食道がんと甲状腺、甲状腺癌と食道[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学 代謝内分泌内科 病態内科学で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。食道の病気の診療を行っておりません。
Summary
食道がん①扁平上皮癌の原因は飲酒と喫煙②腺癌では胃食道逆流症(GERD)、肥満。食道がんの狭窄部より上の喉(のど)がつかえる感じ(エコー検査で頚部食道に異常な拡張)、浸潤による反回神経麻痺は甲状腺腫瘍・甲状腺癌などと同じ症状。食道癌と甲状腺癌の重複癌では甲状腺癌が先に見つかる。食がんによる体重減少は甲状腺機能亢進症/バセドウ病の様で、甲状腺機能亢進症の合併も多い。食道がんは甲状腺転移(転移性甲状腺癌)、癌性リンパ管炎を起こし、甲状腺原発扁平上皮癌の食道浸潤と鑑別難。甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌)の食道浸潤は筋層までが大部分。
Keywords
食道,甲状腺,食道がん,扁平上皮癌,甲状腺機能低下症,腺癌,転移,甲状腺癌,甲状腺機能亢進症,バセドウ病
食道がんの90%以上が扁平上皮癌で、40歳代後半以降の男性に多く、女性の5倍以上です。食道がん(扁平上皮癌)の原因は飲酒と喫煙です。また、お酒に弱く飲酒ですぐに赤くなる人(フラッシャー)でリスクが高くなります。
アルコール→アルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒド(発癌因子)→2 型アルデヒド脱水素酵素により無毒な酢酸(要するに酢)へ代謝されます。日本人の30~40%は2 型アルデヒド脱水素酵素の活性が低く(ヘテロ欠損型)、酒に弱いだけでなく、喫煙との相乗効果で口腔、咽頭、食道の発癌リスクが高くなります。
下咽頭癌の危険因子も食道癌と同じく飲酒と喫煙です。食道癌と下咽頭癌は重複しやすいので、一方の癌が見つかったときはスクリーニング検査が必要。
中部食道に発生するのが約50%、下部食道が約25%。
胸部食道がんのリンパ節転移は広範囲におよぶため、頸部(甲状腺付近、鎖骨上窩)、胸部(全縦隔・両側反回神経周囲)、腹部(胃小彎付近)の3領域リンパ節郭清が行われます。
- 食道がんによる食道狭窄で甲状腺疾患と同じ症状(下記)
- 上部にできた食道がんが気管と甲状腺を後方から圧迫し、外から見ると甲状腺腫大のように見え、気管圧排による呼吸困難をおこします。
- 食道の横に声を調節する反回神経があり、食道がんが浸潤すると声がかすれ(反回神経麻痺)、甲状腺機能低下症/橋本病(慢性甲状腺炎)、甲状腺癌など甲状腺の病気と同じような症状です。甲状腺の検査で異常がないときは、食道(あるいは肺・大動脈[胸部CT]、喉頭[耳鼻咽喉科])の検査をお勧めします。
- がんによる体重減少、加えて食べ物がつかえると食事量が減り、さらに体重減少します。甲状腺機能亢進症/バセドウ病と思い長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方おられます。甲状腺機能亢進症/バセドウ病でないときは、食道含めた消化管の検査をお勧めします。
- 食道がんでは
①甲状腺機能亢進症を来し易い(約21%);原因は不明ですが、傍腫瘍症候群かもしれない
②甲状腺機能低下症(約2%)
③結節性甲状腺腫/多結節性甲状腺腫(約6%)
(Acta Chir Belg. 2010 Sep-Oct;110(5):533-6.)
- 重複癌;食道癌と甲状腺癌の重複癌(下記)
- 食道がんの甲状腺転移(転移性甲状腺癌)、食道がん切除後の(癌性リンパ管炎)(下記)
食道がんで食道が狭くなると、狭窄部より上の「喉(のど)がつかえるような感じ」「食べ物がつかえるような感じ」が生じて、甲状腺腫瘍・甲状腺癌など甲状腺疾患と同じ症状です。食道狭窄が悪化し、食物の通過障害が起こると、嘔吐・経口摂取障害を来します。血液検査で甲状腺の数値に異常がなく、甲状腺超音波(エコー)検査で、写真のように頚部食道(甲状腺の背側)に異常な拡張がある時は、食道がんによる食道狭窄を疑い、食道の検査(上部消化管内視鏡検査)をお勧めします。
食道がんの甲状腺転移(腫瘤形成)
食道がんが甲状腺に浸潤すると、甲状腺原発扁平上皮癌の食道への浸潤と鑑別難です。
食道がん(扁平上皮癌) 甲状腺転移の超音波(エコー)画像;特徴的な所見に欠きますが、周囲への浸潤(腫瘤のハロー[halo]より外側の低エコー部分)が、はっきり分かります。(Int J Thyroidol. 2019 May;12(1)64-69.)
下は、食道がん(腺癌)甲状腺転移(Surg Case Rep. 2019 Aug 30;5(1):137.)
食道がん切除後の転移性甲状腺癌(癌性リンパ管炎)
重複癌;食道と甲状腺の重複癌は少ないですが、報告例があります。
- 同時性(同時期に見つかる)が7割、異時性(どちらかが先に見つかっている)3割;甲状腺癌が先に見つかり、平均約6年前に甲状腺癌に放射線治療を受けているため、放射線誘発性食道癌と考えられる[甲状腺癌全摘出・I-131 アブレーション(アジュバント)後の2次発癌]。
- 男女比は3:7
- 平均年齢約62歳で比較的高齢
- 食道癌は扁平上皮癌、進行癌が多く予後不良、甲状腺癌は乳頭癌・濾胞癌が半数ずつ
(日臨外医会誌 53(3), 605-610, 1992)
食道と頭頸部(咽頭、口腔、喉頭)は、同じ扁平上皮なので重複癌の頻度が高いです。大抵は、頭頸部癌が先に見つかります。
重複食道癌(扁平上皮癌)の治療開始時期は、頭頸部癌の治療開始から3年以内が約80%を 占めます。(日消外会誌 1987;20(11):2482-7.)
頭頸部癌の手術後、内視鏡検査で同時に食道がんが見つかる確率は2.7%とされます(Laryngoscope. 2021 Mar;131(3):E807-E814.)。
頭頸部癌の手術後に、食道がんを探すための内視鏡スクリーニング検査を行えば、早期に食道がんを発見でき、予後が改善します(Oral Oncol. 2019 Sep;96:27-33. doi: 10.1016/j.oraloncology.2019.06.038.)。
さらに、頭頚部癌術後は、癒着・永久気管孔の形成などのため、食道癌の手術が困難で、術後合併症が増えます。
(写真 Gastroenterology. 2016 Nov;151(5):860-869.e7.)
欧米では肥満と関連し、食道胃接合部に好発する食道腺がんが多い。
日本人の食道がん(腺癌)は4%に過ぎませんが、増加傾向にあります。ヘリコバクター・ピロリ感染率の低下、肥満の増加→胃食道逆流症(GERD)の増加→バレット食道が原因と考えられています(バレット腺癌とも呼びます)。
ピロリ菌感染により胃酸分泌は低下し、怪我の功名で胃食道逆流症(GERD)が抑えられます(ヘリコバクター・ピロリと甲状腺)。肥満は腹圧を上昇をさせ、胃食道逆流症(GERD)を増加させます。
扁平上皮癌と同様に、喫煙も食道腺癌(バレット腺癌)の危険因子になります。
早期食道がんは、通常の内視鏡で見ても発赤程度の場合が多々あります。
- ルゴール(ヨード)を撒布すると、ヨードで染色されない不染帯があれば、早期食道がんの可能性が高いです。正常扁平上皮細胞はグリコーゲンを合成できるので、茶褐色に染まります。
- NBI(Narrow Band Imaging、狭帯域光観察)を用いると血管を視認しやすくなり、血管が密に存在している所があれば早期食道がんの可能性が高い。NBI拡大観察では深達度診断が可能。NBIは選択的ヘモグロビン光吸収を用いて血管を視覚化する技術です。
甲状腺は食道の腹側に接しているため、甲状腺癌が食道浸潤する場合があります。
甲状腺癌(乳頭癌、濾胞癌)の食道浸潤は筋層までが大部分です。食道浸潤が粘膜へ達している場合、食道切除になります。
甲状腺分化癌(乳頭癌、濾胞癌)の標準術式は甲状腺亜全摘/甲状腺全摘術やリンパ節郭清です。上縦隔リンパ節郭清術は特殊な場合のみです。いかに緩徐な経過の甲状腺分化癌(乳頭癌、濾胞癌)であっても悪性腫瘍であることに変わりなく、根治手術されなければ再発して周囲組織に直接浸潤します。
甲状腺全摘出術後、食道下粘膜腫瘍として再発した甲状腺乳頭癌の報告があります(Chonnam Med J. 2012.)。
胃カメラ・大腸カメラは、かわさき消化器内科クリニック(大阪市平野区瓜破)にお願いしています。
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。