長崎甲状腺クリニック(大阪)新着情報[日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 橋本病 バセドウ病 甲状腺超音波(エコー)検査 長崎甲状腺クリニック 大阪]
2017.09.01
ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物
甲状腺(橋本病,バセドウ病,甲状腺エコー等)・動脈硬化・内分泌代謝 専門の長崎甲状腺クリニック(大阪)からのお知らせです。日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医として甲状腺機能低下症,橋本病,甲状腺機能亢進症,バセドウ病,内分泌などのホットな話題をお届けします。
ヨウ素(ヨード)は制限、葉酸(ようさん)はドンドン摂取
ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は発音が似ているが全くの別物です。世間ではヨウ素(ヨード)[ようそ]と葉酸(ようさん)を混同している方が多くいます。
長崎甲状腺クリニック(大阪)では混同を避けるため、患者さんには「ヨード」と言う表現に統一しています。
甲状腺が悪い方にヨウ素(ヨード)の過剰摂取制限は必須[ヨード(ヨウ素)と甲状腺]ですが、葉酸(ようさん)は摂った方が良いのです。
特に甲状腺機能低下症/橋本病の妊婦さんは、
- ヨウ素(ヨード)を厳格に制限して(ヨードと甲状腺)
- 葉酸(ようさん)を推奨量摂取
せねばなりません(妊娠と葉酸)。
葉酸(ようさん)とは
葉酸(ようさん)は水溶性ビタミンB群の一種(ビタミンB9)で、妊娠期に欠かせない栄養素として注目されています。その名(葉っぱの酸)の通り、
- ほうれん草やブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物の緑葉、野菜類に多く
- イチゴや夏みかんなどの果物類
- 大豆や納豆など
に含まれています。葉酸(ようさん)はタンパク質や核酸合成の補酵素として、細胞分裂・増殖(要するに生命維持)に必要です。また、ビタミンB12と共に、赤血球合成に必要で、不足すると葉酸欠乏性貧血に至ります。
甲状腺と葉酸欠乏
甲状腺の病気では葉酸欠乏がおこりやすいのため要注意です。
- 甲状腺機能低下症では、葉酸の吸収障害・利用障害
- 甲状腺機能亢進症では、葉酸の需要増大[Nuklearmedizin. 1979;18(6):278-82.]
により葉酸欠乏が起こります。
妊娠と葉酸
妊娠期において葉酸は胎児の体を形成するのに必要不可欠です。胎児の細胞分裂が最も活発な妊娠初期(4週~13週)の葉酸欠乏では、二分脊椎症など神経管閉鎖障害の発症リスクが高くなります(妊娠初期が最も重要)[Reprod Toxicol. 2018 Sep;80:73-84.]。
また、授乳期の葉酸欠乏は、乳児の発育障害の原因になります。
葉酸は動脈硬化を予防
葉酸は、動脈硬化の危険因子であるホモシステイン産生を抑制します。ホモシステインは、必須アミノ酸のメチオニンが代謝されて生成されるアミノ酸です。
血中ホモシステインは、
甲状腺機能低下症患者の血中ホモシステインは、甲状腺ホルモン剤(チラーヂン、レボチロキシン)単独で治療するより、葉酸を併用して治療する方が低下します。[Caspian J Intern Med. 2012 Spring;3(2):417-20.]
葉酸欠乏による巨赤芽球性貧血
葉酸はビタミンB12とともに、造血に不可欠です。葉酸欠乏は、巨赤芽球性貧血という大球性貧血(大きな赤血球だが数は少ない)をおこします。
詳しくは、 葉酸欠乏性貧血 を御覧ください。
葉酸欠乏による口内炎・皮膚炎・肌荒れ
葉酸が欠乏すると新陳代謝が活発な口腔内や皮膚、粘膜などに炎症や肌荒れが現れます。
葉酸(ようさん)をどの様に補給するか?
妊娠希望女性は葉酸1日400μg、妊娠中は440μgが推奨量です。葉酸400μgは、ホウレン草約200g(1把分)に相当しますが、そんな量のホウレン草を食べ続ければシュウ酸カルシウムの過剰摂取で、腎結石(腎臓結石): 尿路結石ができます。
甲状腺機能低下症/橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服用中の方なら、ホウレン草のシュウ酸カルシウムと食物繊維がチラーヂンSの腸吸収を妨げます。
その他、ブロッコリー、アスパラガスなど陸生植物、イチゴや夏ミカンなどの果物類も同じく食物繊維がチラーヂンSの吸収障害を起こし、納豆・豆腐・豆乳など大豆製品はチラーヂンSを吸着し、腸から吸収させないようにします(チラーヂンSの吸収障害をおこす食べ物)。
甲状腺機能正常橋本病で甲状腺ホルモン剤(チラーヂンS)を服用する必要のない方は、これらの食品を摂取して問題ありません。これらの食品は甲状腺を腫れさせるゴイトロゲンと呼ばれるものが多いですが、あくまで動物実験のみの話で、常識量の摂取で甲状腺に問題が出た報告は1例もありません。[ゴイトロゲン(甲状腺を腫れさせる食物)]
葉酸は加熱に弱いため調理中に失活しますが、だからといって特に夏場、生のままで食べればO-157大腸菌などによる食中毒の可能性もあります。
結論として、最も簡単で確実なのは、葉酸サプリメントを飲むことです。ただし、甲状腺の病気がある方は、ヨウ素(ヨード)を同時に含む製品を避けてください。
筆者がお勧めなのは、大塚製薬の「ネイチャーメイド」で、余計なものが一切入っていません。(筆者も服用しています)
今日は「ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物」の話でした。
さらに詳しくは、ヨウ素(ヨード)と葉酸(ようさん)は全くの別物を御覧ください。
文責:長崎甲状腺クリニック(大阪)院長 日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医 長崎俊樹
長崎甲状腺クリニック(大阪)とは
長崎甲状腺クリニック(大阪)は日本甲状腺学会認定 甲状腺専門医[橋本病,バセドウ病,甲状腺超音波(エコー)検査など]による甲状腺専門クリニック。大阪府大阪市東住吉区にあります。平野区,住吉区,阿倍野区,住之江区,松原市,堺市,羽曳野市,八尾市,東大阪市,天王寺区,生野区も近く。