サイロキシン結合グロブリン(TBG)異常と甲状腺ホルモン値,甲状腺ホルモン結合蛋白,遺伝性TBG増加症,遺伝性TBG欠損症[長崎甲状腺クリニック 大阪]
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甲状腺専門の長崎甲状腺クリニック(大阪府大阪市東住吉区)院長が海外・国内論文に眼を通して得た知見、院長自身が大阪市立大学(現、大阪公立大学) 代謝内分泌内科(内分泌骨リ科)で得た知識・経験・行った研究、日本甲状腺学会で入手した知見です。
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TBG(サイロキシン結合グロブリン)とチロキシン(T4)[Proc Natl Acad Sci USA 103 (36): 13321–6. より改変]
Summary
肝臓で合成・分泌されるTBG(サイロキシン結合グロブリン)は甲状腺ホルモン結合蛋白の70~75%を占める。TBG異常によりFT4, FT3値へ影響が出るが、自然現象であり、異常抗体・異常蛋白が測定キットに影響する分析干渉とは異なる。TBGが増加するのは遺伝性TBG増加症、妊娠、胞状奇胎、急性肝炎、新生児、薬剤[エストロゲン製剤、5-FU]、低下するのは遺伝性TBG欠損(減少)症、肝硬変、ネフローゼ症候群、栄養失調、カロリー制限、薬剤[アンドロゲン、蛋白同化ホルモン]
Keywords
TBG,サイロキシン結合グロブリン,甲状腺ホルモン結合蛋白,遺伝性TBG増加症,遺伝性TBG欠損症
サイロキシン結合グロブリン(thyroxine binding globulin;TBG)は、肝臓で合成・分泌される糖蛋白(分子量54,000)であり、血中の最も重要な甲状腺ホルモン結合蛋白です。血中で甲状腺ホルモンを運搬し、末梢組織へ供給します。また、甲状腺ホルモンを貯蔵し、濃度変化に応じて放出する緩衝作用を有します。
TBG(サイロキシン結合グロブリン)は甲状腺ホルモン結合蛋白の70~75%を占め、トランスサイレチン(プレアルブミン)は約15%、アルブミンは約10%です。
血中の甲状腺ホルモン(T3,T4)のほとんどは、甲状腺ホルモン結合蛋白と結合しており、遊離型で存在するのはチロキシン(T4)の0.03%、トリヨードサイロニン(T3)の0.3%のみ。
TBG(サイロキシン結合グロブリン)異常によりFT4, FT3値へ影響が出ます。実は、正常妊娠中の甲状腺ホルモン変動の原因としてよく知られていた事で、妊娠中~後期にFT4, FT3は低値になります(ただし測定キットによりその程度はバラつきがある)。妊娠に伴う性ホルモン結合タンパク増加と同時に、甲状腺ホルモン結合グロブリン(TBG)も増え、結合していない遊離型甲状腺ホルモン(FT4, FT3)が減るためです。
これは、自然現象で、異常抗体・異常蛋白が測定キットに影響する分析干渉
- 抗ヒトT3自己抗体、抗ヒトT4自己抗体、抗ヒトTSH自己抗体、異好抗体
- マクロTSH血症
- 家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症の診断
- 測定キット(エクルーシス試薬、ECLIA法)でFT3、FT4が偽高値・TSHが偽低値
- 抗ストレプトアビジン抗体による偽低値、偽高値
- マイクロフィブリンによる偽高値
とは異なります。
TBG(サイロキシン結合グロブリン)が増加するのは、
TBG(サイロキシン結合グロブリン)が低下するのは、
- 遺伝性TBG欠損(減少)症
- 肝硬変
- ネフローゼ症候群
- 栄養失調、カロリー制限
- 薬剤[アンドロゲン(男性ホルモン)、蛋白同化ホルモン、L-アスパラギナーゼ(ロイナーゼ;急性白血病や悪性リンパ腫の治療薬)]
遺伝性サイロキシン結合グロブリン(TBG)増加症は極めて稀で、0.004% (25,000人に1人)[遺伝性TBG欠損症は0.02% (5,000人に1人)]です(Endocrine Reviews 10: 275-293.)。
遺伝形式はX染色体優性遺伝と考えられ、遺伝性サイロキシン結合グロブリン(TBG)増加症の家系が日本でも2家系報告されています。(Endocr J. 1994 Aug;41(4):467-70.)(Folia Endocrinologica Japonica 1970, 46(9):1002-1004.)
遊離型のFT4・FT3 は正常範囲で、甲状腺機能は正常。よって、通常は無症状で、治療も不要。
サイロキシン結合グロブリン(TBG)欠損症はセルピンファミリーAメンバー7(SERPINA7)遺伝子変異が原因とされます。X連鎖性遺伝のため、半接合体の男性とホモ接合体の女性に発現します。[J Clin Endocrinol Metab. 1996 Jun;81(6):2204-8.]
TBG欠損症にはTBG完全欠損症とTBG部分欠損症があり、それぞれ15,000 人に一人、4,000人に一人の頻度。[Gene. 2018 Aug 5:666:58-63.]
遊離型のFT4・FT3 は正常範囲で、甲状腺機能は正常。よって、通常は無症状で、治療も不要。
「サイロキシン結合グロブリン(TBG)増加でFT3高値になる」(偽高値か?)と言う不思議な症例が報告されています。筆者は、その論理を把握していません。
報告によると、TSH不適切分泌症候群(SITSH)の検査所見を示すが、代謝亢進症状なく、甲状腺腫大もなし。甲状腺ホルモン不応症(レフェトフ症候群)、TSH産生下垂体腺腫も否定され、偽高値を疑われるが、抗ヒトT3自己抗体、抗ヒトT4自己抗体、抗ヒトTSH自己抗体、異好抗体も否定的。
TBG≧60.0 μg/mL (12.0~28.0 μg/mL)の甲状腺機能低下症で、「(抄録のまま)T3結合TBGを種々の検体に異なる濃度となるように添加し、T3・FT3を測定する検討を行った。その結果、添加したT3結合TBGのT3量に比例してFT3測定値が上昇しており、TBGからT3が遊離し測定されている可能性が疑われた。」との事です。甲状腺ホルモンと親和性の高い異常サイロキシン結合グロブリン(TBG)により見かけ上、遊離トリヨードサイロニン(FT3)上昇を来すと考えられ、家族性異常アルブミン性高サイロキシン血症 と同じ原理です。近年、 高T3血症のみで、高T4血症を伴わない家族性異常アルブミン性高トリヨードサイロニン血症(FDH-T3)が報告されており[Biochim Biophys Acta. 2016 Apr;1860(4):648-60.]、非常に似ています。
(第60回 日本甲状腺学会 O6-2 TBG異常による遊離甲状腺ホルモン測定への影響が疑われた2例)
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