甲状腺に鉄が沈着、ヘモクロマトーシス、サラセミア、鉄芽球性貧血[橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
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甲状腺ヘモクロマトーシス CT画像[Endocrinol Metab (Seoul). 2014 Mar; 29(1): 91-5.]
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甲状腺に鉄が沈着:ヘモクロマトーシス(本ページ)
Summary
ヘモクロマトーシスでは過度の鉄が甲状腺、副甲状腺、下垂体、精巣、卵巣などに沈着し内分泌障害(甲状腺機能低下症・副甲状腺機能低下症・下垂体機能低下症・性腺機能低下症)。甲状腺ヘモクロマトーシスの単純MRIはTl,T2強調画像ともに低信号、単純CTではヨード(ヨウ素)蓄積と鉄の沈着を鑑別できず。鉄過剰症は輸血後鉄過剰症がほとんどだが鉄芽球性貧血、遺伝性ヘモクロマトーシス、サラセミア (無効造血を伴う小球性貧血)も存在。甲状腺機能亢進症/バセドウ病治療薬メチマゾールの副作用と考えられる可逆性鉄芽球性貧血の報告あり。
Keywords
ヘモクロマトーシス,甲状腺,甲状腺機能低下症,鉄過剰症,鉄芽球性貧血,遺伝性ヘモクロマトーシス,サラセミア,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,メチマゾール
ヘモクロマトーシスの甲状腺単純MRIはTl,T2強調画像ともに低信号を示しヘモクロマトーシスに特徴的とされます(Diagn Imaging Clin Med 54: 7-10, 1985)(J Comput Assist Tomogr. 1988 Jul-Aug;12(4):623-5.)。
(写真 甲状腺単純MRIはTl(左),T2(右)強調画像 日小血会誌15:192-196,2001)
甲状腺単純CTはヨード(ヨウ素)蓄積と鉄の沈着を鑑別できません[J Comput Assist Tomogr. 1988 Jul-Aug;12(4):623-5.]
(写真 甲状腺単純CT Endocrinol Metab (Seoul). 2014 Mar; 29(1): 91-5.)
鉄過剰症は血清フェリチン 500 ng/mL以上の状態で、輸血後鉄過剰症(Post-transfusion iron overload)がほとんどですが、遺伝性ヘモクロマトーシスの場合もあります。過剰鉄からフリーラジカルが産生され、
- 肝不全・肝臓がん
- 心不全・不整脈
- 内分泌異常(甲状腺・副甲状腺・下垂体機能低下症や性機能低下症・糖尿病)
- 発育障害
を呈します。
輸血関連ヘモクロマトーシスと診断された再生不良性貧血患者の
- 88%に少なくとも1つの内分泌異常
- 48%に複数の内分泌異常
- 54%に性腺機能低下症
- 48%に糖尿病
を認めた報告があります。[Clin Endocrinol (Oxf). 2013 Feb;78(2):271-7.]
鉄キレート剤:デスフェロキサミン連日注射・デフェラシロクス経口投与します。
遺伝性ヘモクロマトーシスは、欧米では多いですがアジアでは稀です。常染色体劣性遺伝性に鉄吸収阻害因子ヘプシジンが低下し、腸からの鉄吸収が増加。もちろん甲状腺など内分泌異常もおこります。
β-サラセミアの血液検査は、
- 小球性低色素性赤血球なので鉄欠乏性貧血と誤診されている事があります。総鉄結合能上昇するも、血清鉄・フェリチン正常な点が異なります。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病と合併すると鉄の消耗が激しくなり、鉄欠乏性貧血が重なり、さらに小球性低色素性貧血になります)
- 赤血球大小不同
- 標的赤血球
- 巨大奇形赤血球
- ハインツ小体(赤血球封入体)
- ヘモグロビン分画検査(HbA2、HbF増加)
骨髄検査は、赤芽球系過形成、鉄芽球増加、貯蔵鉄の増多
などを認めます。
輸血後鉄過剰症と同じく、内分泌異常(甲状腺・副甲状腺・下垂体機能低下症や性機能低下症・糖尿病)を含むヘモクロマトーシスをおこします。
常染色体劣性遺伝性のβ-サラセミアでは4%~29%で甲状腺機能低下症を認めます。ヘモクロマトーシスによる原発性甲状腺機能低下症および中枢性甲状腺機能低下症。[Mediterr J Hematol Infect Dis. 2019 May 1;11(1):e2019029.]
鉄芽球性貧血は
- 先天性(5-アミノレブリン酸合成酵素異常)
- 骨髄異形成症候群
- 2次性鉄芽球性貧血;抗癌薬、放射線治療、薬剤性[メチマゾール(メルカゾール)、抗結核薬イソニアジド、テトラサイクリン(Am J Hematol. 2001 May;67(1):51-3.)]、鉛中毒、亜鉛過剰、銅欠乏、ビタミンB6欠乏症など
による鉄利用障害性貧血です。
甲状腺機能亢進症/バセドウ病治療薬メチマゾールの副作用と考えられる可逆性鉄芽球性貧血が報告されています。[Medicina (B Aires). 1995;55(6):693-6.]
赤血球分布幅の広い正球性正色素性貧血/小球性低色素性貧血の混在型で、血清鉄、フェリチンの増加、TIBC(総鉄合能)の低値を伴います。骨髄穿刺では鉄がミトコンドリア中に蓄積し環状鉄芽球を形成。
輸血後鉄過剰症と同じく、内分泌異常(甲状腺・副甲状腺・下垂体機能低下症や性機能低下症・糖尿病)を含むヘモクロマトーシスをおこします。
ヘム合成時の5-アミノレブリン酸合成酵素の補酵素:ビタミンB6投与が有効
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
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