低カルシウム血症はビタミンD欠乏[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺機能低下症 甲状腺超音波エコー 長崎甲状腺クリニック 大阪]
内分泌代謝(副甲状腺・副腎・下垂体)専門の検査/治療/知見 長崎甲状腺クリニック(大阪)
甲状腺専門・内分泌代謝の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外(Pub Med)・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌病態内科学教室で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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Summary
日本人はビタミンD、Ca摂取量が少ない。くる病・骨軟化症の原因は①ビタミンD作用不足;ビタミンD依存症I型(1α水酸化酵素欠損)・ビタミンD依存症II型(ビタミンD受容体異常症)・ビタミンD摂取不足・日照不足・甲状腺機能亢進症/バセドウ病、胃切除後。ビタミンD欠乏に25ヒドロキシビタミンD測定②FGF23関連低P血症。くる病・骨軟化症の症状は低カルシウム血症(筋ケイレン/筋力低下、手足や口周囲のシビレ感)、骨痛、脊柱変形、偽骨。くる病/骨軟化症の治療は活性型ビタミンD製剤。安易なランマーク・プラリア(デノスマブ)投与は重篤(重症)な低カルシウム血症に。
Keywords
低カルシウム血症,くる病,骨軟化症,ビタミンD依存症,日照不足,ビタミンD欠乏,25ヒドロキシビタミンD,甲状腺,プラリア,デノスマブ
くる病、骨軟化症の違い
くる病、骨軟化症は、骨の石灰化障害で、
- 成長軟骨帯閉鎖以前(要するに骨の成長が止まる前)に発症するものを、くる病
- それ以降に発症するものを、骨軟化症
と定義します。
骨軟化症の原因・分類
くる病・骨軟化症の原因は、
- ビタミンDの作用不足
- リン(P)の不足(腎でのリン再吸収障害):FGF23関連低P血症性くる病・骨軟化症は、かなり見逃されている可能性があります
の2つがあります。
ビタミンDの作用不足
- 食品から摂取するビタミンDの摂取量不足:自然界にはビタミンDを含有する食品が極めて少ない。
脂肪性の魚(サケ、マグロ、サバなど)は最良の供給源で、しらす干し、すじこ、牛レバー、チーズ、バター、卵黄にも少量のビタミンDが含まれます。しいたけ、きくらげ(乾)などのキノコ類にはビタミンDの前駆体エルゴステロールが含まれる。
近年、小児の食物アレルギーに対して、親が肉類、魚類、牛乳、卵を摂取させない事が原因のくる病が増えている。
厳格な菜食主義で魚介類や乳製品を10 年以上摂取していないとビタミンDを起こします。
④紫外線の90%を占めるA波(UVA)はガラスを貫通、皮膚の奥まで到達します。何十年も日焼けを繰り返すと、皮膚が障害されます。シミ、シワが多くなり、皮膚がんの発生率も高くなって光老化と呼ばれます。
- 抗けいれん薬の長期間使用(抗てんかん薬により、肝臓でのビタミンDの不活性化が促進)(てんかん薬と甲状腺)
- 胃を全部取ると骨が弱くなる?(胃切除後骨軟化症)
- 甲状腺機能亢進症/バセドウ病では高頻度にビタミンD欠乏を合併するとの報告があります(Endocr J. 2001 Aug;48(4):515-6.)。
胃を全部取ると骨が弱くなる?(胃切除後骨軟化症)
胃を全部取る(胃全摘)とビタミンDの吸収障害がおこります。血液中のカルシウム・リンは低下し、骨が弱くなります(胃切除後骨軟化症)。以前、胃切除後骨軟化症は稀でしたが、胃がんなどで胃全摘した後も長期間生きられるようになり、また、骨の悪い高齢者でも胃切除するようになったため、増加しています。
くる病/骨軟化症の症状
くる病/骨軟化症の診断
くる病/骨軟化症の診断は、
大項目
a) 低リン血症、または低カルシウム血症
b) 高骨型アルカリホスファターゼ血症(BAP もしくはALPアイソザイム3型)
くる病/骨軟化症の鑑別診断
25-(OH) ビタミンD (25ヒドロキシ ビタミンD)測定
25-(OH) ビタミンD (25ヒドロキシ ビタミンD)は、半減期が15日と非常に長く、ビタミンD欠乏状態の最も確かな指標です。(Am J Clin Nutr 2008;88:582S-6S)
日本の正常基準値は15~40 ng/mL
国際的な基準として、25-(OH) ビタミンD (25ヒドロキシ ビタミンD)が、
- 30 ng/mL 未満は不十分
- 20 ng/mL 未満は欠乏症
- 10 ng/mL 未満は重度欠乏症
(日本骨代謝学会、日本内分泌学会による「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」)
- ビタミンD欠乏症では低くなり、若年性骨粗しょう症との鑑別に有用です。
- ビタミンD依存症I型は1α水酸化酵素欠損なので、その前段階の25-(OH) ビタミンD は正常
- ビタミンD依存症II型はビタミンD受容体の反応障害なので、25-(OH) ビタミンD は正常
1,25-(OH)2 ビタミンD3 (1,25ジヒドロキシ ビタミンD3)測定
1,25(OH)2ビタミンD3は、体内のカルシウムやリンを調節し、骨を強くするビタミンです。血中1,25(OH)2ビタミンD3値は、
- 半減期が15時間と短い
- ビタミンD欠乏状態では副甲状腺ホルモン(PTH)の作用により1α水酸化が活性化され、代償性に合成促進される
ため、ビタミンD欠乏の指標にはなりません。(Am J Clin Nutr 2008;88:582S-6S)
また、1,25(OH)2ビタミンD3は白血病細胞の分化増殖を抑制します。
- ビタミンD欠乏症では、よほど重症でない限り正常
- ビタミンD依存性I型では、1α水酸化酵素欠損により、その後段階の1,25(OH)2ビタミンD3は低値
-
ビタミンD依存症II型は、ビタミンD受容体の反応障害なので、1,25(OH)2ビタミンD3は高値
院長の論文
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Inhibition by 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3 of activin A-induced differentiation of murine erythroleukemic F5-5 cells.(Archives of biochemistry and biophysics)
1.25(OH)2ビタミンD3が赤白血病細胞の分化と増殖を別々に抑制するのを世界で初めて証明Activin A によるマウス赤白血病細胞株の分化誘導に対する 1, 25 ...
(日本骨代謝学会雑誌 = Japanese journal of bone metabolism)
院長が共同研究した論文
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Modulation by cAMP of 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3 sensitivity of murine erythroleukemia cells.(Archives of biochemistry and biophysics)
1,25(OH)2D3 が赤白血病細胞の分化を抑制するのは、細胞内cAMP(サイクリックAMP)の変化による事を発見
くる病/骨軟化症の治療
くる病/骨軟化症の治療は、
- ビタミンD欠乏症・ビタミンD依存性I型は、通常量の活性型ビタミンD製剤投与で容易に治療できます。
- ビタミンD依存症II型:大量のビタミンD投与が必要・カルシウム剤を使う場合もあり・禿頭(とくとう)(スキンヘッド;髪が全て抜けた状態)を伴う場合、治療抵抗性のことが多い
実写版アルプスの少女ハイジでは、スモッグで太陽光が遮られたフランクフルトの空も含めて、当時の様子を忠実に再現しています。(写真参照)。
クララも、くる病だった可能性が高いと考えられます。脚の骨形成不全、筋力低下(写真参照)により立てなくなり、歩こうとして転んだことがトラウマとなって、立つ事を止め骨に加重が掛からなくなると、益々、骨は脆弱化し筋肉も廃用萎縮します。
例え、直射日光を浴び、ビタミンDとカルシウムを多量に摂取しても、骨に加重が掛からなければ、正常な骨形成・骨修復はできません。それこそ、死ぬ気でやっても、既に変形してしまった脚は完全に元には戻りません。両脇に手すりのある病院のリハビリ室ではありません。おじいさんの山小屋は、平地など無いアルプス山中にあり、岩がゴロゴロする危険な環境(写真参照)、一歩間違えば谷底に転がり落ちて車椅子と同じ運命ですが、短期間で骨密度、萎縮した筋肉を回復させるには絶好のリハビリ環境です(と言っても、TVアニメの様な、生易しいリハビリ(写真参照)では到底無理です、ブラックジャックが幼少時、本間医師の奇跡のオペの後、やっと立ち上がれるようになったエピソードの方が現実的)。
そして、19世紀に書かれた「アルプスの少女ハイジ」、その下敷きとなった「アルプスの少女アデレード」は、現代医学に照合しても矛盾がほとんど無い事を考えれば、ノンフィクションであった可能性が高いと考えられます。(物語の最後で、クララのおばあ様から筆記具とノートをプレゼントされたハイジは言います。「私、大人になったら作家になるの!」)
「クララが立った」のは、①直射日光によるビタミンDの活性②ビタミンDとカルシウム充足③骨形成・骨修復を促す過酷なリハビリの医学的な偶然が全て揃った、ある意味、神の奇跡なのです。
安易な抗RANKL抗体デノスマブ(ランマーク®、プラリア®)投与で、けいれん・意識障害を伴う大変な低カルシウム血症になることがあります。
RANKLは、破骨細胞分化誘導因子の1つです。分子標的薬:抗RANKL抗体デノスマブ(ランマーク®、プラリア®)は、骨が溶け出す過程に関与するRANKL受容体を阻害し、破骨細胞の働きを抑え、骨粗しょう症を改善する薬です。
また、ランマーク®、プラリア®(デノスマブ)は、固形がん骨転移の骨関連事象(skeltal related events: SRE=骨転移の進行による麻痺や骨折など)の予防・遅延効果においてビスフォスフォネート剤のゾレドロン酸(ゾメタ®)より優れるとされます。甲状腺がん骨転移に対しても保険適応があります(甲状腺分化癌(乳頭癌・濾胞癌)骨転移の治療)。
ランマーク®、プラリア®(デノスマブ)は、6ヶ月に1回皮下注射を行います。低カルシウム血症は、皮下注射後、1週間で起こりやすく、腎不全などビタミンDの作用不全のある人におきます。副甲状腺ホルモン(PTH)は代償性に上昇します。カルシウムと同時にビタミンD製剤を投与します。
末期腎不全患者でとんでもない事に
末期腎不全患者にデノスマブ(商品名:プラリア)投与すると、血中カルシウム(Ca),リン(P)は減少し、急激な2次性副甲状腺機能亢進症を来します。一時的に、Ca剤・ビタミンD製剤の増量が必要になります。)(第113回日本内科学会 P112 末期CKD患者におけるDenosumab投与の効果)
2か月してから、おこる症例も
さらに、使用して2か月後に、血中カルシウム濃度が正常の半分になり、意識を失い、死に掛ける症例も報告されています。(第209回 日本内科学会近畿地方会 演題32 デノスマブ投与によって著明な低Ca血症を来した慢性腎不全の1例)
骨粗しょう症でランマーク®、プラリア®(デノスマブ)の定期投与が遅れたら?
骨粗しょう症でランマーク®、プラリア®(デノスマブ)の定期投与が遅れたら、骨折の危険(ハザード比)が大きくなっていきます。
- 4週間以内に次の投与(遅延なし)ハザード比1.00
- 4-16週の遅れ(短期遅延)ハザード比1.03(95%CI 0.63-1.69)
- 16週以上の遅れ(長期遅延)ハザード比1.44(95%CI 0.96-2.17)
(Ann Intern Med. 2020 Oct 6;173(7):516-526.)
低リン血症による骨軟化症の原因は、
- 腫瘍性骨軟化症(腫瘍原性骨軟化症);FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症
- 先天性FGF-23分解異常;FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症
- 腎尿細管性アシドーシス
- ビタミンD欠乏症
- 薬剤性(イホスファミド、アデホビルピボキシル、バルプロ酸、含糖酸化鉄など)
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症
腫瘍性骨軟化症(腫瘍原性骨軟化症:tumor induced osteomalacia)
腫瘍性骨軟化症(腫瘍原性骨軟化症)は、悪性腫瘍、間葉系の良性腫瘍がリン利尿因子であるFGF-23(fibroblast growth factor-23)を過剰産生・分泌するのが原因。FGF-23は、
- 近位尿細管でのリン(P)再吸収を阻害
- ビタミンDの活性化を阻害
するため、著しい低リン(P)血症による、くる病・骨軟化症(FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症)が生じます。
FGF-23を産生し腫瘍性骨軟化症(腫瘍原性骨軟化症)を起こした甲状腺未分化癌の報告があります(Bone Rep. 2016 Feb 17;5:81-85.)
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の症状
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の症状は
- 治療抵抗性の腰痛
- 胸郭変形、多発骨折、身長が縮む
- 歯の痛み、う歯(虫歯)
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の診断
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の検査所見は、
- 血清カルシウム(Ca)濃度は低値-正常範囲内低め、著しい低リン血症と
- ALP上昇(骨由来)
- リン利尿因子であるFGF23(fibroblast growth factor 23)高値
- 25-(OH) ビタミンDは正常値
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療には、経口リン酸製剤「ホスリボン®配合顆粒」(有効成分:リン酸二水素ナトリウム一水和物及び無水リン酸水素二ナトリウム)も併用します。
甲状腺関連の上記以外の検査・治療 長崎甲状腺クリニック(大阪)
- 甲状腺編
- 甲状腺編 part2
- 内分泌代謝(副甲状腺/副腎/下垂体/妊娠・不妊等
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長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,天王寺区,東大阪市,生野区,浪速区も近く。