シェーグレン症候群の合併症・間質性肺炎・間質性腎炎・多発性関節炎・多発性単神経炎・悪性リンパ腫[橋本病 バセドウ病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックにつき、シェーグレン症候群の診療を行っておりません。
シェーグレン症候群の難病医療証で、甲状腺の検査・治療はできません。
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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(本ページ)シェーグレン症候群の合併症・間質性肺炎・間質性腎炎・多発性関節炎・多発性単神経炎・悪性リンパ腫
Summary
シェーグレン症候群に合併する膠原病性間質性肺炎はNSIP(非特異性間質性肺炎)で自己免疫性甲状腺炎、橋本病も合併。間質性腎炎を合併し遠位尿細管性アシドーシス、低カリウム血症。多発性関節炎は関節変形ほとんどなし、バセドウ病関節症/橋本病関節症(甲状腺関節症)と鑑別要。多発性単神経炎は多彩。約25%に単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)・高ガンマグロブリン血症による網状皮疹。約5%に悪性リンパ腫[発生リスクは19-44倍。ほとんど非ホジキンBリンパ腫、 66.2%が唾液腺MALT リンパ腫]。その他、環状紅斑浮腫性紅斑、胃液分泌量低下で慢性胃炎。
Keywords
シェーグレン症候群,合併,間質性肺炎,甲状腺,橋本病,間質性腎炎,多発性関節炎,多発性単神経炎,悪性リンパ腫,バセドウ病
シェーグレン症候群に間質性肺炎を合併する可能性があります。空咳(からせき)などがあれば肺CTを撮った方が良いでしょう。「甲状腺と肺 (原因不明の咳)(単に気道の乾燥による気管支炎の場合もあります。)(Clin Exp Rheumatol. 2020 Jul-Aug;38 Suppl 126(4):291-300.)
膠原病性間質性肺炎はNSIP(非特異性間質性肺炎)の形態で、不可逆性の蜂巣肺にはなりにくいです。肺活量/肺胞拡散能(DLco)は低下しますがCO2は拡散しやすいく体内に溜ることはありません。
非特異性的間質性肺炎(NSIP)の
- 平均発症年齢は50歳前後
- 70%が女性
- 59%が非喫煙者
- 59.7 ± 29ヶ月(12-138ヶ月)後、52%が自己免疫疾患を発症[自己免疫性甲状腺炎=橋本病(26%)、膠原病類縁疾患(22%)、膠原病(11%)]。高齢で、喫煙しない女性程発症しやすかった。
(Eur Respir J. 2011 Aug;38(2):384-91.)
シェーグレン症候群に間質性腎炎を合併する可能性もある。40%で遠位尿細管性アシドーシスによる低カリウム血症をおこします。その結果、
- 低カリウム性ミオパシー:筋力低下・筋肉痛・筋けいれん・高CPK(CK;クレアチンキナーゼ)血症・横紋筋融解症(筋肉が融解し腎不全)
- QT延長症:心室頻拍(VT)など致死性不整脈に移行する(二次性QT延長症候群)
- 浸透圧性脱髄症候群(橋中心髄鞘崩壊症)(脳神経の崩壊で致死的)
に至ります。ウラリット(クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物配合製剤)投与。(Clin Exp Rheumatol. 2019 May-Jun;37 Suppl 118(3):123-132.)
遠位尿細管性アシドーシス
遠位尿細管性アシドーシスでは、低カリウム血症に加え、高Cl血症(例; 116 mEq/L)、尿pH 高値(アルカリ側に傾く)(例; pH 7.0)を認めるため、おおよそ予測が付きます。(Clin Exp Rheumatol. 2019 May-Jun;37 Suppl 118(3):123-132.)[J Assoc Physicians India. 2012 Oct;60:58-60.]
その後に、
- 間質性腎炎を調べる腎エコー検査、尿NAG測定
- 遠位尿細管性アシドーシス[高Cl性代謝性アシドーシス)を証明する動脈血ガス分析(例; pH低下 7.424、PCO2低下 27.3 Torr、HCO3-低下 17.5 mmol/L、AG(アニオンギャップ)正常 11.5 mmol/L]
- シェーグレン症候群の診断;抗SS-A,B抗体他(乾燥症状がないのに、低カリウム血症をおこす場合あり)
を調べます。
橋本病合併シェーグレン症候群による遠位尿細管性アシドーシスから低カリウム性周期性四肢麻痺をおこした報告があります[Indian J Crit Care Med. 2017 Apr;21(4):243-244.](第53回 日本甲状腺学会 P-27 シェーグレン症候群による尿細管性アシドーシスで低カリウム性ミオパシーを来したTRAb 陽性橋本病の1例)
後天性ファンコニ症候群(近位尿細管障害)と甲状腺機能低下症/橋本病を合併した複雑な病態のシェーグレン症候群の報告があります[J Int Med Res. 2016 Jun;44(3):753-9.]。
後天性ファンコニ症候群(Fanconi症候群、ファンコーニ症候群)は近位尿細管障害により
間質性腎炎と甲状腺
急性尿細管間質性腎炎に無痛性甲状腺炎()とブドウ膜炎を合併した報告があります[Clin Exp Nephrol. 2011 Dec;15(6):927-32.]
急性尿細管間質性腎炎とブドウ膜炎を合併した疾患は、尿細管間質性腎炎・ぶどう膜炎症候群(tubulointerstitial nephritis and uveitis syndrome:TINU症候群)と呼ばれます。男女比は 1:2.5~1:5 で、小児~青年期(発症年齢の中央値は 15 歳)に多い。自己免疫が関与すると考えられており、当然、自己免疫性甲状腺疾患を合併する可能性があります。
尿細管間質性腎炎・ぶどう膜炎症候群(TINU症候群)に無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)を合併した報告があります。
治療はプレドニゾロンなどステロイド剤投与。急性尿細管間質性腎炎・ブドウ膜炎のみならず無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)も改善。別にステロイド投与しなくても無痛性甲状腺炎(破壊性甲状腺炎)は自然に改善しますが。[Clin Exp Nephrol. 2006 Sep;10(3):216-21.][Clin Exp Nephrol. 2011 Dec;15(6):927-32.]
尿細管間質性腎炎・ぶどう膜炎症候群(TINU症候群)に橋本病(慢性甲状腺炎)を合併した報告もあります[Klin Monbl Augenheilkd. 2002 Jul;219(7):528-32.][J Pediatr Ophthalmol Strabismus. 2013 Feb 12;50 Online:e1-3.]
慢性破壊性間質性腎炎では、任意の年齢において甲状腺様病変が発生する可能性があります。それらは、再生過程で見られる病理学的な変化です。甲状腺様病変は、慢性破壊性間質性腎炎だけでなく、薬剤性(NSAIDs)間質性腎炎、水腎症、ネフロン癆においても生じます。[Pathol Res Pract. 1983 Mar;176(2-4):284-96.]
関節リウマチのような多発性関節炎をおこしますが、関節変形はほとんどありません。(関節リウマチと合併すると関節変形します)(関節痛、関節リウマチと甲状腺)。
バセドウ病関節症/橋本病関節症(甲状腺関節症)と鑑別必要(関節痛・EMO症候群とバセドウ病・橋本病)。
(Dtsch Arztebl Int. 2017 May 26;114(20):354-361.)
全身性エリテマトーデス(SLE)のような多発性単神経炎をおこしますが、シェーグレン症候群の単神経炎は多彩です。下肢に疼痛がおこり、
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病の治療薬[抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)]を一年以上服薬後のまれな副作用で、抗好中球細胞質ミエロペルオキシダーゼ抗体(MPO-ANCA,PR3-ANCA)によるANCA関連血管炎
との鑑別が必要になる場合があります。(Presse Med. 2012 Sep;41(9 Pt 2):e485-93.)(Rheum Dis Clin North Am. 2017 Nov;43(4):519-529.)
シェーグレン症候群の単神経炎はステロイド抵抗性の報告多いが、ステロイドパルス療法が奏功した症例もあります。(第209回 日本内科学会近畿地方会 演題84 急性発症の右下肢多発単神経炎を呈したに対しステロイドパルス療法が奏功した1例)
高ガンマグロブリン血症による網状皮疹が下腿内側部に現れます。褐色のヘモシデリン沈着を伴う、米粒大の多発性紫斑です。シェーグレン症候群以外に、多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症でも見られます。( 多発性骨髄腫と甲状腺・高カルシウム血症, 単クローン性ガンマグロブリン血症 )
シェーグレン症候群は、
- 約25%に単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS);多発性骨髄腫をはじめとしたB細胞性リンパ系腫瘍の前がん病変
- 約5%に悪性リンパ腫;発生リスクは19-44倍。ほとんどが非ホジキンBリンパ腫で、 半数以上(66.2%)がMALT リンパ腫
①耳下腺腫脹、②紫斑・皮膚血管炎、③低補体血症(血清C4低値、血清C3低値)④脾腫で危険度が高い - 唾液腺腫瘍のなかで悪性リンパ腫は1.7 %とまれです。シェーグレン症候群の唾液腺MALTリンパ腫発生リスクは高いです。慢性唾液腺炎が唾液腺MALTリンパ腫の危険因子です。
を合併します。(J Comput Assist Tomogr. Jul-Aug 2003;27(4):517-24.)(Ann Intern Med. 1978 Dec;89(6):888-92.)(PLoS One. 2015 Feb 27;10(2):e0116189.)
シェーグレン症候群と橋本病(慢性甲状腺炎)の合併率は高く、どちらも悪性リンパ腫の発生母体ですので、シェーグレン症候群・橋本病(慢性甲状腺炎)・甲状腺原発悪性リンパ腫の組み合わせも、当然あります(Pol Merkur Lekarski. 2008 Aug;25(146):155-7.)。
その他、
- 環状紅斑、浮腫性紅斑が顔面皮膚に出ることがあります
- 胃液の分泌量低下よる慢性胃炎
- 全身性エリテマトーデス(SLE)のような白血球減少(白血球アポトーシス亢進、主に好中球減少症またはリンパ球減少症)、自己免疫性好中球減少症を伴うことがあります。[Mediterr J Rheumatol. 2022 Mar 31;33(1):99-101.]
自己免疫性好中球減少症の程度は、ドライアイによる表層点状角膜炎の重症度に相関。[J Rheumatol. 2015 Oct;42(10):1817-24.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区,浪速区も近く。