免疫不全症候群、薬剤耐性アシネトバクター感染症の患者数と年次推移。
梅毒は感染力が強い早期梅毒(第1-2期梅毒)、感染力が弱い晩期梅毒に分けられます。

梅毒第1期は性行為感染後約3週間で、
- 微熱
- 初期硬結→隆起し、中心に痛みの無い陰部潰瘍形成(硬性下疳)
- 足の付け根(鼠径部)リンパ節腫脹
が起こります。自然軽快するため、治ったと勘違い。そして、約2か月後、梅毒第2期に移行します。
そのため、梅毒第1期に治療を開始せねばなりません。ペニシリンアレルギーがなければ、アモキシシリン(サワシリン®)が第1選択。ペニシリンアレルギーがあればテトラサイクリン系のドキシサイクリン(ビブラマイシン®)が第2選択。RPR値が陰性になるまで治療が必要。
淋菌、クラミジアは尿道炎症状が主体で、潰瘍形成はまれ。
梅毒感染後
- 3~4週間は梅毒抗体陰性
- 3~4週間後、梅毒血清反応のSTS(非特異的検査)が陽性化;梅毒トレポネーマ(T. pallidum)と交差原性のあるカルジオリピン脂質を抗原とする非特異的検査なので、抗リン脂質抗体症候群でも偽陽性になります(梅毒でもないのに梅毒血清反応陽性になる)。鑑別要。
- 5~7週間後、梅毒トレポネーマ(T. pallidum)そのものを抗原とするTPHAが陽性化
梅毒第2期の発疹は、感染後3カ月頃より出現
- 梅毒性ばら疹、丘疹性梅毒は、痒みのない全身性紅斑で、数週間以内に自然消退。甲状腺機能亢進症/バセドウ病治療薬の抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)は投与初期に薬剤誘発性過敏症[薬剤過敏症症候群(DIHS)]をおこす事もあるため紛らわしいです。(MedicalNoteより)
- 扁平コンジローマは、肛門周囲、外陰に多発する扁平小丘疹で、痒み痛みありません。
- 梅毒血清反応は梅毒第1期以降、既に陽性化。
また、梅毒第2期以降には梅毒トレポネーマが中枢神経系に浸潤し、神経梅毒、あるいは進行麻痺 も起きます。
(後期)神経梅毒、あるいは進行麻痺は、梅毒トレポネーマ感染による髄膜脳炎で、感染後3年以上して、多彩な精神・神経症状が起こります。 抗生剤の普及により、典型的な神経梅毒3期の髄膜脳炎症状は減少し、非典型的な認知症、抑うつ症状などが増えています (精神科治療学 1990; 10: 1285-1294.)。髄膜脳炎症状あれば、橋本脳症との鑑別必要になります。
また、梅毒トレポネーマは感染早期[梅毒1期(陰部潰瘍)、2期(全身バラ疹)]から中枢神経系に浸潤し、(早期)神経梅毒症状出る事もあります。
神経梅毒の診断は、髄液検査で梅毒抗体を調べます。
ペニシリン系の抗生物質を1か月以上投与し、治療効果判定には梅毒抗体価 [STS(RPR)]を定期的に測定、 減少傾向を確認(陰性化はSTSが8倍以下)。梅毒の治癒を確認するため、髄液細胞数が正常になるまで6か月ごとの髄液検査が必要。
10年以上して、梅毒第4期に移行。進行麻痺(歩行麻不能)になり、心臓血管系も侵され、大動脈解離などを起こし死に至ります。
甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)がベルギーで報告されています。39歳の白人女性、急激な首(甲状腺)の腫れ、呼吸困難、嚥下障害で発症。皮膚病変と片側性の視力喪失があったため、梅毒バラ疹を疑ったのでしょうか。それとも入院時の感染症スクリーニングで、偶々、梅毒の血清検査が陽性だったのでしょうか。
甲状腺穿刺細胞診検体で行ったPCR検査はトレポネマ・パリダム陽性。ベンジルペニシリンの静脈内投与で、頚部症状が改善。(Acta Clin Belg. 2020 Jun 26:1-5.)
甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)は、1949年、既に報告されています(Med Illus. 1949 Jan;3(1):26-9.)。梅毒自体が減ったため、甲状腺梅毒(梅毒甲状腺炎)も稀な病気になってしまいました。
先天梅毒は、出生後約1 週間で皮膚症状や肝脾腫・リンパ節腫脹、大動脈瘤が現れます。
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- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区も近く。