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甲状腺と食道(逆流性食道炎,食道憩室)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]

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甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科 病態内科学で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。

長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。

食道憩室 甲状腺超音波(エコー)画像 エラストグラフィー

甲状腺編 では収録しきれない専門の検査/治療です。

甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝に御用の方は 甲状腺編    動脈硬化編    甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など)   糖尿病編 をクリックください。

長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。食道の病気の診療を行っておりません。

Summary

逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流(NERD)は、喉の違和感、声のかすれなど甲状腺機能低下症/橋本病甲状腺癌と似た症状。好酸球性食道炎は食物アレルギーでバセドウ病は要注意。食道アカラシアは飲み込み難で甲状腺腫瘍の様な症状、抗GAD抗体陽性率が高い。頚部食道憩室(Zenker憩室・Killian-Jamieson憩室)はエコーで甲状腺乳頭癌と見分け難。食道憩室炎で嚥下痛、嚥下困難など亜急性/急性化膿性甲状腺炎様の症状。巨大縦隔甲状腺腫による食道圧排、食道内圧上昇で食道憩室に。下行性食道静脈瘤は甲状腺癌縦隔内甲状腺腫バセドウ病、甲状腺腫術後に生じる。

Keywords

食道,甲状腺,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,逆流性食道炎,甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺乳頭癌,食道アカラシア,食道憩室,非びらん性胃食道逆流

胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)

胃食道逆流症(gastro-esophageal reflux disease:GERD)は、胃液が食道に逆流して①逆流性食道炎や②非びらん性胃食道逆流(NERD)を引き起こす病態です。胃食道逆流症(GERD)は、下部食道括約筋の弛緩が原因でおこります。胃食道逆流症(GERD)の主な症状は、胸部症状(胸の違和感、胸焼け、胸痛)、呑酸(どんさん)だけでなく、のどの違和感、痛み、せき、嚥下障害(吞み込みにくい)の場合もあります。これらの症状を甲状腺の病気と勘違いして、甲状腺専門医を受診するケースが多々あります。

胃食道逆流症(GERD)は内視鏡検査で食道炎の程度と症状の強さが必ずしも一致しません[非びらん性胃食道逆流(NERD)の存在]。

逆流性食道炎

胸の中央あたりが食後に熱くなる胸やけは、胃酸が食道に逆流する逆流性食道炎の症状です。食道の粘膜は、胃酸に対する抵抗力が弱いため食道炎に至ります。

胃酸が口腔内まで逆流すると、苦みや酸っぱみを感じたり、げっぷが出て「きみずが上がってくる」と表現されます(呑酸:どんさん)。

最近、逆流性食道炎では胸部症状(胸の違和感、胸焼け、胸痛)以外にも、のどの違和感、痛み、せき、嚥下障害(吞み込みにくい)を起こすことが分かってきました。これらの症状を甲状腺の病気と勘違いして、甲状腺専門医を受診するケースが多々あります。

逆流性食道炎と甲状腺

逆流性食道炎は

  1. 食道裂孔ヘルニア
  2. 食道下部括約筋の弛緩
  3. 背骨が曲がり胃が圧迫され
  4. 過食
  5. 肥満・内臓脂肪による圧迫で胃内圧上昇
  6. 高脂肪食;十二指腸-上部小腸のI細胞のコレシストキニン分泌促進→下部食道括約筋拡張、肥満の原因にもなる。

などで、起こり易くなります。

食道裂孔ヘルニア
胃食道逆流の超音波(エコー)画像

胃食道逆流の超音波(エコー)画像:臥位で胃内容物(食物残渣)が食道に逆流します。

逆流性食道炎 超音波(エコー)画像

逆流性食道炎 超音波(エコー)画像;甲状腺より下方(甲状腺の下から外れる部分)の食道をエコープローブで圧迫すると圧痛あり。甲状腺の痛みや、違和感でないのが証明できます。

逆流した胃酸で慢性咽頭炎になり、喉の違和感、声のかすれ、せき(咳嗽)など甲状腺機能低下症/橋本病(慢性甲状腺炎)甲状腺癌甲状腺の病気と同じような症状になります。異なる点は、逆流性食道炎の場合、

  1. 寝転んでいると症状が出て、座ったり、起きた姿勢で治まる。夜間のみの症状なら、①臥位に起因する胃酸逆流か、②寝室のハウスダストによるアレルギー反応のいずれかが濃厚。
  2. 食事や会話の際に悪化する
  3. 咳き込むと、脆い胃食道接合の炎症部が裂けて吐血する

食道は甲状腺の背面に位置するため、甲状腺腫瘍がある患者さんは逆流性食道炎の症状を甲状腺腫瘍のせいと思い込み、逆流性食道炎が見逃されるケースがあります。

甲状腺腫瘍がある患者の逆流性食道炎

食道粘膜のヒダは縦走しているので、胃酸と接して縦走潰瘍が形成されます。

胃切除後の術後食道炎は膵液・十二指腸液の逆流なので膵炎治療薬カモスタット メシル酸塩を使用します。

甲状腺機能低下症逆流性食道炎

  1. 甲状腺機能低下症は、新陳代謝(脂肪分解)の低下と粘液水腫による肥満を生じ、逆流性食道炎を悪化させる可能性があります。(Clin Drug Investig. 2009;29 Suppl 2:17-8.)
  2. 食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎は、甲状腺機能低下症の初期徴候の1つで、胃酸分泌亢進でなく、消化管運動低下によると考えられています。(Klin Med (Mosk). 2006;84(2):71-4.)

逆流性食道炎の治療

逆流性食道炎の治療は、①胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤、②胃酸を中和する制酸剤の投与です。しかし、それらはあくまで対症療法です。逆流性食道炎の原因となっている食道裂孔ヘルニアなどを治療しない限り、薬剤を中止すれば再発します。

胃酸分泌抑制剤、制酸剤ともに、状腺機能低下症/橋本病治療薬、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)の吸収障害をおこします。[薬によるチラーヂンSの吸収障害(薬剤性チラーヂンS吸収障害)]

突然の胸やけ症状に対して、即効性の順に

  1. アルロイドG(アルギン酸ナトリウム;防御因子増強薬)やスクラルファート[薬によるチラーヂンSの吸収障害(薬剤性チラーヂンS吸収障害)]
  2. P-CAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー);ボノプラザン(タケキャブ®)[薬によるチラーヂンSの吸収障害(薬剤性チラーヂンS吸収障害)]
  3. PPI(プロトンポンプ阻害薬);オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール、エソメプラゾール[薬によるチラーヂンSの吸収障害(薬剤性チラーヂンS吸収障害)]

逆流性食道炎の再発予防

逆流性食道炎の再発予防

逆流性食道炎の再発を防ぐ予防法は、

  1. 肥満の解消
  2. 一度に大量に食べる”ドカ食い”をしない
  3. 脂もの、刺激物を避ける
  4. 寝る時に頭を高くする
  5. 喫煙しない
  6. 食道裂孔ヘルニアの外科手術

などです。

避けるべき食べ物は

  1. 脂もの;揚げ物、チョコレートも含む
  2. 刺激物
  3. アルコール
  4. 酸;オレンジジュースなどの柑橘系
  5. 塩分が多いもの;トマトジュースも含む
  6. カフェインを多く含むもの;コーヒー・紅茶
  7. 炭酸飲料
  8. 甘いもの;清涼飲料水

逆に、推奨される食べ物は

  1. おかゆ、うどん、白パン(要するにバターを練り込んだ食パンや菓子パンではないもの)
  2. 脂の少ない淡白な赤身肉・白身魚、鶏のささみ
  3. 牛乳、ヨーグルト(チラーヂンSの吸収障害をおこす食べ物
  4. 豆腐(チラーヂンSの吸収障害をおこす食べ物

非びらん性胃食道逆流(NERD)

非びらん性胃食道逆流(NERD)

内視鏡で異常がないのに逆流性食道炎症状が出る非びらん性胃食道逆流(NERD)があるため、内視鏡はあてになりません。

非びらん性胃食道逆流(NERD)は、食道粘膜が酸に過敏であるため、症状を強く感じるとされます(Aliment Pharmacol Ther 20 (Suppl 1) ; 112―117 : 2004)。

びらん性の逆流性食道炎に比べると、酸分泌抑制薬の効果は弱いながらも症状は軽減します。

喉の違和感、声のかすれなどから甲状腺の病気を疑って長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方の中に、非びらん性胃食道逆流(NERD)がいます。

甲状腺超音波(エコー)検査をしても、

  1. 症状を説明できる病変が見当たらない
  2. 甲状腺機能低下症/橋本病(慢性甲状腺炎)が存在し、甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)投与後に甲状腺機能が正常化しても症状が改善しない
  3. 食道の上に甲状腺腫瘍があり、どちらが原因なのか判らない
  4. 甲状腺よりも足側(下方)の食道の直上に圧痛がある

などの時は、耳鼻咽喉科で喉頭ファイバーをお勧めします。それでも異常なければ、非びらん性胃食道逆流(NERD)を疑い、酸分泌抑制薬を試験投与します(治療的診断)。効果あれば、非びらん性胃食道逆流(NERD)と診断できます。

非びらん性胃食道逆流(NERD) 超音波(エコー)画像

非びらん性胃食道逆流(NERD)超音波(エコー)画像:甲状腺症状を説明できる病変が見当たらず、直下の食道が疑われます。

非びらん性胃食道逆流(NERD) 超音波(エコー)画像2

非びらん性胃食道逆流(NERD)超音波(エコー)画像:写真右半分は甲状腺よりも足側(下方)の水平断です。痛みの場所はここですが、有るのは食道のみです。

非びらん性胃食道逆流(NERD)超音波(エコー)画像

非びらん性胃食道逆流(NERD)超音波(エコー)画像:絶食して8時間以上経つのに、食物残渣が食道内に認められました。

黄色矢印;食物残渣

バレット食道

逆流性食道炎が持続的に繰り返されるとバレット食道(胃粘膜に変わり食道腺癌が発生)になります。

バレット食道

好酸球性食道炎

好酸球性食道炎の原因は食物アレルギー(小麦・ミルク・卵・大豆・ナッツ・海産物など)です。

好酸球性食道炎は30~50歳の男性に多く、増加傾向。半数は喘息・アレルギー性鼻炎などアレルギー疾患を持っています。

好酸球性食道炎の症状は

  1. 嚥下障害(飲み込みにくい)や咽頭部違和感・閉塞感(甲状腺の病気と鑑別要)
  2. 胸部の違和感・閉塞感、胸焼け(甲状腺と場所が違う)
  3. 無治療で放置すると線維化・狭窄し食べ物が通りにくくなる(甲状腺の病気と勘違いして甲状腺専門医を受診する)

好酸球数の軽度増加が少数で認められるが、血液検査の異常はほとんどない。

診断は内視鏡検査で食道下部縦走粘膜襞に縦走溝(感度と特異度が高い)、リング、白斑を認める。この部分から5個程度の生検組織(好酸球分布は均一でないため)で好酸球浸潤を証明。(Clin Invest. 2012;2(5): 527–535)

なぜかプロトンポンプ阻害薬(PPI)で半数が症状改善、好酸球消失。

好酸球性食道炎

好酸球性食道炎は、自己免疫疾患を合併しているリスクが高い。

  1. セリアック病橋本病(慢性甲状腺炎)
  2. クローン病潰瘍性大腸炎(UC)
  3. 関節リウマチ
  4. 選択的IgA欠損症、分類不能型免疫不全症(CVID)
  5. 多発性硬化症(MS)

(Am J Gastroenterol. 2016 Jul;111(7):926-32.)

食道憩室

食道憩室と甲状腺

食道憩室は全消化管憩室の約1%に過ぎず、頚部食道憩室はその中で約10%を占めます。

頚部食道憩室は咽頭食道境界の解剖学的脆弱部に生じます。頚部食道憩室には、

  1. <Zenker(ツエンカー)憩室>下咽頭収縮筋と輪状咽頭筋の間
  2. <Killian-Jamieson(キリアン-ジェイミーソン)憩室>輪状咽頭筋と食道輪状筋の間。食道縦走筋外側から発生し側方へ突出

があり、圧出型の仮性憩室です。

食道憩室と甲状腺

憩室が増大したり、炎症をおこす(食道憩室炎)と

  1. 嚥下時の咽喉頭異物感・不快感
  2. 咳嗽(せき)、発声障害、誤嚥性肺炎
  3. 嚥下痛、嚥下困難
  4. 食物の停滞感
  5. 口臭

等の症状を呈し、亜急性甲状腺炎急性化膿性甲状腺炎甲状腺癌など甲状腺疾患と同じ症状になります。

[N Engl J Med. 2017 Nov 30;377(22):e31.][Clin Gastroenterol Hepatol. 2014 Nov;12(11):1773-82; quiz e111-2.]

また、甲状腺超音波(エコー)検査で甲状腺腫瘍(特に甲状腺乳頭癌)と見分け難い場合がありますが、頚部食道憩室は嚥下運動にて

  1. 腫瘤内高輝点の移動(唾液嚥下に伴い頚部食道から腫瘤内への唾液流入、続いて腫瘤から頚部食道への唾液流出)
  2. 右葉背側に腫瘤があれば左葉背側へ移動

を認めます[Endocr Metab Immune Disord Drug Targets. 2019;19(1):95-99.][Ann Med Surg (Lond). 2020 Nov 6;60:515-517.]

食道憩室 甲状腺超音波(エコー)画像
食道憩室 甲状腺超音波(エコー)画像 エラストグラフィー
食道憩室 甲状腺超音波(エコー)画像

食道憩室 甲状腺超音波(エコー)画像

食道憩室

食道憩室 甲状腺超音波(エコー)画像

食道憩室 細胞診 扁平上皮と細菌(桿菌)

甲状腺腫瘍(特に甲状腺乳頭癌)と見分け難く、(痛みや感染など合併症の危険があるため行ってはなりませんが)穿刺細胞診した場合、扁平上皮、細菌、食物残渣を認めます。

(J Med Cases  2012;3(4)261-263)

食道憩室 細胞診 扁平上皮と食物残渣

甲状腺機能亢進症/バセドウ病の診断や無痛性甲状腺炎との鑑別目的で99mTc(テクネチウム)シンチグラフィーを行うと、甲状腺外で食道の走行に沿った99mTcO4-の集積を認める場合があります。唾液腺から唾液に分泌された99mTcO4-ですが、飲水によって消退しない時は、食道憩室に停留した唾液の可能性があります。[Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2003 Dec;30(12):1657-64.]

食道憩室を疑ったら、

  1. CT: 内部にガス像を認め、甲状腺より低density の腫瘤で、食道入口部と連続している
     
  2. 上部内視鏡検査: 咽頭食道移行部に憩室入口部(正直、ほとんど見つけられません。憩室炎を繰り返すと憩室開口部の狭入化で見つけられない)
     
  3. 食道透視・胃透視検査: 咽頭食道付近に造影剤貯留像(写真 寺元記念病院 画像診断センターより)

を認めます。

食道憩室 食道造影

頚部食道憩室、Zenker 憩室は進行性に増大する傾向があるため、早期に外科切除すべきとされます。

また、症状が強い場合、憩室炎で穿孔や出血のリスクが高い場合も外科手術の適応になります。最近は、内視鏡的切除術やレーザー治療の選択肢もあります[Surg Endosc. 2021 Jul;35(7):3744-3752.][Acta Otorrinolaringol Esp (Engl Ed). 2021 Nov-Dec;72(6):381-386.]。

縦隔甲状腺腫の圧排による食道憩室

巨大縦隔甲状腺腫が食道を圧排し、食道内圧が上昇すると、<Zenker憩室(頚部食道憩室)>を生じる事があります。憩室炎を起こしていなくても、食道圧排による嘔吐・嚥下障害・経口摂取不良が出現。巨大縦隔甲状腺腫を手術切除しない限り、治まりません。

東北大学 乳腺内分泌外科の報告では、約9cm大の縦隔内へ伸展する巨大腺腫様甲状腺腫により発生した<Zenker憩室(頚部食道憩室)>を、甲状腺と同時切除したそうです。(第59回 日本甲状腺学会 P4-5-4 縦隔甲状腺腫に食道憩室を合併した1 例)

食道憩室炎

食道憩室炎 甲状腺超音波(エコー)検査

食道憩室炎を繰り返すと、食道壁が肥厚し、甲状腺腫瘍(特に甲状腺乳頭癌)との見分けが付きにくくなります。食道残渣が、食道憩室に溜まり、菌が繁殖するのが原因です。しかし、予防策はありません。

この写真の患者は、腺腫様甲状腺腫も合併しているため、食道憩室炎を腺腫様結節と間違える危険性があります。一見、halo(周辺低エコー帯)のように見えるのが食道平滑筋であるのに気付けば、穿刺細胞診に踏み切らなくて済みます。

食道憩室炎と腺腫様甲状腺腫を合併

食道憩室炎と腺腫様甲状腺腫を合併した患者の腺腫様結節

食道憩室炎と腺腫様甲状腺腫を合併した患者の腺腫様結節(ドプラーモード)

食道憩室炎と腺腫様甲状腺腫を合併した患者の腺腫様結節(ドプラーモード)。

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道4

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道;甲状腺下極付近では正位置(甲状腺左葉下極背側)にあります。

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道5

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道;甲状腺上極付近では本来と違う位置(甲状腺右葉上極背側)にあります。

食道内腔は、かなり拡張しており、逆流性食道炎も合併しています。

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道1

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道;甲状腺中部付近では本来と違う位置(甲状腺右葉中部背側)にあるため、甲状腺腫瘍と区別しにくい。

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道(拡大)2

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道(拡大);甲状腺中部付近では本来と違う位置(甲状腺右葉中部背側)にあるため、甲状腺腫瘍と区別しにくい。

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道(拡大) ドプラーモード

甲状腺腫瘍に見えるが蛇行した食道(拡大) ドプラーモード;甲状腺上極付近では本来と違う位置(甲状腺右葉上極背側)にあります。

右肺尖部癌と右巨大甲状腺のう胞腺腫で右半葉摘出後の食道蛇行(水平断)

右肺尖部癌と右巨大甲状腺のう胞腺腫で右半葉摘出後の食道蛇行(水平断)

右肺尖部癌と右巨大甲状腺のう胞腺腫で右半葉摘出後の食道蛇行(水平断);本来、甲状腺左葉下極背側にあるべき食道が右に位置します。肺尖部と甲状腺右葉がなくなったため、自然とスペースの空いた右に移動したのだと思います。特に、逆流性食道炎の症状を認めません。

右肺尖部癌と右巨大甲状腺のう胞腺腫摘出後の食道蛇行(垂直断)

右肺尖部癌と右巨大甲状腺のう胞腺腫で右半葉摘出後の食道蛇行(垂直断)

食道アカラシア

食道アカラシアとは

食道アカラシアは、10万人に1人の稀な病気で、30歳-50歳代が多いとされます。食道アカラシアでは、食道下部平滑筋層内のアウエルバッハ神経叢細胞の変性・消失により、食道の蠕動運動が障害されます(食物をうまく胃の中まで運べず、食道内に停滞する)。下部食道括約筋弛緩不全・一次蠕動波消失・同期性収縮波出現が特徴。

食道アカラシアの症状は、

  1. 特に「冷たいお茶、ジュースが飲み込みにくい」と言う、嚥下障害です。甲状腺腫瘍、甲状腺腫と思い、長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方がいます。
  2. 食物が食道内に停滞しているため、「胸が詰まった感じ」がします。甲状腺は首の下の方に位置するので、全然、場所が違います。
    また、寝ると、口や鼻に食事や唾液が逆流してきます(甲状腺ではあり得ません)。
  3. 食物の逆流に伴う「慢性咳嗽」、「喉の違和感」は、逆流性食道炎と同じで、甲状腺の病気と思い、長崎甲状腺クリニック(大阪)を受診される方がいます。
  4. 食道癌の発生頻度が高い

食道アカラシアの診断は、

  1. バリウム検査(上部消化管造影検査)
  2. 内視鏡検査(食道内腔の拡張・食道胃接合部の強い収縮、噴門部の粘膜がスコープに巻きつく)

で事足ります。

食道アカラシア

食道アカラシアと甲状腺

抗サイログロブリン抗体(Tg抗体)陽性抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体(TPO抗体)陽性の自己免疫性甲状腺疾患、1型糖尿病、尋常性白斑を伴う多腺性自己免疫症候群3C型に合併した食道アカラシアが報告されています。

また、食道アカラシアでは抗GAD抗体陽性率が高いとの報告があります(DigDisSci 2010, 55:307-311.)。

自己免疫によるアウエルバッハ神経叢の変性・消失により食道アカラシアが発症すると考えられます(1型糖尿病の経過中に食道アカラシアを合併した 多腺性自己免疫症候群の一例; 糖尿病53(12):829~833,2010)

食道アカラシア

甲状腺で食道静脈瘤破裂!?(甲状腺腫による出血性下行性食道静脈瘤)

下行性食道静脈瘤

下行性食道静脈瘤(Ann Transl Med. 2018 Dec;6(23)463.)

下行性食道静脈瘤 出血

下行性食道静脈瘤 出血(World J Gastrointest Pharmacol Ther. Jan 21, 2019; 10(1) 1-21)

普通、食道静脈瘤破裂と言えば、肝硬変、特発性門脈圧亢進症など消化器の病気を考えますが、甲状腺が原因の出血性下行性食道静脈瘤の場合があります。

甲状腺による下行性食道静脈瘤は、

  1. 甲状腺腫(腫れた甲状腺;特に甲状腺癌縦隔内甲状腺腫・バセドウ病 )の4%
  2. 甲状腺腫術後非再発症例の12%
  3. 甲状腺腫術後再発甲状腺腫症例の54%

に起きるとされます(Fortschr Geb Roentgenstr Nuklearmed 118:440-445, 1973)。

原因として、

  1. バセドウ病など血流豊富な巨大甲状腺腫からの流出(Jpn J Surg. 1986 Sep;16(5):363-6.)
  2. 下甲状腺静脈が、手術による結紮や瘢痕化によって閉塞し、側副血行路として食道静脈瘤が発達
  3. 甲状腺癌の上大静脈浸潤による閉塞(Arch Surg. 1978 Dec;113(12):1463-4.)

があります(内分泌甲状腺外会誌 29(4):314-317,2012)。

しかし、甲状腺による下行性食道静脈瘤は、肝硬変、特発性門脈圧亢進症の食道静脈瘤と異なり、

  1. 凝固能が正常
  2. 上部食道にできるため、胃食道逆流による粘膜損傷を受けにくい
  3. 粘膜下の深い所に形成される

ため、出血は稀です(Dig Dis Sci 27:23-27, 1982)。

下行性食道静脈瘤造影CT(内分泌甲状腺外会誌 29(4):314-317,2012)。

出血性下行性食道静脈瘤の治療は、

  1. 出血性ショックを警戒し輸液
  2. 胃管の盲目的挿入はさらなる大出血を招く危険性がある
  3. 内視鏡的静脈瘤結紮術(静脈瘤を輪ゴムで結紮する、endoscopic variceal ligation)は、欧米では第一選択。その後、甲状腺全摘になります。
  4. 静脈瘤内に薬剤を注入して硬化させる内視鏡的硬化療法(endoscopic injection sclerotherapy)は、再発率の低さから日本では第一選択。しかし、硬化物質が肺塞栓をおこし死亡した報告があるため、慎重に考えるべきです。[Dtsch Med Wochenschr. 1998 May 29;123(22):691-5.]

緊急出血で内視鏡が困難な場合には、バルーンタンポナーデ法のSengstaken-Blakemore チューブ留置でその場をしのぎます。

下行性食道静脈瘤 造影CT

胃カメラ・大腸カメラ

かわさき消化器内科クリニック

胃カメラ・大腸カメラは、かわさき消化器内科クリニック(大阪市平野区瓜破)にお願いしています。

甲状腺関連の上記以外の検査・治療  長崎甲状腺クリニック(大阪)

長崎甲状腺クリニック(大阪)とは

長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。

長崎甲状腺クリニック(大阪)


長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査等]施設で、大阪府大阪市東住吉区にある甲状腺専門クリニック。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市近く

住所

〒546-0014
大阪府大阪市東住吉区鷹合2-1-16

アクセス

  • 近鉄「針中野駅」 徒歩2分
  • 大阪メトロ(地下鉄)谷町線「駒川中野駅」
    徒歩10分
  • 阪神高速14号松原線 「駒川IC」から720m

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