潜在性高プロラクチン血症と不妊症/習慣性流産・不育症プロラクチン分泌抑制剤、カベルゴリン(カバサール®)[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。不妊治療を行う産婦人科・レディースクリニックと提携して妊活中の甲状腺管理を行っています。
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学医学部附属病院(現、大阪公立大学医学部附属病院) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会学術集会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
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TSH(甲状腺刺激ホルモン)↑(≧2.5)≒ プロラクチン(PRL)[妊娠させないホルモン]↑≒ 相対的にLHとFSH[妊娠に必要な卵胞・黄体刺激ホルモン]↓ →不妊・不育症・流早産
Summary
脳下垂体ホルモンのプロラクチン(PRL=妊娠させないホルモン)は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)と脳内での調節機構が同じ。TSHサージと同じようにプロラクチンも朝は低く、夜に上昇。夜間に急上昇すると排卵障害や黄体機能不全症がおこり不妊症/習慣性流産・不育症の原因に(潜在性高プロラクチン血症)。長崎甲状腺クリニック(大阪)ではTSHを可能な限り下げるコントロールを行う。プロラクチン分泌抑制剤、カベルゴリン(カバサール®)は妊娠中も使えるオーストラリア基準カテゴリーB1に属するが、妊娠中毒症では禁忌で衝動制御障害・心臓弁膜症の副作用がある。
Keywords
プロラクチン,PRL,TSH,甲状腺刺激ホルモン,不妊症,習慣性流産,不育症,潜在性高プロラクチン血症,カベルゴリン,カバサール
脳下垂体ホルモンの一つプロラクチン(PRL=妊娠させないホルモン)は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)と脳内での調節機構が同じです(つまり連動している)。
TSHが夜間に一過性上昇するTSHサージがあるのと同じように、プロラクチン(PRL)も朝は低く、夜に上昇します。もし夜間にプロラクチン(PRL)が急上昇すると(PRLサージ)、排卵障害や黄体機能不全症がおこり不妊症/習慣性流産・不育症の原因になります(潜在性高プロラクチン血症)。[Nihon Naibunpi Gakkai Zasshi. 1986 Feb 20;62(2):117-25.][Nihon Naibunpi Gakkai Zasshi. 1994 Dec 20;70(10):1101-14.]
潜在性高プロラクチン血症による不妊症/習慣性流産・不育症を防ぐため、長崎甲状腺クリニック(大阪)では甲状腺ホルモンが過剰にならない範囲でTSHを可能な限り下げるコントロールを行います。
しかし、それでも妊娠が成立しない場合、甲状腺の治療に加えて、プロラクチン(PRL)自体を積極的に下げる治療を行います[ただし、プロラクチン(PRL)自体を下げる投薬は不妊治療クリニックの仕事になり、長崎甲状腺クリニック(大阪)では行っていません]。
- 甲状腺機能正常化しても、血中プロラクチン(PRL)値が30 ng/mL前後と正常上限値付近(閉経していない女性の正常値;6.1~30.5 ng/mL)だったため、カベルゴリン(カバサール®、プロラクチン分泌抑制薬)を併用して妊娠・出産に至った症例(第55回 日本甲状腺学会 P1-10-04 自己免疫性甲状腺疾患を伴った不妊症例に対するカベルゴリン併用治療の有用性について)
- 甲状腺ホルモン剤少量投与にてプロラクチン(PRL)値は軽度低下したが、さらにカベルゴリンを併用し、直後に妊娠が成立した症例(第55回 日本甲状腺学会 P1-10-04 自己免疫性甲状腺疾患を伴った不妊症例に対するカベルゴリン併用治療の有用性について)
- 甲状腺ホルモン剤のみで妊娠しにくく、かつ生理中のプロラクチン(PRL)正常値(15 ng/mL)を超える不妊女性にカベルゴリンを併用すると、3か月以上投与継続できた14例のうち半数が平均5か月(3~8か月)で妊娠成立した(まみ内科クリニックさんの報告)(第61回 日本甲状腺学会 O37-3 当院における不妊症例に対するレボチロキシン補充療法およびカベルゴリン併用治療の有用性の検討)
などの報告があります。軽度高プロラクチン血症に可能な限り低用量のカベルゴリンを投与すると、ほとんどの場合、生殖能力が回復します。[Ann Endocrinol (Paris). 2022 Jun;83(3):164-167.]
[※長崎甲状腺クリニック(大阪)では、カベルゴリン(カバサール®)を取り扱っておりません。]
院長の論文
-
(Nihon Rinsho)
成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)の総説
カベルゴリン(カバサール®)は、麦角アルカロイドと呼ばれるドパミンアゴニストで、
- パーキンソン病
- 乳汁漏出症
- 高プロラクチン血性排卵障害
- 高プロラクチン血性下垂体腺腫(外科的処置を必要としない場合に限る)
- 産褥性乳汁分泌抑制
- 生殖補助医療に伴う卵巣過剰刺激症候群の発症抑制(0.25mgのみ)
に保険適応があります。
カベルゴリン(カバサール®)は、オーストラリア基準[オーストラリア薬物評価委員会(ADEC)作成] カテゴリーB1「制限された人数だけの妊婦や妊娠可能年齢の女性によって服用されており、それによって先天奇形の発症率の上昇や、そのほかの直接・間接の有害作用が確認されていない薬物。動物実験では胎児傷害の増加を示すエビデンスが認められない。」のお墨付きがあり、妊活中・妊娠中も使用されます。
※しかし、日本の添付文書(pfizer)には「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないことが望ましい。」と記載があり、矛盾しています。
誰の体内にも自然に存在する甲状腺ホルモンと異なり、体内には存在しない物質ですので、妊活・妊娠関係なく副作用が起こる可能性があります。
特に、
- 麦角製剤に対し過敏症がある
- 心エコー検査により、心臓弁尖肥厚、心臓弁可動制限及びこれらに伴う狭窄等の心臓弁膜の病変がある(あった)[投与前に循環器内科で確認すべき]
- 妊娠中毒症[産褥期に痙攣(けいれん)、脳血管障害、心臓発作、高血圧が発現するおそれがある。]→もし、投与中に妊娠中毒症をおこせば投与中止せざる得ない
などの条件があると使用できません。
また、以下のような副作用の可能性もあるので注意を要します。
- 前兆のない突発的睡眠、傾眠、起立性低血圧が起きることがあるので、自動車の運転、機械の操作、高所作業等危険を伴う作業には従事させない
- 病的賭博(個人的生活の崩壊等の社会的に不利な結果を招くにもかかわらず、持続的にギャンブルを繰り返す状態)、病的性欲亢進、強迫性購買、暴食等の衝動制御障害が報告されている
- 長期投与において心臓弁膜症があらわれることがある[投与開始後3~6ヵ月以内に、それ以降は少なくとも6~12ヵ月毎に心エコー検査を行うこと。また、十分な観察(聴診等の身体所見、胸部X線、CT等)を定期的に行うこと。]※妊活中・妊娠中に胸部X線、CTはできないでしょう。
- その他、幻覚(5.5%)、妄想(1.8%)、悪性症候群(頻度不明)、間質性肺炎(頻度不明)、肝機能障害(頻度不明)など
長崎甲状腺クリニック(大阪)では、不妊治療クリニックの先生ができるだけカベルゴリン(カバサール®)を使わなくて済むように、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を調節してTSHを可能な限り下げます。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区,生野区も近く。