甲状腺と自己免疫性溶血性貧血・非自己免疫性溶血性貧血[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
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[J Clin Med. 2020 Nov 27;9(12):3859.]
Summary
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)が甲状腺機能亢進症/バセドウ病、橋本病に合併するとAPS(多腺性自己免疫症候群)3C型。AIHA温式など血管外溶血では脾腫、血管内溶血では(-)。血管内溶血[発作性夜間ヘモグロビン尿症/発作性夜間血色素尿症(PNH)、AIHA冷式(寒冷凝集素症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症)、グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症、血栓性微小血管症(TMA)式]ではヘモグロビン尿やヘモジデリン尿、血管外溶血では(-)。
Keywords
自己免疫性溶血性貧血,AIHA,甲状腺,バセドウ病,橋本病,発作性夜間ヘモグロビン尿症,発作性夜間血色素尿症,PNH,寒冷凝集素症,発作性寒冷ヘモグロビン尿症
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)温式
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)は、赤血球膜の抗原に抗赤血球自己抗体が結合、脾臓で破壊/溶血をおこします。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)いずれか、あるいは両方(Evans 症候群)が、自己免疫性甲状腺疾患 甲状腺機能亢進症/バセドウ病、橋本病に合併するとAPS(多腺性自己免疫症候群)3C型。
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の血液検査所見は、
- 未熟で大きい赤血球が骨髄から動員されて大球性貧血に
- 網状赤血球が著増
- 溶血所見:血清総・間接ビリルビン上昇、LDH(I,II優位)上昇、血清ハプトグロビン低下
- 直接クームス試験で抗赤血球抗体の存在を確かめますが、10%がクームス陰性で、
その理由として①IgG自己抗体が少ない②IgM/IgA抗体③低親和性抗体
自己免疫性溶血性貧血(AIHA)の治療は
- 副腎皮質ステロイド薬
- 免疫抑制薬
- 摘脾術が三本柱。
- 血管外溶血なので緊急時は赤血球輸血も可。
寒冷凝集素症は寒冷凝集素(血液型のIi型に対するIgM型自己抗体)によっておこり、血管内溶血性貧血とレイノー現象などの末梢循環障害が特徴。マイコプラズマ/EBウイルス感染後、特発性慢性型は自己免疫性甲状腺疾患 橋本病/バセドウ病に合併するクリオグロブリン血症のこともあります。
寒冷凝集素症の症状は、寒冷曝露で手指、耳介に一過性の血行障害(白くなり、しびれる)→チアノーゼ、指先が青黒く変色→温まると消失
寒冷凝集素症の検査所見は、
- 尿潜血陽性、ヘモグロビン尿
- 溶血性貧血所見;大球性貧血、間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症、LD 高値、血清ハプトグロビン低値
-
寒冷凝集素高値
発作性寒冷ヘモグロビン尿症は発作性反復性の血管内溶血とヘモグロビン尿。Donath-Landsteiner抗体が原因とされるも測定できません。
非自己免疫性なので、自己免疫性甲状腺疾患(橋本病、バセドウ病)との関連はありません。
発作性夜間ヘモグロビン尿症、発作性夜間血色素尿症(PNH)はPIG-A遺伝子異常による補体感受性の高い赤血球が原因。赤血球細胞膜のGPI膜蛋白(アンカー蛋白質:グリコシルフォスファチジルイノシトール)の合成障害により、補体第3成分(C3) 活性化を抑える膜蛋白質CD55・CD59を細胞膜に繋ぎ止められなくなります。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)は感染症を契機として発症。夜間の血管内溶血により、
- 早朝のヘモグロビン尿(コーラ色、褐色尿)→ヘモシデリン尿;血管内溶血の特徴
- 貧血症状;全身倦怠感、胸骨右縁第2 肋間に収縮期駆出性雑音(貧血による機能性雑音)
- 嚥下障害(甲状腺の病気と間違う)、男性機能不全、原因不明の腹痛;遊離ヘモグロビンがNitric Oxide(NO)を強力に吸着し阻害するため平滑筋が収縮
- 肝脾腫を認めない
- 血栓症;FDP、Dダイマー上昇。アンチトロンビン低下。PT-INR、APTT 延長。
- 骨髄不全
- 再生不良性貧血・骨髄異形成症候群(MDS)の合併・相互移行があります。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の血液検査所見は、
- 溶血性貧血
- GPI酵素蛋白の好中球アルカリフォスファターゼ(NALP)も欠如するため血清ALPも低下
- Coombs試験陰性
- Ham試験、砂糖水試験(sugar-water test)陽性
- フローサイトメトリー(FCM)でCD55とCD59が陰性の赤血球・顆粒球細胞数(PNHクローン)が1%以上
- GPIアンカー蛋白欠損赤血球
尿沈渣のプルシアンブルー染色でヘモシデリン陽性。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の治療は、補体第5成分に対するクローナル抗体製剤[エクリズマブ(ソリリス®)、ラブリズマブ(ユルトミリス®)](C3は阻害しない)。いずれも、投与2週間前までに髄膜炎菌ワクチン接種が義務付けられています。
ハプトグロビンは 肝臓で作られるタンパクで、溶血で遊離したヘモグロビンと結合し、血中濃度が低下。肝臓障害時も、アルブミン・凝固因子とともに産生が低下します。
非古典的発作性夜間ヘモグロビン尿症
非古典的発作性夜間ヘモグロビン尿症は、コーラ色の尿も、貧血所見すらありません。血栓症+溶血所見がメインで、あたかも血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy: TMA)のようですが重篤(重症)感に欠けます。
グルコース-6-リン酸脱水素酵素(G6PD)欠損症は、フィリピン人、黒人に多く男児にのみ発症するX連鎖性劣性遺伝による溶血性貧血です。ヘモグロビン中の2価鉄イオン(Fe2+)が酸化され、3価鉄イオン(Fe3+)になったメトヘモグロビンの還元能力が低下します。そのため、酸化ストレス(発熱、感染症、糖尿病性アシドーシス、アセトアミノフェンなど)が誘因でメトヘモグロビンが増え、血管内で崩壊(溶血)します。
酸素を充満させた自己血を体内に戻すオゾン療法なる治療法があるが、オゾン療法は甲状腺機能亢進症/バセドウ病、G6PD欠損症、妊娠女性には禁忌だそうです。
血管内溶血[発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)など]ではヘモグロビン尿やヘモジデリン尿、血管外溶血では(-)。
血管外溶血[自己免疫性溶血性貧血(AIHA)(温式)など]では脾腫、血管内溶血では(-)。
その他、大球性貧血をきたす疾患は、
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
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