胆石・胆のう・胆管と甲状腺[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波エコー検査 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 大学院医学研究科 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください。
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックにつき、胆石 自体の診療を行っておりません。
Summary
甲状腺機能低下症で胆石できやすく、男性に多い。甲状腺ホルモン不足により①血清コレステロール値が高くなり、②胆汁うっ滞が生じるのが原因。1cm未満の純コレステロール結石は、胆石溶解剤で30%が溶け、溶けなくても体外衝撃波の砕石治療適応。総胆管結石は、胆のう結石の移動が原因として多く、閉塞性黄疸・急性胆管炎(発熱・黄疸・右上腹部疝痛)⇒敗血症・DICの危険。総胆管結石は無症状でも内視鏡的乳頭切開術/内視鏡的乳頭拡張術の適応。原発性副甲状腺機能亢進症の胆石の頻度は25%とされ、胆汁中のカルシウム濃度の上昇が結石形成において重要と考えられる。
Keywords
甲状腺機能低下症,胆石,甲状腺,コレステロール,胆石溶解剤,総胆管結石,胆のう結石,閉塞性黄疸,原発性副甲状腺機能亢進症,カルシウム
甲状腺機能亢進症/バセドウ病の子供では、急激な体重減少とコレステロール代謝の変化で胆石形成が促進される可能性があります。[J Pediatr Endocrinol Metab. 2019 Dec 18;32(12):1395-1398.]
1cm未満の純コレステロール結石であれば、胆石溶解剤[原発性胆汁性肝硬変(PBC)/慢性C型肝炎治療と同じウルソ(熊の胆汁)]で30%が溶け、溶けなくても体外衝撃波の砕石治療適応です。特に胆嚢機能が保たれている浮遊結石が溶けやすい。石灰化結石になるといずれも適応外です。
のう嚢結石による慢性胆嚢炎を長期間繰り返すと、十二指腸と胆のうが癒着して瘻孔(ろうこう、穴)が形成され、胆石が十二指腸に落ちて、腸閉塞になります(胆石イレウス)。甲状腺機能低下症では、腸の運動が悪いため、胆石イレウスになる危険性があると考えられます。
総胆管結石症による黄疸、肝機能異常を合併した甲状腺中毒症で、甲状腺クリーゼ のような病状を示した報告があります[Case Rep Med. 2017;2017:9454698.]。
甲状腺機能低下症・潜在性甲状腺機能低下症では総胆管結石症になりやすい[Middle East J Dig Dis. 2013 Jul;5(3):141-5.][J Clin Endocrinol Metab. 2007 Nov;92(11):4260-4.]。
その原因の一つとして、
- オディー括約筋の弛緩障害による胆汁うっ滞[Neurogastroenterol Motil. 2002 Apr;14(2):183-8.]
- 高コレステロール血症(脂肪分解の低下)
が考えられます。
尿管結石は原発性副甲状腺機能亢進症の60~80%に合併するとされます(J Am Med Associ 178: 547-555, 1961)[J Clin Endocrinol Metab. 2011 Aug;96(8):2377-85.]。しかし、胆石との因果関係は明らかでありません。原発性副甲状腺機能亢進症の胆石の頻度は25%と報告され[Arch Surg. 1972 Aug;105(2):369-74.]、胆汁中のカルシウム濃度の上昇が結石形成において重要と考えられています。[複数臓器に結石を合併した原発性副甲状腺機能亢進症の1例:日本臨床外科学会雑誌Vol. 66 (2005) No. 2 P 327-331]
胆汁酸は、骨格筋・脂肪組織の2型脱ヨード酵素を活性化、細胞内の甲状腺ホルモンのFT3(遊離トリヨードサイロニン)を増やし、代謝を亢進させます(Nature. 2006 Jan 26;439(7075):484-9.)。
骨格筋・脂肪組織の2型脱ヨード酵素は、甲状腺ホルモンのFT4(遊離サイロキシン)のヨード(ヨウ素)を一つ外し、ホルモン作用が強いFT3(遊離トリヨードサイロニン)に変換し、エネルギー消費を活発にします。
セフトリアキソン(ceftriaxone:CTRX、ロセフィン®)は広いスペクトラムを持ち、半減期が長く、組織への移行性が高い。特に甲状腺, 脾臓, 腎臓に蓄積するため急性化膿性甲状腺炎の治療や、甲状腺生検の予防投与に有用です。[Chemotherapy. 1984;30(3):158-64.]
セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン®)はカルシウムと反応し結晶化するため、「カルシウムを含有する注射剤又は輸液と同時に投与しないこと」と添付文書にあります。更に「国外において、新生児に本剤とカルシウムを含有する注射剤又は輸液を同一経路から同時に投与した場合に、肺、腎臓等に生じたセフトリアキソンを成分とする結晶により、死亡に至った症例が報告されている」と記載されています。
セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン®)投与後、胆嚢内に一過性に胆石様物質が出現、ほとんどは無症状ですが、胆石発作と同じ症状をおこす事もあります。エコーやCTで、胆石様物質(見た目は、胆石と鑑別できず、小さな胆石が無数にあります)を認め、セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン®)投与を中止すると早期に自然消失し、キツネにつままれた様です。ゆえに偽胆石と呼ばれます。
セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン®)の一部は胆汁中に排泄され、カルシウムイオンと結合、偽胆石になります。セフトリアキソン(CTRX:ロセフィン®)の投与量が多い、投与速度が速いと起り易いです。治療は胆石に準じます、閉塞性黄疸をおこすと外科治療。(写真; Case Reports in Medicine Volume 2011, Article ID 730250, 3 pages )
根治切除不能甲状腺がんに投与されるレンビマ®(レンバチニブ)で、急性胆嚢炎の有害事象(副作用)をおこす場合があります(Clin J Gastroenterol. 2020 Aug;13(4):568-571.)。日本国内でも3年間で11例にレンビマ®(レンバチニブ)投与中の急性胆嚢炎が報告され、発生頻度は0.6%とされます。レンビマ®(レンバチニブ)急性胆嚢炎は無石胆嚢炎で、胆嚢穿孔(胆嚢壊死)に至った例もあります。
本来、急性胆嚢炎は、胆石のある胆嚢に大腸菌・クレブシエラ・エンテロバクターなどが起炎菌となって起こります。しかし、レンビマ®(レンバチニブ)急性胆嚢炎は、それらと無関係で、マルチキナーゼ阻害が原因と考えられます。
レンビマ®(レンバチニブ)投与中に発熱・右季肋下痛を認め、マーフィー徴候(Murphy's sign)[肝臓と胆のうは横隔膜の動きに合わせて上下に動くため、右季肋下部を圧迫すると深吸気時に痛みが増悪。急性胆嚢炎に対する特異度は87.5%だが感度は20.5% と低い]陽性でも、エコー・CTで胆石を確認できません。
胆嚢破裂の原因は、
- 胆嚢結石→胆嚢炎→胆嚢壁の壊死(最も多い)[Arch Surg. 2010 Feb;145(2):202-4.]
- 腹部外傷[JAMA. 1978 Jul 21;240(3):252-3.]
-
膵頭部癌、慢性膵炎などによる膵液の胆管内逆流・胆道内圧上昇、胆のう頸部圧迫[N Engl J Med. 1957 Mar 28;256(13):609-10.]
-
アルコール摂取[ Laparoendosc Adv Surg Tech A. 2006 Dec;16(6):623-5.]
-
糖尿病・高血圧・心疾患などによる虚血;血流の乏 しい胆嚢頸部に多い[Dig Surg. 2008;14(3):192–194.]
甲状腺機能低下症では動脈硬化が促進し、胆嚢頸部も虚血状態の可能性があるため注意が必要。
最近、甲状腺癌に似た肝内胆管癌の報告が散見されます(Int J Surg Pathol. 2018 Oct;26(7):649-654.)(J Gastrointest Cancer. 2020 Sep 22.)。甲状腺濾胞細胞様の組織型だそうです。
さらには、甲状腺濾胞型乳頭癌(FVPTC)と甲状腺癌類似の肝内胆管癌が、同時に見つかった23歳女性の報告があります。両腫瘍は組織学的に似ているが、免疫組織染色では異なります。肝内胆管癌はCK7、CK19陽性、TTF-1、PAX-8、サイログロブリン陰性、甲状腺濾胞型乳頭癌(FVPTC)はTTF-1、PAX-8、サイログロブリン陽性で、両者は明らかに異なるものでした。(Ann Hepatobiliary Pancreat Surg. 2020 May 31;24(2):182-187.)
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
も御覧ください
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区、住吉区、阿倍野区、住之江区、松原市、生野区、天王寺区も近く、堺市、羽曳野市、八尾市、東大阪市、浪速区も圏内。