男性不妊と甲状腺(御主人が原因の不妊かも)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
甲状腺機能亢進症/バセドウ病男性では精子数・精液量は著しく減少し、精子運動能も低下、性欲減退/インポテンツも伴い男性不妊、男性更年期障害の原因に。甲状腺機能低下症/橋本病男性では奇形精子症、精子運動能低下、精液量・射精量の減少が起こるも、精子数自体は正常。いずれも治療により甲状腺ホルモン値が改善すれば甲状腺が原因の男性不妊は改善。改善しなければ甲状腺以外にも男性不妊の原因がある。高プロラクチン(PRL)血症、亜鉛欠乏、肥満、中枢性性低ゴナドトロピン性腺機能低下症、精索静脈瘤、ビタミンD欠乏症、糖尿病も男性不妊の原因に。
Keywords
男性不妊,甲状腺ホルモン,甲状腺,橋本病,甲状腺機能低下症,甲状腺ホルモン,精子数,奇形精子,甲状腺機能亢進症,バセドウ病
甲状腺と男性不妊[Life (Basel). 2021 Dec 22;12(1):10.より改変]
甲状腺機能亢進症/バセドウ病男性における精子数・精液量は著しく減少し、精子運動能も低下します。性欲減退/インポテンツも伴い男性不妊、男性更年期障害の原因になります(Arq Bras Endocrinol Metabol. 2009 Nov; 53(8):976-82.)。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病では
- 末梢のアロマターゼを直接刺激しアンドロゲンから女性ホルモン(エストロゲン)への変換が起こり、血中エストロゲンが増加。黄体形成ホルモン(LH、脳下垂体ホルモン)の減少→遊離テストステロン(生物活性のある、ホルモン作用のあるテストステロン)の減少
- 遊離T3(FT3)、遊離T4(FT4)の増加に伴い、肝での性ホルモン結合グロブリン(SHBG)合成が亢進し、遊離テストステロン(生物活性のある、ホルモン作用のあるテストステロン)の減少
(Ann Clin Biochem. 2001;38:596‐607.)(Endocrine. 2017 Dec;58(3):397-407.)
- 甲状腺ホルモンそのもが酸化物で、トリヨードサイロニン(T3)、L-チロキシンナトリウム塩(T4)ともに、精子のDNAを損傷(Mutagenesis. 2004;19(49): 325–330.) 。
が起こります。治療により甲状腺ホルモン値が改善すれば、甲状腺機能亢進症/バセドウ病が原因の男性不妊は改善します(※甲状腺機能が正常化しても改善しなければ、甲状腺以外にも男性不妊の原因を持っている事になります)
甲状腺機能低下症では、
- 下垂体の卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)抑制を介した間接作用[J Endocrinol Invest. 2003 Apr;26(4):372-80.]
- 性ホルモン結合グロブリン(SHBG)低下と関連した男性ホルモン(総テストステロン値)の低下[Am J Med. 1987 Feb;82(2):207-12.]
- 男性ホルモン(遊離テストステロン値)も低下[Clin Endocrinol (Oxf). 2000 Feb;52(2):197-201.]。
により精巣のライディッヒ細胞・セルトリ細胞機能が低下し、精子異常が生じます。
甲状腺機能低下症/橋本病男性における最も頻度の高い精液異常は、奇形精子症です(Endocrine. 2017 Dec; 58(3):397-407.)(Endocr Rev. 2010 Oct; 31(5):702-55.)。
それ以外にも、精子運動能の低下、精液量・射精量の減少なども起こりますが、精子数自体の減少は無いようです。(Endocr Rev. 2010 Oct; 31(5):702-55.)
治療により甲状腺ホルモン値が改善すれば、甲状腺機能低下症/橋本病が原因の男性不妊は改善します(※甲状腺機能が正常化しても改善しなければ、甲状腺以外にも男性不妊の原因を持っている事になります)
甲状腺癌全摘出後のI-131 アブレーション(アジュバント)治療による精巣への放射線障害で、永続的な男性不妊が生じます。(甲状腺癌 I-131 放射線治療と合併症 )
高プロラクチン(PRL)血症は男性不妊の原因になります。血中プロラクチン(PRL)値が高いと精子の運動性が低下します(J Reprod Med. 1999;44(12 suppl): 1085–1090.)。
プロラクチン(PRL)と甲状腺ホルモン(FT4)が精漿(精液の液成分)の抗酸化能に相関し、男性不妊症の原因となる酸化ストレスに関与している可能性も報告されています。(J Androl. 2009 Sep-Oct;30(5):534-40.)
高プロラクチン(PRL)血症の原因は、高プロラクチン血症 をご覧ください。。
亜鉛欠乏と男性不妊
亜鉛欠乏も男性不妊の原因として有名です。
亜鉛は男性ホルモンのテストステロンを作るのに必須です。男性不妊と亜鉛欠乏症は、有名な話で、性欲減退・ED(勃起不全)、精子数の減少・精子の運動率低下が起こります。[J Reprod Infertil. 2018 Apr-Jun;19(2):69-81.][Hum Fertil (Camb). 2020 Apr;23(1):5-16.]
男性の肥満も、性ホルモンの減少と不妊症に関連しています。不妊男性は、肥満度(BMI)・体脂肪率が高く、卵胞刺激ホルモン(FSH)・黄体形成ホルモン(LH)・男性ホルモンのテストステロン・性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の値が低くなります。(Andrologia. 2019 Feb;51(1):e13147.)
脂肪組織がアロマターゼを産生し女性ホルモン(エストロゲン)が合成され続けるため。
甲状腺機能異常だけでなく、ビタミンD欠乏症も男性の不妊症に関与する報告があります[Aging Male. 2020 Dec;23(5):513-519.]。さらに、25ヒドロキシビタミンD(25OHD)値を増加させるビタミンDサプリメントは有用であるっとされます[World J Mens Health. 2023 Jul;41(3):640-648.]。
一方で、関与しないとの報告もあります[Fertil Steril. 2021 Oct;116(4):973-979.]。
新型コロナウイルス(severe acute respiratory syndrome coronavirus 2:SARS-CoV-2)粒子がヒトの精子と相互作用し、男性の生殖能力を破壊する可能性が指摘されています[Andrology. 2021 Jan;9(1):48-52.]。 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) が結合し、増殖するのに必要な細胞膜結合酵素アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)は、精巣にも発現しています。アンジオテンシン系は精子の生存能力と機能の維持に重要な役割を果たすため、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は感染した男性の生殖に悪影響を与える可能性があります。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)男性患者では、
- LHレベルの増加とテストステロン:LH比の低下→ライディッヒ細胞機能への悪影響[J Med Virol. 2021 Jan;93(1):456-462.]
- 男性ホルモン(テストステロン)値の低下[Urol Int. 2021;105(9-10):743-748.]
感染直後、精液の質(精子数、運動性、形態、白血球浸潤)は低下します[Urol Int. 2021;105(9-10):743-748.]。 しかし、これらの影響は時間経過とともに治まるようだが、立証されていません。現在のところ、精液の質の低下がウイルスの直接的な影響なのか、サイトカインストームとそれに伴う酸化ストレス[Int J Biol Sci. 2021 Jan 1;17(1):62-72.]の間接的な反映なのか不明です。
[図;Antioxidants (Basel). 2023 Jul 25;12(8):1483.より改変]
中枢性性低ゴナドトロピン性腺機能低下症と男性不妊
視床下部・下垂体が原因の中枢性性低ゴナドトロピン性腺機能低下症が男性不妊を起こしている可能性もあります。
精索静脈瘤と男性不妊
精索静脈瘤は男性不妊の原因。
ダウン(Down)症候群とクラインフェルター症候群
思春期以降の流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)に生じる精巣炎(睾丸炎)(思春期以降の男性の約20~30%。小児期の流行性耳下腺炎は男性不妊症の原因にならない。[亜急性甲状腺炎と鑑別を要する流行性耳下腺炎(おたふくかぜ、ムンプス)]
精路通過障害は、男性不妊の5%を占めます。その原因は、
- 結核性副聖丸炎(結核性精巣上体炎)[結核]
- 淋菌性副睾丸炎(淋菌性精巣上体炎)[橋本病(慢性甲状腺炎)と鑑別を要する淋菌性咽頭炎・クラミジア咽頭炎]
- その他精巣上体炎
- 前立腺炎
糖尿病は男性・女性両方の生殖機能に悪影響を及ぼし、不妊症の原因になります。[Int Urol Nephrol. 2009 Dec;41(4):777-84.]
糖尿病性自律神経障害による勃起障害や射精障害も関与します。[Nat Clin Pract Urol. 2005 Jun;2(6):282-90; quiz 309.]
長崎甲状腺クリニック(大阪)の元には、産婦人科、不妊治療専門クリニックから甲状腺の治療精査依頼で絶えず患者が紹介されてきます。不妊治療専門医は、甲状腺に関心のある医師、関心の無い医師、両極端です。
甲状腺に関心のある不妊治療専門医なら少なくとも、甲状腺専門医を紹介してくれます。長崎甲状腺クリニック(大阪)と提携している不妊治療専門の岡本クリニック(大阪市 住吉区 長居東)は、甲状腺を重要視しておられる数少ない医療機関です。
甲状腺に関心の無い不妊治療専門医は厄介です。患者さん自身が、ネットで甲状腺が不妊の原因になる事を知り、長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診されます(もちろん紹介状などありません)。無意味な数年間を費やすのが実情です。
不妊治療専門クリニックを選ぶなら、甲状腺に関心のある所を選んでください!!
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,生野区,東大阪市,天王寺区,浪速区,生野区も近く。