甲状腺と老年症候群・ロコモティブシンドローム・加齢黄斑変性・高齢者貧血[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。
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甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。老年症候群・ロコモティブシンドロ・加齢黄斑変性・高齢者貧血自体の診療を行っておりません。
Summary
FT4(甲状腺ホルモン;サイロキシン)の値は、男性は年齢と伴に低下、女性は影響なし。老年症候群は甲状腺機能低下症/橋本病、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも起こり得る症状。甲状腺ホルモン値が正常範囲の高い方にある人は、加齢黄斑変性が起こり易い。ロコモティブシンドローム(運動器症候群)は①加齢に伴う筋力低下②関節や脊椎の病気③骨粗しょう症などにより要介護や寝たきりになる、リスクの高い状態。高齢者の貧血の約30%は悪性腫瘍(癌)、甲状腺機能低下症は1%。
Keywords
甲状腺ホルモン,老年症候群,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,加齢黄斑変性,ロコモティブシンドローム,高齢者,貧血
高齢化と甲状腺の病気
日本人の平均寿命(実は、生命表から作成した生存率曲線下の面積)は年々延びています。日本の高齢化率を他の先進国と比較すると、
- 1980年代までは下位
- 1990年代はほぼ中間
- 2005年には第一位
となり、今後も下がる見込みはありませる。
このまま少子高齢化が進むと、近い将来、1人の若者が1人の高齢者を支えねばならない超高齢化社会がやってくるでしょう。高齢者が健康であれば、若者への負担が減り、持続可能な超高齢化社会を迎える事ができるかもしれません。
甲状腺機能異常は加齢に伴い増加するため、今後は増え続けると予想されます。
以下で説明する老年症候群、「齢のせい」、老衰などのようでも、実は甲状腺が原因で、甲状腺を治療すれば健康状態が回復する場合もあります。
老年症候群(Geriatric Syndrome)とは
「老年症候群(Geriatric Syndrome)」、正に取って付けたような病名。 「高齢者は、色んな病気を一杯持っていて、複数の診療科で治療し、同時に介護・ケアも必要になる」と、分かり切った事にそれらしい病名を付けて喜んでいる方々がいるようです。
老年症候群は、「加齢に伴い高齢者に多くみられる、医師の診察や介護・看護を必要とする症状・徴候の総称のことです。老年症候群の症状・徴候は50項目以上が存在します。」と、何を言っているのか良く分からない不明な病態です。
そもそも、通常では起こらない症状・徴候があれば、医師の診察や介護・看護を必要とするのは当たり前で、年齢とは無関係です。敢えて、老人に限定する意味は、症状が複数になり、複数の診療科を受診するのが若年、中年の人と異なるからなんでしょうが。そりゃ、年をとれば病気も増えるわな。
老年症候群には2つの状態が混在、
-
生理的老化;病気ではない、加齢で起こる変化、耳が遠くなる、夕方になると目が見えにくくなる、就寝中のトイレの回数が増える、坂道を上ると息切れする、軽度の認知症。「齢のせい」、老衰と言うやつですね。
-
病的老化;病気が増えて体の機能が落ちていくもの
どちらも、甲状腺の病気、甲状腺機能低下症/橋本病、甲状腺機能亢進症/バセドウ病でも起こり得る症状なのです(甲状腺機能は亢進?低下?)。つまり、甲状腺の病気を老年症候群と関違いしている事が多々あると言う事です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)には、様々な症状から自身の甲状腺異常を疑い、あるいは、他科の医師が甲状腺異常を疑った患者さんが来られます。甲状腺の症状は何でもありなのです。長崎甲状腺クリニック(大阪)で検査の結果、本当に甲状腺の病気の事もあれば、甲状腺以外が原因の事もあります。
いずれにせよ、甲状腺を調べない事には、結論が出ません。老年症候群、「齢のせい」、老衰と決めつけずに甲状腺を必ず調べましょう。
老年症候群による生理的な老化症状が甲状腺機能低下症/橋本病で増悪
老年症候群による生理的な老化症状が、甲状腺機能低下症/橋本病で増悪します。
- 1日の総尿量減少、1回あたりの尿量も減少、総尿回数増加→甲状腺機能低下症で尿閉がおきる場合がある
- 味覚が低下。味蕾の数が減少、味覚中枢を中心とする脳神経機能が低下。→甲状腺機能低下症/橋本病でも味覚・嗅覚が低下(甲状腺が原因の味覚障害)
- 体温調節能の低下。気温に対する感覚が鈍くなり、体温調節中枢を中心とする脳神経機能が低下→甲状腺機能低下症なら低体温になりやすい(甲状腺ホルモンと体温異常)
- 免疫力低下。Tリンパ球の機能劣化による外来抗原に対する抗体産生の低下。→甲状腺機能低下症で免疫力低下
低栄養では、
- 歯が悪い
- オーラルフレイル(噛む、飲み込むなどの食べる機能が低下);甲状腺が原因の嚥下障害の事がある
- 消化能力が低下、消化吸収障害;甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病の消化器吸収障害の事がある
- 認知症;甲状腺機能低下症の仮性認知症、認知症と間違えられる高齢者の甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺クリーゼの事がある
- 食べる意欲の低下;甲状腺機能亢進症/バセドウ病の精神異常、甲状腺機能低下症の精神障害のうつ症状の事がある
- 癌が隠れている
-
甲状腺機能亢進症/バセドウ病が隠れている(高齢者バセドウ病)
ロコモティブシンドロームの診断基準を具体的に挙げると、
- 片足立ちで靴下を履けない(若者でも出来んわ。しかも危ないで・・。)
- 家の中で滑ったり、つまずいたりする(これは深刻)
- 手すりなしで階段を登れない(これは深刻)
- 掃除機で掃除ができない(最近の掃除機はかなり軽いのであてにならない)、布団の上げ下ろしができない(万年床なら?)
- 1Lの牛乳パック2本を持つ買い物ができない(カートを押していれば評価不能)
- 15分間続けて歩けない(若者でも運動不足ならしんどいで)
- 青信号を渡り切れない(これは深刻。しかし、横断歩道の距離にもよるし、青信号になってすぐ渡るのでなければ評価不能。途中で黄信号に変わることはよくある)
これらが1つでも当てはまれば、ロコモティブシンドロームの可能性があるとの事です。何ともな・・・。
(図;健康長寿ネットより改変)
ただ単に加齢だけで運動器障害がおこり、運動能力が低下するのでなく、甲状腺の病気により加速される、あるいは甲状腺の病気を見逃し加齢のせいと決め付けている可能性があります。
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病の筋力低下(甲状腺と筋肉痛・筋けいれん )
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病、甲状腺機能低下症/橋本病の関節障害(甲状腺と関節痛 )、甲状腺癌骨転移
ロコモティブシンドロームは子供の頃から始まる
ロコモティブシンドロームは子供の頃から始まっています。現代の子供の運動習慣は2極化しており、
- 運動過多の子供は関節、筋肉が障害されたり(野球肘・肩、テニス肘、オスグッド病)、アスリート特有の骨粗しょう症になり(アスリートの甲状腺 )
- ゲーマー、スマホ中毒・ネット中毒の子供はほとんど外で遊ばず、運動もしないため、関節、筋肉の発達が悪く、骨粗しょう症になり
いずれも将来、ロコモティブシンドロームになります。
ロコモティブシンドローム、サルコペニア、フレイル、加齢黄斑変性は高齢者の転倒の危険因子。
高齢者の転倒は骨折に至ります。特に高齢者バセドウ病、高齢者の甲状腺乳頭癌で骨がもろくなって骨折しやすい。
- 大腿骨近位部骨折[大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折(脚の付け根の骨折)]→寝たきりに [高齢者バセドウ病の大腿骨頚部骨折と大腿骨転子部骨折(脚の付け根の骨折)]
- 椎体圧迫骨折
- 橈骨遠位端骨折(Colles 骨折)
高齢者の転倒リスクを高める薬剤として
- 降圧薬;高齢者は脳血流の調整機能が弱くなっているため、血圧が下がり過ぎると、脳虚血によるめまい、ブラックアウトがおこり転倒。特に、脳血流の調整機能を抑えるベータブロッカーは要注意。
- ベンゾジアゼピン系抗不安薬;高齢者では長期服薬により脂肪組織に蓄積。効きすぎてふらつき、判断力低下が生じ転倒しやすくなる。
加齢黄斑変性のリスクファクターは、
- 加齢
- 太陽光
- 喫煙
- 肥満
- 高脂血症
などです。
加齢黄斑変性の診断は、
- 眼底検査で黄斑部出血を認める
- フルオレセイン、またはインドシアニングリーンを用いた蛍光眼底造影検査で異常な血管増殖を描出。
機序は不明ですが、甲状腺ホルモン値が正常範囲の高い方にある人は、加齢黄斑変性が起こり易いとされます。オランダのロッテルダムスタディ(研究)という大規模な追跡調査の結論です。(BMC Med. 2015 Apr 23;13:94.)
健康な人はヨウ素(ヨード)の過剰摂取が続いても、自動的に甲状腺内へヨウ素(ヨード)の取り込みが減少し、ヨウ素(ヨード)による甲状腺ホルモン合成の抑制[急性ウォルフチャイコフ(Wolff-Chaikoff)効果]が解除されます(エスケープ現象)。(Endocrinology 140:3404-3410,1999)Clin Endocrinol Metab. 1975;40:435–441.)。
しかし、橋本病(慢性甲状腺炎)患者や高齢者では、エスケープ現象がおこらず、甲状腺ホルモンの合成が抑制され続け、甲状腺機能低下症に至ります[持続性ウォルフチャイコフ(Wolff-Chaikoff)効果](J Clin Endocrinol Metab. 1975;40:435–441.)。
高齢者うつ病は、認知症と同じく増加傾向にあります。高齢者うつ病は、
- 心気症[体の変化を過剰に気にして、重篤(重症)な病気と思い込み、身体症状を強く訴える]、不定愁訴が多い、焦燥感が強い
- 記憶障害が主訴、認知症様症状の場合が多く、本当の認知症と鑑別し難い
- 貧困妄想、心気妄想、罪業妄想、被害妄想がみられやすい
- 悲しみなどは少ない
潜在性甲状腺機能低下症と潜在性甲状腺機能亢進症は、高齢者うつ病と認知症に関連しないとの報告があります。[Ann Intern Med. 2006 Oct 17;145(8):573-81.][Gen Hosp Psychiatry. 2004 Jul-Aug;26(4):302-9.]
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。