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多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]

甲状腺:専門の検査/治療/知見② 橋本病 バセドウ病 甲状腺エコー 長崎甲状腺クリニック大阪

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)肺CT

甲状腺専門長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学大学院医学研究科(現、大阪公立大学大学院医学研究科) 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、甲状腺学会で入手した知見です。

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長崎甲状腺クリニック(大阪)は甲状腺専門クリニックです。多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症自体の診療は行っておりません。

Summary

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)はPR3-ANCA、MPO-ANCA(20-30%)陽性。発熱、ANCA関連血管炎性中耳炎、咽頭痛、視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出、四肢血管炎(紫斑)、多発性神経炎、多関節炎、肺胞出血(肺CTで淡いすりガラス状陰影、空洞を伴う多発結節)、急速進行性腎炎(壊死性半月体形成腎炎)、関節痛とMPO-ANCA関連血管炎と同じ症状。抗糸球体基底膜腎炎[グッドパスチャー(Goodpasture)症候群]は、肺胞と腎臓の糸球体基底膜に対する抗基底膜抗体のⅡ型アレルギーで、甲状腺機能亢進症/バセドウ病で起こると、MPO-ANCA関連血管炎と鑑別。

Keywords

多発血管炎性肉芽腫症,ウェゲナー肉芽腫症,PR3-ANCA,MPO-ANCA,中耳炎,MPO-ANCA関連血管炎,抗糸球体基底膜腎炎,グッドパスチャー症候群,甲状腺機能亢進症,バセドウ病

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)は、教科書的に、MPO-ANCAでなくPR3-ANCAが陽性になる病気となっていますが、実際は、MPO-ANCAが20-30%で陽性になります(PR3-ANCAは70-80%)。(日本内科学会雑誌 102:2549-2557. 2013.)

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)
  1. 発熱、食欲不振、倦怠感、体重減少などの全身症状(甲状腺機能亢進症/バセドウ病の様)
  2. 鼻出血、鞍鼻(再発性多発軟骨炎と鑑別、耳介の疼痛・発赤が無い点が異なる)
  3. 中耳炎(難聴、耳漏、耳痛など耳鼻咽喉科症状);ANCA関連血管炎性中耳炎
  4. 咽頭痛(潰瘍,嗄声,気道閉塞)(亜急性甲状腺炎の様);内科・耳鼻咽喉科でカゼと間違えられて治療される事も
  5. 視力低下、眼充血、眼痛、眼球突出など甲状腺眼症/バセドウ病眼症様症状
  6. 四肢の血管炎(紫斑)、多発性神経炎
  7. 多関節炎
  8. 肺胞出血(肺CTで淡い、すりガラス状陰影、空洞を伴う多発結節)
  9. 急速進行性腎炎(壊死性半月体形成腎炎)

とMPO-ANCA関連血管炎とほぼ同じ症状です。通常は頭頚部症状から始まり、肺腎障害に進展します。

(Arch Facial Plast Surg. Sep-Oct 2008;10(5):305-11.)

多発血管炎性肉芽腫 鞍鼻
多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)肺CT

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)の肺CT画像(emDOCsより)

多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)の治療は、

  1. ANCA関連血管炎の診療ガイドライン(厚生労働省難治性疾患克服研究事業、2013年)に準拠して、寛解導入にため副腎皮質ステロイド大量投与とシクロホスファミドパルス療法の併用。
  2. ①初発・再発問わず活動性が高い
    ②副腎皮質ステロイドとシクロホスファミドで十分な効果が得られない、治療抵抗性で再発繰り返す
  3. ③シクロホスファミドが副作用、高齢などで使用し難い
    場合、リツキシマブ(リツキサン®)が保険適応。
    (375mg/m2/week x 4weeks)はシクロホスファミドと同等の効果で、ステロイドを減量できる。(N Engl J Med 2010;363:221-232)

MPO-ANCA関連血管炎でなく、抗糸球体基底膜腎炎[グッドパスチャー症候群:Goodpasture症候群

抗糸球体基底膜腎炎[グッドパスチャー症候群:Goodpasture症候群]とは

グッドパスチャー症候群(Goodpasture症候群)は、肺胞と腎臓の糸球体基底膜の成分であるⅣ型コラーゲンα3鎖・非コラーゲンドメイン(tfSNCl)に対する抗基底膜抗体がⅡ型アレルギー免疫疾患を起こすものです。

急速進行性糸球体腎炎(RPGN)確定後に、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)が陽性になれば診断確定します。

抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)を持つ患者は、バセドウ病などの自己免疫疾患と関連している可能性があります。

Goodpasture症候群の治療は、副腎皮質ステロイド薬、シクロホスフアミド投与と血紫交換です。

MPO-ANCA関連血管炎でなく、抗糸球体基底膜腎炎[グッドパスチャー(Goodpasture)症候群]

MPO-ANCA関連血管炎が疑われたが、抗糸球体基底膜腎炎[グッドパスチャー(Goodpasture)症候群]だった症例が報告されています。

甲状腺機能亢進症/バセドウ病と診断された後、抗甲状腺薬メルカゾール3錠(=15 mg)/日投与開始。37度台の発熱、咽頭痛、咳嗽(せき)が出現。この症状なら薬剤熱を疑いますが、 2週間後にはCr 2.8 mg/dL、BUN 34.8 mg/dL、尿蛋白1+、尿潜血 3+と急激な腎機能悪化を認め、MPO-ANCA関連血管炎MPO-ANCA関連腎炎)の疑いになりました。メルカゾール中止し、KI(ヨウ化カリウム)に変更するも、腎機能は更に悪化、MPO-ANCA、PR3-ANCA共に陰性。腎生検では糸球体のfibrinoid necrosis(血管に線維素類似物質の沈着)、半月体形成、IgG linear pattern(基底膜に沿ったIgG 沈着)を認め、抗糸球体基底膜腎炎[グッドパスチャー(Goodpasture)症候群]が濃厚になりました。更に、抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)が陽性で診断確定。

肺CTで病変を確認できなかった様ですが、組織的な変化のみなら経気管支肺生検 (TBLB)でしか分かりません。後から考えれば、咽頭痛、咳嗽(せき)は、グッドパスチャー(Goodpasture)症候群の肺病変だったのでしょう。

抗甲状腺薬(メルカゾール)にグッドパスチャー(Goodpasture)症候群の副作用はなく、甲状腺機能亢進症/バセドウ病とグッドパスチャー(Goodpasture)症候群の自己免疫疾患が2つ合併したとの結論。

(第53回 日本甲状腺学会 P-94 Goodpasture 症候群とバセドウ病を合併した一 例)

4年間PTU(プロピルチオウラシル)を服薬した14歳のバセドウ病患者では、血尿があって抗糸球体基底膜抗体(抗GBM抗体)とMPO-ANCAどちらも陽性。腎生検で、糸球体のメサンギウム増殖と半月体形成、糸球体基底膜に沿ったIgGの線状沈着物を認め、グッドパスチャー(Goodpasture)症候群でした。[Korean J Nephrol.  2006 Jan;25(1):121-126.]

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)

好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(eosinophilic granulomatosis with polyangiitis:EGPA)のANCA陽性率は約50%。休薬のみで改善しやすい抗甲状腺薬誘発性MPO-ANCA関連血管炎との鑑別は重要で、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)は治療しなければ改善せず、治療しても10%未満で、脳出血・脳硬塞や心筋梗塞、腸穿孔、重症腎炎を来し、死亡率は1%。[Arthritis Res Ther. 2005;7(5):191-2.]

鑑別点として、

  1. 気管支喘息や好酸球性副鼻腔炎が先行(抗甲状腺薬投与前から存在)
  2. ANCA陽性例ではMPO-ANCA関連血管炎と同じくANCA関連腎炎や多発性単神経炎
  3. ANCA陰性例では肺の好酸球浸潤や好酸球性心筋炎の合併が多い

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長崎甲状腺クリニック(大阪)


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