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関節リウマチ治療薬(生物学的製剤・CTLA-4阻害薬・JAK阻害薬・アザルフィジン・副腎皮質ステロイド)と甲状腺[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。

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※長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。関節リウマチの診療を行っておりません。関節リウマチに合併する甲状腺の病気の診療のみです。

  1. 関節リウマチと甲状腺
  2. 関節痛・EMO症候群・HTLV-1関連関節症と甲状腺

関節リウマチ治療薬(生物学的製剤・CTLA-4阻害薬・JAK阻害薬・アザルフィジン・副腎皮質ステロイド)と甲状腺(本ページ)

Summary

TNF-α阻害薬[インフリキシマブ(レミケード®)、アダリマブ(ヒュミラ®)、エタネルセプト(エンブレル®)]は甲状腺機能低下症/橋本病破壊性甲状腺炎無痛性甲状腺炎甲状腺機能亢進症/バセドウ病亜急性甲状腺炎甲状腺悪性リンパ腫を誘発。CTLA-4阻害薬オレンシア®(アバタセプト)は関節リウマチ橋本病両方に効く可能性。JAK阻害薬オルミエント®(バリシチニブ)で甲状腺腫、バセドウ病の報告。抗リウマチ薬サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN錠®)は再生不良性貧血無顆粒球症など抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)と同じ副作用。

Keywords

TNF-α阻害薬,インフリキシマブ,甲状腺,エタネルセプト,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,亜急性甲状腺炎,CTLA-4阻害薬

関節リウマチは、発症後1年以内に急速に関節破壊が急速に進行します。最初の1年で、最終段階の十数%に相当する部分が一気に破壊されます。

関節リウマチの治療は最初の1年が勝負なので、関節の腫れや痛みがひどくなくても、早期診断・早期治療が重要です。

生物学的製剤と甲状腺

生物学的製剤は最先端バイオテクノロジーで作られた薬です。抗リウマチ薬、特にメトトレキサート無効時は早期に生物学的製剤への変更が推奨されます。関節リウマチの生物学的製剤は主にTNF阻害薬 [レミケード®、エンブレル®、ヒュミラ®、シンポニー®、シムジア®]です。

TNF-α阻害薬(インフリキシマブ:レミケード®)で甲状腺機能低下症/橋本病、破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病

TNF-α阻害薬(インフリキシマブ:レミケード®)で甲状腺機能低下症/橋本病、破壊性甲状腺炎(無痛性甲状腺)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病

TNF-α阻害薬(インフリキシマブ:レミケード®)で甲状腺機能低下症/橋本病破壊性甲状腺炎無痛性甲状腺)、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が誘発された症例報告があります。原因は不明ですが、筆者は体内のサイトカインバランスが崩れて、甲状腺の自己免疫を誘発したのではないかと考えています。
(Case Rep Med. 2013;2013:216939.)(Endocr Pract. 2014 Nov;20(11):e207-10.)(第54回 日本甲状腺学会 P022 infliximab投与に起因し原発性甲状腺機能低下症を発症したと考えられる一症例)

TNF-α阻害薬(インフリキシマブ:レミケード®)で自己免疫性甲状腺疾患も改善?

TNF-α阻害薬(インフリキシマブ:レミケード®)が関節リウマチのみならず自己免疫性甲状腺疾患も改善する期待がありますが、全く改善無いとする報告があります(Endocrine. 2015 Sep;50(1):146-53.)。

一方で、TNF-α阻害薬(インフリキシマブ:レミケード®)の治療を受けた小児クローン病患者では、自己免疫性甲状腺疾患の発症が抑えられるとされます(Front Endocrinol (Lausanne). 2020 Sep 15;11:558897.)。

生物学的製剤と亜急性甲状腺炎

TNFα阻害薬投与による亜急性甲状腺炎の発症が報告されています。エタネルセプト(エンブレル®)に続き、2013年度甲状腺学会では、インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)による亜急性甲状腺炎が報告されました。

なぜかは全く不明です。筆者の推論は、「TNFα阻害が関節リウマチの異常な免疫を抑制すると同時に、正常免疫をもブロックするためウイルス感染し、かつ感染後にサイトカインの暴走(サイトカインストーム)が亜急性甲状腺炎を引き起こす。

[Clin Rheumatol. 2009 Jun;28 Suppl 1:S17-9.](J Clin Rheumatol. 2010 Mar;16(2):88-9.)(Mod Rheumatol. 2013 Mar;23(2):397-400.)(Joint Bone Spine. 2016 Jan;83(1):109-10.)(Mod Rheumatol Case Rep. 2021 Jan;5(1):36-39.)

生物学的製剤と甲状腺原発悪性リンパ腫

TNFα阻害薬が関節リウマチの異常な免疫のみならず、正常な免疫も抑制すると、悪性腫瘍(癌)に対する免疫も損なわれます。関節リウマチの30%以上が橋本病であり、橋本病には甲状腺原発悪性リンパ腫(甲状腺内のリンパ球が癌化したもの)がおこることがあります。TNF阻害薬投与後に、急激に甲状腺が気道閉塞寸前まで腫れ、甲状腺原発悪性リンパ腫が見つかった症例も報告されます。

もちろん、甲状腺と無関係の悪性リンパ腫が発生することもあります。

CTLA-4阻害薬オレンシア® (アバタセプト)とJAK阻害薬オルミエント®(バリシチニブ)

CTLA-4阻害薬オレンシア®(アバタセプト):関節リウマチ橋本病の両方に効果あるか?

関節リウマチ橋本病の共通自己免疫の一つは、CTLA-4という抗原提示細胞とT細胞両方を活性化されるT細胞抗原(細胞障害性Tリンパ球抗原)と私は考えます(筆者の論文にも記載)。関節リウマチ治療薬オレンシア®(アバタセプト)は、CTLA-4の疑似体で本来のCTLA-4の作用を妨げます。(関節リウマチ橋本病 )

CTLA-4阻害薬オレンシア®(アバタセプト):関節リウマチと橋本病の両方に効果あるか?

逆にCTLA-4を標的とした免疫チェックポイント分子療法が保険適応されました。CTLA-4を活性化し、癌細胞への免疫を高めるものですが、皮疹・下痢・自己免疫疾患増悪(甲状腺機能低下症/橋本病自己免疫下垂体炎による下垂体機能低下症)をおこします。(免疫チェックポイント阻害薬による甲状腺機能障害

JAK阻害薬オルミエント®(バリシチニブ)

JAK(ヤヌスキナーゼ)はサイトカインのシグナル伝達分子で、細胞内蛋白だから、JAK阻害薬オルミエント®(バリシチニブ)は抗体製剤ではありません。しかし、生物学的製剤に匹敵する効果を有します。

(図; ファーマシスタ)

JAK阻害薬

JAK阻害薬は結果的に複数のサイトカインを一度に抑制します。そのため、あらゆる自己免疫疾患が治療対象になる可能性があり、日本でも治験が進んでいます。

オルミエント®(バリシチニブ)の第Ⅱ/Ⅲ相臨床試験で甲状腺腫0.1%、バセドウ病0.03%が報告されていますが、単なる偶然ではないようです。

サイトカインを一度に抑制すれば、

  1. バセドウ病橋本病などの自己免疫性甲状腺疾患も改善する可能性がありますが、治験の中止や急な減量でリバウンドする可能性
  2. サイトカインのバランスが崩れ、バセドウ病橋本病を発症・増悪させる可能性

が考えられます。

バセドウ病の発症にはインターロイキン6(IL-6)と、それにより増加するTh17細胞が放出するインターロイキン17(IL-17)が深く関わっています(Autoimmunity. 2014 May;47(3):201-11.)。複数のサイトカインを一度に抑制するJAK阻害薬の影響を受けるのは当然かもしれません(Am J Clin Dermatol. 2019 Apr;20(2):181-192.)。

メトトレキサート(MTX)誘発のMTX 誘発悪性リンパ腫

サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN錠®)

抗リウマチ薬:サラゾスルファピリジン(アザルフィジンEN錠®)は再生不良性貧血、汎血球減少症、無顆粒球症(好中球という白血球が激減し免疫不全におちいる状態、血小板減少など抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)と同じ副作用をおこします。

さらに抗甲状腺薬同様、SLE(全身性エリテマトーデス)様症状もおこします。副作用なのかSLEを合併したのか判らなくなります。

[Ann Intern Med. 2007 May 1;146(9):657-65.][Arch Intern Med. 1999 Feb 22;159(4):369-74.]

関節リウマチ合併バセドウ病アザルフィジンEN錠®を服薬している方は、よりリスクが高いと言えます。

また、サラゾスルファピリジンを治療薬とする潰瘍性大腸炎バセドウ病を合併する場合も同じです[Intern Med. 2001 Jan;40(1):44-7.]

アザルフィジンとメルカゾール

副腎皮質ステロイド薬の休薬で副腎クリーゼ(急性副腎不全)

関節リウマチ以外の膠原病で普通に使われる副腎皮質ステロイド薬。関節リウマチでもメトトレキサートなどと併用で使用されます。数年間、副腎皮質ステロイド薬を飲み続けた状態に、何らかの事情で数日間、副腎皮質ステロイド薬を飲めなかった場合、副腎クリーゼ(急性副腎不全)、副腎出血 起こし命に係わる事があります。

抗リウマチ薬によるB 型肝炎ウイルスの再活性化

HBs 抗原陽性者あるいは既感染治癒患者の一部において、抗リウマチ薬[生物学的製剤、メトトレキサート(MTX)、副腎皮質ステロイド剤]によるB 型肝炎ウイルスの再活性化がおこります。劇症化する場合が多いため、リウマチ学会ガイドラインでは「HBV キャリア(HBs 抗原陽性)または既往感染(HBs 抗原陰性かつ、HBc 抗体またはHBs 抗体陽性)患者については、HBV-DNA 定量を行う。」ことが推奨されます。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療   長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,生野区,天王寺区,八尾市,東大阪市,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

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