甲状腺・糖尿病と膵臓がん・膵臓腫瘍[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。膵臓自体の診療を行っておりません。長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックに特化するため、糖尿病内科を廃止しました。
糖尿病:専門の検査、治療[橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック大阪]
甲状腺専門・内分泌代謝・動脈硬化の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 大学院医学研究科 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺乳頭癌の膵臓転移 造影CT(日本消化器外科学会雑誌.2011;44(4):442-448)
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Summary
膵臓癌は年々増加、他がんに比べ死亡率が極端に高く、早期発見できる方法が無い。糖尿病、慢性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、甲状腺癌を合併する可能性のある家族性大腸ポリポーシスなどは膵臓癌の危険因子。膵体尾部癌は症状が現れにくく早期発見困難、予後極めて不良。膵ランゲルハンス島の破壊による膵性糖尿病に早く気付けば拡大手術。膵内分泌腫瘍(グルカゴノーマ)比較的まれ。膵臓癌の甲状腺転移、甲状腺乳頭癌、甲状腺髄様癌の膵臓転移もある。内分泌腫瘍(ホルモン産生腫瘍)のインスリノーマで低血糖症、グルカゴノーマで高血糖・糖尿病。
Keywords
膵臓癌,糖尿病,膵管内乳頭粘液性腫瘍,IPMN,膵体尾部,膵性糖尿病,甲状腺転移,甲状腺乳頭癌,甲状腺,転移
膵臓癌は年々増加し、肺癌、大腸癌、胃癌に続き第4位です。膵臓癌が増えた理由は、他の癌が治るようになったのに、膵臓がんだけが解決できずに残っているためです。他臓器がんに比べ進行速度が極めて速いため、死亡率は極端に高く、膵臓癌が見つかれば極めて予後不良です。また、いまだに膵臓癌を早期発見して死亡率を減らせる検査方法が無いため、科学的根拠に基づく膵癌検診は存在しません。1年に1回の検診を受けていても膵臓がんを発見できず、見つかった頃には手術不可能と言う事が多いです(それでも年1回のMRCPはしないよりまし)。
大半の膵臓がんは原因不明です。しかしながら、膵臓癌に成り易い人が一部、特定されてきました。科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドラインによると膵臓癌のリスクファクターは、
- 遺伝性膵癌症候群(血縁者に膵臓癌がいる);第一度近親者に膵癌が1人いればリスクは4.5倍、2人で6.4倍(50歳未満なら9.3倍)(家族性膵癌登録制度)
- 家族性大腸ポリポーシス(familial adenomatous polyposis;FAP) 篩(ふるい)型[モルラ(渦巻き)型]甲状腺乳頭癌(cribriform-morular variant))も発生
- ポイツ・ジェガーズ(Peutz-Jeghers)症候群 甲状腺癌が発生する事も
- 遺伝性非ポリポーシス大腸がん(リンチ症候群) 甲状腺乳頭癌、甲状腺低分化がん、甲状腺未分化がんの合併あり
- 遺伝性乳癌卵巣癌症候群
- 糖尿病;糖尿病罹病期間が10年以上の膵臓癌リスクは1.36倍、1〜4年では1.86倍,1年未満は6.69倍と罹病期間が短いほど膵臓癌リスクが上昇(Scand J Gastroenterol 1992;27:317-325.)
- 慢性膵炎
- 膵嚢胞(膵のう胞)
- 膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)
- 肥満
- 喫煙(周辺の人にも発癌物質をばらまく)
- 大量飲酒
などです。 (Curr Opin Clin Nutr Metab Care. 2012 Sep; 15(5):457-67.)
膵臓癌の症状は
- 背中の痛みは大した事なく鈍痛
- 心窩部不快感
- 消化不良により、便通が不安定(下痢、軟便、悪臭)、体重減少(甲状腺機能亢進症/バセドウ病のよう)
- 食欲不振
- 膵性糖尿病: インスリン分泌するβ細胞だけでなく、グルカゴンを分泌するアルファ細胞も減少するため低血糖をおこしやすい不安定型糖尿病に。アルコール性慢性膵炎は、膵性糖尿病の発症率が高くなります。
- 吐き気・嘔吐
- 腹水
- 総胆管下部は膵臓に抱えられており、閉塞性黄疸に
膵臓癌の早期発見は難しく、科学的根拠に基づく膵癌検診は存在しません。しかしながら、「膵癌高リスク群」の人は1年に1回の検査(筆者が勧めるのは採血、腹部超音波検査、MRCP)を受けた方が良いと思います。さすがに造影CTは被曝の問題があり、超音波内視鏡は苦しいため1年に1回は難しいでしょう。
Courvoisier徴候は、乳頭部癌、胆管癌、膵頭部癌などが原因で胆嚢管分岐部より下部の胆管が閉塞し、腫大した胆嚢を無痛性に触知する徴候です。
膵臓がんが転移しやすいのは、近くにある胃・十二指腸です。遠隔転移としては肝臓がもっとも多く、[後は甲状腺分化癌(乳頭癌,濾胞癌)と同じく]肺、脳、骨です。 遠隔転移膵臓癌の治療目標は、延命と症状の緩和です。遠隔転移膵臓癌の化学療法の第一選択肢としてゲムシタビン(ジェムザール®)が推奨されます。
ゲムシタビン(ジェムザール®)は古典的な抗がん剤なので、
- 消化器症状(吐き気・嘔吐・下痢)
- 脱毛
- 骨髄抑制(白血球減少・赤血球減少・血小板減少)
- 肝障害、腎障害
など、抗がん剤特有の副作用があります。
最近、ゲムシタビン(ジェムザール®)に分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)のエルロチニブ(タルセバ®)を併用する方法もありますが、生存期間が15日延びるという怪しい結果に加え、
- 間質性肺炎の副作用が8%
- 消化器系の副作用も多い
- Stevens−Johnson症候群、中毒性表皮壊死症など重篤(重症)な皮膚の副作用
など、分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)特有の問題があります。重篤(重症)なものから、軽度のものまで、多種多様の副作用が起こるので、使用は慎重に考えたほうがよいと思います。
ちなみに、放射線治療無効な甲状腺分化癌(乳頭癌、濾胞癌)に使用される同じような分子標的薬(チロシンキナーゼ阻害薬)のレンビマ ネクサバール も副作用が100%おきて、副作用への対処で難渋します。
「がん化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)を有する膵臓癌に、免疫チェックポイント阻害薬(ICI) ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)の保険適応が認められています。しかし、MSI-Highを有する膵臓癌は1%-2%程度で、組織学的に髄様、粘液性のものです。(Pathol Res Pract. 2020 Jun;216(6):152985.)
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、
- CT、MRI;嚢胞が多数重なり合ってブドウの房状。粘液により膵液の流れが悪くなり、主膵管が太くなる。
- 超音波内視鏡;粘液産生によりVater 乳頭口は開大。膵管内の乳頭状増生
- 膵管鏡;主膵管内のイクラ状隆起
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は甲状腺乳頭癌の膵転移と鑑別。
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の甲状腺転移が報告されています。甲状腺の穿刺細胞診では、甲状腺乳頭癌とは異なる多形核、豊富な細胞質を有する粘液産生細胞の乳頭状増殖が認められます(Acta Cytol. 2000 Nov-Dec;44(6):1066-72.)
甲状腺乳頭癌が膵頭部に転移・腫瘤形成して、膵管内出血から急性膵炎をおこした症例が報告されています。もちろん、膵臓転移する位なので、お決まりの肺転移・骨転移・脳転移に加えて、肝臓・筋肉内にも転移したそうです。(第54回 日本甲状腺学会 P174 膵管内出血で発見された甲状腺微小乳頭癌多発転移の一例)
甲状腺乳頭癌に対し甲状腺全摘10年後、頸部リンパ節再発を認め、同時にFDG-PET/CTで集積し、造影CTで造影効果のある膵頭部腫瘍を発見。不思議にも他臓器転移なく、膵内分泌腫瘍の可能性も考えられたが、膵頭十二指腸切除術後の病理組織学的検査で甲状腺乳頭癌の膵転移が確定(日本消化器外科学会雑誌.2011;44(4):442-448)。
甲状腺癌の膵転移切除症例は、甲状腺乳頭癌以外に甲状腺髄様癌も報告されています。なぜか男性が女性の1.5倍で、通常の甲状腺癌と逆の傾向です。(RadiatMed 1991;9:167-9.)(Thyroid 2000;10:185-7.)(HepatoGastroenterology 2003;50:1687-8.)
インスリノーマ(インスリン産生腫瘍)と低血糖
インスリノーマは、膵臓に生ずるインスリンを分泌する内分泌腫瘍(ホルモン産生腫瘍)で、低血糖症の原因になります。約90%は単発の良性腺腫ですが、多発性や転移を伴う悪性腫瘍も10%程存在します。70~80%は膵体尾部に発生します。(インスリノーマ (インスリン産生腫瘍))
膵内分泌腫瘍(グルカゴノーマ)と糖尿病
グルカゴノーマは膵内分泌腫瘍の中では比較的まれ(約5%)です。ランゲルハンス島のアルファ細胞から発生し、グルカゴンという血糖を上昇させるホルモンを過剰に分泌します。 詳しくは、グルカゴン産生腫瘍(グルカゴノーマ)と糖尿病 を御覧ください。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,生野区,天王寺区も近く。