亜急性甲状腺炎と鑑別を要するKiller sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]、レミエール症候群、急性喉頭蓋炎[橋本病 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺専門の検査/治療/知見③ 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌病態内科学で得た知識・経験・行った研究、毎年どこかで開催される日本甲状腺学会で入手した知見です。
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頚部に痛みが起こり、甲状腺の病気と思って長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診する方が多くいます。その中には、甲状腺の病気もあれば、甲状腺とは関係ない病気もあります。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。急性喉頭蓋炎・Killer sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]・レミエール症候群・ブルセラ症(波状熱)・トキソプラズマ症の診療を行っておりません。
Summary
亜急性甲状腺炎と鑑別を要する急性喉頭蓋炎は咳(せき)・熱は無いが、喉(のど)の痛みがあって横になるより起きている方が楽。息が苦しい、飲み込みにくい、声が出ない、吸気性喘鳴は窒息の兆候。早急に抗生剤、ステロイド投与、輪状甲状間膜穿刺・切開 、喉頭内視鏡で気管挿管。Killer sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]の1つ、Lemierr症候群(レミエール症候群)は嫌気性菌のフソバクテリウム属による内頸静脈の血栓性静脈炎。頚部痛はあるが甲状腺と位置が少し異なる。甲状腺膿瘍の合併も。ブルセラ症(波状熱)、トキソプラズマ症も亜急性甲状腺炎と鑑別要。
keywords
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喉頭蓋は、空気と食物を、それぞれ気管と食道に振り分ける役目をします。
亜急性甲状腺炎と鑑別を要する急性喉頭蓋炎(こうとうがいえん)の原因は、喉頭蓋における
- 細菌感染で起炎菌は、インフルエンザ桿菌(Hib)、肺炎球菌、A群溶血性連鎖球菌
- 呼吸器ウイルス感染;アデノウイルス、ライノウイルスなど
- 喉頭蓋熱傷;蒸気の吸入、酔っ払って、あるいは誤嚥で熱々の天津飯、麺類、たこ焼きを冷まさず飲み込む
- アレルギー性鼻炎
- 喫煙、アルコール多飲による炎症
息が苦しい、飲み込みにくい、声が出ないなどの症状がおこり、吸気性喘鳴・肋間窩の陥入があれば、窒息の危険があります。早急に抗生剤、ステロイド投与、輪状甲状間膜穿刺・切開 、喉頭内視鏡での気管挿管が必要です。
その後急速に進行し、突然、呼吸困難(窒息なので吸う事も、吐く事もできない)をおこして倒れ、意識を失います。気道が閉塞しているので人工呼吸しても効果ありません。輪状甲状間膜穿刺・切開 するしか方法がありません。
気管切開は、輪状甲状間膜が浮腫や肥満により触知不能な場合の第2選択。
Killer sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]の種類
亜急性甲状腺炎と鑑別を要するKiller sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]は、耳鼻咽喉科での処置が遅れると死に至る恐ろしい喉(のど)の病気です。前述の急性喉頭蓋炎を含み、
- 急性喉頭蓋炎
- 両側扁桃膿瘍→扁桃周囲膿瘍 (急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍に進展)
- 咽後膿瘍 (急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍に進展)
- Ludwig's angina(ルートヴィッヒズ・アンジャイナ);口底蜂窩織炎(こうていほうかしきえん)と同義で、舌下・顎下の口底における広範で重篤(重症)な化膿性炎症。(急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍に発展)
- Lemierre症候群(レミエール症候群)(下記)
- 急性心筋梗塞に起因した咽頭痛(放散痛)
起因菌は口腔内の常在菌で嫌気性菌のフソバクテリウム属(Fusobacterium)です(Ann Biol Clin (Paris). Mar-Apr 2011;69(2):202-7.)。
最近では、必要な場合でさへ咽頭炎や扁桃炎に抗生物質を使用しない医師(特に細菌の2次感染を考えずに「ウイルスに抗生物質は無効だ」を座右の銘にしている内科医・小児科医)のため、Lemierre症候群(レミエール症候群)が増えています。その影響か、Lemierre症候群(レミエール症候群)は、健康な若年者に多いです(恐ろしい)。
Lemierre症候群(レミエール症候群)の症状は、咽頭炎や扁桃炎症状に加えて頚部痛ですが、甲状腺とは位置が少し異なるので、間違える事は無いでしょう。
Lemierre症候群(レミエール症候群)に同側の甲状腺膿瘍と肝膿瘍を合併し、甲状腺半葉切除術を行った報告があります(Eur J Clin Microbiol Infect Dis. 2004 Jul;23(7):570-2.)。
亜急性甲状腺炎、急性化膿性甲状腺炎と甲状腺膿瘍と鑑別を要したLemierre症候群(レミエール症候群)。(Vasc Med. 2016 Dec;21(6):560-561.)
Killer sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]を疑う時
どのような時にKiller sore throat[致死的な喉(のど)の痛み]を疑えば良いでしょうか?
- 咽頭は発赤のみで意外と何もない
- 唾(つば)を飲めず、口から垂れる(流延);顔面神経麻痺の様
- 口を開けれない(開口障害)
- Tripod position;臥位で気道が狭窄するので、坐位になり両手を膝の上に付く。
などの時は、Killer sore throatを疑い、すぐに耳鼻咽喉科へ行くのが良いでしょう。もちろん、甲状腺超音波(エコー)検査しても、甲状腺関連の採血をしても、元々ある異常以外の異常は見つかりません。
ブルセラ症(波状熱)
2018年、国内外に存在しない新種のブルセラ症患者が長野県で見つかりました。現時点の患者は1人だけで、突然変異種か、発見されなかった在来種か不明です。菌の遺伝子解析により、宿主がネズミなどに近いのが判明。人畜共通感染症のため、感染したネズミと患者が接触した可能性が考えられます。
ブルセラ甲状腺炎は、極めて稀なブルセラ症で、急性非化膿性甲状腺炎の形態を取ります。発熱、末梢関節炎を合併し、ブルセラ症治療により治癒した報告があります。(Pril (Makedon Akad Nauk Umet Odd Med Nauki). 2019 Oct 1;40(2):113-117.)
また、心内膜炎、腎盂腎炎、食道炎に甲状腺炎を合併したブルセラ症の報告もあります。(Mikrobiyol Bul. 2009 Jan;43(1):141-5.)
亜急性甲状腺炎と鑑別を要する後天性トキソプラズマ症
原始的な原虫のトキソプラズマ・ゴンディによる後天性トキソプラズマ症は、加熱の不十分な豚肉(沖縄県で増加傾向)、ラム肉(羊肉)[腸管出血性大腸菌やウェルシュ菌などの場合もあり]に含まれる組織シスト、ネコ糞便に含まれるオーシストの経口感染、眼瞼結膜感染で発症。
免疫正常な健常者が感染した場合は、軽度の(亜急性甲状腺炎のような)急性感染症状の後、保虫者になります。しかし、糖尿尿、甲状腺機能低下症などの免疫不全患者では重篤(重症)化する危険があります。
免疫不全患者のトキソプラズマ症では
- 眼トキソプラズマ症;眼に孤発して発症する脈絡網膜炎。先天性感染の再活性化で生じることが多く、後天性感染で発症することは稀。症状は視力障害、眼痛、羞明など
- トキソプラズマ脳炎;造影CT・MRIで、脳膿瘍としてリング状造影
先天性トキソプラズマ症
後天性トキソプラズマ症と甲状腺
自己免疫性甲状腺疾患患者の抗トキソプラズマ抗体陽性率は、健常人より高いとの報告があります(J Autoimmun. 2012 Aug;39(1-2):112-6.)。一方で、無関係との報告もあります(BMC Infect Dis. 2019 Sep 18;19(1):826.)。
マイコプラズマ感染症・マイコプラズマ肺炎は、ヒト-ヒト感染するため学校などで集団流行をおこします。
マイコプラズマ感染症・マイコプラズマ肺炎の特徴は、呼吸状態が悪くないのに、長引く発熱・咳嗽(せき)。咳によるであろう喉(のど)の痛みを亜急性甲状腺炎と勘違いして甲状腺専門医を受診する場合もあります。
マイコプラズマ感染症・マイコプラズマ肺炎は、
- 亜急性甲状腺炎と同じく、CRP値は軽度上昇
- 亜急性甲状腺炎と異なり、学童~若年者に多い(この年代における市中肺炎で最も多い原因)
咽頭に軽度発赤を認める
白血球(WBC)上昇に乏しい
- 肺にcoarse crackles を聴取し、胸部エックス線と胸部CT検査で、(症状に比して)広範囲な浸潤影を認めれば亜急性甲状腺炎は否定される。確定診断は、上咽頭ぬぐい液のPCRあるいはLAMP検査。
マイコプラズマ細胞とヒト甲状腺細胞は類似した抗原性を有しています。ヒトTSH(hTSH)はマイコプラズマ細胞に結合し、抗マイコプラズマ血清(要するに抗マイコプラズマ抗体)はヒト甲状腺細胞膜に結合します。そして、抗マイコプラズマ血清とTSHも結合します。さらにバセドウ病患者の血清はMycoplasma gallisepticum(マイコプラズマガリセプティカム)のポリペプチドに反応します。結論として、抗マイコプラズマ抗体は甲状腺TSH受容体抗体(TRAb)としての性質を有しており、マイコプラズマ感染によりバセドウ病が誘発される可能性も考えられます[J Endocrinol Invest. 1989 Feb;12(2):77-86.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。