誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎と甲状腺[橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 長崎甲状腺クリニック 大阪]
甲状腺:専門の検査/治療/知見① 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪
甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会 学術集会で入手した知見です。
長崎甲状腺クリニック(大阪)以外の写真・図表はPubMed等で学術目的にて使用可能なもの、public health目的で官公庁・非営利団体等が公表したものを一部改変しています。引用元に感謝いたします。尚、本ページは長崎甲状腺クリニック(大阪)の経費で非営利的に運営されており、広告収入は一切得ておりません。
甲状腺・動脈硬化・内分泌代謝・糖尿病に御用の方は 甲状腺編 動脈硬化編 甲状腺以外のホルモンの病気(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊など) 糖尿病編 をクリックください
長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎の診療を行っておりません
Summary
甲状腺癌の反回神経浸潤(反回神経麻痺)で誤嚥(ごえん、唾液や食物が気管に入る)をおこす。特に高齢者は嚥下反射が低下し誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎をおこしやすい。胸X-pで異常なく、肺CTでびまん性小粒状陰影を認め甲状腺癌の肺転移と鑑別要。巨大甲状腺腫による食道圧迫で誤嚥性肺炎に。予防はカプサイシン(甲状腺機能亢進症/バセドウ病悪化の可能性)、ACE阻害薬(サブスタンスP・ブラジキニン増加)、アマンタジンと葉酸(中枢性甲状腺機能低下症の可能性)、口腔ケア・とろみ/ゼリー食、アイスマッサージ、肺炎球菌ワクチン、胃酸分泌抑制剤、海藻類を避ける。
Keywords
甲状腺癌,誤嚥,嚥下反射,誤嚥性肺炎,びまん性誤嚥性細気管支炎,アイスマッサージ,鑑別,甲状腺,予防,口腔ケア
甲状腺癌が反回神経に浸潤すると嗄声(声のかすれ)・誤嚥(唾液や食物が気管に入る)をおこします。また、甲状腺癌を浸潤した反回神経と同時摘出した後も同様です(甲状腺癌の直接浸潤、甲状腺腫瘍・バセドウ病手術後の反回神経麻痺 )。
特に高齢者は嚥下反射が低下するので誤嚥をおこしやすい。高齢の甲状腺癌患者、甲状腺腫瘍・バセドウ病手術後の反回神経麻痺を持っている人は要注意。
口腔・咽頭内容物、唾液の垂れ込み、胃逆流物により誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎を来します。
甲状腺癌手術後の胃瘻や気管切開後でもおこります。
誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎は、胸X-p(胸部レントゲン)で異常なく、肺CTにて、びまん性小粒状陰影を認めます。甲状腺癌の肺転移と鑑別を要します。
胸骨下まで伸びた巨大甲状腺腫による食道圧迫は、嚥下障害と食道咽頭逆流を生じ、誤嚥性肺炎の原因になります(Korean J Intern Med. 2016 Nov;31(6):1196-1197.)
嚥下反射の低下は、大脳黒質線条体でドパミン産生量が減少→迷走神経知覚神経を介したサブスタンスPの合成低下により、
- 脳血管障害/脳梗塞、パーキンソン病、認知症など中枢神経障害
- 睡眠薬(中枢神経抑制)
- ビタミンB12欠乏症
が原因です。
さらに、口腔乾燥症により唾液の分泌量が減ると殺菌力が低下し、口腔内雑菌が繁殖するため、誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎をおこしやすくなります。
医療・介護関連肺炎(NHCAP)の多くは誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎です。
誤嚥性肺炎の原因菌として、口腔内の通性嫌気性菌、連鎖球菌属(ストレプトコッカス)がほとんど。また肺炎球菌も重要な起因菌です。
誤嚥すると、むせる・咳込むなど、誤嚥物を排出する反射がおこります。しかし、高齢者では咳反射の筋肉・神経も衰えていて、むせる・咳込む症状が出にくくなり、そのまま食事を続けてしまいます。さらに、高齢者は発熱機能も弱いため、典型的な症状に乏しく、喘鳴・呼吸困難(呼吸が速く浅い、呼吸がゼロゼロする)が生じます。
重症化して急性呼吸窮迫(こきゅうひっぱく)症候群(ARDS)に至ることもあります。
高齢者肺炎のニューキノロン系抗生物質使用は
- キノロン耐性肺炎球菌を誘導しないよう
- 結核に中途半端に効くため、結核の診断・治療が遅れたり、キノロン耐性結核が出現しないよう
頻度を少なくする。結核に効かないトスフロキサシンの使用は例外的に推奨されます。
誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎の治療で、絶対にしてはならないのが、予防的なマクロライド系抗生物質(クラリスロマイシンなど)の長期投与です。マクロライド耐性菌を作ってしまうだけです。
誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎は反復しやすく予後不良。
誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎の予防は
- 良い姿勢で食事をする(背筋を伸ばし、両足を床に付ける)
よく噛んで、ゆっくり食べる
食後すぐに横にならない(胃食道逆流を防ぐ) - 誤嚥予防運動(下記や、嚥下おでこ体操・あご持ち上げ体操)
- 体温と温度差のある料理(熱いもの、冷たいもの)にする
香辛料やハーブを取り入れる - カプサイシン (唐辛子の辛味);皮膚・粘膜にある温度受容体の閾値を下げる(甲状腺機能亢進症/バセドウ病症状悪化の可能性)
- ACE阻害薬(サブスタンスP・ブラジキニン増加)(日本高血圧学会「高血圧治療ガイドライン(2014)」で推奨)
- アマンタジンと葉酸(ドーパミン増加)(中枢性甲状腺機能低下症をおこす可能性)
- 補中益気湯:気力・食欲向上し、免疫力・咀嚼筋力改善。(甲状腺機能亢進症/バセドウ病悪化の可能性)
- まめな口腔ケア(下記)・とろみ/ゼリー食などです。
- 予防に肺炎球菌ワクチンが有効
- 胃酸分泌抑制剤;胃食道逆流による誤嚥性肺炎(Mendelson症候群)の予防[薬によるチラーヂンSの吸収障害(薬剤性チラーヂンS吸収障害)の原因に]
- 海藻類はヨウ素(ヨード)が多く、甲状腺に悪いだけでなく、誤嚥しやすいので避ける(海藻類は誤嚥性肺炎・窒息の危険)
口腔ケアは、
- 口腔内の常在菌、あるいは気道深く入る前に口腔で捕らえられた病原菌を洗い流す
- 細菌が繁殖する母体となり、かつ細菌ごと肺に入る食べかす(食物残渣)を洗い流す
- うがい、歯磨き、マウスウッシュを使用すると、口腔内の乾燥が緩和され、口腔・咽頭粘膜が潤って保護される
効果があります。口腔ケアの種類によって、誤嚥性肺炎・びまん性誤嚥性細気管支炎の予防効果に差はないとされます。具体的な口腔ケアの方法は、潜在性シェーグレン症候群/顕在性シェーグレン症候群の生活上の注意と同じですので、そちらをを御覧ください。
アイスマッサージは嚥下訓練の一つで、前口蓋弓に氷などの寒冷刺激を与え、嚥下反射弓を強化するものです[Dysphagia. 1996 Summer;11(3):198-206.]。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区,浪速区も近く。