悪性度が高い(高増殖型,高MIB-1標識率)甲状腺乳頭癌高細型,Hobnail(ホブネイル)細胞,円柱細胞癌[長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺の基礎知識を初心者でもわかるように、長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が解説します。
その他、甲状腺の基本的な事は甲状腺の基本(初心者用) 橋本病の基本(初心者用)を、高度で専門的な知見は甲状腺編 甲状腺編 part2 を御覧ください。
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甲状腺乳頭癌の特殊型
Summary
甲状腺乳頭癌亜型①甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)は紡錘型細胞(高細胞)。高齢者に多く甲状腺外浸潤や遠隔転移し生命予後不良で甲状腺全摘後も1-2年で再発②甲状腺乳頭癌 Hobnail（ホブネイル）細胞(hobnail variant)は増殖能・悪性度が高くMIB-1ラベリング(Ki-37標識率)5%以上③急激に大きくなる高増殖型甲状腺乳頭癌（高MIB-1標識率）は甲状腺未分化癌を疑うが細胞診・組織診・手術標本は通常型甲状腺乳頭癌。甲状腺円柱細胞癌(columnar cell variant：CCV)は乳頭癌に特徴的な細胞所見が無く、高増殖型で予後不良。
Keywords
甲状腺乳頭癌,円柱細胞癌,高細胞型,tall cell varian,再発,Hobnail,ホブネイル細胞,MIB-1ラベリング,Ki-37標識率,高増殖型甲状腺乳頭癌
甲状腺乳頭癌には、大半を占める「死なない癌」と少数ながら激しい浸潤・転移を伴う「死ぬ癌」の2種類があります。
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MIB-1ラベリング(Ki-67標識率)は、増殖している細胞のみに結合し、発色させる方法です。（Exp Clin Endocrinol Diabetes. 2016 Apr;124(4):209-14.）
MIB-1ラベリング(Ki-67標識率)は、濾胞型乳頭癌、大濾胞型乳頭癌では発色しないのが難点です。（図：第16回隈病院甲状腺研究会より）
小児甲状腺癌の20％(甲状腺乳頭癌全体の0.3-5%)を占める甲状腺びまん性硬化型乳頭癌（diffuse sclerosing variant of papillary thyroid cancer: DSPTC）は、小児甲状腺癌と思われがちですが、成人若年女性にも発症します。[Clin Radiol. 2022 May;77(5):e356-e362.][Thyroid. 2009 Nov;19(11):1225-31.]（第58回 日本甲状腺学会 P1-11-2 縦隔リンパ腫治療後に発症した甲状腺びまん性硬化型乳頭癌の一例）
詳しくは、 甲状腺びまん性硬化型乳頭癌(DSPTC)を御覧ください。
甲状腺乳頭癌亜型の一つ甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)は、篩（ふるい・モルラ）型甲状腺乳頭癌と同じく、甲状腺髄様癌に似た紡錘型細胞(高細胞)が特徴です。甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)は、50歳以上の高齢者に発生率が高く、甲状腺外浸潤や遠隔転移の頻度が高いため、生命予後が悪い高悪性亜種です。甲状腺全摘と頸部リンパ節郭清しても1-2年で再発してきます。
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)の超音波（エコー）画像は、桑の実状で、あたかも甲状腺低分化型の様です（Ultrasonography. 2017 Apr 36(2) 103–110.）。
甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)の甲状腺全摘出後頸部リンパ節再発。いびつな形のリンパ節で内部に砂粒状石灰化を伴います。
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)の頸部リンパ節再発 ドプラーモード；内部血流は増加。
甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)の甲状腺全摘出後頸部リンパ節再発(拡大)；頸筋に浸潤しています。
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)の頸部リンパ節再発 エラストグラフィー；硬くありません。
甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)の甲状腺全摘出後頸部リンパ節再発；粗大石灰化を認めます。
甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)の甲状腺全摘出後頸部リンパ節再発。鎖骨上窩に球状、不整型のリンパ節で内部に砂粒状石灰化を伴います。
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)の頸部リンパ節再発 ドプラーモード（拡大）
甲状腺乳頭癌高細胞型(tall cell variant：TCV)の甲状腺全摘出後頸部リンパ節再発 エラストグラフィー；硬くありません。
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)の細胞診所見；紡錘型細胞(高細胞)は細胞質が広く、オタマジャクシのような細胞(tadpole cell)と呼ばれます。（The Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology）
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV)の細胞診所見（左）と組織像（右）：紡錘型細胞(高細胞)（The Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology）
甲状腺乳頭癌高細胞型(TCV) 組織像；特徴的な紡錘型細胞(高細胞)（Int J Endocrinol. 2015;2015:456027.）
Hobnail（ホブネイル）は靴底に使われる頭の大きな釘で、Hobnail（ホブネイル）細胞は、核の偏在、細長い細胞質が特徴です。（The Bethesda System for Reporting Thyroid Cytopathology）
甲状腺乳頭癌 Hobnail（ホブネイル）細胞(hobnail variant)は、増殖能が高く、悪性度の高い甲状腺乳頭癌です。MIB-1ラベリング(Ki-37標識率)が、5%以上の高値になります。
（Int J Clin Exp Pathol. 2015 Jul 1;8(7)7988-97.）
甲状腺円柱細胞癌（columnar cell carcinoma of thyroid,columnar cell variant：CCV)は、約0.2%と非常にまれ[ Surg Oncol. 2004 Apr 1;86(1):44-54.]で、日本では数例しか報告がありません。
甲状腺円柱細胞癌(CCV)は女性に多く、甲状腺乳頭癌に特徴的な細胞所見が無いため、甲状腺乳頭癌の亜型に分類する事に異議も多いです。[Cancer Cytopathol. 2017 Jun;125(6):389-397.]
同じく円柱型細胞が特徴の甲状腺乳頭癌亜型の1つ、高細胞型乳頭癌は、核溝・すりガラス核・核内細胞質封入体など甲状腺乳頭癌に特徴的な所見があり、容易に鑑別できます。
甲状腺円柱細胞癌(CCV)の3分の1に通常乳頭癌と同じBRAF V600E突然変異を認めます（Mod Pathol. 2011;24:739–749.）。
甲状腺円柱細胞癌(CCV)は高増殖型（Ki67指数は約20%以上）で、早期に局所浸潤やリンパ節転移し、再発率が高い[Am J Surg Pathol. 1995 Aug;19(8):940-7.]。また、I-131治療に抵抗性[Adv Anat Pathol. 2018 May;25(3):172-179.]。
甲状腺円柱細胞癌(CCV)は通常乳頭癌と比べて予後不良です[Am J Transl Res. 2019 Sep 15;11(9):6262-6270.][Cancer Manag Res. 2018 Mar 9;10:465-472.]。
写真は、報告されている甲状腺円柱細胞癌(CCV) 超音波(エコー)画像です。被膜に包まれ甲状腺濾胞乳頭癌に近い見え方です（Ultrasonography. 2017 Apr 36(2) 103–110.）
写真は、報告されている甲状腺円柱細胞癌(CCV)の穿刺吸引細胞診所見です。腫大した濾胞上皮細胞は類円形や紡錘形で、核密度は増加します。あたかも甲状腺髄様癌の様です。
偽重層核と乳頭状構造に、決め手は、円柱状細胞で、甲状腺内に円柱状細胞を認める事自体、通常あり得ないのです。
[Cancer Cytopathol. 2017 Jun;125(6):389-397.]
急激に大きくなる高増殖型甲状腺乳頭癌（甲状腺乳頭癌 高MIB-1標識率）
1週間ごとに、目に見えて大きくなるため、甲状腺未分化癌を疑い細胞診しても、組織診しても、手術標本を確認しても通常の甲状腺乳頭癌所見しか見つからないケースがまれにあります。筆者自身も、今まで1例しか経験していません。
甲状腺乳頭癌 高MIB-1標識率と呼ばれる特殊な甲状腺乳頭癌で、細胞増殖の指標であるMIB-1ラベリング(Ki-67標識率)が、10%以上の高値です（通常1%以下、つまり通常の10倍以上の速度で増殖して大きくなる）。(Asian Pac J Cancer Prev. 2015;16(4):1605-8.)
広範壊死を伴う高増殖型甲状腺乳頭癌（甲状腺乳頭癌 高MIB-1標識率）
広範囲の壊死を伴い、急性化膿性甲状腺炎・甲状腺膿瘍・甲状腺未分化癌・甲状腺悪性リンパ腫・橋本病急性増悪との鑑別を要する甲状腺乳頭癌も報告されています。これも高増殖型甲状腺乳頭癌（甲状腺乳頭癌 高MIB-1標識率）で、報告例のMIB-1ラベリング(Ki-67標識率)は5-15%以上の高値です。
高増殖型甲状腺乳頭癌（甲状腺乳頭癌 高MIB-1標識率）の報告例は、
- 38℃以上の高熱・前頚部の痛みを伴う腫れ
- 高度の炎症反応(WBC, CRP上昇);例えばWBC>1万/mm3、 CRP>10 mg/dL
- 超音波（エコー）検査で40-50mm大の低エコー領域
- 穿刺細胞診でも壊死組織しか採れず
- 抗生剤投与で、解熱傾向、CRP 低下するもWBC高値のまま（第53回 日本甲状腺学会 P-244 急性炎症伴い診断に苦慮した甲状腺乳頭癌の広範壊死の1例）
- 壊死していない組織を上手く採らないと穿刺細胞診や術中迅速診断で判定困難
- 手術切除した標本で初めて甲状腺乳頭癌が判った。広範な壊死組織に泡沫細胞、好中球浸潤を認め、線維化も進行し急性化膿性甲状腺炎とは異なる所見（第53回 日本甲状腺学会 P-244）
さらに、
- 通常の甲状腺分化癌（乳頭癌・濾胞癌）ではほとんど陽性にならない
- 甲状腺乳頭癌において未分化変異の原因となる可能性がある[Cancer. 2005 Jun 1;103(11):2261-8.]
- 甲状腺未分化癌・甲状腺低分化癌で高頻度に見られる[Cancer Lett. 1996 May 15;103(1):57-63.]
p53の免疫染色が陽性（p-53陽性甲状腺乳頭癌）
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,浪速区も近く。
