甲状腺と鼻・副鼻腔(鼻血,副鼻腔炎/蓄膿症,後鼻漏)[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 専門医 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会年次集会で入手した知見です。
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内耳孔内には顔面神経と内耳神経があります。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。甲状腺のみの診療です。耳鼻・難聴の診療を行っておりません。
Summary
甲状腺関連(甲状腺低分化癌の鼻腔転移、甲状腺様低位鼻咽頭乳頭腺癌)でも鼻血(鼻出血)。甲状腺機能低下症、I-131 アブレーション,アジュバント,治療後放射線障害で味覚・嗅覚低下。好酸球性副鼻腔炎は甲状腺機能亢進症/バセドウ病を悪化させる可能性。急性副鼻腔炎で眼窩蜂窩織炎、眼窩内膿瘍、下垂体膿瘍。慢性副鼻腔炎/蓄膿症、副鼻腔気管支症候群の後鼻漏により、喉(のど)の違和感・不快感はおきるが甲状腺とは場所が違う。甲状腺乳頭癌・甲状腺濾胞癌は上顎洞転移・副鼻腔転移。
Keywords
鼻出血,甲状腺乳頭癌,バセドウ病,慢性副鼻腔炎,後鼻漏,甲状腺,蓄膿症,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,好酸球性副鼻腔炎
甲状腺関連で鼻血(鼻出血)が起きるケースとして、
- 高血圧(甲状腺の病気で高血圧)
- 易出血性(出血しやすい)
甲状腺機能亢進症・バセドウ病による心房細動(Af) で血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を服用
後天性血友病A/後天性von willebrand病
免疫性血小板減少性紫斑症(ITP)の合併
再生不良性貧血の合併 - 甲状腺低分化癌の鼻腔への転移
- 甲状腺様低位鼻咽頭乳頭腺癌
甲状腺機能低下症患者では、味覚・嗅覚が低下します。橋本病(慢性甲状腺炎)が原因の甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモン剤(L-チロキシン、チラーヂンS)投与で味覚・嗅覚が改善します。甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)で甲状腺全摘出後に行うI-131 アブレーション(アジュバント)治療後の甲状腺機能低下症では、放射線障害のため味覚・嗅覚の改善は乏しいです。(Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2016 Oct;124(9):562-567.)
甲状腺様低位鼻咽頭乳頭腺癌(Thyroid-Like Low-Grade Nasopharyngeal Papillary Adenocarcinoma)なるものが複数報告させています。何の事やらよく分かりませんが、甲状腺乳頭癌に似ていて、肺や甲状腺に特異性の高いTTF-1が陽性の極めて稀な鼻咽頭がんです。鼻出血と鼻咽頭の異物感で見つかります。(Head Neck Pathol. 2019 Dec;13(4):661-663.)(Pathol Res Pract. 2014 Dec;210(12):1142-5.)
扁平上皮化生する甲状腺様低位鼻咽頭乳頭腺癌もあります(Hum Pathol. 2017 Dec;70:43-48.)
慢性副鼻腔炎/蓄膿症は、鼻腔周囲にある副鼻腔の慢性炎症です。鼻腔への粘液排出が妨げられ膿(うみ)がたまります。
慢性副鼻腔炎/蓄膿症と気管支喘息の関連は深く、一方で、甲状腺と気管支喘息も強い関係があります(甲状腺と気管支喘息)。気管支喘息を持っていると、甲状腺疾患または慢性副鼻腔炎/蓄膿症を合併している確率が高くなります(Pediatr Pulmonol. 2016 Sep;51(9):901-7.)。
- 慢性副鼻腔炎/蓄膿症は気管支喘息の増悪、難治化の原因
- 慢性副鼻腔炎/蓄膿症で鼻茸(はなたけ)があると気管支喘息の合併率が高い
- 気管支喘息では健常人に比べ、副鼻腔CTで異常を認める率が高い
よって自ずと慢性副鼻腔炎/蓄膿症は甲状腺の病気に影響します。
通常の好中球性慢性副鼻腔炎にマクロライド療法行うと気管支喘息も改善します(約4週間で改善が見られ、6カ月投薬を続けます)。
慢性副鼻腔炎/蓄膿症は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)排出が遷延化する危険因子です(オッズ比18.78)。ウイルス排出期間は遷延群48.5日、対照群23日です。(J Intern Med. 2020 Dec 29. doi: 10.1111/joim.13237.)
副鼻腔気管支症候群(Sinobronchial syndrome; SBS)は咳喘息、アトピー咳嗽に次いで3 番目に多い慢性咳嗽の原因です。慢性副鼻腔炎/蓄膿症で生じた粘稠な鼻水は喉(のど)に流れ出て(後鼻漏)、最終的に気管支に入り咳反射を誘発します。また、粘稠な鼻水は炎症物質や細菌を含み気管支炎を誘発します。
バセドウ病眼症(甲状腺眼症)診断目的のため行った眼窩MRI検査で、偶然、副鼻腔炎/蓄膿症・鼻茸(はなたけ)が見つかる場合があります。下は、左眼バセドウ病眼症(眼筋炎)、上顎洞炎・鼻茸、下垂体腺腫が合わせて見つかったケースです。
好酸球性副鼻腔炎は、
- 成人発症
- 篩骨洞に好発し、早期から嗅覚が障害される(刺激臭に鈍感になる)。味覚障害(辛さに鈍感になる。舌の感覚は正常なので、ヒリヒリした感覚は残る)
- 両側の鼻に多発性の鼻茸(活性化好酸球を多く含む)が発生し、手術(内視鏡下鼻副鼻腔手術)をしてもすぐに再発します(再発までの短期間だけ、症状は軽快します)
- 細菌感染ではないので、鼻汁は粘稠、ニカワ状
- 気管支喘息、アスピリン喘息、成人発症好酸球優位型喘息、薬物アレルギー、その他アレルギーを合併
- 好酸球性中耳炎も起こして難聴に
- マクロライド療法は無効
ステロイドを内服する以外、有効な治療法はありません。ステロイド長期投与と中止で、副腎クリーゼ(急性副腎不全)が起こります。 内視鏡下鼻副鼻腔手術を定期的に行うしかありません。
- 放置すると嗅覚・味覚障害が不可逆になる。
慢性副鼻腔炎/蓄膿症に伴う後鼻漏とは、鼻水が鼻の奥に落ちて来る状態です。後鼻漏の症状は、喉(のど)の違和感・不快感ですが、甲状腺とは全く場所が違います。後鼻漏は背中側、鼻の奥から下へ続く違和感になりますが、甲状腺の病気では腹側、喉仏(のど仏)の下辺りに生じる違和感です(と言っても、一般の方には分からなくて当然ですが)。
慢性副鼻腔炎/蓄膿症に伴う後鼻漏は、かぜ症状を伴わない咳だけの事もあり、肺や甲状腺の病気と鑑別が必要になります。
慢性副鼻腔炎/蓄膿症に伴う後鼻漏は、副鼻腔気管支症候群に至ります。
急性副鼻腔炎の炎症が
- 眼窩に波及すると眼窩蜂窩織炎、眼窩内膿瘍(甲状腺眼症:バセドウ病眼症・橋本病眼症 と鑑別)
→視力低下から急速に失明する危険性高く、緊急手術の適応
- 頭蓋内に波及すると海綿静脈洞血栓症、硬膜外膿瘍、硬膜下膿瘍、下垂体膿瘍、脳膿瘍、髄膜炎
→緊急手術の適応になる場合があります
副鼻腔(がん情報サイトより)
術後性上顎嚢胞は、今では行われなくなったCaldwell-Luc 手術(上顎洞根本手術)施行後20 年以上して発生します。術後性上顎嚢胞の症状は
- 頬部痛
- 頬部腫脹
で、歯根嚢胞との鑑別が必要。
蝶形骨洞に発生する蝶形骨洞嚢胞は、他の副鼻腔嚢胞に比べ頻度が少ない。しかし、蝶形骨洞はトルコ鞍の真下なので、
- 鼻症状に乏しい
- 薄い骨壁を介し、あるいは骨壁を吸収し直接的に視神経・硬膜を圧迫するため、眼症状や頭痛を来します。
篩骨洞嚢胞、蝶形骨洞嚢胞で、急速な視力低下から失明に至る危険性がある場合には、内視鏡による嚢胞開放手術が必要。
転移性副鼻腔癌は全副鼻腔癌の1.5%と稀で、原発巣は腎、肺、乳房、甲状腺、前立腺癌の順に多いです。転移経路は椎骨に沿い頭蓋内静脈叢を介して副鼻腔に至るとされ、頸椎転移を伴う可能性があります。(Head Neck Surg. 1984 Jan-Feb; 6(3):761-76.)(Head Neck. 2016 Dec; 38(12):1847-1854.)(Laryngoscope. 1963;83:942–953.)
癌全体で、で最も転移しやすいのは上顎洞です。
甲状腺乳頭癌の上顎洞への転移が報告されています。鼻(出)血で発症、元々、甲状腺乳頭癌で甲状腺全摘出され、頚部リンパ節・頚椎・傍咽頭転移もあったそうです。原発性上顎洞癌との鑑別が必要になります。(Case Rep Otolaryngol. 2020 May 11;2020:4056901.)
しかし、副鼻腔への転移で最も多い甲状腺癌は甲状腺濾胞癌(約80%)で、椎骨の頭蓋内静脈叢を介する血行性転移し、蝶形骨洞中心(約86%)に他の副鼻腔に多発します(約70%)。(Case Rep Otolaryngol. 2020 May 11;2020:4056901.)
以下、甲状腺乳頭癌の上顎洞転移CT画像(左)、MRI T2W画像(右)
副鼻腔扁平上皮癌の眼窩内浸潤で眼球突出や複視を生じる場合があります。副鼻腔扁平上皮癌自体の症状は、鼻出血を伴う鼻閉などで、短期間に進行します。眼窩内浸潤すると眼球突出や複視をおこし、甲状腺眼症:バセドウ病眼症との鑑別が必要。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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